発毛剤の副作用の多くは思い込みという事実
ハゲを改善・治療できる唯一の存在である発毛剤。多くの人が悩まされている男性型脱毛症(AGA)を治すには医薬品の発毛剤を使用するしか方法がありませんが副作用が気になる…そう感じている人は非常に多いはず。
しかし、みんなが恐れるその副作用、実は思い込み(ノセボ)が多いんです。
代表的なAGA治療薬であるプロペシア(成分名:フィナステリド)やザガーロ(成分名:デュタステリド)は性機能障害の副作用上がることで知られ、多くの育毛サイトなどで注意喚起されていますよね。
しかしそのほとんどは思い込みだったとしたら?副作用が怖いという印象は育毛剤メーカーや育毛サイトによって捏造・情報操作されたものだったとしたらあなたはどうします?
それでも発毛剤の使用を避けハゲに邁進しますか?
- 発毛剤の副作用とは
- データが示す発毛剤副作用の真実
- 副作用の多くは思い込み(ノセボ)の可能性
- フィナステリドやデュタステリドは安全な薬
- 育毛剤のステマに要注意
- ミノキシジルの副作用もノセボ効果?
- 発毛剤を過度に恐れてはいけない
発毛剤の副作用とは
発毛剤の副作用の多くは思い込みによる作用(ノセボ・ノーシーボ効果)によるものだという議論の前に、そもそも発毛剤の副作用がどういったものなのか簡単に説明しておきます。
日本において「髪の毛が生える」「発毛する」と認められている医薬品の発毛成分は3つ。フィナステリドとデュタステリド、そしてミノキシジルです。
これらの副作用を見てみましょう。
フィナステリド・デュタステリド
日本では2005年に認可されたフィナステリド、2015年認可のデュタステリドは共に作用は「5α還元酵素阻害薬」ということもあり、基本的な副作用はほぼ共通と言っていいでしょう。
主な副作用は以下の通り。
- 性欲減退
- 勃起障害
- 精液の質低下
- 乳房障害
フィナステリドやデュタステリドは、5αリダクターゼ(5α還元酵素)の働きを阻害することによりAGAの原因である男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」の生成を抑制する作用があります。
これにより男性の薄毛の多くは一定の改善を見せますが、性欲や男らしさを作り出している男性ホルモンを減少させるとあって、性欲が減ったり勃起しにくくなったりといった副作用が代表的なものに。
また、男性でも少量の女性ホルモンを保有しており、薬の効果で強力な男性ホルモンであるDHTを激減させると相対的に女性ホルモンが増え、乳房が膨らんだり痛みを感じたりといったことがごく稀に起こります。
男性ホルモンの減少に起因する副作用が目立つ…それがフィナステリドやデュタステリドの副作用の特徴になります。
ミノキシジル外用薬の副作用
一方でミノキシジルはフィナステリドやデュタステリドと大きく作用が異なるため、副作用も全く別のものになります。
ミノキシジルは世界各国で発毛剤として認可・使用されている外用薬と、発毛剤としての認可は受けていないもののその高い発毛効果により多くの人が望みを託す内服薬が存在。副作用も大きく異なります。
頭皮に塗布するミノキシジル外用薬の使用で考えられる副作用は頭皮のかゆみやかぶれ、炎症といったもの。溶剤となるエタノールにアレルギーがある人が頭皮の異常を訴えるのが主な理由。
また、ミノキシジル濃度が上がるとかゆみや炎症といった副作用の発現率も上がる傾向にあるため、ミノキシジル自体に刺激性がある可能性も。
頭皮に軽い副作用が出る可能性があるのがミノキシジル外用薬です。
ミノキシジル内服薬の副作用
ミノキシジルは本来血圧を下げるための血管拡張剤として開発されたもの。しかしこれを服用した患者の多くに多毛症の副作用が見られてことから、その効果を頭皮のみに限定し副作用リスクを減らした外用の発毛剤として用いられることに。
しかし、ミノキシジルが持つ多毛症の副作用は経口薬として使用してこそ最大の効果を発揮することから、内服薬して使用する人が非常に多くなっています。いわゆる「ミノキシジルタブレット」というやつ。
このミノキシジルタブレット、確かに効果は強力ながら本来は降圧剤ということもり、様々な副作用が懸念されます。
- めまい
- 動悸
- 血圧低下
- 胸痛
- むくみ
- 多毛症
本来は主作用である血圧低下はもちろんとして、それに伴うめまいや動悸、胸痛などが予想されます。多毛症によって髪の毛のみならず体毛が濃くなる可能性もあります。
また、血管が広がり血液が薄くなる傾向にあることから、それを解消するため血管外に水分を排出、結果全身がむくみやすくなる特徴も。
発毛剤としてミノキシジルタブレットを使用する場合、降圧薬としての限度量(100mg)の10分の1となる10mgが1日の限度量になるため、副作用リスクはそれほど高くありません。
それでも本来は降圧剤。それに準じた副作用を想定しておく必要が。
データが示す発毛剤副作用の真実
