フィナステリド内服薬の正しい使い方
プロペシアに代表されるフィナステリド内服薬は、ザガーロ(デュタステリド)が登場した現在も男性型脱毛症(AGA)の第一選択薬として使用される安全性、信頼性の高いお薬です。
しかしその効果は個人差が大きく、劇的に効く人がいる一方で全然効果がな人がいるのも事実。もし思うような効果が見られない場合は、今一度使い方を見直してみるといいかもしれません。
フィナステリドの使い方は決して難しいものではありませんが、最も効果が出やすい飲み方があるという説もあり、そのあたりも検証してみたいと思います。
また、薄毛が治らないからといって過剰摂取する人が後を絶ちません。そういったケースでの安全性や効果についても言及していきたいと思います。
- フィナステリドとは?
- フィナステリドの用法・用量
- フィナステリドは毎日同じ時間に飲むべき?
- 使用上の注意
- フィナステリドは1日何mgまで飲んでいい?
- 飲み合わせが悪い薬は?
- フィナステリドの正しい飲み方の総評
- おすすめのフィナステリド内服薬
フィナステリドとは?
フィナステリドはAGAの影響により抜けてしまった部位から再び髪の毛が生える発毛剤として世界中で認可・使用されている発毛剤です。
日本では2005年にプロペシアが認可され、その後2015年頃からファイザーやサワイなど複数のジェネリック医薬品が登場しています。価格はプロペシアが28日分7,000円前後、ファイザーなどのジェネリックが4,000~5,000円ほど。
このフィナステリド、元々はAGA治療薬として開発されたものではなく、男性特有の前立腺肥大症の治療薬として作られた成分。
前立腺肥大症を治療するためにフィナステリドを服用した患者の多くに髪の発毛が見られたため、AGA治療薬に転用されたという経緯があります。
ちなみに日本では前立腺肥大症の治療薬としての認可を受けておらず、フィナステリドはAGA治療薬としてのみ使用されている状況。
このあたり、アボルブという名で前立腺肥大症の治療薬として用いられながら、2015年にはAGA治療薬としても認可されたデュタステリド(商品名:ザガーロ)と大きく異なる点でしょうか。
フィナステリドの作用と効果
そんなフィナステリド、どういった作用によって我々の薄毛を治療し、どの程度の効果があるのか?
元々前立腺肥大症の治療薬として開発されたフィナステリドの作用は「5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬」。つまり5α還元酵素(5αリダクターゼ)を阻害する医薬品ということになります。
前立腺肥大症と男性型脱毛症(AGA)は共にジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンによって引き起こされます。ゆえにDHTの生成を抑制することが症状の改善にとって重要なのです。
そしてこのDHTは、代表的な男性ホルモンであるテストステロンと5αリダクターゼが結びついて作り出されことが分かっています。フィナステリドによって5αリダクターゼを阻害することでDHTの生成を抑制できるという仕組み。
フィナステリドの服用によって血清中のDHT濃度は約7割減少するとされ、プロペシア1mgの臨床試験において示されたAGAへの効果は以下のようになっています。
AGAは一度発症すると進行する一方であるため、フィナステリド使用により進行が止まっている状態であれば薬が効いていると判断していいでしょう。そして進行を食い止めている状況も含めれば約98%の人に効果が出るという結果に。
フィナステリドの用法・用量
代表的なフィナステリド製剤であるプロペシアの用法・用量を確認すると、「服用する量は通常0.2mgを1日1回投与し、必要に応じて増量できるが、1日1mgを上限」としています。
ただ、現実的には0.2mgを処方することはほとんどなく、はじめから1mgを使用するのが一般的。なぜなら1mgのほうが発毛効果が高いうえ、薬価は0.2mgも1mgもほとんど変わらないから。
海外製のプロペシアジェネリックに1mgしか存在しないことを見ても、0.2mgに対する需要のなさが見て取れます。
服用期間は通常6ヶ月。服用から3ヶ月で一定の効果が発現する可能性はありますが、ヘアサイクルの都合上発毛剤の効果の有無を確認するには6ヶ月の期間が必要になります。
そして添付文書には「6ヶ月使用しAGAの進行遅延が見られない場合は投薬を中止する」という記述がありますが、その判断は非常に難しいところ。
理想を言えばフィナステリド服用前に髪の毛の状況を様々な角度から写真に収めておき、6ヶ月後の状況と比較し継続や中止を判断するべきなのでしょうが、それを行っている医療機関は少ないのが実情。できれば自分で行いたい。
副作用や経済的に問題がないのであれば1年ほど使用し、しっかりと効果の有無を確認したほうがベターでしょう。効果がないと判断し6ヶ月で中止した結果、薄毛が一気に進行した…なんて目も当てられませんからね。
フィナステリドは毎日同じ時間に飲むべき?
