マスターピースという育毛剤まがいの商品に要注意

マスターピースに育毛効果なし

様々な育毛剤が出てきては消えるヘアケア市場。そんな中また新しい育毛剤が一つ登場しました。その名も「マスターピース」。

特許を取った成分を使い、かつ東京大学を卒業した博士が監修していることを大きな売りにしているこのマスターピース。実際の効果はいかほどのものなのか?

成分や中身について色々と調べてみると、かなり胡散臭い商品であることが分かります。そんなマスターピースの裏側を覗いてみましょう。

マスターピースの全成分

まずはマスターピースの全成分を見てみましょう。

マスターピース
成分
ダマスクバラ花水
アラビアゴム
グアーガム
環状リゾホスファチジン酸Na
カプリリルグリコール
1,2-ヘキサンジオール
アロエベラ葉エキス
キュウリ果実エキス
カンゾウ根エキス
ダイズエキス
アンマロク果実エキス
ナツメヤシ種子エキス
タマネギ根エキス
サフランエキス

特徴的なのは水やエタノールを一切使っていない点。これこそがマスターピースの売りのひとつとなっています。まあ「だから何?」と言ってしまえばそれまでですが…その意味や有効性については後述します。

その他の成分を見渡すと、市販の育毛剤としては成分は少なめ。

マスターピースは特許成分である環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)がすべてと言っても過言ではないため、他はまあどうでもいいかな。

そのNcPAもツッコミどころ満載なんですけどね。

NcPAに発毛効果は本当にあるの?

さて、ではマスターピースの核心に迫っていきましょう。もちろん環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)についてです。

実はこの成分について、別の育毛サイトにおいて2015年10月に記事を書いていました。そのためマスターピースの売りであるNcPAの文字を見て「そういえば何年か前に…」と思いだしました。

その当時は開発元である「SANSHO」が環状ホスファチジン酸(cPA)にミノキシジルの2.5倍の効果があることを確認したというニュースが流れた時期。

ちなみに環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)は環状ホスファチジン酸(cPA)を化粧品用に研究・開発したものとのこと。

そして、私たちが一番気になるのはマスターピースに配合されるNcPAにどの程度の発毛効果があるのか?という点に尽きますよね。

環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)の発毛効果は?

マスターピースの公式サイトを見てみると、環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)は髪の毛の生成期にコミットするとあります。意味が分からん。まあ化粧品で表現できる限界はこのあたりなんだろな。

これでは埒があかないので、cPAに高い発毛効果が確認されたという報道が流れた時の写真や内容を簡単に解説しておきましょう。

この成分が世間に衝撃を与えたのはやはり「ミノキシジルの2.5倍の発毛効果を確認した」という点でしょう。しかしこの表現、どこかで何度か聞いたことがありますよね。

そう、“ミノキシジルの3倍の育毛効果”というキャッチフレーズでお馴染みのキャピキシルや、“ミノキシジルの2倍の効果”という謳い文句が特徴的なリデンシルです。

強い発毛効果があるミノキシジルの2~3倍の効果…なんとも魅力的なフレーズですが、これには大きなカラクリがあります。それは「培養細胞(毛包)の実験においては」という点。

臨床試験や治験のようにヒトを対象にした試験ではなく、培養した毛包細胞などに当該成分とミノキシジルを添加し効果を確認したというもの。

こういった試験によってミノキシジルと同等以上の効果を発揮した成分は数あれど、実際に使ってみて本当に発毛効果があるものは皆無。キャピキシルやリデンシルが発毛剤として認められていないことからも明らかですよね。

でNcPAはどうか?

開発メーカーであるSANSHOが謳う「ミノキシジルの2.5倍の効果」はキャピキシルやリデンシル同様「毛乳頭細胞に添加して効果を確認した」とある。つまり人間の頭皮に塗布する状況とはかけ離れているということ。

まあいつも通りの期待が先行する成分ということになりますね。

人間に用いた試験を行うも…

「マスターピースに含まれる環状リゾホスファチジン酸Na(NcPA)もまた培養細胞の試験を誇張する成分か…」と思いきや、実は人に対する試験も行っていたりします。

その試験では薄毛男性20名を対象としており、cPA0.5%濃度の水溶液を1~6カ月間塗布したた結果発毛効果が見られたとのこと。ご丁寧に若干怪しい写真まで公開してくれる念の入れよう。

マスターピースのcPAの発毛効果?

