効果も価格も残念なイクオスブラックシャンプー
「IQOS(イクオス)」といえばネット販売を中心に展開する男性用育毛剤と人気になっているものの、さらなるブランド拡大を目論み投入したであろうシャンプーは、育毛剤とは異なりかなり残念は仕様・規格となっています。
そもそもスカルプDなどに代表される育毛系シャンプー(スカルプシャンプー)は総じて高価である一方、男性型脱毛症(AGA)や薄毛に対する改善効果は一切期待できない代物。価格と効果が見合わない典型商品といえます。
そんな高価な育毛シャンプーの中でも特にコストパフォーマンスが悪いのが、ここで紹介する「イクオスブラックシャンプー」。5,000円を超える価格と驚くほど少ない内容量は、もはや正気の沙汰ではない。
それがどれほど常識外れなのか、詳しく見ていきましょう。
イクオスブラックシャンプーの全成分
コストパフォーマンスに関して苦言を呈する前に、まずはイクオスブラックシャンプーが内容・成分的にどの程度の商品か見ておく必要があるでしょう。商品概要が分からないと価格が適正なのかどうかの判断ができませんからね。
とりあえず全成分を見てみましょう。
イクオスブラックシャンプー | トリートメント | |
---|---|---|
成分 | 水 コカミドプロピルベタイン ココイルメチルタウリンNa コカミドDEA BG ビワ葉エキス オウゴン根エキス ヒオウギエキス アカヤジオウ根エキス 加水分解酵母エキス ポリクオタニウム-51 ポリクオタニウム-10 ムラサキ根エキス ザクロ果実エキス スイゼンジノリ多糖体 スサビノリエキス イチジク樹皮エキス ウンシュウミカン果皮エキス 炭 クズ根エキス アロエベラ葉エキス クロレラエキス センブリエキス オタネニンジン根エキス カンゾウ根エキス ラベンダー油 ニオイテンジクアオイ油 オレンジ果皮油 エタノール クエン酸 グルコシルヘスペリジン メントール ブチカルバミン酸ヨウ化プロピニル ヒドロキシプロピルシクロデキストリン グリセリン フェノキシエタノール エチドロン酸 |
水 水添ナタネ油アルコール グリセリン ペンチレングリコール ダイマージリノール酸水添ヒマシ油 ジメチルステアラミン オクチルドデカノール ラウリン酸イソアミル アルキル(C12,C14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCl 乳酸 ビワ葉エキス オウゴン根エキス ヒオウギエキス アカヤジオウ根エキス 加水分解酵母エキス ポリクオタニウム-51 ムラサキ根エキス ザクロ果実エキス スイゼンジノリ多糖体 スサビノリエキス イチジク樹皮エキス ウンシュウミカン果皮エキス 炭 クズ根エキス アロエベラ葉エキス クロレラエキス センブリエキス オタネニンジン根エキス カンゾウ根エキス ラベンダー油 ニオイテンジクアオイ油 オレンジ果皮油 メントール グルコシルヘスペリジン BG フェノキシエタノール エタノール |
まず、一番重要かつ気になっている人が多いであろうイクオスブラックシャンプーの成分から見てみます。
■洗浄成分(界面活性剤)
育毛系シャンプーや美容室などで使用・販売される高価なシャンプーは、市販の安価な高級アルコール系(石油系)洗浄成分とは違い、アミノ酸系洗浄成分を使うのがスタンダードとなっています。
これは「高級アルコール系洗浄成分は洗浄力が強すぎて頭皮に悪い」「アミノ酸系はマイルドで頭皮に良い」という通説により、「高価なシャンプーはアミノ酸系でなければならない」という消費者側の意識も背景にあるのでしょう。
これはシャンプーメーカー側の印象操作という側面も。「アミノ酸系洗浄成分は優れている」というイメージを定着させることで「高価なシャンプーはアミノ酸系」という不文律ができあがってしまったといっても過言ではない。
で、イクオスブラックシャンプーの洗浄成分は…
- コカミドプロピルベタイン
- ココイルメチルタウリンNa
- コカミドDEA
コカミドプロピルベタインはヤシ油由来のベタイン系洗浄成分で、アミノ酸系とも高級アルコール系とも相性が良く非常に多くのシャンプーで使用されています。
コカミドDEAは泡立ちを良くするなど補助的な意味合いが強いヤシ油由来のマイルドな洗浄成分。一部では発がん性が取りざたされていますが、補助成分としてシャンプーに配合される程度の量で問題になることはありません。
