育毛剤は成分が多いほど良いは大嘘
近年は様々な育毛剤が登場し競争が激しくなっていることもあって成分の数で差別化を図りつつ効果を演出しようとするものが多くなってきていますが、それは意味があることなのでしょうか?
ネット中心に人気になっている育毛剤はチャップアップやイクオスなど非常に多くの成分を配合するものが上位に入っており、成分量が効果に直結する風潮を作り出そうとしていますが、それ嘘ですよ。
そもそも育毛剤で新たな髪の毛を生やすことはできず、それは成分の量が多かろうが少なかろうが変わりません。
しかし、多くの育毛剤は「これだけの成分を追加しました!」「〇〇種の成分配合」と成分の多さをアピールしています。
確かに色々な成分が入っていると効果がありそうな気がしてくるかもしれませんが、実際そんなことはありませんので、その辺を詳しく書いていきたいと思います。
発毛剤の成分は極めて少ない
育毛剤の成分量や効果を語る前に、まずはフィナステリドやミノキシジルといった発毛剤の成分を考えてみましょう。
上記2010年時点の大生型脱毛症診療ガイドラインで効果がハッキリと認められているのはフィナステリドとミノキシジルのみ。2015年に認可されたデュタステリド2017年に予定されているガイドライン改正で同じくA評価を得るとみられています。
日本では医療機関のみで処方されるプロペシアはフィナステリドのみ、ザガーロもデュタステリドのみと1種類だけになっています。
これは発毛剤に限らず多くの医薬品に共通する点で、有効成分は1種類、もしくは限られた数種類のみに限定されていますし、当然含有量も明記しています。
つまり、医学的に効果があると認められたものは少ない成分に特化し1点突破を図ることでしっかりとした効果が出るということになるのです。
ちなみに、日本で唯一外用薬の発毛剤として認められているリアップX5はミノキシジル5%に加え、いくつかの成分を配合していますが、これはあくまでもミノキシジルの補助的な役割でしかありません。
最強外用薬であるポラリスも同様。
育毛剤の成分含有量は一切明記されていない事実
一方で育毛剤はどうか?
医薬部外品の育毛剤を名乗る上で最低限の有効成分を規定量以上配合する必要がありますが、多くの場合センブリエキスやグリチルリチン酸など3種程度の有効成分ですら含有量は一切明記していません。
しかも、ほとんどの育毛剤では規定量入っているであろう有効成分が主役になることはなく、やれM-034だ、オウゴンエキスだのといったその他の成分に焦点を持っていきます。
しかし、そもそもその他の成分で発毛しないのはもちろん、客観的な育毛根拠を示すデータすらほとんど存在せず、当然ながら含有量は書いていない。
含有量すら明記していない、発毛根拠も一切ない成分を50も60も配合されたからといって髪の毛が生えると思いますか?
もうちょっと突っ込めば、コストの面から「成分の種類が多い=一つひとつの含有量は少ない」という見方もでき、もしかしたらリニューアルで追加される成分の陰で別の成分の含有量が減っている恐れすらあるのです。
含有量を明記していないんだから、こんなことも朝飯前ですよね。
成分が多いことに何の意味もない
もう少し別の視点からも考えてみましょう。
仮に今あなたが頭痛で不快な思いをしているとして、目の前に2つの薬。
ひとつは医学的に認められた1成分のみで、効果的とされる量をしっかりと配合したもの。もうひとつは頭痛に効果があると謳うサプリメントに配合される成分を、一つひとつの含有量は分からないものの50種集めて配合したもの。
さて、どちらが効果がありそうと感じ、実際どちらを飲みますか?
まともな感覚の持ち主なら医学的に認められた成分1種のみの薬を選ぶのが当然で、頭痛が深刻であればあるほどその傾向は強まるでしょう。
薄毛も同じ。痛みなど不快な症状はないため「とりあえず副作用がない育毛剤を使ってみるか」という人も多いのが実情ながら、実際は育毛剤を使っている間にも薄毛はどんどん進行し、取り返しがつかなくなってしまいます。
また、これが胡散臭い民間の成分ではなく、50種の医学的に認められた成分だったらどうでしょう?
1種類のほうは有効成分が5mg配合されているとして、50種の方も医学的に頭痛薬として認められた成分50種が計5mg入っている場合です。
50種の方が効くと思いますか?思いませんよね。
それぞれがどんなに効果的な成分だとしても作用はそれぞれ異なりますから、それが微量に多く集まったところで、一般的な感覚では相乗効果より効果が散ってしまうことへの懸念が強くなります。
これを育毛剤に当てはめて下さい。
そもそも発毛効果が一切なく育毛効果の実証すらほとんどされていない、作用もそれぞれ違う多くの成分をごくごく微量ずつ配合して、それに相乗効果による発毛を期待しますか?
副作用がない?そりゃないよ、効果すらないんだから。
成分量が多いという言葉に惑わされないように
効果の大きい医薬品はほぼ例外なく1種または選りすぐった数種の成分のみに特化し、病の原因に強く働きかける一点突破を図ります。
理由は簡単、そのくらいしないと効果が出ないから。
遺伝という要素が極めて強い男性型脱毛症(AGA)に対しても同様で、原因である5αリダクターゼや、それが作り出すジヒドロテストステロン(DHT)を抑え込むにはフィナステリドやデュタステリドといった医薬品による強力な作用が必要不可欠。
発毛根拠が一切ない多くの成分をちょびっとずつ配合して効果がありそうな雰囲気を演出しているような育毛剤では話になりません。
ここまで書いてきたように、多くの成分が配合されているというのは効果が散ってしまう可能性が高く、決してプラスには働かないもの。
それが綿密に計算されたものであれば良いですが、ネットを中心に販売している育毛剤のほとんどは研究開発などを行う規模すらない中小企業が、髪の毛に良さそうな成分を適当にピックアップし、あとは外部に製造を委託しているだけ。
無計画に配合された数十種の成分に希望を見いだせるなら、あえて使用を止めるようなことはしませんが、本当に髪の毛を生やしたいのであれば成分の数などという“まやかし”に惑わされないようにして下さい。
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