発毛剤と育毛剤の決定的な違い

発毛剤と育毛剤の違い

薄毛の治療法としてまず選択肢に挙がるのが発毛剤や育毛剤だと思います。しかしみなさんはこの「発毛剤」と「育毛剤」の違いって分かりますか? この2つ、響きは似ているものの中身はまったく違う似て非なるもの。

ある程度育毛関連の情報に詳しい人であれば当然のように違いを知っているでしょう。しかし最近薄毛の治療に興味が出てきたという人には、発毛剤と育毛剤の違いと言われてもピンと来ないのではないでしょうか。

育毛剤と発毛剤には明確な違いがあり、その効果にも大きな差があります。

これを知らないと間違った治療を選択し時間やお金を無駄にしてしまう可能性も。しっかりとした知識を身に付け薄毛の改善に役立てて下さい。

発毛剤とは

発毛剤とは?

発毛剤は厚生労働省から「発毛効果がある」と認められた成分を使用した医薬品の総称。

今ある髪の毛を太くしたり成長を促進させたりする育毛効果はもちろん、男性型脱毛症(AGA)によって髪の毛が抜け落ちてしまった部位から新たな毛を生やす効果が期待できるものを指します。

発毛効果が認められている成分は現在以下の3つ。現在の日本においてこれらを主成分とし、厚生労働省により「発毛剤」として承認されている医薬品は数が限られているのが実情といえます。

  • フィナステリド(プロペシア、サワイ、ファイザーなど)
  • デュタステリド(ザガーロ)
  • ミノキシジル(リアップ、メディカルミノキ5、リグロEX5)

これらが具体的にどういった効果があるのか、もう少し詳しく見ていきます。

フィナステリド

フィナステリドを主成分とした発毛剤「プロペシア」は、内服薬として日本で初めて正式に承認を受けた医薬品です。

フィナステリドは海外において前立腺肥大症の治療薬として使用されていましたが、前立腺肥大症と男性型脱毛症(AGA)は共に「ジヒドロテストステロン(DHT)」という男性ホルモンが原因であることから発毛剤に転用された経緯があります。

作用としては、一般的な男性ホルモンである「テストステロン」と結びついてDHTへと変化させる酵素「5α-リダクターゼ」の働きを阻害するというもの。外箱には「5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬」と記載されています。

世界中で多くの実績があり、日本においても最も信頼できる発毛剤として君臨、AGA治療の第一選択薬となっており、AGA治療のためにAGAクリニックや皮膚科を受診すれば、まずはこれが処方されることでしょう。

一方で、男性ホルモンの生成を抑制することから、性欲減退や精液の質低下など「性機能障害」の副作用が出ることも。

プロペシアを1ヶ月分処方してもらう場合、健康保険適用外の薬ということで7,000円前後の費用が。しかし現在はファイザーやサワイなど、1ヶ月4,000~5,000円程度で済むプロペシアジェネリックが登場、選択の幅が広がっています。

デュタステリド

2015年に日本で承認された新しい発毛剤が「デュタステリド」です。

フィナステリドと同じく、前立腺肥大症の治療薬として使用されていることもあり、作用的にはフィナステリドと同様に「5α-還元酵素阻害薬」となります。

しかし、フィナステリドがⅡ型の5α-リダクターゼしか阻害しないのに対し、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型両方を阻害するのが特徴。そのため臨床試験ではフィナステリドに比べ約1.6倍の発毛効果が確認できたとされる。

副作用に関してもフィナステリドと同様に性機能障害が主となっています。

デュタステリドは比較的新しい成分ということもあり、ジェネリック医薬品は存在せず、先発薬である「ザガーロ」しか選択肢がありません。

ザガーロの1ヶ月分の費用は約1万円…結構厳しい。

ミノキシジル

ミノキシジルはCMでも目にするリアップX5プラスネオの主成分とあって、名前くらいは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

前立腺肥大症の治療薬から転用されたフィナステリドやデュタステリドとはうって変わって、ミノキシジルは血圧を下げるための血管拡張剤が本来の用途。

血圧を下げるためにミノキシジルを服用していた患者の多くに、体中の毛が濃くなってくる「多毛症」の副作用が見られたことから、これを頭皮に限局しつつ副作用のリスクを極力減らした外用薬の発毛剤として使用されることに。

