大豆イソフラボンで髪が生えるは嘘

大豆イソフラボンで髪は生えない

大豆を使った食品は豆腐や納豆、醤油など身近にたくさん存在し、栄養分が豊富で高たんぱく低カロリーなど健康やダイエットには欠かせないものとして確固たる地位を築いています。一方で髪の毛が生えるという胡散臭い話も。

大豆製品には「イソフラボン」というポリフェノールの一種が豊富に含まれており、これが育毛に効果があるということから育毛剤はもちろん育毛サプリメントにも積極的に採用されているのです。

しかし、本当にイソフラボンで髪が生えるの?

ハッキリ言ってしまえば育毛業界の嘘。何を根拠に育毛効果があるとされ、そしてなぜイソフラボンでは髪が生えないのかまで詳しく解説していきましょう。

イソフラボンのエストロゲン様作用に発毛効果?

育毛剤や多くの育毛サプリメントに配合されている大豆イソフラボンですが、なぜこれが育毛に効果があるとされているのでしょうか?これには大きく3つの理由があります。

その中で最大の要因と見られるのがエストロゲン様作用

イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをすることは昔から知られており、それだけに更年期障害の女性を中心に積極的に大豆製品を摂ることが推奨されています。

女性ホルモンであるエストロゲンは女性が太く美しい髪を生やし維持するために重要なホルモン。ゆえに女性の薄毛の大きな原因はエストロゲンの減少が大きな要因と見られています。

AGAの原因DHTの生成を抑制する?

また、エストロゲンは髪の毛の成長を促すだけではなく、男性型脱毛症(AGA)の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制する作用も。男性の育毛に関しては特にこれが重要視されています。

そして、エストロゲンに似た作用を持つイソフラボンも同様にDHTの生成を抑制するという仮説が立てられ、実際にそれを実証したデータも存在します。

しかしそれらは「エビデンス(科学的根拠)」と呼ぶにはあまりにも規模が小さく、またプラセボ(偽薬)を使用しないなど客観性のない試験。しかも対象はAGAではなく前立腺に関する病気を対象にしている。

なぜなら前立腺肥大症や前立腺癌はAGAと同じくDHTによって引き起こされると見られているから。ただ、原因は同じでも作用順序や部位が違う以上、同列に語るのはやや乱暴と言わざるを得ません。

イソフラボンがAGAに効果があるとする研究もわずかに存在しますが、これはさらに漠然としたもの。この研究の結論は「頻繁な大豆飲料の摂取はAGAの進行を止める可能性がある」という曖昧なものですしね。

発毛の科学的根拠というのは大規模かつ客観性に富む臨床試験を行い有意差を示してはじめて認められるもの。現状では大豆イソフラボンが薄毛を改善させるという科学的根拠は無いに等しいと言わざるを得ないのです。

大豆を大量に食べてもハゲる日本人

イソフラボンを摂ってもハゲる日本人

イソフラボンがDHTの生成を抑制し前立腺癌の発生を抑制するではないかという研究において、その可能性を示唆するものとしてアメリカと日本の大豆消費量の差を挙げています。

日本の1人当たりの大豆摂取量は世界一であり、アメリカ人に比べ圧倒的に多い。そしてそのアメリカでは日本に比べ前立腺癌の死亡率が非常に高いのである。日本の前立腺癌の死亡率の低さにイソフラボンが影響しているのではないかと見たのが上記の研究。

しかしちょっと待って、日本は間違いなく1人当たりの大豆摂取量世界一ですが、成人男性の薄毛率は世界14位。イソフラボンを大量に摂取しているのに、ほとんど食べていない国より薄毛男性が多い現実が。

イソフラボンにDHT抑制効果があるというのであれば、日本人のハゲ率の高さは説明が付かないのではないか?

結局は「遺伝」の2文字で片付く気がするが…

いまだ根強いIGF-1理論

イソフラボンは唐辛子に含まれるカプサイシンと同時に摂取することで成長因子のひとつであるIGF-1(インスリン様成長因子)が分泌され髪が生える…なんて馬鹿らしい説が最近幅を利かせています。

そこに目を付けた異常に高いサプリメントも存在するほど。

この理論はテレビ番組である発掘あるある大辞典で取り上げられたのをきっかけに広まったのですが、これを提唱した当時名古屋市立大学医学研究科の岡嶋研二教授はのちに多くの論文で捏造・不正が疑われ停職処分→退職となっています。

イソフラボンやカプサイシンのサプリを売りたいサイトは必死に擁護していますが、こんなもん信じる方がおかしい。

ポリフェノールによる抗酸化作用が効果あり?

