睡眠とハゲは無関係 はびこる嘘に迫る
「睡眠不足だとハゲる」「育毛にはゴールデンタイムがある」など、睡眠と薄毛を関連付けた情報がネット上を飛び交っています。しかしこれらはなんの根拠もない都市伝説に過ぎません。
中には「医師監修」とのたまい、あたかも科学的根拠があるかのように書き連ねている記事も存在するたちの悪さ。
睡眠不足が健康に悪影響があることは紛れもない事実ながら、それと髪の毛はまったく別の問題。健康に悪いから髪の毛にも悪いなんて乱暴にもほどがある。
なぜ睡眠と薄毛が無関係と言い切れるのか、詳しく説明していきます。
- 睡眠で薄毛になるという科学的根拠なし
- 「睡眠不足でハゲる」が嘘だと言い切れる理由
- 育毛のゴールデンタイムという嘘
- AGAと睡眠はまったく関係がない
- 睡眠と薄毛の関連性に関する矛盾
- 寝すぎでハゲるも大嘘
- 睡眠と薄毛は無関係 ハゲる人間は何してもハゲる
睡眠で薄毛になるという科学的根拠なし
睡眠不足が薄毛の原因になりうると書いている記事やサイトは数あれど、その根拠を示しているサイトって見たことがありますか?
巷にあふれる情報では下に挙げるようなことを理由に睡眠と薄毛を関連付けているのではないでしょうか。
- しっかり睡眠を取らないと成長ホルモンが分泌されない
- 睡眠不足で自律神経が乱れる
- 睡眠が足りないとストレスが増大する
- 寝不足だと髪の毛に栄養が行き渡りづらくなる
- 髪の毛のダメージが修復されない
なんじゃこりゃ?だからどうした?
この中には確かに正しい情報も含まれています。しかしそれと薄毛はまったく関係ない。これらの理由と薄毛との関連性を調べる研究は行われておらずデータも存在しない。つまり科学的根拠なし。
これらとハゲを結びつけているのはすべて憶測なのです。「明確な根拠がないだけで、これらが理由でハゲる可能性だってあるだろう」と感じる人もいるでしょうから、一つずつ詳しく見てみましょう。
「睡眠不足でハゲる」が嘘だと言い切れる理由
では、薄毛と睡眠を強引に結び付けた論調を「嘘」と言い切ることができる理由を具体的に見ていきましょう。
睡眠不足でも毛は問題なく生える
睡眠中…特に深い眠りであるノンレム睡眠中に成長ホルモンや女性ホルモンが活発に分泌されるという点に関しては否定するつもりはありません。
しかし睡眠中の成長ホルモン分泌と薄毛を結びつけるのはあまりにも乱暴。
徹夜したら毛の成長が止まるかい?万年睡眠不足の人間はヒゲや体毛の成長が遅くなったり薄くなったりするかい?。
ならないよね。
女性であれば、慢性的な睡眠不足により女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減って髪の毛の成長が弱まるという説にも一定の説得力があるが、男のハゲには関係ない。
成長ホルモンの分泌が減るから薄毛になる?バカじゃないのか?
自律神経が乱れてもハゲない
睡眠不足によって自律神経のバランスが崩れてしまう可能性があり、また自律神経が乱れることによって睡眠不足を引き起こしやすくなるなど、この2つは切っても切れない関係といえます。
でもハゲない。大丈夫。
緊張状態を引き起こす交感神経が優位になれば血管が収縮し頭皮への血流が悪くなる…とはいうが、そんなことでハゲていたら緊張状態を長く強いられる社会人はみんなハゲてるわ。
仮に100歩譲って頭皮への血流悪化で薄毛になるとしよう。であるなら、側頭部も後頭部もすべて薄くなるはず。しかし私たちのハゲはM字部分や生え際、頭頂部のみで後頭部や側頭部は悲しいほどフサフサ。
なぜか?自律神経とも血流とも全く関係がない男性型脱毛症(AGA)だから。
寝不足によるストレスと薄毛は無関係
しっかりと睡眠を取っている人間はそうでない人に比べストレスが少ない傾向にあることは複数の調査結果により明らかにされています。
でもストレスと薄毛にはなんの相関性もない。
過度なストレスに晒されると自律神経やホルモンバランスが乱れるものの、前述のようにこれらで薄毛になることはありません。
そもそもストレスと薄毛を関連付けているものは主に円形脱毛症。しかし、かつてはストレスが原因とされていた円形脱毛症も、今では自己免疫疾患と結論付けられており、ストレスは「一因になりうる」という程度の見方が大勢。
あなたが悩んでいる薄毛が円形脱毛症であるなら、睡眠不足によるストレスが一因である可能性を完全否定することはできませんが、ベジータやザビエルならストレスとは何の関係もないから安心しろ。
睡眠中に髪の毛のダメージが修復されるとか大嘘
「起きて活動している間には紫外線や外部からの刺激により髪の毛にダメージが蓄積し、質の高い睡眠によってそのダメージが修復される」「睡眠不足だとダメージが修復されず薄毛になる恐れがある」
こんなことを平然と描いているサイトがあるから驚きを隠せない。
私たちが見ている髪の毛というのは“死んだ細胞”であり、生きているのは毛根部分の毛乳頭細胞や毛母細胞だけ。死んだ細胞を人体がどうやって修復するんだ?