作用に関しては完全に解明されてはいないものの、毛包や毛母細胞に働きかけ髪の毛の成長を強力に促すとされています。

かつては日本のミノキシジル外用薬といえばリアップシリーズしか存在しませんでしたが、現在は「リグロEX5」や「メディカルミノキ5」をはじめ、5,000円程度で購入できるリアップX5ジェネリックが多数存在。


フィナステリドとデュタステリドは内服薬として医療機関で処方され、ミノキシジルを用いたものは薬剤師から説明を受ける必要がある「第一類医薬品」として薬局で販売されています。

これら発毛剤3種は日本皮膚科協会が策定するガイドラインにおいて「薄毛治療に強く勧められる」と評価されており、世界的にも多くの国で使用されている実績があるのが特徴。特にフィナステリドとミノキシジルは実績豊富。

ただ、日本で認可されているプロペシアやザガーロ、リアップはどれも1ヶ月分で6,000~10,000円くらいと価格が高いため、同成分にもかかわらず1ヶ月分1,000~2,000円程度で購入できる個人輸入を用いたジェネリック医薬品に人気が集まっているというのが実情。

海外製のジェネリック発毛剤とは?

日本においては先発薬であるプロペシアやザガーロ、リアップの他に、正式なジェネリックであるファイザーやサワイ、メディカルミノキ5などが販売されている発毛剤。しかし保険が効かないこともあり非常に高価で経済的負担も大きい。

一方海外製の発毛剤に目を向けると、プロペシアと同じフィナステリド1mgのフィンペシアやフィナロイドが1ヶ月分1,000円を切る価格で売られていたり、リアップX5プラスネオと同じミノキシジル5%製剤が1,700円程度だったりと凄まじく安価。

日本ではプロペシアとリアップX5プラスネオの組み合わせが約15,000円するのに対し、同じ濃度の海外製フィナステリド1mg製剤とミノキシジル5%製剤であれば3,000円でお釣りがくるレベルですからね。

信頼性や安全性に対する疑問や偽薬の危険性を指摘する声もありますが、大手の個人輸入代行業者であれば独自に成分鑑定を行っていますし、商品自体も大手製薬メーカーが作っているため信頼性にも問題がありません。

そういった背景から、私を含めハゲに悩む多くの人が海外製のジェネリック発毛剤を使用し、安さと効果を実感している。

とはいえ、安全性…というよりは「安心感」を最優先したいのであれば、日本製の発毛剤を選んだほうがいいのも確か。

効果や信頼性に疑いに目を向けびくびくしながら海外製の発毛剤を使うくらいなら、多少お金を払っても日本の発毛剤を使用したほうが精神衛生上良いのは間違いないからです。

また、発毛剤といえど医薬品であることから、海外製の発毛剤を使用する前に一度は医師の判断を仰ぐべきでしょう。

一度も医療機関を受診しないまま自己判断で海外製発毛剤を使用する人が後を絶たないものの、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルには副作用リスクもあることから、可能であれば一度は医師の処方を受けておきたいところ。

ただね、AGAクリニックや皮膚科に行って「ハゲ治したいんですけど…」と訴えれば、ほぼ100%プロペシアやザガーロが処方されるんですよね。

一応既往歴くらいは聞かれるでしょうが、フィナステリドにしろデュタステリドにしろ前立腺肥大症に悩む多くの男性が服用している医薬品で、医師からすれば「比較的安全な薬」という位置付けですからね。

このあたりは自己責任で。

■発毛効果が認められるのはフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル
■日本製は高額であるため同成分で安い海外製のジェネリックが人気

育毛剤とは

育毛剤とは

一方の育毛剤は、「今ある髪の成長を促す効果はある程度期待できる」という“育毛”を目的としたもので、新たな髪が生える発毛効果の根拠はなく、また「発毛」「髪が生える」と明記すると薬機法(旧薬事法)に違反することになります。

育毛剤の定義は厚生労働省によって「育毛効果がある」と認められたセンブリエキスや甘草エキス(グリチルリチン酸ジカリウム等)といった「有効成分」と呼ばれるものを規定量配合しているものを指し、これをクリアした上で各社は“その他の成分”で差別化を図ります。

その他の成分で有名なのは、ミツイシコンブから抽出され、ブブカゼロやチャップアップ、イクオスEXプラスなど人気の育毛剤に配合される「M-034」やオウゴンエキス、桑白皮エキスなどで、これらの成分を推すことで発毛効果がありそうな錯覚を抱かせます。

