アデノバイタルはAGAに効かない

アデノバイタルでAGAは治らない

Amazonで育毛剤を調べると多くのレビューを集めているアデノバイタルという商品があります。

販売しているのは化粧品大手である資生堂で、Amazonに売られているとはいえ基本はサロン専用とあって期待は膨らみますが、発毛効果はなく薄毛に対する効果を求めるのは酷というもの。

このアデノバイタル、資生堂の独自成分「アデノシン」を配合しているのが大きな強みで、特許も取っていることからまさに資生堂しか使えない成分。厚生労働省から育毛効果のある有効成分としても認められています。

特許をとった独自成分というとなんか効きそうな雰囲気を醸し出しています。しかし花王の独自成分「t-フラバノン」を使ったサクセス育毛トニックやバイオポリリン酸を使ったポリピュアEXが全然効かないことからも色々と察しましょう。

何はともあれ育毛サロン専用を謳い多くの人に使われているアデノバイタルについて、メカニズムや成分、そして「どうして効かないのか」など詳しく見ていきましょう。

ちなみのこのアデノバイタル、現在は3代目の「アデノバイタル アドバンスト スカルプエッセンス」に切り替わっておりますが、これは完全なサロン専用育毛剤となっており基本的に一般人は買えないようになっています。

ただ、Amazonや楽天市場などでは購入することができ、それなりの人気を得ている模様。とりあえず「アデノバイタル アドバンスト スカルプエッセンス」は別のページで詳しく取り上げるとして、ここでは「アデノバイタル スカルプエッセンスV」について詳しく解説します。

アデノバイタルの成分

では、まず育毛剤にとって命ともいえる全成分を見てみましょう。

アデノバイタル スカルプエッセンスV

有効成分


アデノシン
ニンジンエキス
クジン抽出液
β-グリチルレチン酸
パントテニールエチルエーテル
酢酸DL-α-トコフェロール


その他の成分


アシタバエキス
レイシエキス
オノニスエキス
シソエキス(1)
ホップエキス
サンショウエキス
デシルテトラデシルジメチルアミンオキシド液
イソステアリルアルコール
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
エタノール
精製水
ジプロピレングリコール
ソルビット液
1,3-ブチレングリコール
I-メントール
無水エタノール
ラウリル硫酸ナトリウム
DL-リンゴ酸
ビニルピロリドン・N,Nジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液

何と有効成分は6種と育毛剤としてはかなり多く、ニンジンエキスやグリチルリチン酸、酢酸DL-α-トコフェロールはよく見る成分でもありますよね。

まあ「育毛剤でよく見る成分=髪生えない成分」だが。

そんな汎用成分はどうでもよく、アデノバイタルの最大の売りであるアデノシンがどうか?…というのが焦点なので、これがどういったものか見てみましょう。

■アデノシンとは

資生堂の独自成分であるアデノシンには公式サイトを見るに以下の3つの効果があるとされています。

■効果その1:血行促進効果

血行を促進して毛根に十分な酸素や栄養を届けることによって育毛に繋げようという、育毛剤によく見るお決まりの作用。

遥か昔から育毛には血行促進が効果的と言われているが、それで髪が生えたなんて話を聞いたことがない。そもそも血行促進が発毛に結びつくかどうかを検証した試験は存在しないため、この説に根拠は一切ないのです。

本来は血管拡張薬である発毛成分ミノキシジルの発毛メカニズムについても血行促進効果は補助みたいなもので、実際は毛乳頭細胞や毛母細胞の分裂や増殖を促進するから。

アデノシンに血行促進効果がある点については否定できるものではありませんが、こういった血流改善によって髪の毛が生えないことについては断言できます。

■効果その2:発毛促進因子(成長因子)を産出

アデノシンはFGF-7という成長因子を活性化し、それによって毛母細胞の増殖が促されるというのが最大の売りになっています。

ただ、FGF-7をはじめとした成長因子を頭皮に直接注入するハーグ療法ですら高価な割に大した効果はなく「金目的の詐欺に近い行為」なんて一部で揶揄されています。

Deeper3DのようにFGF-7が直接配合されたスカルプエッセンスも存在しますが、これはそもそも育毛剤ですらないただの化粧品。

頭皮に直接注入したり塗布したりしても新たな毛なんてほとんど生えないのに、アデノシンを塗布した上で間接的にFGF-7を活性化して発毛に繋げようというのは無理がある。

アデノシンはヒトに使用した試験で効果を検証した論文が存在し、その中では一定の発毛効果が示されているものの、「毛髪の本数はほとんど変化ない」と明記されているように、発毛効果は一切ない。

