髪が生えると唯一認められた発毛剤
発毛剤と育毛剤―文字から起因される印象も響きも似ていることから“同じようなもの”と思っている人も多いのではないでしょうか?しかしこの2つには大きな違いがあります。
「発毛」というのは毛が抜け落ちてしまったところから新たな髪が生える効果のあることを示しており、日本において医薬品として「発毛剤」を名乗ってよい成分は「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」の3つのみ。
一方の「育毛」は新たな毛が生えるほどの力はなく、また発毛剤のような科学的根拠はありません。せいぜい今ある髪の毛の成長を促す程度。
つまり育毛剤というのは「今ある髪の成長を促す可能性はあるが新たな毛を生やすものではない」という性質。一方の発毛剤は新たな毛が生える効果に加え、当然ながら育毛剤以上の育毛効果もあることに。
発毛剤と育毛剤の信頼性や効果にどのくらい大きな差があるか解説しましょう。
ガイドラインで最高評価の発毛成分
発毛・育毛について、日本皮膚科学会はある程度信頼がおけるめぼしい成分の効果についてガイドラインを策定しています。
この中で男性型脱毛症(AGA)に対し「強く使用を勧められる」とされている成分はフィナステリドとミノキシジルのみ。一方でそれ以外の成分については「行ってもよいが根拠がない」もしくは「根拠がなく勧められない」とされています。
それはフィナステリドやミノキシジルが世界中で使用されてきた豊富な実績、数多くの臨床試験によって効果が裏付けられているから。
一方、塩化カルプロニウムやセファランチンなど育毛剤に使用される成分は発毛根拠を示すデータに乏しい、もしくは有効的とされるデータが存在するものの数が少ないため「効くかどうか分からない」という側面が大きいのが実情。
また、日本で人気の育毛剤であるチャップアップやイクオスEXプラス、ブブカゼロに配合されているミツイシコンブ由来の「M-034」などはガイドラインの中でその姿すら確認できない。
「M-034にはミノキシジルと同等の育毛効果がある」とメーカーが謳っていたとしても、それは自社お抱えの研究施設でのデータ。根拠は無いに等しく、しかもそれは「育毛効果」であって「発毛効果」ではないという言葉のマジックも。
世界中での長年の使用、豊富な実績によって裏打ちされた発毛の根拠はフィナステリドとミノキシジルのみにしか見当たらない…というのが医学界の常識なのです。
ちなみにこのガイドラインは2010年策定のため2015年に発毛剤として認可されたデュタステリドは入っていませんが、デュタステリドはフィナステリドの効果をさらに強くした薬であるため、より高い効果を示すのは間違いありません。
【追記】診療ガイドラインが刷新されました
これまでの男性型脱毛症診療ガイドラインは2010年版と古いものでしたが、2017年12月になって新たに「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」として生まれ変わっております。
…あんまり変わってないけどね。
ただ、2010年版にはなかったデュタステリドが追加されたのはトピックスか。
評価的にはフィナステリドやミノキシジルと同様のA評価で、女性に対しては最低のD評価なのはフィナステリド同様。この段階において3つの発毛成分以外に髪が生えるとはっきり認められたものはないことが分かります。
あえていうなら男性に対してアデノシンが評価を上げたことくらいか。アデノシンは発毛剤ほどの厳格な臨床試験は行っていないものの、ある程度信頼できる試験データが3件存在することから評価を上げています。
一方でここでもミノキシジルと同等の育毛効果を謳うM-034や「ミノキシジルの3倍の効果」がキャッチフレーズのキャピキシルなど、育毛剤市場において人気の成分は一切入っていません。つまり評価するに値しないということ。
それもそのはず、ガイドラインに取り上げられている成分のほとんどは、厳しい評価を下されているものですら育毛剤の有効成分として厚生労働省の認可を受けているもの。つまり一定の信頼がおけることを証明した成分。
対して多くの育毛剤に“その他の成分”として配合されるM-034やオウゴンエキス、キャピキシル、リデンシル等は育毛剤メーカーや成分を販売する企業が適当な試験を行って「効果がありますよ」と勝手に謳っているだけ。
そもそも土俵にすら立っていないのです。
日本皮膚科学会が策定する男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインがすべてではない…という意見があるのは理解できます。まだ日の目を見ないすごい成分が存在する可能性もあるでしょう。
しかしそれは星の数ほど存在する成分の中にどの程度存在しているというのか?それこそ砂浜の中から1粒のダイヤモンドを探し出すようなもの。
膨大な試験と実績に裏打ちされガイドラインですでに最高評価を得ているダイヤモンドと、砂浜に無数に存在する砂粒…どっちが良いかは考えるまでもありませんよね。
発毛剤と育毛剤は試験の信頼性に雲泥の差
フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤は信頼できる試験によりどれほどの効果があるのかエビデンス(科学的根拠)を積み重ねているという特徴があります。
例えば日本において発毛剤として認可されているプロペシア(成分:フィナステリド)、ザガーロ(成分:デュタステリド)、リアップ(成分:ミノキシジル)は厚生労働省に承認を得るにあたり下記のような条件で試験を行っています。
- 期間は6ヶ月以上
- 発毛成分とは別に比較対象となる既存薬や偽薬(プラセボ)を用いる
- 発毛剤使用群、プラセボ使用群それぞれ100人以上の被験者を割り当てる
- どちらを使用しているか被験者に知らせない
- 効果を評価する医師などは被験者がどちらを使用しているか知らない
発毛剤や育毛剤は効果の有無が確認できるまでに短くても3ヶ月、一般的には6ヶ月必要になります。そのため発毛剤の臨床試験は最低でも6ヶ月以上続ける必要があります。
そして薬の効果の有無を確認するのに何より重要になるのが、偽薬(プラセボ)を用いたうえで、試験に参加する被験者や医師、スタッフの誰もがどれを使用しているか分からない状態にすること。
これにより被験者の思い込みによる効果・副作用の発現や、評価する側のバイアス介入を防ぐことができ、公平・客観的な結果を得ることができます。「二重盲検試験」と呼ばれ医薬品の治験では常識となっている方法です。
ちなみにプロペシア、ザガーロ、リアップX5の承認申請にあたり提出された資料は以下のリンクで確認できます。
これはあくまでも日本での認可に際し行われた試験で、これら発毛成分は世界中で大小多くの試験が行われています。フィナステリドとデュタステリドを比較した試験も複数確認できます。
発毛剤はこういった試験の積み重ねにより髪が生えるという効果を実証したことにより世界中で信頼を勝ち得ているのです。
育毛剤の試験は?