さて、ここからが本題です。多くの人が懸念する発毛剤の副作用が思い込みによるノセボ効果ではないかという話を見ていきましょう。
まずはプロペシア(フィナステリド)承認時に示された副作用の臨床試験データを見てください。
副作用の種類/頻度 | 頻度不明 | 1~5%未満 | 1%未満 |
---|---|---|---|
過敏症 | 痒痒症、蕁麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む) | ― | ― |
生殖器 性機能障害 |
睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等) | リビドー減退 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 |
肝機能 | AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇 | ― | ― |
その他 | 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい | ― | ― |
最も副作用頻度が高いものはリビドー減退(性欲減退)の1.1%。次いで勃起機能不全が0.7%、射精障害や精液量減少が共に0.4%と続き、全体の副作用発現率は4%となっています。つまり25人に1人しか副作用は現れない計算。
フィナステリドを用いた複数の臨床試験においても副作用発現率は2~5%程度で落ち着いているものが多いことから、フィナステリドの副作用発現率は一般的に4~5%ほどという共通認識が広がっています。
しかし、その後行われたデュタステリドの臨床試験において風向きが怪しくなってくるのです。
ノセボ効果が疑われるデュタステリドの臨床データ
日本でザガーロ(成分名:デュタステリド)が発売される前に行われた臨床試験で示された副作用データを見てください。被験者は日本人を200名含めた計917名と大規模なもの。
プラセボ群 | フィナステリド1mg群 | ザガーロ0.1mg群 | ザガーロ0.5mg群 | |
---|---|---|---|---|
評価症例数 | 181 | 179 | 188 | 184 |
副作用発現例数(発現率) | 27(15%) | 35(20%) | 39(21%) | 30(16%) |
副作用名 | 発現症例数(発現率) | |||
生殖系および乳房障害 | 8(4%) | 18(10%) | 10(5%) | 14(8%) |
勃起不全 | 6(3%) | 10(6%) | 6(3%) | 10(5%) |
射精不能 | 2(1%) | 3(2%) | 2(1%) | 1(<1%) |
射精障害 | 1(<1%) | 2(1%) | 3(2%) | 2(1%) |
精神障害 | 5(3%) | 9(5%) | 14(7%) | 4(2%) |
リビドー減退 | 2(1%) | 7(4%) | 9(5%) | 4(2%) |
胃腸障害 | 8(4%) | 3(2%) | 6(3%) | 4(2%) |
腹痛 | 2(1%) | 0 | 3(2%) | 0 |
臨床検査 | 5(3%) | 4(2%) | 6(3%) | 5(3%) |
精液量減少 | 0 | 0 | 3(2%) | 2(1%) |
感染症および寄生虫症 | 0 | 1(<1%) | 1(<1%) | 3(2%) |
鼻咽頭炎 | 0 | 1(<1%) | 0 | 3(2%) |
この試験ではデュタステリド0.1mgや0.5mgとの比較対象として、フィナステリド1mgとプラセボ(偽薬)を用いています。
副作用発現率は全体的に高く、プロペシアの臨床試験では4%程度だったフィナステリド1mgも20%と高値。デュタステリドも20%前後となっていますよね。
ここで注目して欲しいのはプラセボの15%という数字。
プラセボは薬の成分を含んでいない偽薬のことで、客観的なデータを出すうえで欠かせない存在。そんなプラセボを服用した181名のうち27名にフィナステリドやデュタステリドと同様の副作用が出ている。明らかにおかしいですよね。
こういった厳格な臨床試験は、被験者はもちろん薬を処方する医師にもどの薬を使用したか伏せられて行われる「二重盲検試験」を用いています。つまりすべての被験者は発毛剤を飲んでいると認識していることに。
これをフィナステリドやデュタステリドを服用した群にも当てはめ15%相当を差し引くとするなら、副作用発現率は約5%。プロペシアの臨床試験時に示された信頼性の高いデータに近づくことから一定の説得力があるように感じます。
こういったデータは他にも存在します。
その試験はアメリカで行われ被験者数は378名。フィナステリド5mg、0.05~2.5mgまでのデュタステリド4種、プラセボの計6つを使用しています。もちろん二重盲検試験。
ここでの副作用発現率はというと…
副作用発現率 | |
