カロヤン 希少な医薬品も発毛効果なし
育毛剤である「カロヤン」は1973年から販売されている歴史ある発毛促進剤で、医療現場で用いられる塩化カルプロニウムを配合していることから、リアップ同様発売時から一貫して「医薬品」となっています。
日本の育毛剤のほとんどは「医薬部外品」ということもあり、カロヤンシリーズのような医薬品の育毛剤は非常に珍しい。それだけにリアップシリーズに匹敵する発毛効果を期待してしまいますよね。
しかもカロヤンシリーズの主成分である「塩化カルプロニウム」は脱毛症の治療薬として医療機関でも処方されていますから、同じくAGA治療薬として処方されるプロペシアやザガーロのような効き目があっても不思議ではありません。
しかし「カロヤンで薄毛が治った」「カロヤンで毛が生えた!」という声はとんと聞こえてこない。歴史があり医薬品でもあり、そして知名度もそれなりに高いはずのカロヤン。なぜ発毛の主役に躍り出ることができないのでしょうか?
カロヤンシリーズとは?
1973年に発売されたカロヤンは現在「プログレ」「アポジカ」「ガッシュ」など様々な商品展開していますが、一貫しているのは塩化カルプロニウムを配合しているという点です。(シャンプー以外)
カロヤンがこれだけこだわる塩化カルプロニウム(カルプロニウム塩化物)はどういったものなのでしょうか?
■塩化カルプロニウムとは
塩化カルプロニウムは内服すると胃の働きを活発にする効果があるため慢性胃炎などの治療薬として用いられ、外用すると局所的な血管拡張効果があるため脱毛症の治療薬として用いられてきた歴史があります。
医療機関においては、脱毛症の治療薬として塩化カルプロニウムを5%配合した「フロジン液」が処方されることも。
世界的に発毛効果が認められている「ミノキシジル」も本来は血管を広げて血圧を下げる薬であるため、塩化カルプロニウムにも同様の作用が期待されています。
世界中で本来血管拡張薬であるミノキシジルが発毛剤として使用されていますが、カロヤンは主に医療現場で使用される塩化カルプロニウムを配合していることを売りにしている医薬品の育毛剤ということになります。
カロヤンシリーズが「医薬部外品」ではなく「医薬品」の育毛剤である理由は、カルプロニウム塩化物を配合しているからに他なりません。
カロヤンシリーズの違いとは?
現在カロヤンシリーズの主力として販売されているブランドは「カロヤン プログレ EX」「カロヤンガッシュ」「カロヤンアポジカ∑」の3種。なお、プログレには頭皮の状態に合わせ「OILY(オイリー)」「DRY(ドライ)」が存在。
主な相違点はカルプロニウム塩化物の濃度と、若干の成分構成、そして内容量、価格。それぞれの具体的な成分や規格を見て見ましょう。それぞれの成分は100ml当たりの配合量となります。
商品名 | プログレ EX O | プログレ EX D | ガッシュ | アポジカ∑ |
---|---|---|---|---|
カルプロニウム塩化物 | 2.18g | 2.18g | 2.18g | 1.09g |
チクセツニンジンチンキ | 3ml | 3ml | 3ml | 3ml |
ジフェンヒドラミン塩酸塩 | ― | 0.1g | ― | ― |
ピリドキシン塩酸塩 | 0.03g | ― | ― | ― |
カシュウチンキ | 3ml | ― | 3ml | 3ml |
ヒノキチオール | 0.05g | 0.05g | 0.05g | 0.05g |
パントテニールエチルエーテル | 1g | 1g | 1g | 1g |
l-メントール | 0.3g | 0.3g | 0.3g | 0.3g |
内容量 | 120ml | 120ml | 240ml | 200ml |
希望小売価格(税込) | 4,400円 | 4,400円 | 7,334円 | 7,150円 |
アポジカ∑以外は100mlあたりカルプロニウム塩化物を2.18g配合しており、“より効果が望める育毛剤”という位置付けなのでしょう。
しかしそれ以外に成分的な大きな違いはない。あえて挙げるならプログレ EX OILYにはビタミンB6を補うピリドキシン塩酸塩が、プログレ EX DRYにはアレルギー症状を抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩が配合されている程度。
一方で内容量的にはプログレが120ml、ガッシュが240mlと2倍であるにもかかわらず、価格面では約1.67倍と事実上の「お徳用」の様相。
ガッシュは成分的にプログレのベースであり、かつ成分的な違いも気休め程度なので、カロヤンを使ってみたい人はカロヤンガッシュを買っておけば間違いない。
カルプロニウム塩化物で髪の毛は生えるの?