一方で育毛剤はどうか?
育毛剤においても自社の独自成分や成分の開発メーカーが試験を行い有効性をアピールすることがあります。しかしその試験内容の多くは二重盲検試験ではないうえに被験者の数も少ない。
効果を判定する側のバイアスがかかろうが、被験者の思い込みが介入しようがどうでもいい。むしろそっちの方が好都合という印象すら受けます。メーカーもそのへんを計算し“結果ありき”で行っているのでしょう。
例えばネットで育毛剤にイクオスEXプラスという商品があります。業界最多レベルの成分を配合する育毛剤とサプリメントのセットが安価に購入できるとあって発毛への知識が浅い人を中心に人気となっています。
そんなイクオスEXプラス、124種という無駄に多い成分の中でも特に力を入れているのが自社成分である「アルガス-3」。実際発売に先立ち日本臨床試験協会(JACTA)にて臨床試験を行ったとされ、その結果がこちら。
「ミノキシジルの3倍の効果があるキャピキシルや、ミノキシジルの2倍の効果があるリデンシルよりさらに効果的だなんて、アルガス-3すごい!」…と感じたあなたは胡散臭い民間療法に騙されるタイプ。
そもそもキャピキシルやリデンシルが謳う「ミノキシジルの〇倍」というのは都合よく解釈できる自社データであるうえに、ヒトの頭皮に使用したものではなく培養した毛包に直接添加して得たもの。
ヒトに使用した試験を行っている場合もありますが、発毛剤のような大規模な二重盲検試験ではなく、せいぜい数十人程度に使用し感想を聞いただけだったり、お抱えの医師に判定してもらったりするだけ。客観性など皆無です。
それを物語るように、キャピキシルやリデンシルを発毛成分として認めている国は存在しません。本当にミノキシジルより効果があるなら臨床試験などを経てとっくに承認されていそうなものですよね。
件のアルガス-3も同様。この試験では男性40名女性17名を対象に行っているものの、それをアルガス-3群、キャピキシル群、リデンシル群に分けるわけですから、一つの成分につきやく20名。数が少なすぎます。
しかも期間は3ヶ月。ミノキシジルですら「発毛効果を実感するには最低4ヶ月使用してください」と書いてあるなか、この成分は3ヶ月しか試験していない。即効性をアピールしたいんだろうけど、あまりにもお粗末すぎる。
それとも6ヶ月続けられない理由があるのだろうか?
アルガス-3に限らず育毛剤に使用されている成分は、試験を行っていたとしてもその発毛効果はエビデンス(科学的根拠)が得られたとするにはあまりにも弱いのです。だから薄毛のガイドラインでも無視される。
まあ客観性や公平性はさておき、コストがかかる試験するだけでも頑張っている方かもしれないけどね。しかし客観性がない以上、育毛剤を売って金を儲けるために恣意的な介入が行われている可能性も否定できない。
メーカーが語る「試験した結果こんなに効果がありますよ~」との謳い文句は信用に値しません。本当に効果があるなら大規模な治験を行い医薬品の発毛成分として認めてもらえばどうだ?
根拠に乏しい育毛剤の成分
発毛剤には髪の毛を生やすだけに根拠がしっかりあるのに対し、育毛剤に含まれる成分はどれも発毛への根拠に乏しく、AGAクリニックや皮膚科などプロの医師であればまず採用しません。
にもかかわらずチャップアップやイクオスなどの育毛剤がこれだけ幅を利かせているのはひとえに「アフィリエイト報酬が高いから」にほかなりません。
高い報酬目的でのアフィリエイターによる絶賛記事がネット上に溢れていても、実際の効果は発毛剤の足元にも及びません。
またアフィリエイターに高い報酬を支払っているということは、その広告費の多くが商品価格に転嫁されていると見るべき。あの馬鹿みたいに高価な価格設定の多くは宣伝費が占めていると見てよいのでしょう。
本気で髪の毛を生やしたい人は育毛剤の提灯記事に騙されず、しっかりとした選択をするようにしてください。
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