---|---|
プラセボ | 24% |
フィナステリド5mg | 23% |
デュタステリド0.05mg | 15% |
デュタステリド0.1mg | 29% |
デュタステリド0.5mg | 15% |
デュタステリド2.5mg | 28% |
「なんだそりゃ?」って印象を抱きますよね。しかし、この試験は前述した917名の試験には劣るものの、多数の被験者と二重盲検試験を用いた比較的信頼性の高い臨床試験。
デュタステリドを用いた臨床試験において最も信頼性が高いものでプラセボの副作用発現率は15%、その前段階で行われる試験においても24%。
これが意味するものは…
副作用の多くは思い込み(ノセボ)の可能性
「プラシーボ効果」というものをご存知でしょうか?薬だと思い込んで飲めば、それが本当は薬でなかったとしても効果を発揮する不思議な現象。
「治療薬を飲んだ」という自己暗示や思い込みによって効果を発揮するというもので、具体的なメカニズムは分かっていないもののその存在は明らかになっており、かなり高い頻度で現れることも。
しかしこれが現れるのは効果だけに留まりません。そう、副作用にも同じような作用が現れることがあり、それをノーシーボ効果(ノセボ効果)と呼びます。
発毛剤の副作用の多くはノセボ効果か
こういった現象は感覚的な作用に強く表れることが分かっています。「痛い」とか「かゆい」とか、そういった類のものですね。ある調査では被験者に副作用の存在を告げた場合、副作用発現率が数倍に跳ね上がった例も。
ここで改めてフィナステリドやデュタステリドの副作用に目を向けると、そのほとんどは性欲減退や勃起障害。男性であれば分かりますよね、これらが心理状態によって大きく左右されることを。
後姿が絶世の美女で、ハアハアしながら顔を見たら萎えた。行為中に一瞬でも現実に引き戻される出来事があったら息子がシューン…。こんな事例は枚挙にいとまがないはず。
プロペシアが世に出はじめた頃は性機能障害の副作用についての知識が広まっていなかったため、臨床試験で正確なデータが取れたが、発毛剤の副作用が知れ渡った現在にデュタステリドの試験を行えばどうなるか?
それこそがデュタステリドの臨床試験においてプラセボが高い副作用発現率を示した理由なのではないでしょうか。
そしてそれは当然ながらフィナステリドやデュタステリドを服用した人にも当てはまる。そう考えれば、これら発毛剤の副作用発現率は5%程度に落ち着くと見るのが自然なのではないでしょうか。
フィナステリドやデュタステリドは安全な薬
副作用ばかりがクローズアップされがちなフィナステリドやデュタステリドですが、医師や専門家の間では比較的安全な薬という位置付けなのはご存知でしょうか?
医薬品の中には強い効果を引き換えに深刻な副作用が懸念されるものも多く、そういった中にあってフィナステリドやデュタステリドの性機能障害は重篤とは程遠いというのが一つの理由。
加えて、厳格な臨床試験によって副作用がしっかりと洗い出されている。副作用が計算できるということは、適切な処方を行えばコントロールが可能であることを意味しています。
極めつきは副作用発現率が低い。
どこをどう見ても「危険」と呼べる要素は見当たりませんが、発毛剤の副作用の危険性を過剰に煽り立てたり捏造したりする連中が多数存在する現実があります。
育毛剤のステマに要注意
臨床試験によって副作用がしっかりと検証され、かつ軽度なものがほとんどとあって、本来フィナステリドやデュタステリドの副作用は過度に恐れるようなものではありません。
しかし、本来危険とは程遠いこれら発毛剤の副作用を危険なものと印象付けたい人間がネット上に溢れています。それが育毛剤を販売するメーカーや、それを後押しし報酬を受け取らんとする育毛サイトです。
試しに「フィナステリド 副作用」で検索してみてください。発毛剤使用に対し不安をあおるような記事ばかりが目立つのではないでしょうか。そして最後にはお決まりのように「副作用のない育毛剤はコレ!」的な文言。
確かに医薬部外品の育毛剤は副作用が確認されていません。しかしそれは「副作用がない」ではなく「検証していない」という意味で。
大規模な臨床試験により副作用を洗い出している発毛剤より、安全確認すら行っていない育毛剤のほうが安全なんて保証はどこにもありません。法的に安全性を確認する必要がない医薬部外品は安全とはいえないと考える医師も多数存在します。
発毛剤でしか髪の毛は生えないし、副作用も怖くはない。にもかかわらず発毛効果など存在しない、安全かどうかも分からない無駄に高価な育毛剤を売る為だけに発毛剤の副作用を過度に強調する。
連中にとって重要なのは金。私たちのハゲなどどうでもいいのです。
育毛剤メーカーをはじめ、自分のサイトのリンク経由で育毛剤を売ることで高額報酬が得られるアフィリエイトという仕組みを使い儲けようとする育毛サイトの嘘やステマに騙されないようにしてください。
ミノキシジルの副作用もノセボ効果?