戯言もここまでくると潔さすら感じる。
頭皮のダメージも修復?そもそもAGAに頭皮環境は関係ない。頭皮のダメージでハゲるとしたら、皮下組織にまで到達するような深い傷を負うか、強い炎症を起こしているケース。
それらは睡眠程度ではどうにもならないから病院行け。
育毛のゴールデンタイムという嘘
皆さん「睡眠のゴールデンタイム」というものをご存知ですか?
主に美容面への影響を取りざたされたもので、午後10時から午前2時までの4時間にしっかり睡眠を取ることで成長ホルモンが旺盛に分泌されるという説。
どっかの無知がこれを育毛にも結び付けた結果、「育毛のゴールデンタイム」なるアホくさい都市伝説が生まれましたとさ。
実はこのゴールデンタイムに根拠などなく、現在ではいつ睡眠を取ってもノンレム睡眠中はしっかりと成長ホルモンが分泌されると結論付けられ、美容業界においてはすでに都市伝説として片付けられています。
しかし育毛業界においてはいまだにこれを唱えているから恐ろしい。
そもそも、前述した通り睡眠中の成長ホルモンとAGAはまったく関係がありません。ゴールデンタイムも的外れだが、睡眠中の成長ホルモンも的外れという二重苦。ほんとこの業界は腐ってる。
AGAと睡眠はまったく関係がない
ここで基本に立ち返り、私たちのハゲについて今一度おさらいします。そうすることによって睡眠と薄毛に関連性がないことが浮き彫りになるはず。
男性の薄毛のほとんどは男性型脱毛症(AGA)と呼ばれるもので、後頭部や側頭部はフサフサなのに生え際や頭頂部が薄毛になってきているならAGAと思ってまず間違いありません。
ちなみに、AGA以外の薄毛で考えられるものは、脂漏性皮膚炎など頭皮の炎症や異常によって引き起こされるものや、自己免疫疾患である円形脱毛症。
これらは極めて局所的だったり明らかな炎症や多量のフケが見て取れたりするうえ、頭皮のどの部分にも現れるためAGAとの違いはすぐに分かるはず。明らかに異常だからまず病院で治療しようと考えるでしょう。
ゆえに、私たちが悩むナチュラルなハゲはほぼすべてAGAと思って間違いない。
AGAの原因
ではここからが本題。
AGAというのは男性ホルモンであるテストステロンに、遺伝的要素で分泌量が決まるとされる5αリダクターゼ(5α還元酵素)が結びついて作り出されるジヒドロテストステロン(DHT)が原因です。
ただし、DHTが多いからといってハゲるとは限りません。そこには5αリダクターゼ同様遺伝的な要素で決まる毛乳頭細胞内のアンドロゲンレセプターの数や感受性が影響します。
DHTがこのアンドロゲンレセプターと結合することによって髪の毛の成長が阻害され、薄毛になってしまうというメカニズムになります。
さて、AGAのメカニズム上に睡眠と関係があるものが出てきたでしょうか?