イクオスブラックシャンプーにおいてメインとなるアミノ酸系洗浄成分は、上記2つと同様にヤシ由来の「ココイルメチルタウリンNa」。頭皮に対する刺激が少なく、泡切れが良いのが特徴。
気になるのは、多くの育毛シャンプーが複数のアミノ酸系洗浄成分を組み合わせているのに対し、イクオスブラックシャンプーはこの1種のみという点。
1種が悪いというわけでは決してないが、「低コストに仕上げている」という印象を抱かせてしまうのも確か。
イクオスブラックシャンプーは低刺激であることに重きを置いているようなので、デリケートな頭皮の持ち主や、頭皮への刺激性を気にする人にとっては安心できるシャンプーと言えるのかもしれません。
■シャンプーのその他成分
洗浄成分以外に目を向けると、オウゴンエキスやヒオウギエキス、センブリエキス、オタネニンジン根エキス、カンゾウ根エキスなど、様々な育毛剤においてよく目にする成分が散見されます。
ただし、「育毛剤に配合されている成分が多いから薄毛改善に効果を発揮しそう」と考えるのはあまりにも早計。
そもそも医薬部外品の育毛剤自体に薄毛を改善させる発毛効果は一切期待できないのですから、シャンプーに育毛剤成分が入っていたからといって髪の毛が生えたり薄毛が改善したりすることは100%ないと断言しておきます。
頭皮に塗る育毛剤でも髪が生えないのですから、数分で洗い流すシャンプーの効果は…言うまでもないですよね。
そもそもシャンプーは育毛・発毛が目的のものではないしな。
トリートメントに効果はあるのか?
イクオスのトリートメントは、髪の毛の保護のみを対象とした一般的な商品とは違い、髪の毛+頭皮を対象にしているのが特徴。シャンプー後に髪と頭皮になじませ、頭皮マッサージ行いながら数分放置し洗い流すとある。
数分間おくというのはトリートメントの成分を髪や頭皮に浸透させるという目的らしく、その成分を見てみるとイクオスブラックシャンプー同様育毛剤に使用されているものが複数確認できます。
当然ながら発毛効果は一切ない。数分間放置して成分を角質層に浸透させても、薄毛を改善させる効果は一切期待できません。
頭皮環境を改善する目的とされているが、薄毛の人の頭皮環境に問題があることは稀。なぜなら薄毛は「ジヒドロテストステロン(DHT)」という男性ホルモンによって引き起こされるから。
中には頭皮に炎症を起こしてそれが抜け毛に繋がっている場合もあるが、そういった場合はケトコナゾールなど医薬品にも使われる医薬品成分が入ったシャンプーを使うべき。育毛剤に使われる程度の成分では荷が重いのです。
髪の生えない育毛剤と同じ成分をトリートメントという形で多少浸透させたからといって髪が生えることは当然ないし、頭皮環境改善効果という面においてもその効果は限定的というのが実情。
そもそも薄毛や短髪の人がリンスやトリートメントを使うメリットはない。むしろデメリットも散見されるため、髪を生やす効果はもちろん育毛効果すら期待できないトリートメントなど必要ないと断言できる。
薄毛の悩みを解決すると豪語
さて、色々とツッコミどころが満載のイクオスブラックシャンプーですが、公式サイトにはこんな興味深い文字があります。
出典:イクオス公式サイト
あらあら、化粧品にカテゴライズされている平凡なシャンプーが「薄毛を解決致します」って書いてしまっているよ…薬機法(薬事法)に引っかからないのか?…という疑問がふつふつと。
しかしこれ、2016年の発売当時のもので、現在「薄毛」は削除されています。
出典:イクオス公式サイト
メーカー側もさすがにまずいと思ったのでしょう。化粧品のシャンプーで薄毛が解決すれば誰も苦労はしませんからね。
ホームページをよくよく見てみると、「ノンシリコンによって髪の毛をふっくら立ち上げる」とある。
確かにノンシリコンだと髪の毛をサラサラにする効果はありません。良く言えば「ふわっと」、悪く言えば「キシキシゴワゴワ」になりますので、シリコン入りのシャンプーに比べればボリュームは出ます。
ただ、当然ならがこれは薄毛の根本的な解決にはなっておらず、「薄毛を解決する」という表現はあまりにも悪質。
イクオスブラックシャンプーは発毛剤であるプロペシア(フィナステリド)やミノキシジルといった医薬品どころか、育毛剤のような医薬部外品ですらないため、「薄毛を解決」という文言を額面通りに受け取れば薬機法違反。
まあ、現在この文言は削除されているので良しとしましょう。
ノンシリコンであればシリコン入りに比べ髪の毛に「引っかかり」が発生するため、確かに髪の毛は立ち上がりやすい。しかしそれはイクオスブラックシャンプーのみならず、ノンシリコンシャンプー全般に言えること。