胡散臭い育毛剤がよくやる手法ですね。NcPAがそうだとは言いませんが…

20名の薄毛男性を対象に試験し効果を確認したとありますが、これは信用に値しません。そもそもキャピキシルやリデンシルだって開発メーカーはこれ以上に規模で試験を行っていますからね。でもまったく効果がない現実。

その理由は、数十人規模では統計学的に信用できない点、そして明確な試験内容が明らかになっていない点が挙げられます。

例えば医療機関で処方されるAGA治療薬のザガーロやプロペシア、ミノキシジル5%を配合したリアップX5は数百人規模で臨床試験を行っています。しかも世界で同様のデータが数多くあります。

またこれら医薬品の試験内容はプラセボ(偽薬)を用いた二重盲検試験が常識…つまり使用する薬が本物なのか偽物なのか被験者はもちろん医師やスタッフも分からない状況で試験を行うということ。これにより思い込みや先入観を失くすことで客観的かつ信頼性のあるデータが得られます。

で、マスターピースに配合されるNcPAはというと…20名の薄毛男性を対象にしたとしか記載がありません。二重盲検試験でないことは明らかです。

この程度の試験において効果にエビデンス(科学的根拠)があるとのたまうサイトや人間がいるのですから、その神経を疑います。大規模かつ客観性のある臨床試験を行ってから出直してこい。

SANSHO株式会社が育毛や発毛に一切触れていない

マスターピースに配合されるNcPAに対する不安はまだあります。

2015年10月に開発メーカーであるSANSHOがcPAの発毛効果について発表したことから大きな話題になったことは前述しましたよね。しかし、今現在SANSHOの公式ホームページを見ても育毛や発毛に関することには一切触れられていないのです。

SANSHOのホームページを見ると、cPAが中核事業であることに疑いようはありません。というかむしろ、これに社の命運をかけっていると言っても過言ではないでしょう。公式サイトではそれほどまでにcPAに重きが置かれているのです。

もはやcPAのサイトといってもいいくらい。

しかし、医薬品分野のcPAや化粧品分野のNcPAにそれほど力を入れているにもかかわらず、育毛やヘアケアに対する言及が一切なされていないのです。2015年の発表はなんだったのかと問いたいくらい。

医薬品分野では変形性関節症や癌に対する有効性を謳い、化粧品分野ではヒアルロン酸合成促進やコラーゲンの強化など、肌のアンチエイジングに終始しています。

以前は存在していた2015年10月の育毛関連の記事が削除されている形跡もあり、SANSHO側としてはNcPAの発毛や育毛に関する話は無かったことにしたい意図も見え隠れします。

参照サイト:SANSHO公式サイト

そういった経緯を見るに、マスターピース他ヘアケア商品が過去の情報を全面に押し出し効果があるように謳っているものの、当の開発メーカー側はすでに育毛や発毛を切り捨てている…そんな構図が浮き彫りになっている印象。

まあ、育毛関連商品のなりふり構わない都合のいい情報の押し売りは今に始まったことではないですけどね。

これらの事情を勘案するに、マスターピースに使用されるNcPAに発毛効果は一切ないと言わざるを得ないのではないでしょうか。

NcPAの含有量に大きな不安も

NcPAを開発したSANSHOの冷め具合はさておき、2015年10月の記事ではcPA0.5%の濃度で発毛効果を確認したとあります。これは裏を返せば「0.5%以上の濃度が好ましい」とも読み取れますよね。

しかし、マスターピースには濃度に関する言及は一切ありません。

少なくとも2015年10月時点ではSANSHOは0.5%以上を推奨しているわけですから、マスターピースがそれにならい0.5%以上の濃度でNcPAを配合しているのであれば、それを前面に押し出し訴求することでしょう。

「試験で効果が確認された濃度以上を配合」となれば宣伝効果も期待できますからね。しかしマスターピースの硬式サイトを見るにそういった記述は一切ありません。

それはつまりNcPAを配合してはいるが、SANSHOが試験によって発毛効果を確認した0.5%には満たないことを意味しています。もし仮に0.5%以上の濃度であれば、宣伝という意味でそれを強調しない理由はありませんからね。

