ハーグ療法を一切おすすめしない理由
AGA専門クリニックなどで行われているハーグ療法。あたかもすごい効果があるように謳っていますが、そこには色々なカラクリと問題が存在します。
様々な薄毛治療が乱立している昨今において、医師しか行えないとあって信頼性の高そうな治療法がハーグ療法。しかしこれがまた効果は不透明・料金は超高額と胡散臭さを醸し出しています。
この「ハーグ」という言葉、響きや字面的にはハゲをもじったものにしか見えないが、実際は「Hair Re-generative theraphy(毛髪再生医療)」の頭文字を取って名付けられたらしい。
いや、頭文字取ったら「HARGT」「HRGT」あたりにならないか?ハゲなめんな。
成長因子を中心に色々な栄養素などを頭皮に直接注入して発毛させるという、最新治療を装いながらも、観葉植物の根元に栄養剤をぶっ挿すような極めて原始的な方法を取るハーグ療法。
どれほどのものか具体的に見てみましょうか。
ハーグ療法のメカニズム
前述しているように、ハーグ療法は様々な成長因子や栄養を組み合わせた「HARGカクテル」と呼ばれるものを、注射や特殊な機器を使って頭皮下に直接注入する治療法。
これを行うと毛母細胞や毛乳頭細胞が刺激されて活性化し、これまで休んでいた後根から再び髪の毛が生えてくるというもの。
通常6ヶ月を1クールとし、その中で6~8回ほど集中的に施術を行うことで劇的に髪の毛が生えてくる…という謳い文句です。
近年Deeper3Dに代表される異常に高いキャピキシル育毛剤(化粧品)にも成長因子が複数配合されていますが、あれより遥かに高濃度かつ多量の成長因子を頭皮に直接注入すると言えば分かりやすいか。
注射を使うなどの理由により医師にしか行えない治療法とあって一見信頼性が高いようにも感じるでしょう。しかし悪質なケースも多い美容整形も似たようなものなので過信は禁物。
ハーグ療法のメリットとは?
色々とぶっ叩く前にハーグ療法のメリットも触れておかないとフェアではないので、まずはどんな良い点があるのかを見ていきましょう。
■発毛率が高い…らしい
ハーグ療法は非常に高い発毛率が自慢で、クリニックによっては99%なんて謳っている場合もあるほど。
つまりほぼ確実な発毛が期待できるのです…施術する側が言うには。
しかし、この数字には大きなカラクリが隠されています。詳しくは後述しますが、端的に書けば発毛剤を併用するというマジックで高い発毛率を演出している。
■傷跡が残らない
毛髪を再生させる方法として有名なものに自毛植毛が挙げられますが、自毛植毛は後頭部から健康な髪の毛を毛包ごと摂取するという性質上、どうしても傷が残ってしまいますし、その部分だけ薄くなってしまいます。
髪の毛を伸ばしていれば目立たないものの、何らかの理由で髪の毛を短くしなければならなくなった場合は困ってしまいますよね。
しかし、ハーグ療法は細い注射針や特殊な機器で頭皮にHARGHカクテルを注入していくだけの治療法なので、基本的に傷跡はほとんど残りません。
■女性も治療を行える
AGA治療といえばプロペシアやザガーロに代表されるフィナステリドやデュタステリド、そしてミノキシジルの3つの発毛剤を使ったものが代表的です。
しかしそれは男性に限った話であり、男性ホルモンに働きかけるフィナステリドやデュタステリドは女性に対し効果がない上に、妊娠している場合胎児に悪影響が及ぶ可能性があるとして、女性の使用は禁忌とされています。
つまり女性が使える発毛剤はミノキシジルのみということに。
しかしハーグ療法はフィナステリドやデュタステリドのように男性ホルモンに働きかけるものではないため、女性も安心して行えるというメリットがあります。
■治療の有効期間が長い…らしい
ハーグ療法で発毛した後は長期間その効果が持続するとされています。
状況に応じて数ヶ月に1回程度のメンテナンスが必要になる場合もあり、また徐々に効果は薄れてくるものの、持続期間が長いためトータルコストが抑えられるというメリットも。
ちなみに発毛剤併用推奨。(なめてる)
ハーグ療法のデメリット
さて、ではお待ちかねのハーグ療法のデメリットについて書いていきましょうか。
■費用がクソ高い
