脱毛症診療ガイドライン2017年版に刷新

脱毛症診療ガイドライン2017年版に刷新

日本皮膚科学会がエビデンス(科学的・医学的根拠)に基づき、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症に効果的な成分や治療法の推奨度を判断し公表してる男性型脱毛症診療ガイドラインが2017年版に刷新されました。

これまでは2010年版のものしか存在しなかった一方で、これまで多くの成分が開発・登場したため若干の時代遅れ感がありましたが、2017年版でそういった印象を払拭できるのでしょうか?

2017年に新たなものを策定するという話は聞いていたものの、結局年末にまでずれ込んだ男性型脱毛症および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版。個人的な見解を交えつつ詳細に触れていきます。

2010年版と2017年版の比較

2010年版の「男性型脱毛症診療ガイドライン」から「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」と名称を変更し女性の薄毛にもスポットライトを当てた2017年版をとりあえず見てみましょう。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

これを見て「あれ?あんまり変わってない?」と感じた人は鋭い。7年ぶりに刷新されたことでかなり大幅な変更が加えられると思っていたのですが、肩透かしを食らった印象。

分かりやすく2010年版と2017年版を比較してみましょう。(クリックで大きくなります)

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

いくつかの成分や治療法について追加や削除、そして評価に若干の変更が加えられたものの、7年も経過したことを考えると変更は最小限に抑えられている印象を受けますよね。

2017年に新たなガイドラインを策定するという目標を守った結果若干骨抜きになった感も否めないが…

2017年版脱毛症ガイドラインに対する個人的見解

2010年の男性型脱毛症診療ガイドラインから長い時間が経ち、その間に育毛剤市場では様々な成分が登場しています。それを考えると今回の新たなガイドラインはあまりにも変化がなさすぎる気がします。

しかしよく考えてみて下さい。

確かに育毛剤の成分はM-034やアルガス2、キャピキシル、リデンシル、ピディオキシジルなど挙げだしたらきりがないほど登場していますが、科学的根拠のある成分や治療法はほとんど出ていません。

しっかりとした根拠を元に登場した唯一の治療法であるデュタステリドに関してはしっかりと追加されていますし、近年医師が提供する高額で胡散臭い治療法「ハーグ療法」に代表される育毛メソセラピーについても言及しています。

つまり、根拠についてある程度議論の余地があるものについては追加されており、一方で金儲けのためだけに出てきたなんの発毛根拠もないゴミみたいな育毛成分についてはスルーしている。

2010年版から大きな変化は確かにないものの、育毛業界やAGA治療を取り巻く状況を考えれば妥当と判断してもいいのではないでしょうか。

変更・追加された主な治療法

2010年版の男性型脱毛症診療ガイドラインから2017年版の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインに刷新された際に変更・追加されたものについて簡単に説明しておきましょう。

デュタステリドの追加

2010年版のガイドライン策定時に認可されていた発毛成分はプロペシアに代表されるフィナステリドとミノキシジルのみで、評価に関しても最高のAにランクされているものはこの2つのみでした。

しかし、第3の発毛成分といえるデュタステリド2015年に正式認可されたため、今回刷新されたガイドラインでは「行うよう強く勧める」という最高のA評価を受け新たに登場しています。

ちなみに、一般的にフィナステリドの1.5倍程度の効果があるとされるデュタステリドですが、ガイドラインの評価としては「フィナステリドに比べ全毛髪数と毛直径の増加はデュタステリドの方が優れた結果を示したが、直径60μm以上の硬毛数では有意差はなかった」としています。

フィナステリドより効果が高いのはほぼ間違いないものの、極端な差はないと見ていいのかもしれません。

アデノシンの躍進

個人的に意外だったのが日本において資生堂のアデノバイタルやアデノゲンに配合されているアデノシンの男性に対する評価がこれまでの「C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」から「B:行うよう勧める」に上昇したこと。

なぜかというと、2010年版の段階では男女ともに1編ずつしか存在しなかった試験のデータが、2017年時点では女性へのものは1件で変わらなかった一方で男性に対してのものは3件に増えていたため。

その3件ではすべてアデノシンの有効性を示しており、うち1件については5%のミノキシジル外用薬と同等の発毛効果が認められたとのことでB評価にランクアップしたと考えられます。

それでもB評価に留まった理由についてはミノキシジルに比べてデータが不足しているからなのでしょう。それでも十分躍進と呼べるものだが。

これによって資生堂のアデノバイタルやアデノゲンの信頼性が増したと考えることもできるが、個人的には高濃度ミノキシジルに加えアデノシンも配合するフォリックスシリーズに注目したい。

ハーグ療法はやっぱりクソだった

近年AGAクリニックなど金目的を全面に押し出した医療機関が積極的に行っている、バカみたいに高額なハーグ療法や育毛メソセラピーといった成長因子を頭皮に直接注入する治療法がハッキリと否定されました。

その評価は「C2:行わないほうがよい」というもの。日本皮膚科学会が同業者であるAGAクリニックの医師に配慮してそれなりに高い評価をするのではないかという懸念があったが、しっかりと良心が示された格好。