実際キャピキシルやリデンシルを配合している育毛剤や養毛剤のほとんどは5%や3%など濃度を明記しています。試験によって効果が確認された濃度を配合することで訴求してるわけです。

一方でマスターピースは…

つまり、マスターピースはSANSHOが開発した化粧品成分NcPAを配合してはいるものの、過去の実験で効果が確認されたとされる0.5%に満たないと考えられます。1滴でも配合されていれば“入っている”と謳うことができる言葉のマジック。

特定の目玉成分をプッシュしているにもかかわらずその含有量には触れない…ダメな育毛剤の典型ですね。

水を1滴も使わないことに意味はない

マスターピースの売りのひとつに“水を使っていない”という点が挙げられます。

一般的な外用発毛剤や育毛剤の場合、内容の80~90%は水とエタノール。しかしマスターピースは水の代わりにローズウォーターを使用することでヘアケア成分100%を実現しているというのです。

だから何?

ローズウォーターには抗炎症作用や抗菌作用があるとされます。しかし男性型脱毛症(AGA)にとってそんなものは無意味です。

そもそも、外用剤として唯一発毛効果が認められているミノキシジル外用薬も大半は水ですし、塗り薬などの医薬品もベースとなる基剤は浸透のしやすさに考慮することはあっても、それ自体に効果はありません。

水の代わりにローズウォーター?そんな無駄なことするくらいならもっと安くしろよという話である。まあ安かろうが高かろうがマスターピースで髪が生えることはないが。

マスターピースはただの化粧品

マスターピースはハゲを気にしている人向けの商品であるため“育毛剤”というカテゴリに属していそうな印象を受けますよね。しかしこれは大きな間違い。マスターピースは医薬部外品の育毛剤ではなく化粧品の養毛剤なのです。

医薬部外品の育毛剤はその名の通り育毛…つまり今ある髪の毛の成長を促進させる効果があると認められたもの。特定の成分を規定量以上配合し、かつ認可を受けることで医薬部外品の育毛剤を名乗ることができます。

一方の養毛剤はただの化粧品。髪の毛を生やす効果はおろか髪の毛の成長を助ける効果すら認められていないもの。NcPAは医薬部外品に使用されることを許可されていないため、NcPAを配合する以上化粧品の域を出ないのです。

つまりNcPAとはその程度の成分ということ。特許を取っていると聞くと「すごい成分」という印象を抱きますが、特許とは革新的なアイデアなどに認められるものであって、効果の有無とはまったく関係ないのです。

大元である環状ホスファチジン酸(cPA)にしても現在は医薬品の登録を目指している成分。しかもその用途は癌や変形性関節症に対してのもので、薄毛とは全く関係がありません。化粧品分野に使用されるNcPAも同様。

それでもマスターピースを信じることができますか?

マスターピースについてのまとめ

ミノキシジルの2.5倍の効果があるとされるNcPAを引っさげて登場したマスターピース。しかしその成果は過去のものであり、開発メーカーであるSANSHOはすでにその発表を無かったことにしようとしている感すらある。

それでもマスターピースがNcPAを引っ張り出してきたのは、新しいインパクトを持つ育毛剤(もどき)で注目を集めたいという意図があったからなのでしょう。結局はその程度の化粧品に過ぎないのです。

そもそもこの化粧品、お得なはずの定期コースでも9,960円もするんですよ。世界的に発毛効果が認められているミノキシジルを16%も配合した最強外用発毛剤フォリックスFR16ですら約半額の5,820円で買えるというのに。

効果になんの科学的根拠もない成分を使っただけの化粧品が約1万円…ハゲを馬鹿にするのもいい加減にしろと声を大にして言いたい。それでもこれを買って使う人が後を絶たないのだからメーカーとしては笑いが止まらんな。

最後にもう一度書いておきます。マスターピースには髪の毛を生やす発毛効果はおろか、髪の毛の成長を助ける育毛効果すらありません。だってNcPAは主に顔に塗る化粧品に使われる程度の成分なのですから。

薄毛を改善させたいならこんなものを使ってお金と時間を無駄にしている余裕などありません。ハゲ治療は時間との勝負でもあるのですから。

得体のしれない育毛剤もどきに惑わされないように。

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