アデノゲンEXに発毛効果ない根拠を暴露
大手化粧品メーカーである資生堂が販売する育毛剤アデノゲン。アデノシンという有効成分を使用し高い発毛促進効果を発揮するとしています。しかし残念ながら髪の毛を生やす発毛効果はほとんどありません。
資生堂は東証1部上場の国内最大手化粧品メーカーで、これを知らない人はいないでしょう。それだけに同社が販売するアデノゲンに薄毛改善の期待を寄せる人は多いのではないでしょうか?
しかし成分的に発毛する根拠に乏しく、それは日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインでもハッキリと明記されています。※2017年に刷新されたガイドラインでアデノシンは一定の発毛効果が認められました。(詳細は後述 )
決して悪い商品ではないのですが、男性の薄毛のほとんどを占める男性型脱毛症(AGA)には目立った効果はない…そのへんの理由をデータなどを用いて紹介していきたいと思います。
- アデノゲンEXとは?
- アデノゲンEXの全成分
- アデノシンに発毛効果なし
- 男性型脱毛症診療ガイドラインの評価
- 2017年版のガイドラインでは評価上昇
- アデノシンの含有量が分からない
- アデノゲンEXの価格が高い
- アデノゲンEXはおすすめしない
アデノゲンEXとは?
資生堂が販売する育毛剤は複数存在し、中でも人気があるのがアデノシンという有効成分を使用したアデノバイタルとアデノゲン。
アデノバイタルはAmazonなどでも購入できるものの基本はサロン専用の女性向け育毛剤。一方のアデノゲンのターゲットは男性向けであり、その中でも旗艦モデルとなるのがここで紹介するアデノゲンEXになります。
大手化粧品メーカーが販売するフラグシップモデルの育毛剤…それだけ見るとすごい効果がありそうに感じますが…
アデノゲンEXの全成分
発毛効果がないことを詳しく紹介する前にとりあえずアデノゲンEXの全成分を見てみます。
アデノゲンEX | |
---|---|
成分 | アデノシン β-グリチルレチン酸 パントテニールエチルエーテル l-メントール クジン抽出液 酢酸DL-α-トコフェロール ニンジンエキス エタノール 精製水 ジプロピレングリコール ソルビット液 イソステアリルアルコール ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1 3-ブチレングリコール デシルテトラデシルジメチルアミンオキシド液 ラウリル硫酸ナトリウム DL-リンゴ酸 サンショウエキス ビニルピロリドン・N N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液 ホップエキス クアチャララーテ抽出液 アマチャエキス クマノギクエキス |
インターネットを中心に販売する育毛剤に比べると成分は少な目になりますが、「成分量=効果」では決してないためそこは問題になりません。
アデノゲンEXには6つの有効成分が配合されていますが、目玉はあくまでもアデノシンであり、他の成分はそれを補助するという位置づけになるでしょうか。
アデノシンに関しては下で詳しく紹介するとして、それ以外の5つの有効成分についてサラッと見ていきいます。
パナックスジンセンエキス
聞き慣れない横文字だが、いわゆるニンジンエキス。
オタネニンジンから抽出されたエキスは多くの育毛剤で使用されている成分で、主な働きは血行促進作用など。
言うまでもないが血行を多少促進したところで髪の毛が生えることはない。
β-グリチルリチン酸
これもうんざりするほど目にする有効成分の1つで、ツッコミどころ満載のチャップアップやイクオスの有効成分としても有名。
育毛剤のみならず化粧品などにも広く使用されている抗炎症作用のある成分だが、脂漏性皮膚炎など頭皮の炎症によってハゲている人はごく稀な上にグリチルリチン酸では薄毛になるほどの脂漏性皮膚炎を治療することは不可能。
もちろんAGAに対しては何の意味も成さない。
ソフォラ抽出エキス
クララというマメ科の植物の根である苦参(クジン)から抽出されるエキスで、あまり聞き慣れない成分。
抗炎症作用や血行促進作用があるため発毛促進効果が期待できるとされるが、当然ながら髪の毛が生えるわけではない。
l-メントール
スッとして血行促進する。一応有効成分のくくりだが、使用感を良くするために配合されている感も。
パントテニールエチルエーテル
パントテニールエチルエーテルはビタミンB群の一種で、抗炎症作用や細胞分裂を促す効果があるとされます。育毛剤ではまあまあ見る成分。
ただししょせんはビタミンB。塗って髪が生えるなら苦労はしない。
アデノシンに発毛効果なし?