ただし、今となってはアデノシンに一定の効果が認められたため、薄毛を改善させる効果を完全否定することはできませんけどね。しかしそれがFGF-7によるものかどうかは未知数。

■効果その3:毛根の成長期を伸ばし髪を長く太く育てる

アデノシンは臨床試験において成長期毛伸長率と太毛率が有意に改善したという結果が得られているため、この点に関しては期待できるとみていいでしょう。

ただし、前述したようにアデノシンで髪の毛の本数が増えないことが確認されているため、新たな髪の毛を生やす「発毛効果」というよりは、今ある髪の毛の成長を促す「育毛効果」ということになる。

新たな髪の毛が増えなくてもいいというのであればアデノシンを配合するアデノバイタルを使ってもいいかもしれませんが、髪を増やしたいのであればアデノシンでは力不足。

それでも何の科学的根拠もない多くの育毛成分に比べれば、ある程度しっかりとしたデータが得られているアデノシンの方が100倍良いのは間違いありませんけどね。

アデノシンは一定の発毛効果が認められている

特許成分とはいえ発毛効果がないものとして認識していたアデノシンですが、2017年年末に刷新された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは、それまでの2010年版に対しより評価が高くなりました。

アデノシンの評価

2010年版の男性型脱毛症診療ガイドラインにおいてアデノシンの評価は「C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」というものでした。

しかし2017年版では女性に対してはC1の評価を継続したものの、男性に対しては「B:行うよう勧める」に1段階上昇。

この理由については、2010年の時点で男女ともに1件ずつしかなかった臨床データが、2017年の時点で男性は3件に増えたから。ちなみに女性に対しての臨床データは1件のままです。

これらを勘案しミノキシジルやフィナステリド(プロペシア)、デュタステリド(ザガーロ)に次ぐ評価を得たアデノシンは育毛成分ながら一定の発毛効果があると認められた形。

ただ、アデノバイタルは基本的に女性に向けて作られた商品。女性に対しての効果があまり実証されていないというのは不安材料と言えるのではないでしょうか。

とはいえ男性に対して評価を上げたということは女性に対しても間接的に評価を上げた印象を受けます。発毛剤ミノキシジルに比べればまだまだ根拠に乏しいものの、一定の評価をするべきと考えます。

しかしアデノバイタルには不安材料も。2017年に策定された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインではアデノシンが有効性を示す濃度が明記されている一方、アデノバイタルのアデノシン含有量は非公開

ミノキシジルを配合した発毛剤は例外なく含有量を明記しているのに、アデノバイタルはアデノシンの含有量を公表していない。これらを考慮すると「女性の薄毛に効果的」とは口が裂けても言えません。

ミノキシジルと同じという嘘に注意

アデノシンとミノキシジルは同じではない

信じられないことにネット上にはアデノシンがミノキシジルと同じ働きをする、もしくはミノキシジルで髪が生えるのはアデノシンを分泌するからなんてぶっ飛び論が公然と描かれていますが、絶対に信じないで下さい。

その中ではミノキシジルを塗布することによって成長因子が作られるだの、アデノシンが作られるだの語られています。しかしそんな研究結果は一切存在しませんし、そもそもミノキシジルの詳しい発毛メカニズムは解明されていません。

ある程度分かっているのは毛母細胞や毛乳頭細胞の分裂・増殖を促し体中の毛を増やすことで、専門家ですら解明できていないことを育毛サイトを運営する素人がなぜ成長因子やらアデノシンやら断定できるというのか?

こういう嘘が広まって真実のように語られるあたりがネットの怖さでもあります。アデノシンはミノキシジルと同じ働きをするけど副作用はない?笑わせるな。

アデノシンにはミノキシジルと同じく血管拡張作用があるから…なんてバカげた話があるものの、それを言ってしまえば血管拡張薬はどれを使っても発毛することになる。

しかし実際はミノキシジルにしか発毛効果は認められておらず、血管拡張作用以外の別のメカニズムによって髪の毛が生えているのは間違いない。

そもそもアデノシンがミノキシジルと同じ働きをするなら副作用も同じはず。それならアデノバイタルに副作用がないとされる説明が付かない。

まあ、アデノバイタルのアデノシン含有量はかなり少ないことが予想されますので、量が少ないから副作用のリスクもないという考え方もできますが…であれば、結局発毛効果も望めないことになりますよね。

アデノシン以外の成分は

アデノシンについて色々と書いてきましたが、その他の成分について注目できるものってあるのでしょうか?

