ハゲスイッチは存在するのか真剣に検証する
薄毛に悩む人、もしくは薄毛を恐れる人の間でまことしやかに語られる「ハゲスイッチ」というものをご存知でしょうか?
若い頃はフサフサだった髪の毛がある時期を境に薄くなりだすことを表す比喩的な表現として「スイッチが入った」という使われ方をします。要は「ハゲが始まった」ということになりますか。
しかし、ハゲスイッチはこういったハゲの始まりを表現する手法とは別に、言葉そのままの意味として使われることもあります。これまでのOFF状態からONに切り替わり状況が180度転換したと。
特に短期間で一気にハゲあがってしまった場合などは真剣な面持ちで「ハゲスイッチが―」何て使われ方をします。
これまでハゲとは無縁だった人がスイッチオンにより一気にハゲることはあるのか?本当にハゲスイッチというものは存在するのかどうかなどを馬鹿真面目に考えてみたいと思います。
ハゲスイッチの定義
そもそもハゲスイッチとはどういうことなのか?
「スイッチ」というからにはONにしてはじめて効力を発揮するもので、裏を返せばONにする前は一切効力を発揮しないことになります。
つまりハゲスイッチが入ることによってそれまで薄毛とは無縁だった人が一気にハゲだすことを意味しています。人間の体の構造上こんなことがあり得るのかどうか疑問に感じることも。
比喩表現としてのハゲスイッチは除外
一方、「ハゲだした」という状況を「ハゲスイッチが入った」と表現することもあります。この場合は明確なタイミングを指すわけではなく、「薄毛が進行してきた」という状況をやや自虐を交えて言っているに過ぎません。
なので、こういった事例はここでは除外します。あくまでもあるタイミングにスイッチが入ったかのようにハゲが始まる状況があり得るのかどうかについて検証してみたいと思います。
ハゲの原因のおさらい
ハゲスイッチに関して検証するには、まず私たちが恐れる薄毛の原因について明らかにしておく必要があるでしょう。
まず、私たちのハゲは男性型脱毛症(AGA)であると断定します。なぜなら男性の薄毛の9割以上はこのAGAだから。頭頂部や前頭部のみが薄くなり、側頭部や後頭部はフサフサという状況であればAGAで間違いありません。
AGA以外であれば円形脱毛症や脂漏性皮膚炎による薄毛が考えられますが、円形脱毛症はごく狭い範囲において完全に抜け落ちてしまうため一見してもAGAとは明らかに違いますし、そもそも放置しておいても勝手に治ることが多い。
脂漏性皮膚炎や粃糠性(ひこうせい)脱毛症による薄毛であれば、頭皮に酷い炎症やフケが表れるなど明らかな異常が確認できるので、そういった方はとっとと病院行け。
AGAの原因はジヒドロテストステロン(DHT)
ではそのAGAの原因とは何なのか?
育毛関連サイトや一部の無責任な医師は生活習慣や食生活、ストレスが原因だとのたまいますが、これは大きな間違いです。これらはAGAの要因ですらありません。
AGAの原因は、男性ホルモンであるテストステロンと、5αリダクターゼという酵素が結合して作り出されるジヒドロテストステロン(DHT)です。そこに生活習慣や食生活が入り込む余地はありません。
ハゲスイッチに関する検証は、薄毛のタイプはAGAで原因はDHTという前提で進めていきます。
ハゲスイッチを検証するためにの要因
薄毛になってしまう場合、あるタイミングを境に髪の毛が薄くなっていくのか、それともそういった明確なものはなく加齢と同じようにじわじわと薄くなっていくのか非常に気になるところですよね。
男性型脱毛症(AGA)の原因というのはジヒドロテストステロン(DHT)に集約されますが、これによって薄毛になるプロセスや関連する要因は複数存在します。
少し詳しく見ていくと…
テストステロン
例えばテストステロン。体表的な男性ホルモンであるこの物質は男らしい太い髪の毛を作り出すとも言われています。DHTと同じく男性ホルモンながら、髪の毛に対する作用は真逆という見方があるのです。
つまり、このテストステロンが多ければDHTがある程度存在してもハゲない可能性があるのです。しかしこのテストステロンは年齢と共に減少していきます。