アデノゲンEXの成分について簡単に触れてきましたが、まともな発毛効果がない多くの育毛剤に配合されるこれら凡庸かつ汎用成分などおまけみたいなもの。アデノゲンEXのキモはあくまでもアデノシンです。
このアデノシンは毛根部分包む毛包に作用し発毛促進効果のある「ヒト繊維芽細胞成長因子7(FGF-7)」を産出、これが毛母細胞に働きかけヘアサイクルを正常化することで効果を発揮するとされています。
日本の育毛剤では資生堂が販売するアデノゲンやアデノバイタルにしか配合されていないことから独自成分的な印象があり、それだけに効果に期待したいところですが、ハッキリ言って発毛効果なし…と言いたいところですが、新たに策定された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは一定の効果を認める結果に。
だからといってアデノゲンに明確な発毛効果があるとは言い切れません。その根拠を2つ見てみましょう。
男性型脱毛症診療ガイドラインの評価
日本皮膚科学会では複数の有効成分についてAGAへの効果を評価していて、アデノシンもその中に含まれています。
まず2010年版のものから見てみると…
プロペシアの主成分フィナステリドやリアップなどに含まれるミノキシジルがA評価なのに対し、アデノシンはC1…「行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」という評価を下されています。
もう少し詳しく見てみると、この評価の根拠として一編の論文が使われており、その中では育毛剤の有効成分として昔から使われるニコチン酸アミドとの比較が行われています。
結果は良好。
しかしこのデータは髪の毛の太さを評価したものであり、ニコチン酸アミドに対しアデノシンは平均して毛髪径40μm未満の軟毛が数%減少し、60μm以上の髪の毛が10%程度増えたという結果が出ている。
つまり、「今ある髪の毛に関しては多少太くなる効果や抜け毛予防効果が見込めますよ」という性質のもの。そしてこの論文では「毛髪本数はほとんど変化しなかった」と明記されています。
また、アデノシンに関する論文は男女に対し1編ずつしか存在しないことも根拠のなさに拍車をかけています。しかもこれは資生堂と徳島大学皮膚科の共同研究であるため客観性に若干の疑問符も。
今ある髪の毛の成長を促進させる育毛効果については一定の期待は持てるものの、私たちハゲが求める「髪の毛を増やしたい」という希望には応えられないことに。
AGA治療の理想は髪の毛が抜け落ち薄毛になってしまった場所から再び発毛させることであり、プロペシアやミノキシジルはそれを可能にする発毛成分。対してアデノシンにはそういった効果はないただの育毛成分という結論なのです。
2017年版のガイドラインでは評価上昇
2010年版の男性型脱毛症診療ガイドラインを基に「発毛効果がない」と書いてきましたが、2017年12月に策定された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」ではその評価が上昇しました。
女性に対しての評価はこれまでどおりC1であるものの、男性に対しての評価はBに上昇。「行うよう勧める」というものに。
2010年版が策定された時には男女一編ずつしか存在しなかった臨床データが、2017年には男性に対して有効性を示したものが3件に増えたため、「発毛効果に関しては男性に対する有効性を示す十分な根拠がある」という結論に至っています。
それでも世界的に豊富なデータを持つミノキシジルに比べればアデノシンのデータ不足は明らかなのでB評価に留まったと推測されます。
ちなみにこの3件の臨床データで被験者となった男性は101名、38名、94名の計233名。すべて合計してもプロペシアやリアップといった発毛剤の臨床試験に参加する人数に届かないことを考えると、B評価は甘すぎる気もします。
アデノシンの含有量が分からない
個人的にアデノゲンの一番の問題点がこれ。