■ラウリル硫酸ナトリウム

アデノバイタルの成分で最も不可解なのがラウリル硫酸ナトリウム

ラウリル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸Na)はパンテーンやラックス、エッセンシャルなどに代表される市販の安いシャンプーに含まれる高級アルコール系界面活性剤(洗浄成分)の一つで、強すぎる洗浄効果により薄毛をはじめ頭皮環境を気にする人にとっては悪の権化みたいな存在。

しかも、そんな安いシャンプーですら改良され刺激が少なくなっているラウレス硫酸Naを使っているというのに、刺激の強い前時代的なラウリル硫酸Naを育毛剤に使う理由って何なのでしょうか。

ラウリル硫酸Naの影響については是非あるものの、髪や頭皮に神経質になっている人にとっては“悪”でしかないものを育毛剤に使用する神経が分からない。

健康食品に安全かどうか分からない遺伝子組み換え作物を使っているレベル。

ただし、個人的にはラウリル硫酸Naごときで頭皮に悪影響が出るとか考えてはいません。なぜならこの成分によって薄毛になるというデータは存在しませんし、女性の薄毛が少なかった昔から徐瀬用シャンプーに使われていた成分だから。

とはいえ、髪の毛が薄くなった人はこういった成分を気にする人が多いため、使わないほうがいいのもまた事実ではないでしょうか。

ラウリル硫酸ナトリウムが悪いというよりは、これを育毛剤に配合する無神経さが悪いと声を大にして言いたい。

■ホップエキス

ホップエキスの育毛効果

最近何かと注目されているのがホップエキスをアデノバイタルは配合しています。ホップといえばビールに使われていることで知られていますよね。

このホップには独自のポリフェノールが含まれているとされ、それががんの抑制や肥満、生活習慣病への効果が期待できるというのです。実際複数の研究が行われています。

そしてこのホップエキスは育毛分野での研究もおこなわれており、培養した毛根やマウスでの育毛試験、ヒトに対する髪の毛の成長速度を調べた試験においてミノキシジルと同等レベルの効果を確認したとあります。

ただし、これらはすべて育毛効果の話です。新たな毛を生やす発毛効果に対する研究ではありません。ミノキシジルとの比較にしても、比べているのは今ある毛の成長速度。髪の毛の成長が早まったところでその分早く抜けてしまう可能性も否定できません。

発毛成分であるミノキシジルはハゲてしまった部位から新たな髪の毛を生やすからすごいのであって、その点を比較しなければ何の意味もありません。

こういった育毛効果をミノキシジルと比較し「ミノキシジルより効果的!」と謳う成分は多く存在するものの、実際にそれが発毛効果に結びつき、薄毛の改善に役立ったという話は聞いたことがない。

「ホップエキスに発毛効果は100%ない」とまでは言い切れませんが、過去の経験からこういった成分がハゲ改善に役立ったことはほとんどないため、アデノバイタルに含まれるホップエキスに期待はしないほうがいいでしょう。

そもそもホップエキスの含有量すら表記していないのだから期待しようもないが。

サロンの実績と発毛効果は別

サロンの評価はあてにならない

アデノバイタルは髪のプロである美容師がおすすめしていると謳っていることから一定の説得力があり、美容師におすすめされれば効いた気にもなるだろう。

そもそもアデノバイタルという商品は女性をターゲットにしており、遺伝による豊富な5αリダクターゼ分泌と、それによって有り余るほど作られるジヒドロテストステロン(DHT)によってハゲを加速させる男性とは基本的に薄毛の強固さが違う。

ゆえに女性の薄毛は男性のそれに比べ治りやすいとされるほど。

そんな女性を対象にアデノバイタルを使用すれば一定の育毛効果が期待できるのは当然なのかもしれません。

ただし、美容師の声を拾ってみると「髪の毛のハリやコシがアップした」というものばかりである点に注意。このあたりに望むものの相違があるように感じてなりません。

薄毛女性が求めているのは髪の毛が生えることではありませんか?一方で美容師がアデノバイタルを勧める理由は髪の毛にハリやコシが出るから。本当にこれでいいのでしょうか?