ハーグ療法を行うクリニックはエビデンス(科学的根拠)があることを主張するが、2017年の脱毛症診療ガイドラインにおいて「安全性なども含め、その有効性は決して十分に検証されているとはいえない」と斬り捨てています。

ただ、同時に「今後が期待される治療法」という文言も盛り込まれているため、もう少し研究が進めば評価も変わってくるのかもしれません。

個人的にはバカみたいに高額で、かつロクな発毛根拠がないハーグ療法は「金儲けのためにハゲを騙している」という印象しかないがな。

ボロクソに書いた「ハーグ療法は金の無駄 一切おすすめできない理由」の記事を修正する必要がなくなったので、とりあえずホッとしています。

意外だったかつらへの言及

今回のガイドラインを見てみると「かつらの着用は有用か?」という項目が追加され、C1の評価を得ています。

医学的見地からかつらを評価するというのはギャグのような印象を受けますが、その大きな理由にクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上が挙げられています。

根本的な治療にはならないが、薄毛がどうしても改善しない場合やQOLが低下している場合には、かつらを着用し生活の質を高めることを考慮してもよいという判断になっています。

高性能なかつらは高額ながら着用すれば確実にフサフサになるのだから、同じく高額かつまともな効果が望めないハーグ療法や育毛メソセラピー、育毛サロンに比べれば遥かに建設的かもしれない。

ミノキシジルタブレットが追加された

ハーグ療法が否定されたことは朗報だった一方で非常に残念だったのがミノキシジルタブレットが「D:行うべきではない」という最低評価で追加されたこと。

ご存知の方も多いと思いますが、ミノキシジルタブレットは「最強の発毛剤」として名高く、副作用のリスクがある一方で高い発毛効果があるとして薄毛治療の最終手段という位置付けの人も多いはず。

AGAクリニックで処方されるほか個人輸入を用いれば非常に安価に手に入ることもあり、フィナステリド+ミノキシジルタブレットの組み合わせは「ミノフィナ」と呼ばれ多くのハゲに親しまれています。

そんなミノキシジルタブレットがなぜ最低評価なのかというと、ミノキシジル外用薬は世界中で臨床試験が行われ発毛効果が認められている一方で、ミノキシジル内服薬は発毛剤としての臨床試験が実施されていないから。

そもそもミノキシジルは内服薬で発現した多毛症の副作用に着目し、それを主作用としつつ副作用のリスクを減らす目的で頭皮に塗布する外用薬として使われるようになりました。

そのため、ミノキシジルタブレットに強力な発毛効果があるのは疑いようがないものの、発毛剤としての臨床試験が行われていないこと、発毛剤として認可している国が存在しないことが最低評価の大きな理由。

加えて、本来血圧を下げる降圧剤であるミノキシジルを服用すれば、血圧低下やむくみ、動悸、息切れなどの障害が発生する可能性があり、安全性の面においても懸念が示されいます。

言いたいことは分かる。ガイドラインに書かれていることを否定する理由もない。

だが、私たちハゲはそんなリスクを承知でミノキシジルタブレットを使っている。なぜなら、臨床試験が行われていなくても高い発毛効果があることは明白だから。そして、リスクのあるミノタブを使うこともいとわないほどハゲは辛いから。

フィナステリドやデュタステリド以上に副作用リスクがあるのは間違いないので万人におすすめできるものではないのは確かですけどね。

2017年版ガイドラインは納得のいくものだった

2017年末になってやっと公表された男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン。

変更や追加は予想以上に少なかったものの、それは裏を返せば信頼に値する治療法がほとんど出てこなかったことを意味しており、キャピキシルとかリデンシルといった何の根拠もない化粧品成分が追加されなくて本当に良かったと感じる。…まあ、これらを追加した上で全否定してくれるなら構わないけどね。

個人的に残念だったミノキシジルタブレットの最低評価に関しても、その理由を見れば納得できるもの。だからといってミノタブの使用を止めるようなことはしないし、これからも変わらず薄毛治療の最終手段として君臨し続けるでしょうけどね。

今回のガイドライン刷新を受けてしみじみ感じたのは「薄毛治療にこれといった進化は見られない」という点。

前回のガイドラインが策定されてから7年間で進歩したのはデュタステリドが登場したことくらい。しかしこのデュタステリドもフィナステリドのパワーアップ版であり劇的な進化とは言えない。

薄毛治療の中心はフィナステリドorデュタステリドとミノキシジルという図式は変わらず、そこに根本治療の希望はないのは残念なところ。

これからiPS細胞などを用いた再生治療が出てくることが予想されますが、コスト面との兼ね合いを考えると行える人は限られるのではないでしょうか。

2017年版脱毛症診療ガイドライン策定から読み取れるのは薄毛治療の進歩の遅さ。私たちの世代が薄毛を根本から治療するのは無理なのかなーと感じさせるには十分な内容でもありました。

髪の毛が完全に抜け落ちる前にどうにかして欲しいというのが本音か。

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