睡眠と薄毛の関連性に関する矛盾
質の高い睡眠は成長ホルモンを分泌するとされますが、同時にテストステロンも活発に分泌されます。連想ゲームがお好きなら、「質の高い睡眠→テストステロンどばどば→DHTも増える→ハゲ」という結論に至ってもおかしくはないんだが、そんな説を見聞きすることはありません。
当然ながらテストステロンの量が多いからといって薄毛になるわけではありません。しかし、成長ホルモンよりテストステロンのほうがAGAに密接に関わっているのは間違いありません。
AGA治療に対してなんの根拠もない成長ホルモンに焦点を当てるくせに、テストステロンが増えることに関しては口を閉ざす。睡眠と薄毛に関する都市伝説がお好きなら、質の高い睡眠で増えるテストステロンが薄毛を助長するというぶっ飛び論が出てきてもおかしくはないですよね。
しかしそんな話は聞いたことがない。なぜか?
それは育毛のゴールデンタイムなどという都市伝説をいまだ真実のように書き連ねているサイトが多い点を見ることで浮き彫りになってきます。
そう、大した知識も考察力もない人間が他のサイトの情報を鵜呑みにして記事を書いているからに他なりません。少し前に「WELQ問題」として取り上げられましたよね。いわゆるパクリ記事。聞こえ良く言うとリライト記事。
睡眠の質とAGAとの関連性に根拠やデータが一切存在しないにもかかわらず、それが真実かのように書く。そして最終的にAGA治療に対する一切のエビデンス(科学的根拠)がないチャップアップなどの育毛剤をおすすめしてくる。金のために。
信じられないことに、育毛剤を販売するメーカーが自社のサイトでも同様のことを書いていたりします。常識的な医師であれば鼻で笑うレベルの都市伝説を平然と。
もういいよ、そういうの。
寝すぎでハゲるも大嘘
睡眠不足でハゲるとは対照的に、寝すぎでもハゲるという情報が散見されます。
睡眠の質が落ちるとか頭皮環境が悪化するとかもっともらしいことを書いていますが、睡眠不足以上にバカらしい記事の典型。
「睡眠不足や寝すぎでハゲになるという根拠はないけど、それを完全否定する根拠もないでしょ」とでも言いたいのだろうか。もはや言ったもん勝ちである。
生活習慣の乱れ、食生活の乱れ、ストレス、運動不足、睡眠不足、寝すぎ、紫外線、シャンプー選びなどなど…育毛サイトが薄毛の原因として挙げているものは枚挙にいとまがないが、それをすべてクリアできる人間など存在しないよ。それが本当なら世界中の人間すべてハゲているわ。
そもそもすべて科学的根拠なし。
もうね、いっそのことこう書いたらどうだろう?
「生きているとハゲます」
睡眠と薄毛は無関係 ハゲる人間は何してもハゲる
男性の薄毛というのは、円形脱毛症や脂漏性皮膚炎など病的なもの以外のほとんどはAGAです。そしてそのAGAは5αリダクターゼという酵素と、それが生み出すDHT、そしてアンドロゲンレセプターの量や感受性の程度が左右します。要はほぼ遺伝。
そこに睡眠が関与する余地はありません。端的に言ってしまえばハゲる人間はどんな対策をしてもハゲるし、ハゲない人間は何をしてもハゲない。
過度な睡眠不足が健康面に悪影響を及ぼすことは疑いようがないものの、ことAGAに関しては睡眠とは無関係なのです。
薄毛が気になりだしたあなたが「そういえば寝不足気味だわ」と感じていたとしても、それはまったく関係がありません。しっかり睡眠を取るよう心がけたとしてもハゲは改善しません。
残酷な物言いになってしまうかもしれませんが、生活習慣や食生活がAGAに悪影響を与えることはないし、これらを改善しても髪が生えることはない。それが科学的な結論なのです。
薄毛に関して深刻な悩みを抱えている人が多いことから育毛業界では大きな金が動きます。そのため根拠のない情報でも発信することで不安を煽り、育毛関連商品の販売に繋げたいというメーカーやサイトが溢れています。睡眠に関しても同様。
一方、科学的根拠に裏付けされた治療法というのは限られてくるのが実情。現状では医療機関で処方されるフィナステリドとデュタステリド、そしてミノキシジルの3つの発毛成分を配合した発毛剤、もしくは自毛植毛など高額な治療に限られてしまいます。
どういった対策を行うかは各々の判断にお任せしますが、巷にあふれる嘘の情報には決して惑わされないよう注意して下さい。
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