スカルプD薬用育毛トニックは効かない
スカルプDといえば、かつて有名お笑い芸人を起用しCMをばんばん流していた時期もある育毛ブランドとあって、スカルプDシャンプーの存在を知らない人はいないのではないでしょうか。
そんなスカルプD、実はシャンプー以外にも様々な毛髪商品や化粧品を展開するブランド。その中でも同ブランドの育毛剤である「薬用育毛スカルプトニック」は知名度も相まって高い人気を誇っています。
とはいえ、ネット専売の育毛剤に比べ安価に設定された価格など試しやすい演出はされているものの、こういった商品では当然ながら髪の毛は生えません。発毛を目指している人にとってはドブに金を捨てているようなもの。
ではスカルプD薬用育毛トニックにはどんな効果はあるというのでしょうか?
スカルプD薬用育毛スカルプトニックの成分
まず、スカルプD 薬用育毛スカルプトニックの成分に目を通し効果を推測してみましょう。
スカルプD 薬用育毛スカルプトニック | |
---|---|
有効成分 |
グリチルリチン酸ジカリウム 酢酸DL-α-トコフェロール タマサキツヅラフジアルカロイド |
その他の成分 |
豆乳発酵液 カッコンエキス クロレラエキス セイヨウニワトコエキス メリッサエキス ゲットウ葉エキス オウバクエキス ニンジンエキス バンジロウ葉エキス ホウセンカエキス イリス根エキス チンピエキス マツエキス チャエキス(1) グリシン ピロ亜硫酸ナトリウム 塩化亜鉛 タケノコ皮抽出液 ビワ葉エキス シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム液 濃グリセリン グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 エタノール 無水エタノール 1,3-ブチレングリコール 1,2-ペンタンジオール l-メントール ジメチルエーテル 二酸化炭素 香料 |
有効成分の「酢酸DL-α-トコフェロール」「グリチルリチン酸ジカリウム(グリチルリチン酸2K)」に関しては多くの育毛剤に使用されている非常にポピュラーなもの。
グリチルリチン酸ジカリウムは抗炎症作用があることで知られ、酢酸DL-α-トコフェロールも抗炎症作用や抗酸化作用がある成分。
ここでひとつ疑問が湧いてきませんか? 「炎症抑えて髪が生えるのかよ?」と。
薄毛になるほどの炎症というと脂漏性皮膚炎や粃糠性(ひこう性)脱毛症を思い浮かべます。しかし酢酸DL-α-トコフェロールやグリチルリチン酸2Kにこれら皮膚炎を予防・改善させるほどの力はありません。
この2つの成分は多くの育毛剤に配合されていることから「育毛効果がある定番成分」と思っている人も多いと思いますが、女性の顔に使用する化粧品などにも多く含まれる何の変哲もない成分。もちろん発毛効果なし。
そもそも論として、女性が顔に塗る化粧品に毛を生やす効果があったら色々と大問題ですよね。そういった点からも酢酸-α-トコフェロールやグリチルリチン酸に薄毛を改善させる効果がないことが見て取れるのではないでしょうか。
ただ、これらは医薬部外品の育毛剤として認可されるためには必要な有効成分でもありますので、入れざるを得ないのは理解できます。育毛剤を名乗るための“通過儀礼”とでもいいましょうか。
髪の毛を生やすためにこれら成分を加えるわけではなく、「医薬部外品の育毛剤」というお墨付きを得るために定番であるこれら成分を加える…なんともハゲを馬鹿にした話である。
一方、最も気になるのはタマサキツヅラフジアルカロイドなんですよね。
なぜセファランチンを配合?