カロヤンシリーズは一貫してカルプロニウム塩化物(塩化カルプロニウム)を配合しているのが最大にして唯一の特徴。では実際にカルプロニウム塩化物で髪は生えるのでしょうか?
塩化カルプロニウムはミノキシジル同様確かに血管拡張作用があり、病院では脱毛症の治療薬としてフロジン液が処方されていますが、多くの場合は脱毛症は脱毛症でも「円形脱毛症」なのです。
男性の薄毛の9割を占める「男性型脱毛症(AGA)」の治療法について見解を発表している、日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインでの評価を見ると…
このように「十分な根拠がない」とされている。
そもそも円形脱毛症とAGAはメカニズムからまったく異なるのだから当然といえば当然。薬用プランテルなどに配合されるセファランチンも円形脱毛症の治療薬ですが、ここでの評価はさらに悪い「C2 根拠がないので勧められない」。
ミノキシジル同様血管拡張作用があるため毛が生えそうな印象を受けるものの、ミノキシジルの発毛効果は血管拡張作用によるものというよりは、毛母細胞や毛乳頭細胞の分裂・増殖による「多毛症」によるもの。
しかも、医療現場で使われる脱毛症の治療薬「フロジン液」は塩化カルプロニウム濃度5%なのに対し、カロヤンは1%ないし2%と薄く、これで発毛するとは到底思えない。
リアップシリーズと同じく「医薬品」のくくりですが、あちらは薬機法(薬事法)的に「発毛」「毛が生える」を謳える発毛剤なのに対し、カロヤンはそれを謳えない育毛剤であることからも効果の程度が見て取れます。
ハッキリ言おう、塩化カルプロニウムで毛は生えない…と。
【追記】2017年版ガイドラインでも評価は低い
2010年版男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて「C1:行ってもよいが、十分な根拠がない」という評価を受けていたカルプロニウム塩化物。これは2017年版に刷新された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインにおいても変化なし。
むしろ注目したのは、一部育毛剤やフォリックスシリーズに配合されるアデノシンの評価が、フィナステリドやミノキシジルといった発毛成分に次ぐ「B:行うよう勧める」に上昇したこと。
これは医薬品であるカロヤンのメイン成分である塩化カルプロニウムより、育毛剤に使用されるアデノシンの方が効果が高いと日本皮膚科学会がお墨付きを与えたことになります。
必ずしも「医薬品=高い効果」「医薬部外品=低い効果」ではないものの、医薬品は一定の副作用が懸念されるからこその指定であり、副作用のリスクがある塩化カルプロニウム配合育毛剤より、リスクが少ないアデノシン配合育毛剤の方が効果が高いというのはある種の逆転現象ともいえる。
これは厳しい…カロヤンの存在価値がさらに薄れた印象を受けます。
■男性型脱毛症診療ガイドラインでは十分な根拠がないと断じられている
■リアップ同様医薬品というくくりだがしょせんは育毛剤
塩化カルプロニウム以外の成分は?
カロヤンにはカルプロニウム塩化物以外の成分もいくつか配合されていますので、それも併せて見ていきましょう。
■チクセツニンジンチンキ
これも塩化カルプロニウム同様第三種医薬品に指定されている漢方の成分で、カロヤンの公式HPでは「毛根の毛乳頭細胞を活性化」とあります。
しかし本来は解熱や胃腸薬を目的とし内服薬として用いられるものですし、カロヤン以外に使用している育毛剤も見当たらないことから、育毛効果は未知数と言わざるを得ない成分。
塩化カルプロニウムも内服では胃腸薬で使用されていますし、第一三共は胃腸薬を頭皮に塗るのが好きなのかもしれない。
■カシュウチンキ
皮膚の皮脂量を下げる働きがあるとされる成分。
乾燥気味の頭皮への使用を想定している「カロヤン プログレEX DRY」のみカシュウチンキが配合されていない点を鑑みても、皮脂の分泌を抑制する目的で配合されていることが分かります。
これも漢方薬の一種で、滋養強壮剤としてユンケルなどにも配合されており、どちらかというと栄養ドリンクに配合されている成分という印象が強い。
■ピリドキシン塩酸塩
いわゆるビタミンB6。
育毛サプリメントでは定番の成分で、公式HPでは「過剰な皮脂の分泌を抑える」とあるように、処方薬としてはビタミンB6欠乏による脂漏性湿疹などに適応があります。
ただしこれもチクセツニンジンチンキ同様内服薬での話。外用薬での効果は未知数と言わざるを得ません。
■ヒノキチオール
強力な殺菌作用や抗炎症作用があり、複数の育毛剤で使用が確認できる成分。ミノキシジル配合の発毛剤「リアップX5プラスネオ」にも配合されています。
その抗炎症作用などにより頭皮環境の改善に役立つとされるおのの、基本的に発毛とは何の関係もない。AGAに対する治療効果に関しても一切の科学的根拠はなく、リアップも「サポート成分」と明言する程度のレベル。
■パントテニールエチルエーテル
ピリドキシン塩酸塩同様ビタミンB群の一種で、抗炎症作用によってフケやかゆみを抑える効果があるとされます。
頭皮環境の改善には一役買う可能性がある一方、薄毛やAGAを改善する効果は期待できない。
カロヤンに副作用はあるのか?