ハーグ療法は6ヶ月間を1クールとして、その中で6~8回の施術を行いますが、この1クールにかかる費用は医院によっても異なるが概ね60~100万円。
集中的な治療が終わった後も数ヶ月に1回はメンテナンスなどを行う必要があり、それにかかる費用が1回8万円ほど。
これでツルツルがフサフサになるというのであればまだ分かるが、当然そうではない点に注目。(後述)
■効果が不透明
ハーグ療法を行う医院は口をそろえて「発毛率90%以上」とのたまうが、それを示す客観的なデータが一切出てこない。
髪の毛が増えたという臨床試験のデータは存在するが、対象人数は20~30人程度と小規模で統計学的な面においても信頼性に欠けます。
そして、様々なクリニックにより多くの症例が紹介されているが、宣伝に使うこれら写真においてですら多くは「多少改善しているかな?」程度で、明らかに髪形で誤魔化している、光の量を絞ることで頭皮を目立たなくしているものも目に付く。
自毛植毛や増毛・かつらであれば増やす本数は明確であるものの、ハーグ療法はどの程度効果があるのか、増えるのかがあまりにも不透明で、そういった点ではフィナステリドやデュタステリドなどの発毛剤を使った治療と大差ない。
それに100万円超…
■継続的なメンテナンスが必要
クリニックによっては1クールの集中的な治療後はメンテナンスの必要はほとんどないと書いていたりするが、ハーグ療法の大本である日本医療毛髪再生研究会のホームページにおいて「1クール終了後は最短で2~3ヶ月おきにフォロー注射する」「約6ヶ月フォローを中止した結果、再度脱毛したケースがある」と明記しています。
良心的な医院であれば「治療後は徐々に効果が落ちていく」「長いスパンで見ればAGAの進行に合わせて再び脱毛する可能性が高い」と書いているところも。
ハーグ療法はAGAを根本から治療する方法ではなく、あくまでも対症療法の域を出ません。AGAが治ったわけではない以上施術が終わった後も進行するのは当然。
■発毛剤の使用を推奨している
ハーグ療法を行う多くの医院では1クール終了後、毛髪を維持するためにプロペシアやザガーロ、ミノキシジルといった発毛剤の使用を推奨しています。
馬鹿にしてるのか?
発毛剤の使用で維持・改善できるのであれば、そもそもハーグ療法など必要ないことになる。
ハーグ療法を行う側としては「施術によって発毛剤では考えられない発毛が期待できるので、その後はプロペシアなどを使って維持しろ」という事なんでしょうが、そもそもハーグ療法が発毛剤の上を行く治療法かどうかすら証明できていない。
ハーグ療法の有効性を示す論文やデータより、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルの有効性を示すデータの方が遥かに、もう比較にならないくらい遥かに多く、「発毛剤はハーグ療法のおまけですよ」「ハーグ療法のほうが上ですよ」という態度から気に入らない。
中には発毛剤による治療とハーグ療法の費用を比較してお得感を演出しているクリニックもあるが、メンテナンスや発毛剤が必要ならどう考えてもハーグ療法の方が高い。
脱毛症診療ガイドラインがハーグ療法を否定
日本皮膚科学会が2010年に策定した男性型脱毛症診療ガイドラインというものをご存知でしょうか?育毛サイトを見ることがある人はこれについての記述を目にしたことがあるかもしれません。
これは皮膚科学会の医師が男性型脱毛症(AGA)に有効な成分や治療法を評価しているもの。ハーグ療法は医師が行っている治療法であるためこのガイドラインにも掲載されていそうなものですが、比較的新しい技術とあって2010年版では評価の対象ではありませんでした。
しかし、2017年になって新たに策定された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」において、満を持して登場することになります。
それがこちら。
ハーグ療法は曲がりなりにも医師が提供する治療であるため、同業者ともいえる日本皮膚科学会が忖度しそれなりの評価をするかと予想していましたが、結果は「C2:行わないほうがよい」という厳しいもの。
ハーグ療法が否定された理由
医師が行っているにもかかわらずボロクソな評価を得たハーグ療法。その理由はなんなのでしょうか?