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックに配合されている有効成分の最後に記載される「タマサキツヅラフジアルカロイド」。
ちょっと聞きなれない成分かもしれませんが、これは円形脱毛症の治療に用いられることもある「セファランチン」の別名です。
「円形脱毛症に効くなら薄毛にも効果ありそう」と感じる人もいるでしょう。しかし2010年版の日本皮膚科学会のAGA治療のガイドラインにおいてセファランチンは「根拠がないので勧められない」という下から2番目の評価になっています。
そして悲しいことに2017年版の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインにおいては評価の対象から外されている。日本皮膚科学会的にはAGAに対するセファランチンの効果は評価に値しないという判断らしい。
そもそも円形脱毛症と男性型脱毛症(AGA)では原因がまったく異なるため、セファランチンが効かないのは当たり前といえば当たり前なんですけどね。
セファランチンは円形脱毛症にも効果薄
セファランチンは円形脱毛症の治療に使われることがあるため、「もしや俺の薄毛は円形脱毛症なのか?」という疑いを持っている人は、スカルプD 薬用育毛スカルプトニックの効果に期待を抱くかもしれません。
しかし、2017年に策定された円形脱毛症診療ガイドラインでのセファランチンの評価は以下のようになっています。
ほとんど意味がない。
「『C1:行ってもよい』ならまあまあの評価なんじゃね?」と感じますか? よく見てください、この評価の対象は“内服薬”ですよ。外用は評価の対象外なのです。
内服にしても「脱毛範囲が縮小することを示唆する弱い根拠が見いだされる」という微妙な評価。これに何を期待するというのだ?
セファランチンは長年円形脱毛症の治療に使用されてきたにもかかわらずこの程度の評価で、しかも科学的根拠も薄い…外用薬に至っては一切の科学的根拠が存在しないときています。
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックの中で、最も特徴的な成分であるタマサキツヅラフジアルカロイド(セファランチン)はAGAや円形脱毛症に効果がないという評価…何故この成分を入れようと思ったのだろう?
ネット上には「セファランチンは薄毛やAGAに効果がある」という情報も散見されます。しかしそこに科学的根拠は存在せず、昔からの慣行によりなんとなく使用したり配合したりしているだけなのです。
売りのイソフラボンはAGAに無意味
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックのその他の成分のうち、最もプッシュしているのが豆乳発酵液です。これに含まれるイソフラボンが薄毛の効果があるような雰囲気を匂わせています。
育毛に興味がある人であれば、イソフラボンが複数の育毛剤や育毛サプリメントに使われていることをご存知なのではないでしょうか。それだけに薄毛やAGAに効果がありそうな気がしますよね。
大豆に多く含まれるイソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに近い働きをすることで知られています。
そのエストロゲンはAGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制する作用があり、イソフラボンを摂取することで同様の効果が得られたとする研究結果も存在。
ただし、この研究はAGAと同じくDHTを原因とする前立腺肥大症に対するもので、AGAに対する効果を検証したものはほとんど存在しません。
また、イソフラボンがDHTの生成を抑えるという効果は科学的根拠と呼べるほどのデータが揃っていない。仮にDHTを抑制するとしてもそれは摂取…つまり食事やサプリメントなどにより体内の取り込んでの話。
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックのような外用剤にイソフラボンを配合したからといって薄毛に効果があると考える方がおかしいのです。
“湿潤剤”の増量に期待できる?
2019年にリニューアルされたスカルプD薬用育毛スカルプトニックでは豆乳発酵液の配合量を増量したらしいが…そもそもどのくらいの割合で配合されていたのかも分からなければ、どの程度増量したのかも分からない。
これらが明らかになっていない以上、従来品の豆乳発酵液の配合率0.01%、リニューアルで増えた割合が0.001%でも「増量」を謳うことができる。極端な例ではあるものの、この状況ではそういった見方をされても仕方ないでしょう。
余談ですが、スカルプD育毛トニックの目玉成分であり、リニューアルで増量したとされる豆乳発酵液には、小さい文字でこんな注意書きがある。
出典:アンファー公式サイト
湿潤剤…ハゲに湿潤剤…薄毛部分をしっとりさせると毛が生えるのか?
ちなみに、グリチルリチン酸ジカリウムや酢酸-α-トコフェロール同様、豆乳発酵液も多くの女性用化粧品に「保湿成分」として配合されています。もしこれで顔毛が増えたり濃くなったりしたら大変なことになるよね。
ミノキシジルのような世界的に発毛効果が認められた成分ですら、外用薬では思うような効果が出ないこともあるのに、湿潤剤や保湿成分としてしか認められていない豆乳発酵液を頭皮に塗ったところ髪の毛が生えるはずもない。
スカルプジェットの実際の効果は?