ただ、育毛剤を名乗る上で必要な有効成分はもちろんその他の成分は分類的に「保湿成分」や「抗炎症作用成分」なので、発毛効果は基本的に期待できません。

当然ながら医薬品成分であるフィナステリド・デュタステリド・ミノキシジルを配合することはできず、薄毛を治す効果に関しては「一切の科学的根拠がない」と言わざるを得ないのです。

育毛剤の具体的な効果はというと…

  • 頭皮を健やかな状態に保つ
  • 抜け毛予防
  • 頭皮の血行促進
  • 髪の毛の成長促進
  • 髪の毛にハリやコシを与える

一見すると髪の毛を生やす発毛剤と同じように感じるかもしれません。抜け毛を予防し発毛を促進させる…なんとなく薄毛が治りそうな印象を抱かせますよね。

しかし、育毛剤の目的は頭皮環境を整え、髪の毛が健やかに成長する土台を作ること。AGAにより抜け落ちてしまった髪の毛を復活させたり、髪の毛を太くしたりする作用はないのです。「ハリやコシ」と「髪が太くなる」は全くの別物。

薄毛の予防的な意味合いで使用する分には問題ありませんが、AGAが進行し薄毛が目立ってきた状態で育毛剤を使用しても意味はありません。それは発毛剤の仕事ということになります。

ただ、育毛剤を販売するメーカーとしては、薄毛が治るよう錯覚させなければ商品は売れません。そのため薬機法に抵触しない程度の微妙な表現を用い薄毛に悩む人のミスリードを誘うのが常態化。

髪の毛の状況に応じて正しい治療の選択を行うためにも、育毛剤は薄毛を改善させるものではなく、頭皮環境を整えるものと心得ておく必要があります。

■育毛剤は厚生労働省が認める有効成分を規定量配合したもの
■発毛効果の根拠はないが育毛剤メーカーは発毛効果があるように錯覚させる

発毛剤と育毛剤の副作用は?

発毛剤と育毛剤の副作用

発毛剤と育毛剤の違いについて知れば薄毛への効果には雲泥の差があることが理解できると思います。にもかかわらず発毛効果がない育毛剤に一定の需要があるのは、発毛剤の副作用に懸念を抱いているからといっても過言ではないでしょう。

強力な発毛効果がある医薬品の発毛剤には他の薬と同様に副作用が存在します。副作用を実感するかどうかは個人差が大きいものの、一定のリスクがあることに間違いはありません。

一方の育毛剤は副作用がないことが最大の売りといっていいでしょう。発毛剤っぽい商品なのに副作用のリスクはほとんどない…これこそが育毛剤のアイデンティティなのです。

しかし本当に育毛剤は安全なのでしょうか?実はそうとも言い切れません。そのあたりを含め発毛剤と育毛剤の副作用について解説します。

発毛剤の副作用

発毛剤を使用することによって考えられる副作用は主に2つ。5α還元酵素阻害薬であるフィナステリドとデュタステリドの性機能障害、そしてミノキシジル外用薬の頭皮のかゆみや炎症などです。

AGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)は、テストステロンという男性ホルモンと5αリダクターゼ(5α還元酵素)が結合して生成されるのは前述の通り。

フィナステリドとデュタステリドは、5α-リダクターゼを阻害することによってDHT生成を抑制するものですが、強力な男性ホルモンであるDHTの生成を抑える弊害として性欲減退や勃起障害といった副作用が出る可能性があるのです。

一方のミノキシジル外用薬は、本来血管拡張剤であるミノキシジルの副作用のひとつ「多毛症」に焦点を当て、副作用のリスクを軽減しつつ効果を頭皮に限局する目的から外用薬として使用されるようになった経緯があります。

そのため、その副作用はミノキシジルやエタノールの刺激による頭皮のかゆみや紅斑、炎症程度と非常に軽いものになっています。

ちなみに、これら発毛剤の副作用発現率はおよそ5~10%

複数の臨床試験によりどういった副作用がどの程度の頻度で現れるか洗い出されていること、重篤な副作用がないことからコントロールが容易で、医師の間では比較的安全な薬という位置付けになっています。

育毛剤の副作用

一方、育毛剤は発毛剤のような副作用がないことが大きな売り。発毛効果があるような雰囲気を醸し出しつつ、副作用がないと訴求することで購買意欲を刺激する詐欺のような商品とも言えます。