そう、年齢と共に薄毛が増える状況と反比例するのです。つまりテストステロンの減少がAGAの一因になっている可能性があるのです。
ただ、これを明確に検証したデータはないため推測の域を出ませんが…
5αリダクターゼ
テストステロンと結びついてDHTを作り出す酵素である5αリダクターゼ。この分泌量は遺伝によって決まると見られています。
AGA治療薬であるフィナステリドやデュタステリドが5αリダクターゼ阻害薬であることを考えても、この量が薄毛に大きく関わっているのは間違いありません。
ジヒドロテストステロン(DHT)
AGAの直接的な原因なのがジヒドロテストステロン(DHT)。何度も書いているようにテストステロンと5αリダクターゼが結合して生成されます。
言うまでもなくDHTの量が少ない方が薄毛になりにくい。しかしDHTは加齢と共に増えていくという見方があります。そう、テストステロンと違い加齢によって薄毛が増える状況と比例するのです。
アンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)
毛乳頭細胞内には男性ホルモンと結合するアンドロゲンレセプターと呼ばれる受容体が存在します。ここにDHTが結合すると成長を抑制する何らかのシグナルが発せられ薄毛になるとされます。
この男性ホルモン受容体に関する遺伝子は母親から受け継ぐX染色体に含まれるが「ハゲは母方から遺伝する」と言われる所以。
極端な話、5αリダクターゼやDHTがどんなに多くても、DHTに対するアンドロゲンレセプターの感受性が悪ければハゲないことになります。
ハゲスイッチを徹底考察
ここからが本題。上記を踏まえハゲスイッチを考察してみましょう。
AGAの原因とされるDHTは胎児や男児の生殖器の成長に欠かせない男性ホルモンであることから、年齢問わずDHTを持っていることになります。
しかし、一部のハゲエリートを除きAGAが発症するのは成人になってから。しかも歳を重ねれば重ねるほどAGAの発症率は上昇します。
となると、ハゲスイッチが存在するのであれば、年を取るほどONになりやすいことに。そして加齢とAGAを関連付けるものとして考えられるのが男性ホルモンであるテストステロンとDHTの存在になります。
テストステロンの減少とDHTの増加
男性らしい太く丈夫な髪の毛を作るとされるテストステロンの分泌が年齢によってどういった推移を辿るのか見て頂きましょう。
どうでしょう?テストステロンは20代をピークに減少する一方であることが分かります。ただし、テストステロンが減ったからといって薄毛になってしまうわけではないので、これとハゲスイッチは関係ないように感じますよね。
しかし男性ホルモンというのは男性を男性たらしめている極めて重要なホルモン。
なぜなら男性ホルモンが減ってしまうと子孫繁栄に必要な性欲が無くなってしまいますし、体毛やヒゲ、力強い筋肉の存在といった男性らしい体も維持できなくなってしまいます。女性のように胸が出てしまうことすらあるほど。
そうならないために体はどうするのか?そう、加齢によってテストステロンが減っていくのを補うため、より強力な男性ホルモンであるDHTを増やすというのです。
年齢を重ねるにつれテストステロンが減るのに、反比例して体毛やヒゲは濃くなり髪の毛は薄くなっていきますよね。これこそがDHTが増えている証と見られます。
つまりこういうこと。
DHTが増え続けるという点に関しては、おそらくすべての男性に共通する点のはず。そこにハゲる人ハゲない人が存在する理由は5αリダクターゼの分泌量や、そにれよって作られるDHTの量、そしてDHTの感受性が関わってくると考えられます。
仮にハゲスイッチというものが存在するのであれば、男性でも一定量持っている女性ホルモンやテストステロンによって髪の毛を作り出そうとする作用より、DHTの量や作用が上回った段階でスイッチオンとなるのではないでしょうか。
そして、テストステロンが減り続ける一方でDHTは増え続けるという性質上AGAの進行は不可逆的である…一度入ってしまったハゲスイッチが元に戻らないことからもこの理論は一定の説得力があるのかなと。
…前振りが長かった割には至って平凡な結論になった感は拭えないが…
ハゲスイッチオンの判断基準は?