フィナステリドを服用する際悩ましいのが「いつ飲むか?」という点ではないでしょうか。というのも、プロペシアなどの添付文書には使うタイミングについて言及されていないから。
朝晩どちらに使うのか?食前食後どちらがいいのか?
フィナステリド製剤を製造・販売しているメーカーが時間やタイミングについて言及していないことから、基本的にはいつ飲んでも問題ありません。
事実、食前と食後の薬物動態を調べた試験において、ほぼ同値であることが確認されています。そのことから、ご自分が一番忘れにくい時間に服用するのがベスト。
ただし注意点も。
毎日同時刻に飲む
フィナステリドを使う時間は朝であろうが夜であろうが問題ありませんが、一度決めた時間は守るべき。今日は朝飲んで、明日は夜飲んで…というのは避けたほうがいいでしょう。
それはなぜか?
薬には血中濃度が半減するまでの時間を示す「半減期」というものがあり、時間と共に効果が徐々に薄れていきます。フィナステリドの場合、服用後約1.5時間後に血中濃度はピークに達し、半減期は4時間強となっています。
つまり、乱暴に計算すれば服用から24時間でフィナステリドの血中濃度はピーク時の32分の1程度に。仮に36時間空いてしまうと、256分の1にまで減ってしまう計算になります。
毎日服用する薬というのは、血中濃度を一定に保つことで効果を発揮する場合が多く、フィナステリドも例外ではありません。そういった観点から「毎日同じ時間帯の飲んだ方が良い」という結論に至るのです。
時間帯がバラバラでも毎日飲めば一定の効果は示すでしょう。しかしフィナステリドの効果を最大限発揮させるには毎日同じ時間帯に服用するべきでしょう。
使用上の注意
高い発毛効果を示すフィナステリドですが、使用できない人や注意点が存在します。
まずは使用できない人から見てみましょう。
- フィナステリドに対し過敏症の既往歴がある人
- 妊婦または妊娠している可能性がある女性
- 授乳中の女性
- 未成年
ひとつずつ簡単に解説していきます
フィナステリドに対し過敏症の既往歴がある人
フィナステリドを服用することでごく稀に過敏症を起こす場合があることが確認されています。過去にフィナステリドを使用しそういった症状が出た人は使用を禁じられています。
それはAGA治療薬としてはもちろん、前立腺肥大症の治療薬としても同様。
ただし、日本においてフィナステリドは前立腺肥大症の治療薬として認可されていないことから、過去に海外で治療を受けた人に向けた指針という意味合いもあるのでしょう。
妊婦または妊娠している可能性がある女性
薄毛や前立腺肥大症の原因として知られるジヒドロテストステロン(DHT)ですが、一方で生殖器の成長など男性らしい体を作り出す重要なホルモンでもあります。
妊娠している女性がフィナステリドを使用すると、体内のDHT濃度が低下し胎児(特に男児)の生殖器の成長を阻害する恐れが指摘されているため、そういった女性の使用は禁忌。
また、過去に女性の薄毛への適応を調べた臨床試験において有効性が認められたなかったことから、女性がフィナステリドを使うことも推奨されていません。
ただ、女性の薄毛への有効性を示したデータも複数存在するんですけどね。閉経後や確実な避妊を行うことを条件にした試験であるため、安全性を考慮し「女性はフィナステリドを使用するべきでない」という結論に達している模様。
もしフィナステリドが気になっている女性がいるのであれば、下記の記事も参考にしてみてください。
授乳中の女性
フィナステリドを授乳中の女性が服用すると、ごく微量ながら母乳に移行することが確認されています。
母乳を介して乳児がフィナステリドを摂取することで生殖器の成長などに悪影響を及ぼす可能性があるため、授乳中の女性がフィナステリドを使用することは禁じられています。
未成年
世界中で多くの臨床試験が行われているフィナステリドですが、18歳未満を対象にしたものは行われておらず、有効性や安全性が確認されていません。
そもそもAGAは思春期以降に発症するものなので、未成年の服用は控えるべき。
…ごく稀に10代にして薄毛の兆候があるエリートハゲもいるのも確かなんですけどね…最低でも18歳になってから使用するようにしましょう。
フィナステリドは1日何mgまで飲んでいい?