イソフラボンはポリフェノールの一種であるため抗酸化作用があり、アンチエイジングの世界でも積極的に取り入れられています。

老化を促進させる活性酸素を抑制することによって毛母細胞や毛乳頭細胞を活発化し育毛に繋がるという、いかにもそれっぽいような雰囲気を醸し出している気にさせる面白トンデモ理論。

もし抗酸化物質に薄毛改善効果があるのであれば、強力な抗酸化作用がるアスタキサンチンやリコピン、βカロテンなどを摂取すればAGAが改善することになるがそんなデータは一切存在しない。研究すらされていない。

そもそもAGAというのはDHTが毛乳頭細胞内で男性ホルモン受容体と結合し、何らかの脱毛因子が放出されるというのが有力な説。そこに活性酸素による細胞の酸化や老化が関わる余地はない。

イソフラボンで毛が生えない理由

今現在イソフラボンが育毛業界で売り込まれる理由は上でも書いたようにIGF-1によるものが主流になっています。

しかし先にも書いたようにこれを提唱した教授やその周辺による捏造や不正が発覚、信憑性は完全になくなってしまいました。しかも准教授が懲戒解雇されてこの教授は「直接の関与が確認できなかった」という理由で停職6ヶ月で済んでいる…トカゲのアレを切った感じか。

そうなると女性ホルモンであるエストロゲンに近い働きをするという点に期待するしかないのですが…

男性ホルモンが少なくエストロゲンによる作用が大きなウエイトを占める女性であればイソフラボンを補充し育毛に繋げようという理屈も分かりますが、薄毛の原因ジヒドロテストステロン(DHT)てんこ盛りの男のハゲに対しイソフラボンをちょっと増やしたところで髪が生えると思う?

そもそも、前述したように日本人は1人当たりの大豆摂取量世界一。にもかかわらずハゲが多い時点でイソフラボンがどうこう言うのは間違っているのではないでしょうか。

焼け石に水、AGAにイソフラボン。

イソフラボン摂取はサプリを飲むまでもない

イソフラボンは食事から摂取

イソフラボンは言うまでもなく大豆に多く含まれているものなので、日本人であれば日常的に摂取している成分です。

そんなイソフラボン、1日の上限量…これ以上摂らないことが望ましいとされる量は75mgとされており、そのうちサプリメントなどで摂取する上限は30mgとなっています。つまりイソフラボンのサプリメントはどんなに多いものでも1日分は30mgとなります。

一般的にサプリメントは日常生活で摂取の難しい成分や栄養素を補う意味合いが強いのですが、イソフラボンに関しては納豆1パックで約37mg、豆腐半丁(150g)で30mg、味噌汁1杯で6mgと摂取は難しいものではありません。

そう、サプリメントは納豆1パック分以下でしかないのです

朝食に納豆ご飯と豆腐の味噌汁を飲めば1日の上限量近くに達することになり、その程度でハゲが改善するなら納豆を毎日食べている人はハゲないことになる。

サプリメントのイソフラボン30mgは納豆1パック、豆腐半丁と同等とあってこれらが嫌いでない限り余裕で食べられる量。しかも納豆や豆腐はイソフラボン以外にも非常に多くの栄養素を含んでいるんだから、どう考えてもこちらを食べたほうが良いに決まっています。

そもそも様々な成分が含まれている育毛サプリメントは成分の数が多いだけで一つひとつはカスみたいな量しか配合されていないことが多いためイソフラボンが30mgも入っているはずがない。

頭皮に塗布する育毛剤にもイソフラボン(大豆エキスなど)が配合されている場合があるものの、これにいたってはもう「馬鹿じゃないの?」というレベル。イソフラボンを頭皮に塗ってハゲが治るはずないだろ!

イソフラボンで髪は生えない

これまで名古屋市立大学医学研究科教授の岡嶋研二元教授の提唱する説によってイソフラボンが育毛に使われてきましたが、捏造や不正が明らかになったことで大きな後ろ盾が無くなってしまい根拠も乏しいものに。

女性に対しては「毛が生える」とまでは言えないものの多少髪の毛が元気になるくらいの効果は見込めるかもしれませんが、男性に対しては間違いなく発毛効果はなく、育毛効果すらまず望めないでしょう。

大豆を多く摂取している日本人がこれだけハゲているという現実を見れば、イソフラボンが育毛に効果がないことは一目瞭然なのではないでしょうか。

ただ、大豆食品が非常に体に良いものであるのは間違いないので、栄養素が限定されるサプリメントなどに頼らず納豆や豆腐を摂取したほうが望ましいでしょう。納豆1パックや豆腐半丁なんて1分で食えるだろ。しかも安いし。

ただし、イソフラボン摂取量は1日75mg以内に収めるのが望ましいとされているので、食べ過ぎには要注意。

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