一度入ってしまったらオフになることは基本的にないハゲスイッチ。じゃあスイッチが入ったかどうかはどう判断すればいいのでしょうか?
というのも、薄毛というのは対策が早ければ早いほど若い頃のようなフサフサの髪に戻る可能性が高まるため、ハゲスイッチオンをいち早く察知するのは極めて重要なのです。
実はAGAというのは初期段階では判別するのが困難と言わざるを得ません。徐々に減ってくるため変化に気付きにくいうえ、AGAでなくても加齢によって髪の毛が細くなることも多いため正確な診断が難しいのです。
かといって明確に薄くなってからでは手遅れになるケースも。頭頂部や生え際が明らかに薄くなってきた状態というのはそれなりに進行している証だからです。
違和感を抱いたらハゲスイッチオンを疑う
ハゲスイッチが入ってしまった場合の初期の兆候として多いのは何らかの違和感を抱くというもの。
- 髪の毛全体のシルエットが四角くなった気がする
- セットが決まりにくくなった
- 髪の毛の手触りが柔らかくなった
- 帽子やヘルメットを脱いだ後ずっと髪の毛が潰れたまま
明らかなボリュームダウンとまではいかなくても、以前に比べ何となく違和感を覚える場合は要注意。上記はAGAによって髪の毛が減ってきたり細くなったりした時の典型的な初期症状だからです。
加齢によっても髪の毛は徐々に細くなっていくため、ボリュームダウンが必ずしもAGAとは限らないものの、こういった兆候が見られた場合は注意深く経過を観察し、その違和感が強くなるようならすぐに対策するべき。
薄毛の兆候は何となく察知しているけど、それを受け入れることができない人は多いもの。「髪形のせいかもしれない」「そのうち治るかもしれない」、と。そうやって手遅れになるケースも非常に多いのです。
ハゲスイッチが入る入らないにかかわらず、何の対策もなしに衰えた髪の毛が改善することはまずありません。顔や体がどんどん老化していくのと同様に、髪の毛も衰える一方なのです。
ハゲスイッチをOFFにするには?
ではONになってしまったハゲスイッチを再びOFFにするにはどうすればいいのか?結論から言うとOFFにすることは現状不可能です。
唯一の治療法として医療機関で処方されるフィナステリドやデュタステリドを持ってしても、AGAの原因であるDHTを減らし薄毛を改善させることができるのは薬を飲んでいる間だけ。
自毛植毛は後頭部や相当部の髪の毛を薄毛部分に移植するだけで、AGAの進行を止めることはできまんせんし、近い将来出てくるであろう毛髪再生医療をもってしても同様。一度入ってしまったハゲスイッチを切ることは今のところ不可能と言わざるを得ません。
だからスイッチが入ってしまったらそれが運命と諦めるのがベスト。諦めさえすれば髪の毛の悩みに苛まれることはありませんからね。
しかし…それができれば苦労はしない!
たかが髪の毛、されど髪の毛。男は頭に生えている毛程度で人生が大きく変わってしまうのです。女性関係はハードモードに移行すると思って間違いないでしょう。
確かに現在の医学ではハゲスイッチをOFFにすることはできません。しかし将来的にそれが可能になることを夢見て、それまでの繋ぎとして髪の毛を維持しておくことはできます。
ベストなのはやはりフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤。下手に自毛植毛などをしてしまうと将来の治療の妨げになる恐れがありますからね。
ハゲスイッチのまとめ
薄毛人間の間でまことしやかに語られるハゲスイッチ。
一般的にはAGAが始まってしまったことを比喩する表現と見られますが、ある時点を境に髪の毛が薄くなることを考えれば、その「ある時点」こそがハゲスイッチオンのタイミングと考えられます。
そう、ハゲスイッチは確実に存在するのです。
私たちの薄毛のほとんどは進行性のAGAであり、そのAGAは遺伝によるホルモンが影響するとあって一度スイッチが入ってしまえばそれをオフにする手立てはありません。
ただし、対症療法にはなりますが発毛剤を使うことによって進行を止めたり改善させたりといったことが期待できます。スイッチが入ってしまったからといって諦める必要はないのです。
薄毛の治療は早く始めるに越したことはありません。スイッチオンの兆候が見えだしたら早急に対策することをおすすめします。
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