髪の毛にボリュームが出れば髪の毛の薄さは緩和されます。しかしそれは根本的な解決にはなっていません。薄毛の解消は髪の毛が増えてはじめて達成されるからです。

サロンの美容師が使っているといえば聞こえはいいですが、それはあくまでもボリュームが出るというレベルの話。薄毛の女性には効果がないことを忘れてはなりません。

アデノバイタルの価格

初めに少し触れましたが、アデノバイタルはAmazonなどでは旧製品となる「アデノバイタル スカルプエッセンスV」が格安で売られ、サロンにおいては現行の「アデノバイタル アドバンスト スカルプエッセンス」が売られています。

定価と実売価格は以下のとおり。

商品名 定価 実売価格
アデノバイタル スカルプエッセンスV 6,000円(税別) 2,500円(税別)
アデノバイタル アドバンスト スカルプエッセンス 7,000円(税別) 7,000円(税別)

旧製品だからなのかスカルプエッセンスVはAmazonで3,000円を切る価格で売られており、もはや定価なんてあってないようなもの。

一方のアドバンスト スカルプエッセンスはサロンにしか卸さないため美容室などからの定価販売が基本で圧倒的に高くなっています。

アデノシン配合とはいえ女性用育毛剤が税込7,560円はちょっと厳しい。

まあ3,000円を切っていればスカルプDジェット程度の価格で使えることになり、まあまあ気休めにはなるのかな~という感じはしなくもない。もちろん気休めであって髪の毛は生えないのは言うまでもない。

アデノバイタルに買う価値はあるか?

最近薄毛が目立ってきて何かしらの対策をしなければ…と考えている人が、とりあえずやらないよりはマシという感覚で使うのであれば、アデノバイタルは価格も安いし、ご自由にどうぞという感じではある。

ただ、どうせ気休めなら1,000円以下で買えるサクセス育毛トニックでも十分な気がします。育毛剤なんて基本的にどれ使っても発毛なんてしないんだし。

それでなくても女性をターゲットにしている時点で男性のAGAに対する発毛効果は期待できないのに、これを使って何を目指すというのか。アデノシンには一定の発毛効果が認められたため「絶対に髪の毛は生えない」とは言い切れないものの、ならばせめてアデノシンの含有量を表記して欲しい。

サロン専用と銘打つものの、一般的な美容院であれば洗浄成分がマイルドかつ高価なアミノ酸系洗浄成分のシャンプーを使い、ラウリル硫酸Naはもちろんラウレス硫酸Naといった高級アルコール系の洗浄成分を用いたものは絶対に使わない。

しかしアデノバイタルには高級アルコール系界面活性剤であるラウリル硫酸Naが配合されている。そのあたりに不自然さを感じざるを得ない。

アデノバイタルには同じくサロン系のシャンプーがあるが、それはアミノ酸系と同じくらい高価なのに、こちらも安価で評判の悪いラウレス硫酸Naを洗浄成分としてあえて使っている。このあたりを資生堂はどう考えているのだろうか?そしてそれを使うサロンも。

ただし、個人的な見解としてラウレス硫酸Naでハゲることはないと考えています。とはいえ客に不安を抱かせない企業努力という点でこれを使うサロンや資生堂に疑問を呈するだけ。

アデノバイタルはそんな感じの商品。しっかりと試験が行われているアデノシンやホップエキスを配合してる点は評価できるものの、これらの含有量が分からない点は閉口せざるを得ない。

髪の毛のハリやコシを出すことが目的であればアデノバイタルでもいいと思いますが、薄毛を改善させたいのであればフィナステリドやミノキシジルを用いた医薬品の発毛剤を使用するべきでしょう。

【追記】スカルプエッセンスVは生産終了か?

数年前まで比較的安価に買える大手製の育毛剤ということで人気があったアデノバイタル スカルプエッセンスVですが、すでに生産されていないと見られ、最近はAmazonなどで売られていても1本1万円超というプレミア価格に。

一方で、サロン専用だった「アデノバイタル アドバンスト スカルプエッセンス」がかなり出回っています。ただ、3,000円程度で購入できたスカルプエッセンスVと違い、7,000円前後というのが相場で気軽に試しづらい状況。

また、このアドバンスト スカルプエッセンスもすでに過去のものとなりつつあるようで、2020年3月からはサロン専用育毛剤として「アデノバイタル スカルプ パワーショット(120ml 税込7,920円)」が発売されています。

アデノバイタル スカルプ パワーショット発売

今までの流れから、今後はアドバンスト スカルプエッセンスが徐々に品切れになってくる一方、スカルプ パワーショットがネットに出回るようになってくると考えられます。

ただ、かつてのスカルプエッセンスVのように2,500円とか3,000円とかで買える状況はもう来ないと思われます。

そもそも、いずれのアデノバイタルにも薄毛を治したり改善させたりする発毛効果はありませんから、本気でハゲをどうにかしたいと考えている人は発毛剤を使用するようにしましょう。

高い効果で人気の発毛剤
このエントリーをはてなブックマークに追加
育毛剤に惑わされ発毛機会を損失する人が1人でも減るよう拡散お願いいたします。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