デュタステリドはアメリカでは未承認?
日本において2015年に発毛剤として厚生労働省に承認されたザガーロ。その主成分はAGA治療薬として従来用いられてきたフィナステリドの約1.6倍の効果があるとされるデュタステリドです。
男性型脱毛症(AGA)に対し世界中で使用されるフィナステリドの1.6倍の効果があるデュタステリドは高い注目を集めていますが、一方で多くの国々では発毛剤として認可されていないという事実も。
特に発毛・育毛大国であるアメリカで非承認となっている状況はデュタステリドに対し一抹の不安を覚えざるを得ません。
アメリカではなぜデュタステリドを発毛剤として認可していないのでしょうか。
日本での承認は2015年9月
日本においてデュタステリドがAGA治療の発毛剤として認可されたのは2015年9月28日。厳密にはデュタステリドを主成分としたAGA治療薬ザガーロカプセルが承認されたと言ったほうが適切かもしれません。
その後製造を委託しているフランスの工場においてトラブルが生じ発売が延期。2016年6月13日になってやっと発売にこぎつけたという経緯があります。
ただし、これはAGA治療薬としてのデュタステリド製剤での話。デュタステリドは従来のAGA治療薬であるプロペシアの主成分フィナステリドと同様に、本来は前立腺肥大症の治療薬として登場したもの。
ゆえに前立腺肥大症の治療薬としてはザガーロに先駆けること6年、2009年に「アボルブ」として承認されているのです。
AGA治療薬であるザガーロが正式に承認される前からデュタステリドに発毛効果があることは知られていたため、一部のAGAクリニックではアボルブを処方することもあったほど。
個人輸入を用い海外の安価なデュタステリド製剤を購入する動きも多々見られました。…まあそれについてはザガーロの価格があまりにも高いため、ザガーロが販売・処方されている現在においても活発ですが…
発毛剤としての認可は日本と韓国のみ
そんなデュタステリドは臨床試験の結果からプロペシアの主成分フィナステリドに比べ約1.6倍の発毛効果があるとされ、ハゲの大きな希望になっています。
しかし一方でデュタステリドをAGA治療薬として正式に承認しているのは日本以外に目を向けると、お隣の韓国しか存在しないという現実が。
フィナステリドが世界中で発毛剤として認可されているのに対し、デュタステリドは世界中を見渡してもたったの2カ国のみなのです。つまり日本は韓国に次いで2番目にデュタステリドを認可した国ということに。
日本以外に認可している国が育毛・発毛剤大国であるアメリカであればまだしも、歴史捏造や整形大国、法律後付けなど色々と気になる点が存在する韓国となると不安を感じてしまいますよね。
そもそもなんでアメリカで承認されてないんだ?
アメリカで承認されない理由
前立腺肥大症の治療薬としてデュタステリドを開発したのはイギリスのグラクソ・ウェルカム社(現グラクソ・スミスクライン社)。
そしてそれをいち早く承認したのはグラクソ・スミスクライン社の地元であるヨーロッパではなくアメリカという事実があります。ちなみにアメリカでの承認は2001年11月、ヨーロッパは2002年7月。
日本において前立腺肥大症の治療薬としてのデュタステリド承認は2009年ですから、アメリカは約8年も前にデュタステリドを承認していたことになります。
にもかかわらずアメリカのFDA(食品医療品局)はデュタステリドをAGA治療薬としていまだに承認していない…この背景には何があるのでしょうか?複数の説が唱えられています。
莫大な費用
新たな薬を承認してもらうためには多くの資料や厳密かつ大規模な臨床試験(治験)が必要になり、その費用は莫大なものになります。
デュタステリドはすでに前立腺肥大症の治療薬として認可されているものの、AGA治療薬としての認可となると再び大きなコストが発生することに。特にアメリカでは認可にお金がかかるという話も。
またアメリカではフィナステリドとミノキシジルが発毛剤として確固たる地位を築いており、デュタステリドの販売元であるグラクソ・スミスクライン社がコストに見合わないと判断した可能性が指摘されています。
そのためグラクソ・スミスクライン社はFDAに対しデュタステリドをAGA治療薬として申請しておきながら後に辞退したという経緯も。
プロペシアの訴訟問題