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックは平凡な成分や髪が生えない成分が並んでいる印象を受け、その他の成分に目を向けてみても発毛効果が期待できるものは見当たりません。
他の育毛剤でもよく見るのは、血行促進や抗炎症作用などがあり有効成分にも使われる「ニンジンエキス」、同じく血行促進や保湿効果のある「マツエキス」あたりでしょうか。
まあお約束の保湿成分ですが…
前述した通り虎の子の豆乳発酵液にしても同様。スカルプD薬用育毛スカルプトニックは「育毛剤」のくくりなので発毛成分が使えないのはもちろん、発毛効果を謳えないこともあってか、豆乳発酵液に含まれるイソフラボンに関しても効果には一切触れられていません。
ジェット噴射や成分の特徴から全部ひっくるめて発毛“促進”効果があるという、何の変哲もないごく平凡な育毛剤という印象になりますか。
スカルプD 薬用育毛スカルプトニックは医薬部外品であることから抜け毛予防程度の効果は望めるかもしれませんが、薄毛になってしまった部位から毛を生やす発毛効果は一切期待できません。
スカルプD育毛トニックの最大の売りは価格
成分的には極めて凡庸で特筆すべきものはないスカルプDの薬用育毛スカルプトニックですが、価格面ではかなり頑張っている印象を受けます。
というのも、スカルプD育毛トニックは1本の内容量が180mlで税込価格は3,300円、定期購入で2,805円と男性用育毛剤の中では圧倒的に安価。効果はさておき非常に試しやすくなっているからです。
これは成分的、成分量的に特筆すべき点がないことに加え、スカルプDというブランドの知名度により、育毛トニック単体での広告費が少ないことが考えられるでしょうか。
アフィリエイターに多額の報酬を支払い、効きもしない育毛剤をべた褒めさせ高額で売りつけるネット専売の育毛剤に比べれば良心的か。
もちろん、価格面では良心的でも髪の毛が生えるかどうかは別問題ですが。
スカルプD薬用育毛トニックに使う価値は?
では最後にまとめとして、スカルプD 薬用育毛トニック スカルプジェットには薄毛に悩む人間が手に取るだけの価値があるのについての結論を出したいと思います。
ハッキリ書いてしまうと、男性型脱毛症(AGA)に対して使う価値があるのかと問われれば「ない」と言わざるを得ません。
一方、今ある髪の毛を少しでもいいから元気にしたいのであれば、まったく使う価値はないとまでは言えません。一応厚生労働省から「髪の毛の成長を助ける医薬部外品の育毛剤」というお墨付きを得ているわけですからね。
ただし、抜けてしまった場所から再び髪を生やしたいのであればスカルプD薬用育毛トニックでは話にならない。育毛剤はどこまで行っても育毛剤であり、薄毛を改善・治療したいのであれば発毛剤以外選択肢はないのです。
そして、スカルプD 薬用育毛スカルプトニックを使用する層のほとんどは薄毛やAGAを改善させたいと考えているのではないでしょうか。その時点でこの商品の性格と私たちの希望は完全にミスマッチなんですよね。
とはいえ価格面では比較的良心的であるため、発毛効果がないうえ過度な宣伝が先行するばかりの高価な育毛剤を使うくらいならスカルプD 薬用育毛スカルプトニックを使った方が精神衛生上ましと言えるでしょう。
ただ、安価な育毛トニックといえば約1,000円のサクセスが存在します。あれと比べればスカルプD育毛トニックは相対的に高価なのも確か。
ネット専売の育毛剤に比べれば安いが、サクセス育毛トニックやインセントなど他の育毛トニックに比べると決して安くはない…スカルプD 薬用育毛スカルプトニックはそんなポジションにある商品。
どうせ気休めにしかならないのであれば、1,000円以下で買えるサクセスやインセントでも十分、本気で薄毛を改善させたいなら発毛剤以外の選択肢はない…そう結論付けます。
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