ここまで読んできて「あれ?ミノキシジルはどこいった?」と感じた人も多いのではないでしょうか。フィナステリドとデュタステリドの副作用に言及したものの、ミノキシジルはノータッチでしたからね。
フィナステリドやデュタステリド同様ミノキシジルの副作用もノセボ効果なのか?これについても触れておきましょう。
ミノキシジル外用薬の副作用はノセボ?
まず頭皮に塗布するミノキシジル外用薬から。
前述したようにミノキシジル外用薬の副作用は塗布部分のかゆみや発疹、炎症がほとんど。かゆみに関しては「ミノキシジルを塗った」というノセボ効果も考えられますが、発疹や炎症は思い込みのよって現れることはほとんど考えられません。
また、ミノキシジル外用薬は複数の臨床試験によって1%の濃度より5%のほうが副作用発現率が高くなる傾向が示されています。プラセボとの比較においてもミノキシジル外用薬のほうが副作用発現率が高いという傾向が。
ゆえにミノキシジル外用薬の副作用にノセボ効果が入り込む余地は少ないと見る。
ミノキシジルタブレットの副作用は?
一方でミノキシジルタブレットの副作用はどうか?
ミノキシジルタブレットの副作用はめまいや動悸、血圧低下など、心理状態によって発現するものも多く「ミノタブを飲んだ」という思い込みによって副作用が出る可能性は否定できません。
ただし、ミノキシジルタブレットは発毛剤としての臨床試験データが一切存在しません。ゆえに、どの程度の副作用発現率なのか、プラセボとの比較はどうなっているのかなど分からないことだらけ。
そもそも、本来降圧剤であるミノキシジルタブレットの血圧低下は主作用と呼べるもの。これによってめまいや動悸がどの程度の頻度で起こるかは分かりませんが、これらの症状が存在するのは確実でしょう。数値化はできませんが。
とはいえ、めまいや動悸といったものを意識すれば、それはノセボ効果によって現れやすくなるのも事実。余計な気負いは副作用を悪化させるもということですね。
発毛剤を過度に恐れてはいけない
発毛剤…とりわけフィナステリドやデュタステリドの副作用は心理状態が大きく影響する性欲減退や勃起障害がメインであるだけに、副作用を強く意識するとノセボ効果でよりリスクが高まることが証明されています。
裏を返せば副作用を意識せず服用することで性機能障害のリスクを5%程度に抑えられることに。性欲減退程度の副作用や低い発現率にすら抵抗を感じるというのであれば、ハゲ改善は諦めたほうがいい。
もしくは育毛剤メーカーやゴミのような育毛サイトの養分になるのも手か。
AGAを改善させるには発毛剤を使用する以外に方法がないことから、本来であれば発毛剤の副作用を強く意識させないことこそが薄毛の人に寄り添う最善の行動のはず。育毛サイトはそうあるべき。
しかし現実はその真逆。発毛剤の副作用を過度に強調することで恐怖心を与え、薄毛に対しまったく意味のない育毛剤を売りつけることに腐心する。これでは仮に発毛剤を使用する選択をしたところで、副作用リスクは高くなってしまう。
最高の副作用対策は副作用を意識しないこと
ここまで書いてきたように、発毛剤を使う際は副作用発現率の低さを十分に理解した上で服用するようにしてください。
プロペシアやフィンペシアに代表されるフィナステリド内服薬の副作用発現率は4~5%程度しかないと臨床試験で裏付けられており、デュタステリドもフィナステリドと同等レベルであるとデータが示しています。
発毛剤の副作用を発現させない、もしくは軽くする最良の対策は副作用を意識しないことです。ミノキシジルタブレットにしたって副作用を意識しないことで発現率が下がるのは間違いない。
もう一つ安心感を与えるデータを持ち出すなら、プロペシアの臨床試験において使用1年目の副作用発現率は5%だったのに対し、2年目は1.6%にまで減少したというものがあります。
つまり長く使えば体が副作用に慣れてくる、もしくは副作用に対する恐怖心が薄れた結果副作用を感じなくなるということ。育毛サイトの戯言を真に受け過度な恐怖を抱いている人も多いでしょうが、発毛剤の副作用ってこんなもんなのです。
薄毛治療というのは時間との戦いです。発毛剤の使用開始が早ければ早いほど高い効果が望めます。この記事により無意味な育毛剤に寄り道せず、最初の選択から発毛剤に辿り着ける人が少しでも増えてくれることを祈るばかり。
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