一度は申請を辞退したグラクソ・スミスクライン社ですが、その後再び申請し2014年には最終段階であるフェーズ3まで進んでいるという話もあります。しかしいまだに承認されていないのが実情。
その背景にはプロペシアの開発元であるメルク社が、フィナステリドの処方に際し前立腺がんや性機能障害との関連性について説明を受けなかったとして訴訟を起こされたことが関係しているとのこと。
実際は前立腺がんとの因果関係はなく、前立腺がんの目安となるPSAという数値が50%程度に減少してしまうことがあるというだけなんですけどね。
この訴訟によりFDAによる認可が遅れているのではないかという噂も。
ポストフィナステリド症候群の存在
プロペシアの主成分であるフィナステリドには性欲減退や勃起障害といった性機能障害の副作用があることは広く知られていました。しかし2010年頃からこういった副作用が永続的に続く「ポストフィナステリド症候群」の存在が話題に。
フィナステリドの投薬を中止した後も性機能障害が続く、うつ症状が出るといった状況に陥ることがあるとされるポストフィナステリド症候群が取りざたされたことによって、フィナステリドと作用が同じデュタステリドの承認に待ったがかかっているというのです。
あるインタビューでは過去にフィナステリドを使用した男性の多くに性機能障害が続くポストフィナステリド症候群が確認されているという結果も。
とはいえこの調査の対象となる男性71名(21~46歳)はフィナステリドを平均28ヶ月間使用し、その後平均40ヶ月後にインタビューを受けています。つまりフィナステリドを使い始めてから5年半以上が経過していることに。
それだけの期間があれば加齢によって性欲落ちるんじゃない?…という疑問も。事実ポストフィナステリド症候群にはエビデンス(科学的根拠)が存在していません。一部の人間が騒いでいるだけ。
とはいえこちらも訴訟問題にまで発展しているものもあり、こういった事情からFDAが認可に二の足を踏んでいる可能性があります。
アメリカ人もAGA治療にデュタステリドを使用
こういった背景によりアメリカではデュタステリドをAGA治療薬として認可していません。しかしそれはあくまでも国(FDA)が認めていないだけの話。
アメリカにおいてもデュタステリドと薄毛に関する様々な研究や試験が行われていますし、個人レベルでは薄毛治療にデュタステリドを使用している人が多数存在するのです。
日本においてザガーロが承認される前からAGAクリニックが前立腺肥大症の治療薬であるアボルブを処方していたり、個人輸入で国内未承認薬を購入したりするようなもの。
アメリカにおいても同様のことが常態化しているのです。海外には前立腺肥大症の治療薬であるアボダートが存在し、アメリカではネットや薬局で普通に売られていますからね。
ハゲの悩みは万国共通。フィナステリドやミノキシジルに限界を感じた場合デュタステリドに手を出したくなるのは自然の流れ。
デュタステリドは優秀なAGA治療薬
アメリカにおいてデュタステリドがAGA治療薬として認可されていないのは紛れもない事実です。しかし複数の臨床試験を経て日本で承認されたため、今後他国においても承認の動きが広がるのではないかと見られています。
従来から使われているフィナステリドやミノキシジルには薄毛の進行を食い止めたり発毛させたりといった効果があるのは間違いないものの、その効き目は必ずしも万人が満足できるものではありませんでした。
特にフィナステリドは「髪の毛を生やす」というよりは「AGAの進行を抑制する」という意味合いが強く、そういった点においてより高い効果があるデュタステリドは私たちハゲに希望を持たせてくれる存在。
デュタステリドはAGA治療薬として使用されはじめてから日が浅いこと、承認している国が2ヶ国しかないことなどから実績面ではフィナステリドやミノキシジルに大きく水をあけられています。
しかし今後使用する国が増えるにしたがって実績やデータが出揃い、その地位は確固たるものになると見ていいのではないでしょうか。
そのためにも発毛剤大国であるアメリカにはとっとと承認してほしいところ。アメリカのFDAがデュタステリドを認可したとなれば世界中で一気に普及すると考えられます。
そしたら値段ももうちょっと安く…ならないか…
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