ノンシリコンによる髪の毛の立ち上がりを目的とするなら、極めて高価なイクオスブラックシャンプーをわざわざ使用する理由は見当たらない。
イクオスブラックシャンプーの価格が高すぎる
イクオスブラックシャンプーはいたって普通のアミノ酸系シャンプーであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
それに大しては文句を言うつもりはありません。世に溢れる凡百なシャンプーのひとつと認識すればいいわけですから。しかしそれはあくまでも適正価格であればの話ですけどね。
とりあえずイクオスブラックシャンプー及びトリートメントの価格を見てください。
商品名 | 内容量 | 価格(税込) |
---|---|---|
シャンプー単品 | 250ml | 5,148円 |
トリートメント単品(定価) | 250ml | 5,148円 |
シャンプー定期 | 250ml | 3,938円 |
シャンプー&トリートメント単品 | 250ml+250ml | 8,778円 |
シャンプー&トリートメント定期 | 250ml+250ml | 6,028円 |
高い…信じられないほど高い…
単品価格5,148円というのも信じられないが、定価はさらに驚きの8,140円らしい。でも単品購入でも定価から36%引きの5,148円で買えるという意味不明さ。
チャップアップやイクオスは定価を思いきり盛りつつ、表面的には割引価格で提供するという体でお得に見せる販売法を行っており、シャンプーにもこの手法が踏襲されています。消費者を馬鹿にしているとしか思えない。
しかもシャンプー、トリートメント共に内容量は250ml。
薄毛に対する効果は一切ないものの、医薬部外品の薬用シャンプーというカテゴリに属するスカルプDですら350mlで定期3,377円と、イクオスブラックシャンプーより明らかに安いし量も多い。
スカルプD以上に高価な育毛シャンプーとして知られるプレミアムブラックシャンプーですら、内容量はイクオスブラックシャンプーの1.6倍となる400mlで単品5,280円、定期4,752円。しかもリンス・コンディショナー不要となっている。
成分は凡庸、多くの人間が必要としないトリートメントを抱き合わせ、各々の内容量は250mlとかなり少ないのにもかかわらず価格は定期で3,938円、単品なら5,820円。発毛効果はおろか育毛効果すら期待できないのに、ずいぶんと強気な価格設定で。
あえて価格を釣り上げてプレミアム感を演出し、「価格が高い商品ほど良いもの」という価値観をお持ちの層に訴えかける作戦か。どこまで消費者を馬鹿すれば気が済むのだろう?
お得感なきイクオスブラックシャンプー
イクオスブラックシャンプーを調べている中で当サイトにたどり着いたという人は、このシャンプーに薄毛の改善や予防を期待して情報を集めている人である思われます。
しかし、もし薄毛の改善や予防を目的にイクオスブラックシャンプーを使ってみようと考えているのであれば、その考えは改めてください。イクオスブラックシャンプーは発毛効果がないにもかかわらず価格が高すぎるコスパが悪い商品ですから。
そもそも、育毛系シャンプー(スカルプシャンプー)にAGAや薄毛を改善させるだけの効果があるはずない。
ミノキシジル配合のフォリックスFR-S1やケトコナゾール配合のケトコロストシャンプーですら発毛効果はほとんど望めないのに、平凡な化粧品成分しか配合されていないイクオスブラックシャンプーに何を期待するというのでしょう?
しかも内容量250mlで4,000~5,000円。完全に無駄遣いです。
「気休めでも金に糸目は付けない」「どうしてもイクオスブラックシャンプーを使ってみたい」というのであれば止めはしませんが、薄毛を治したい、髪の毛を生やしたいというのであればこれほど無駄なものはない。
頭皮に重度の炎症があるなどの問題を抱えていて抜け毛が増えているなら素直に皮膚科へ、そうでない男性型脱毛症(AGA)であればフィナステリドやミノキシジルといった発毛剤しか効果がありません。
育毛業界に精通し自身もハゲと戦っている私個人の感覚としては、薄毛に悩む男性の足元を見てコストパフォーマンスの悪い商品を売ろうとするイクオスブラックシャンプーの姿勢には憤りしか感じません。
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