さて、フィナステリドを使用するうえで最も気になるのが「1日何mgまで使用していいのか?」という点ではないでしょうか。
1mgで効果が出れば問題ありませんが、現実問題としてこの量では満足いく結果が得られない人が多いのも事実。ミノキシジルと併用して、それでも効果が出なければフィナステリドの増量を考えても不思議ではありません。
AGA治療薬としてのフィナステリドの1日の限度量は前述のように1日1mgです。
本来であればこれを厳守するべきなのですが、より高い効果を求めこれを超える量を服用する人が存在するのは間違いなく、また一部AGAクリニックなどでは1mgを超える量を処方することもあります。
そもそも、前立腺肥大症の治療薬としての1日の限度量は5mg。フィナステリドを5mg含有するプロスカーやフィンカーがそれにあたりますね。
アメリカの臨床試験では最高で1日80mgを3ヶ月間投与しても副作用は見られなかったという結果があることからも、1日2、3mgであれば問題ないという考え方も理解できます。
実際、前立腺肥大症の治療薬と同じ5mgを使用した臨床試験は複数行われており、1mgと比べ副作用発現率に大きな差がないことが確認されているものも存在します。
フィナステリドを増やしても効果はさほど変わらない
ただし、フィナステリドの量を闇雲に増やしたからといって必ずしも効果が比例するわけではないことも事実。それは0.2mgと1mgの試験結果からも明らかです。
出典:MSD
0.2mgを使用した131人中、薄毛が改善したのは54.2%にあたる71人、1mgを使用した132人中改善したのは58.3%の77人。一方で副作用発現率は0.2%群で1.5%、1mg群で6.5%となっています。
つまり、0.2mgと1mg群で効果に大きな差はなかった一方、副作用は0.2mgのほうが明らかに少なかったことが示されているのです。
0.2mgの5倍にあたる1mgでも明らかな有意差が出ないことから、これを5mgに増やしたところで劇的な効果は望めないというのが医学界の認識と見ていいでしょう。
高濃度フィナステリドよりデュタステリドを
一方で、フィナステリド5mgよりデュタステリド0.5mgのほうが明らかに効果が高かったという臨床試験データが存在します。
416人の薄毛男性を対象に、無作為にフィナステリド5mg、デュタステリド0.1mg、0.5mg、2.5mg、そしてプラセボ(偽薬)を24週間にわたって使用した結果がこちら。
髪の毛の本数 | |
---|---|
プラセボ | -32.3本 |
フィナステリド5mg | +75.6本 |
デュタステリド0.1mg | +78.5本 |
デュタステリド0.5mg | +94.6本 |
デュタステリド2.5mg | +109.6本 |
フィナステリドをオーバードーズ(過剰摂取)したものより、0.5mgのデュタステリドの方が明らかに効果が高いのです。0.5mgのデュタステリドといえば、ザガーロなどAGA治療薬の標準的な含有量。
1日の限度量をオーバーしてまでフィナステリドを使うくらいなら、正常範囲内のデュタステリドの方がずっと効果的なのは間違いなさそうです。
飲み合わせが悪い薬は?