カロヤンに配合されるカルプロニウム塩化物は医薬品の指定を受けているため副作用にも言及されています。カルプロニウム塩化物の主な副作用は以下の通り。
- 頭皮のかぶれ・かゆみ
- 局所的もしくは全身の発汗
- 刺激痛
ミノキシジルなど他の外用薬同様、塗布部分のかゆみや炎症、紅斑といった副作用が出る可能性があり、また発汗による悪寒や戦慄、吐き気、嘔吐などの可能性も示唆されています。
とはいえ、ミノキシジルですら外用薬での副作用は極めて軽微なのだから、塩化カルプロニウムを1~2%配合した程度のカロヤンシリーズに対し副作用の懸念を抱く必要はほとんどありません。
医薬品である以上、市販の育毛剤に比べれば若干副作用リスクは高くなるものの、気にするレベルではない。
カロヤンに使う価値はあるのか?
色々と否定的なことも書いてきましたが、カロヤンシリーズにもメリットは存在する。代表的なものに価格と内容量が挙げられるでしょうか。
価格に関しては旗艦モデルであるカロヤン プログレでも実売価格4,000円を切っており、男性用の育毛剤としてはかなり安価な部類に入ります。
また、内容量は120mlとミノキシジル外用薬の標準である60mlの2倍!
育毛剤としては120mlは一般的な量ですが、医薬品繋がりでリアップX5プラスネオと比べると「すごく量が多い~」と喜べることうけあい。
つまりリアップの半額で倍の量が手に入るのだから実質4倍のお得感!…と感じる人がいるとかいないとか。
ただ、リアップX5と同じく5%のミノキシジルを配合したアメリカ製のリグロースラボM5がカロヤンの半額の1,700円で買えることを考えると、4,000円も出して発毛効果がないカロヤンを使う理由を見出すのは難しい。
ただ、発毛剤の副作用を懸念し育毛剤しか選択肢にない人にとっては、医薬品のわりに価格が安いカロヤンシリーズは良心的といえるのではないでしょうか。
しかし、本気でAGAを治したい、ハゲてしまったところに再び髪を生やしたい…というのであれば、素直にフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどの発毛剤を使うべき。
カロヤンでAGAに立ち向かうことはできません。
フロジン液やアロビックス外用液も選択肢に
医薬品成分であるカルプロニウム塩化物(塩化カルプロニウム)を1~2%配合していることが売りのカロヤンシリーズ。
しかし、カルプロニウム塩化物に興味があるなら、薬局で購入できる第三類医薬品のカロヤンより、医療機関で処方される同成分5%配合の「フロジン液」や、ジェネリックである「アロビックス外用液」を使用したほうが効果的。
フロジン液やアロビックス外用液であれば、プロペシアなどと違いAGAに対しても保険適用となる可能性があり、数百円で処方を受けることができます。別途診察代や処方代などなどはかかってきますが。
また、個人輸入を用いれば自宅にいながら日本製のアロビックス外用液が2,000円程度で購入できます。医療機関を受診する暇がない、少しでも費用を抑えたいという人はこちらを。
4,000円も出してカルプロニウム塩化物1~2%と低濃度のカロヤンを買わずとも、5%のフロジン液やアロビックス外用液を2,000~3,000円で処方・購入できるのだから、それを利用しない手はありません。
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