ガイドラインの説明の中では「今後が期待される治療法」とする一方で「安全性や有効性は十分に検証されてない」としています。
ただ、この「期待される」はハーグ療法ではなく幹細胞の培養や多血小板血漿による育毛に対して用いられている印象。発毛剤を併用しないとまともに毛が生えない上、経済的に大きな負担を強いるハーグ療法を否定した点は大いに評価できます。
ハーグ療法はしょせん対症療法
風邪をひいた時に飲む薬。これって風邪の原因を直接取り除くわけではなく、熱や咳、鼻水などを緩和するだけの対症療法で、薬によって辛い時間を短くしながら自身の免疫力によって回復させようという考えです。
ハーグ療法もこれと同じただの対症療法。AGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)や5αリダクターゼ(5α還元酵素)をどうにかするわけではなく、これらの作用によって弱った毛母細胞や毛乳頭細胞を活性化させて髪の毛を生やそうというもの。
元々が血管拡張剤であるミノキシジルが似たようなもので、高い発毛力があり薄毛の強い味方である同成分ですが、これの作用もDHTや5αリダクターゼに働きかけるものではなく、毛母細胞や毛乳頭細胞の分裂や増殖を促す作用により発毛します。
風邪と薄毛が大きく違うのは自身の力で原因を取り除けないこと。
ゆえに何らかの方法で原因を取り除かない限り、その治療を止めれば再び薄毛になるのは必然。ハーグ療法も結局はその程度の治療法なのです。
DHTや5αリダクターゼに働きかけるといえば現状フィナステリドやデュタステリドしか存在しませんが、これにしても5αリダクターゼの分泌を元から断つわけではなく、同酵素の働きを抑制するものなので、結局は対症療法なんですよね。
例外として薄毛にならない部位に髪の毛を植え付けるという自毛植毛の存在がありますが、これも髪の毛を右から左に移しているだけで根本的な治療とは言えない。
冒頭でも述べたように薄毛の根本治療、完全なる治療というのは存在しません。
しかし、それにしたってハーグ療法は「高額・効果が不透明・劇的な効果は望めない・メンテナンスの必要あり」と良いところを見つける方が難しい。
ハーグ療法は一切おすすめしません
ハーグ療法に関して私は育毛剤のように「発毛効果なんてねーよ」と断言することはしません。
なぜなら、医師の免許を持つ人間のやることですし、論文やデータも存在することから、一定の効果が見込める“可能性がある”のは間違いないのでしょう。
しかしそれにしたってコストパフォーマンスが悪すぎる。
フサフサになるほどの劇的な効果はなくても、その後のメンテナンスが必要なく半永久的に効果が持続するというのであれば100万円支払う価値も見いだせるが、施術後もメンテナンスや発毛剤使用の必要があるのなら、どこに価値を見出せばいいのか。
各医院の症例というのは宣伝も兼ねていますから当然結果の良いものを掲載するでしょうが、ハーグ療法のそれを見る限りフィナステリドやデュタステリドを使用したAGA治療のものと大差ない。
あえて価値を見出すとすれば、フィナステリドやミノキシジルといった発毛剤で効果が出なかった人の駆け込み寺…といったところでしょうか。
しかし、発毛剤で効果が出なかったいうことは、ハーグ療法施術後の維持はメンテナンスのみに頼ることになり、どちらにしてもジリ貧。しかも2017年版の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでハッキリと否定されてしまった。
ハーグ療法で検索するとアフィリエイト報酬目的のクソみたいなサイトによる提灯記事が上位に並んでいると思いますが、そういったものには騙されないようにして下さい。
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