しかし勘違いしないで下さい。育毛剤には副作用がないのではなく、副作用があるかどうか分からないというのが実情なのです。

医薬品である発毛剤は発売前に厳格かつ大規模な臨床試験を行い、効果や副作用の程度、発現率などを明らかにします。そうすることで医師が効果や副作用をコントロールできるようになるから。

しかし、医薬部外品である育毛剤は発売に際し臨床試験を行う必要はありません。薬機法により角質層より下に浸透することは想定されていないうえ、成分自体もあたり障りのないものばかりというのがその理由です。

とはいえ、成分の組み合わせにより思いもよらぬ副作用が出る可能性は否定できません。実際臨床試験を行わない医薬部外品を「安全とはいえない」と感じている医師はかなりの割合を占めます。

エタノールや防腐剤などを使用している以上、アレルギーや刺激によって頭皮に何らかのトラブルが発生する可能性がありますし、育毛成分にしても100%安全とは言い切れない。

副作用はもちろん効果についても試験によって検証したわけではないのに、「効果はある、副作用はない」なんて都合がいい解釈や宣伝をするあたりに育毛剤の悪質さが見て取れる。


発現率は高くないものの、発毛剤には確かに副作用が存在します。しかし副作用の種類、発現率などの内容が明らかになっているからこそ、医師などの専門家は安心して使うことができるという側面があります。

そもそも薬学的には何らかの効果があるものには必ず副作用が付いて回るもの。漢方薬にすら必ず副作用がありますからね。育毛剤に副作用がないというのであれば、それは効果もないことを意味しているのです。

発毛剤と育毛剤の違いのまとめ

ここまで発毛剤と育毛剤の違いを書いてきましたが、なんとなくでも理解できたでしょうか? 一見すると似たようなものという印象を受ける両者ですが、実際はまったくの別物。

この2つの違いをより分かりやすくするため表にしてみましょう。

発毛剤 育毛剤
法的解釈 髪の毛が生える 髪の生育を助ける
発毛効果 強い なし
育毛効果 極めて強い あり
副作用 あり 不明
安全性 高い 不明
価格 5,000~10,000円 5,000~15,000円
ハゲに対する良心 あり なし

発毛剤はハゲてしまった部位から新たに髪の毛を生やす発毛効果はもちろん、今ある髪の成長を促進させる育毛効果もあります。当然ながらそれはデータの上でも示されていること。

一方の育毛剤には発毛効果は一切存在せず、育毛効果に関しても未知数。そりゃそうです、抗炎症作用や血行促進効果程度の成分で遺伝性のAGAに対抗しようなど、竹やりでB29と戦うようなもの。

発毛剤は製薬メーカーがAGA治療を目的として、膨大なコストをかけ臨床試験などで効果の裏付けを行い製品化したものなのに対し、育毛剤は医薬部外品と名乗れる最低条件を満たしつつ適当な成分を配合しただけのもの。

薬機法的にも成分的にもAGAに効果がないことは明白なのに、あたかも効果がありそうなギリギリの文言を並べ、私達ハゲに希望と錯覚を抱かせます。

発毛剤と育毛剤、一見すると似たようなものという印象を受けるかもしれませんが、内容はまったくの別物であるということを肝に銘じてください。

発毛剤は厳密かつ大規模な臨床試験(治験)を経て髪の毛を生やす効果が実証された医薬品、育毛剤は有効成分を規定量配合するなどの条件をクリアすることで医薬部外品の指定を受けた商品と認識しておきましょう。

発毛剤と育毛剤の違いを知れば選択肢は限られる

薄毛が気になりだした人が求める効果ってなんですか?

常識的に考えれば今ある髪を維持することに加え、抜けてしまった部分から再び毛を生やすことを望んでいるはずですよね。

それを可能にするのは発毛剤のみであり、育毛剤はそれっぽい効果を謳っていても所詮は保湿成分と抗炎症作用がある成分の寄せ集め。発毛する根拠はどこにもないうえに、薄毛に悩む人の足元を見たような価格設定になっています。

育毛剤メーカーはいかにも発毛しそうなデータを持ち出してきますが、それは自社内でのデータか、もしくは息のかかった研究機関のもので、しかも発毛剤に比べ絶望的なほど症例が不足している不完全なもの。

発毛剤は効果が高いがゆえに多少の副作用は想定する必要がありますが、副作用はもちろん効果もないうえに高価な育毛剤を使うよりはよっぽどましです。

育毛剤メーカーの甘言に惑わされず、科学的根拠がある確実な発毛に取り組むようにしましょう。

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