育毛剤のモンドセレクション受賞に価値なし

育毛剤のモンドセレクション意味なし

発毛にとってまったく意味のない成分を配合しているにもかかわらず、髪の毛が生えるよう錯覚させようと必死な紹介文など私たちを楽しませてくれる育毛剤。とりわけ滑稽なのがモンドセレクション受賞の謳い文句です。

育毛剤に限らず日本の様々商品において、モンドセレクション受賞を前面に押し出しているものも多く見られます。しかし近年はモンドセレクションに疑問を呈する声も多くなっており、有名メディアに取り上げられるケースも。

それもそのはず、モンドセレクションは落選する可能性はほとんどないばかりか、育毛剤に至っては「重視するのはそこじゃないだろ!」と突っ込みたくなることうけあい。

モンドセレクション受賞というハリボテに騙されないためにも、モンドセレクションに対する正しい知識を身に付けておきましょう。

モンドセレクションとは?

モンドセレクションの本部があるベルギー ブリュッセル

モンドセレクションは食品や化粧品など様々な製品の品質を専門家が評価するもの。ただし「金賞」「銀賞」というのはオリンピックなどの競技のように順位付けしたものではなく、満たした基準によって受賞が決まります。

モンドセレクションを運営するのはベルギーの民間団体で、専門家が世界各国から素晴らしい製品を選りすぐって評価する…わけではなく、製品を製造する企業が「審査してください」と持ち込む仕組みにになっています。

1,200ユーロ(約15万円)を払ってね。

モンドセレクションで何らかの賞を受賞すると、商品に受賞マークを表示できるため、信頼性や安全性、商品の素晴らしさをアピールする目的で、世界各国から多くの企業が審査を依頼しています。

大半は日本を含めたアジアの商品だけどね。

育毛剤におけるモンドセレクションの意義

モンドセレクションの審査

あえて名前は挙げませんが、育毛剤の中にはモンドセレクション受賞を誇らしげに謳っているものが散見されます。モンドセレクションを受賞した育毛剤は何を認められたのでしょうか?

まず、ヘアケア分野の製品を評価する主な基準を見てみましょう。

  • 使用成分のリスト
  • 強調表示の形式と内容
  • 製品の効用に関する正しい説明
  • 表示の根拠およびコンプライアンス
  • 使用上の注意
  • 強調表示と製品に含まる成分の整合性
  • 製品の革新的要素
  • 消費者向けに謳われている製品の科学的効用性
  • 謳われている効用が期待できるだけの有効成分が配合されているか
  • 使いやすさ(爽快感、香り、質感、浸透率)
  • 肌への優しさ
  • 試用テストに基づく製品の一般的効用性

育毛剤の評価において重要になるのは赤字の部分だと思われます。

しかし、そもそも育毛剤の「謳われている効用」って何だ?

育毛剤であることから“謳われている効用”が発毛でないことは明白。保湿効果や抗炎症作用により頭皮を健やかに保ったり、今ある髪の毛を健康に保ったりするのが育毛剤の在り方なので、謳われている効用もそのあたりになるだろう。

しかし、これらの作用については厚生労働省で認められた成分を配合している時点でクリアしていますし、「効用が期待できるだけの有効成分が配合されているか」についても同様。

医薬部外品の育毛剤を名乗っている時点で厚生労働省に認められた成分を規定量配合しているため、わざわざモンドセレクションで審査するまでもない。

実際に効果があるかどうか調べているわけではない

そして最後の「試用テストに基づく製品の一般的効用性」について。

これについても極めて曖昧。薄毛に悩む専門家が数ヶ月間じっくり使ってみて「明らかに頭皮や髪の健康保てました」と言うならまだ分かるが、数十人程度の審査員が3000超の製品を数ヶ月の期間で審査する都合上そんなことは絶対にありえない。

最低でも3ヶ月~6ヶ月使用しなければ効果を実感できない発毛剤や育毛剤において、長期間の試用を行わずに審査する…どう考えてもおかしいですよね。

ポリピュアEXあたりが6年連続で金賞を受賞しているあたりでお察し。

多分あれは独自の特許成分であるバイオポリリン酸が「製品の革新的要素」に当てはまったために金賞を受賞しているのでしょう。

モンドセレクションは成分や効用の整合性を主に審査するだけで、臨床試験などを行いしっかりと効果を確かめるわけでは決してないため、育毛剤においてこれほど無意味な賞はない。

9割以上はなんらかの賞を受賞する

受賞率90%のモンドセレクション

モンドセレクションの信頼性に疑問を抱く一番の原因は、異常なほどの受賞率

例えば2017年度には2965点の製品が審査を受けており、その中で何らかの賞を受けた製品の数は2691。冗談ではなく、2965商品中2691商品が何らかの賞を受賞しているのです。

詳しい内訳は以下の通り。

受賞した製品の数 受賞率
最高金賞 420 14.16%
金賞 1368 46.13%
銀賞 737 24.85%
銅賞 166 5.59%
選外 274 9.24%