前述の論文に使われた3件の研究においてアデノシンの濃度は0.75%となっており、この濃度でミノキシジル5%に匹敵する効果が出たという論文も含まれています。
しかしアデノゲンEXにアデノシン含有量の記載はない。つまりどの程度の効果があるか評価のしようがないのです。
高い発毛効果があるミノキシジルだって含有量が0.1%では話にならないように、濃度がどれほどなのかは極めて重要な要素。
ミノキシジル5%と同じレベルの効果があるとされるアデノシン濃度である0.75%が仮に配合されているとするなら、常識的に考えて企業はそれを全面に押し出すのではないでしょうか。
アデノゲンの最大の売りはアデノシンであり、それが十分な濃度配合されていれば含有量を明記しない理由はありません。しかし現実は未公表。ハッキリ言って「よほど低濃度なんだろうな」という印象しか受けない。
これを明らかにしない以上、私はアデノゲンEXを評価しない。
ただ、2017年版脱毛症診療ガイドラインでアデノシンの評価が上昇したため、含有量を記載もしくはアデノシン増量という動きをしてくるかもしれませんね。
アデノゲンEXの価格が高い
効果を実感し、かつそれを維持させるために長期間使用する必要がある育毛剤は価格も重要な要素になってきますよね。
アデノゲンEXは3つのパッケージがあり、その価格は以下のようになっています。
商品名 | 使用期間 | 価格 |
---|---|---|
50ml | 10日 | 2,376円 |
150ml | 30日 | 7,020円 |
300ml | 60日 | 10,800円 |
安くはない。
150mlがおよそ1ヶ月分とのことで、その価格は7,020円。リアップX5プラスより若干安い価格設定だが、第一類医薬品として発毛効果が認められているリアップとの内容や性質を鑑みれば高いと言わざるを得ません。
それでもネット上で異常なほど絶賛されているゴミのような育毛剤に比べれば遥かにマシだが。50mlや150mlで使用感を確認し、気に入ったなら長期使用を視野に300mlを買ってねというスタンスか。
300mlなら1ヶ月あたり5,400円…うーん微妙。
アデノゲンEXはおすすめしない
結論から言って薄毛を改善したい、髪の毛を増やしたいという人にアデノゲンEXはおすすめできません。
ただし、主成分であるアデノシンは男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて一定の抜け毛予防効果や育毛・発毛効果を確認していますので、それらの効果で十分という人にとっては使う価値があるでしょう。
基本的にアデノゲンはアフィリエイトを行っていないため、金を目的とした多くの育毛サイトで「アデノゲンEXよりチャップアップ」という紹介がなされていると思います。
しかし、チャップアップやイクオス、ブブカといった育毛剤に配合される成分にアデノシンを超える評価を得ているものはなく…というか、そもそも発毛効果に対し一切のエビデンス(科学的根拠)がない成分のみで構成されており、アデノゲンより効くと判断する方がおかしい。
アデノゲンEXはAGAに対しての発毛効果はほとんど期待できないものの、育毛効果に関してはエビデンスもありインターネットを中心に販売し異常な広告出稿や提灯記事が溢れる育毛剤に比べれば遥かにマシです。
薄毛を治したい人に対し私がアデノゲンEXをおすすめすることはないが、チャップアップとかを使うくらいならこっちを使っとけと言いたい。
ちなみにアメリカ製のフォリックスFR16ならミノキシジル16%にフィナステリドとアデノシンも配合されて5,820円。
アデノシンを主成分とするアデノゲンEXが含有量を明記していないため、アデノシンをおまけ成分的な位置付けにしているフォリックスFR16と比べても優位性は証明できない。
日本製のアデノシン配合育毛剤に強いこだわりがない限り、アデノゲンEXを使用する理由は見当たらないのも確かです。アデノシンを0.75%以上配合してくれればまた見方も変わるんですけどね。
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