フィナステリドを使う上でもう一つ気になるのは飲み合わせ。他の薬を使用している場合、効果が弱くなったり悪影響が出たりするのは避けたいところですよね。
結論から言えばフィナステリドと飲み合わせが悪い薬は存在しません。
それは国内外で他剤との相互作用を検証した試験において影響が認められなかったことからも明らか。他の薬を飲んでいるからと言ってフィナステリドの使用を躊躇する必要はありません。
ただし、デュタステリドとの併用は避けたほうが無難。
より高い発毛効果を期待してフィナステリドとデュタステリドの併用を検討する人もいらっしゃるかもしれませんが、この2つは共に5α還元酵素阻害薬。つまり基本的な作用は一緒ということに。
どちらも性欲減退や勃起障害など性機能障害の副作用があることから、この2つを併用することでこういった有害事象が増幅される恐れがあります。
一方で効果に関してはデュタステリドの方が高いことが示されています。単純に高い発毛効果を望むのであれば、デュタステリドのみを使うべきでしょう。
ただし実績や世界的な評価はフィナステリドが圧倒。価格も安価であるため、まずはフィナステリドを使って、それでも思うような効果が得られなかった場合はデュタステリドに変更するべきでしょう。
フィナステリドには飲み合わせが悪い薬は基本的に存在しません。しかし、同じ作用であるデュタステリドとの併用だけは避けるべき。
フィナステリドの効果に限界を感じているのであれば、ミノキシジル外用薬やミノキシジルタブレットを追加し、それでもダメならデュタステリドに切り替えるようにしましょう。
フィナステリドの正しい飲み方の総評
フィナステリドの正しい使い方や用法用量について色々と見てきましたが、いかがだったでしょうか。まとめると以下のようになります。
- 使用のタイミングは朝晩、食前食後問わない
- 毎日同じ時間帯に使用する
- 女性や未成年は使用しない
- 1日1mgまで
- 過剰摂取よりデュタステリドへの切り替えが効果的
- 飲み合わせが悪い薬はない
ネット上には、チャップアップやフィンジアといった育毛剤を売るためにフィナステリドなどの発毛剤を過剰に叩く記事が蔓延していますが、医師などの専門家からいわせるとプロペシアに代表されるフィナステリド内服薬は安全な薬という位置付け。
臨床試験により効果はもちろん、副作用の内容や発現率がハッキリしているフィナステリドより、臨床試験すら行っておらず副作用の程度も分からない育毛剤の方がむしろ危険という考え方をする専門家もいるほどです。
フィナステリドは用法用量を守れば安全な薬ですし、正しい使い方をすることで高い発毛効果が期待できます。
仮にフィナステリドの効果に限界を感じたとしても、ミノキシジルとの併用やデュタステリドへの切り替えなど複数の選択肢があるのも強み。ハゲに対し抗いようがなかった昔に比べれば、良い時代になったものです。
医療機関で処方されるプロペシアの他、個人輸入を用いることで極めて安価に購入できるジェネリックも存在しますので、ご自分の状況に合わせた選択をするようにしてください。
おすすめのフィナステリド内服薬
フィナステリド内服薬といえばプロペシアが圧倒的な知名度を誇りますが、国内で処方してもらうとなると28日分で約7,000円と高価なのがネック。
それでも正規品のプロペシアにこだわるのであれば、海外向けのプロペシアを使うことでコストを削減することができます。
代表的なものはアメリカ版のプロペシア。国内プロペシアの2割引きとなる6,000円前後で購入できます。正規品であるため、当然効果や内容は日本のものと同一です。
信頼性や安全性を最重視するが、できる限り安くプロペシアを使いたいという人はアメリカ版のものを検討してみてはいかがでしょうか。
コストパフォーマンス重視ならフィナロイド
一方、価格を重視するなら海外製のジェネリックが圧倒的にお得。
海外製プロペシアジェネリックといえば、3ヶ月以上使える100錠入りが3,000円程度で買えるフィンペシアが圧倒的な知名度と人気を誇っていましたが、近年は同じくフィリピン製のフィナロイドが人気を集めています。
フィンペシアより安く、かつフィリピンの大手製薬メーカーであるLloyd社が製造販売していることから急速に普及。フィンペシアからの乗り換えも多い。
また、同社が販売するミノキシジルタブレットとのお得なセットが存在することも人気を後押ししています。
これまでの実績を重視するならフィンペシアを、コストパフォーマンスを重視するならフィナロイドを選択するといいでしょう。
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