しかも金賞が圧倒的に多くなっており、最高金賞を合わせれば審査を受けた製品の約60%が金賞以上を受賞しており、全体では約90.76%が何らかの賞を受賞していることに。

何この金賞の大安売り。

これを見れば分かるように、金賞くらいは取ってあたりまえ、銀賞とかむしろ恥ずかしいレベルだったりするのです。

まして審査基準は我々が育毛剤に期待している発毛効果や薄毛改善効果ではないのだから、これほど滑稽なものはない。

日本のモンドセレクション信仰は異常

日本人のモンドセレクション信仰

ニュースなどでモンドセレクションの実情について見聞きしたことがある人はご存知かと思いますが、モンドセレクションに審査を依頼する商品の大半は日本のものが占めているという事実があります。

2017年度に何らかの賞を受賞した2691製品を大陸別で見てみると…

大陸 企業 製品
アフリカ 22 38 90
アジア 18 777 2109
中米 7 9 17
ヨーロッパ 25 106 293
北米 3 11 83
オセアニア 5 8 27
南米 7 17 72
合計 87 966 2691

どうです?

モンドセレクションの本場であるヨーロッパですら106の企業、293の製品しか受賞していないのに、アジアはぶっちぎりの777企業、2109製品が受賞しています。

前述したように、9割以上が何らかの賞を受賞しているので、アジアの商品が優秀というわけでは決してありません。

アジアの2109の製品のうち、日本の製品は1800弱…つまり受賞した製品の3分の2は日本の製品ということになる。モンドセレクションなど世界規模では空気だが、日本でのみ無駄にありがたがられているのです。

モンドセレクションを主催している民間団体は日本の製品だけで売り上げは15万円×1800=2億7000万円也。日本のお陰でウハウハですね。

現地では知名度も権威もないモンドセレクション

本場ではまったく知名度がないモンドセレクション

冒頭でも触れたように、モンドセレクションはベルギーの民間団体が実施しています。つまり「ヨーロッパ発」ということですね。

しかし、本場であるはずのヨーロッパでの知名度は信じられないほど低い。日本人であれば大半の人が聞いたことがあるであろうモンドセレクションも、現地の人に尋ねると「知らない」「聞いたこともない」のオンパレードなのです。

それは受賞数にも現れていますね。

2017年の実績で見ると、受賞した2691の製品のうち、ヨーロッパは293製品。受賞率を勘案すれば、審査の申し込みは330製品くらいでしょうか。7億人超が生活しているヨーロッパにおいて、300強の申し込みしかないのだから、無名なのも頷ける。

一方でアジア…とりわけ日本の製品は積極的に審査を申し込んでいる。なぜこんなことが起きているのか?

権威に弱い日本人に受けている

日本人というのは、とにかく“権威”や“ブランド”に弱い。「大手だから安心」「有名人が使っているから安心」「知名度高いから安心」「無名だから信用できない」…

どの国の人でもこういった傾向はあるでしょうが、主体性がない日本人にとって権威やブランドは非常に大きな安心材料となるのです。

日本人や日本企業自体は「ブランド=付加価値」の構築が下手なんですけどね。一方でそういったことに強いのがヨーロッパ。高級車やブランド品の多くがヨーロッパであることを鑑みても、それは明らかでしょう。

日本人からすると、ヨーロッパ自体がある意味「ブランド」であり、ヨーロッパの国が実施するモンドセレクションで受賞した商品というのは、商品を選ぶうえで何よりの安心材料となるのです。

1961年から実施されている歴史あるモンドセレクション。裏を返せば60年以上経っても現地ヨーロッパでは受け入れられていないということに。でも日本を筆頭にアジアではありがたがられている。

結局、お金儲けしたいモンドセレクション運営団体と、“箔”に弱い日本の消費者にアピールしたい日本企業の思惑が一致したということなのでしょう。

日本人の悲しい一面が垣間見える…

育毛剤のモンドセレクション受賞に価値なし

ここまでモンドセレクションについて書いてきましたがいかがだったでしょうか。

応募すればほとんどの製品が受賞できるうえに、審査自体も成分と謳い文句、表示の仕方などの整合性を確かめるものばかりで、育毛剤の効果を確かめるものではありません。

いわば厚生労働省に「規定の有効成分が入った育毛剤だね」って認められたものに対し、“箔”を付けるためにモンドセレクションで同じような審査を受けているようなもの。

実情を知っていればこんな無意味な賞はない。本場ヨーロッパはもちろんアジア以外の他の地域では相手にされないのも無理はない。

モンドセレクション受賞を前面に押し出している育毛剤は複数ありますが、これは効果を担保するものでは決してないので、モンドセレクションのマークを見かけたら「ああ、この商品はモンドセレクションの名で消費者を」でスルーするようにしましょう。

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