自毛植毛の落とし穴 語られない真実

自毛植毛はデメリットだらけ

薄毛を改善する方法のひとつとして注目を集めている自毛植毛。自分の毛を移植することで親和性も良く、近年は技術も向上し定着率もかなり高まっているものの、デメリットが多いのも特徴。

自毛植毛のデメリットというと高額な費用がまず思い浮かぶ人も多いと思いますが、100万円くらい出すことができれば一生涯フサフサになる…なんて夢を見ていると痛い目を見ますよ。

自毛植毛は育毛剤同様非常に高額なアフィリエイト報酬が設定されていることもあり、自毛植毛のメリットばかりを書き連ねつつAGAクリニックのサイトに誘導するケースをよく目にします。

また、当サイトのように自毛植毛の悪い面・デメリットをしっかりと訴える記事かと思いきや、記事後半においてメリットを強調しだし、最終的には自毛植毛のクリニックを紹介するという手の込んだ手法も散見。

そんな自毛植毛の間違った情報に踊らされ、AGAクリニックのカモにされないためにも、自毛植毛にはどんなデメリットがあるのか、他の育毛サイトではあまり書かない点などもしっかりと訴えていきたいと思います。

育毛剤よりは効果があるという評価

まず、客観的かつ科学的・医学的に自毛植毛がどういった評価を得ているのか、専門家の見解を確認してみます。

2010年版男性型脱毛症診療ガイドラインによる植毛の評価

日本皮膚科学会によって2010年に策定された「男性型脱毛症診療ガイドライン」での自毛植毛の評価は、フィナステリドやミノキシジルといった発毛剤に次ぐ「行うよう勧められる」というもの。

市販の育毛剤は総じて「十分な根拠がない」というレベルの評価なので、それに比べれば効果は見込めるという判断なのでしょう。

また、2017年に刷新された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」においても同様の評価になっています。

2017年版男性型脱毛症診療ガイドラインによる植毛の評価

それもそのはず、こと髪の毛を生やすという点のみにおいては発毛剤ですら絶対に効くとは言い切れないのに対し、自毛植毛は植えた株の大半で発毛が見込めるため、発毛効果のない育毛剤より評価が高くて当たり前。

実際、同ガイドライン内における「B:行うよう勧める」の評価に至った理由を見てみると、フィナステリドやミノキシジルのような大規模な臨床試験が行われていないため科学的根拠は乏しいながらも、世界全体で約40万件の自毛植毛術が実施され、82.5%以上という高い生着率が得られていることを根拠に挙げています。

膨大なデータから高い生着率の裏付けが取れているのであれば、専門家もその効果を認めざるを得ない…といったところなのでしょう。

ただし、確実には生えるものの多くのデメリットが隠れていますけどね。

自毛植毛のメリットといえば?

デメリットばかりを書くのはフェアではないので、まずは自毛植毛にどういったメリットがあるのかを触れておきましょう。

自毛植毛は男性型脱毛症(AGA)の原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の影響を受けない後頭部などから髪の毛を毛根ごと採取し、それを薄毛部分に植え付けることで半永久的に発毛するようにする治療法。

かつては採取し植え付けた髪の毛(株)の定着率が低いという問題もありましたが、技術の進歩により現在は9割以上の定着率を誇るとされることから、植えた株の大半は発毛することになります。

しかもDHTの影響を受けない部位の株であるため、植えた部分に関しては将来にわたってハゲる心配はほとんどありません。

植毛終了後は特別なケアも必要なく、薄毛になる前の自分の髪の毛と同じような感覚を取り戻すことができる…それが自毛植毛の最大のメリットと言えます。

自毛植毛のデメリットの数々

一方で自毛植毛のデメリットは何なのか?

後頭部や側頭部から薄毛部分に株を移植さえすれば、発毛剤や育毛剤のように半永久的に使い続けたり、何らかのケアをし続けたりする煩わしさもなく、しかも半永久的に生え続けるんだから理想の治療法のように感じますが…

■高額費用

多くの方が想像している通り、自毛植毛の費用は高額です。

ハゲ上がってきたM字部分に少しだけ植毛…という場合でも数十万円は必要になり、ある程度広範囲になると100万円超えは確実です。

一度に植え付ける株数が多ければ多いほど1株当たりの単価は下がるものの、生え際から後頭部まで広範囲に行うと200~300万円は見ておかなければなりません。

自毛植毛は薄毛部分に対しほぼ確実に髪の毛を増やせるため、ある程度金銭的余裕があり、かつ「死んでも薄毛は嫌」という人にとっては魅力的といえるでしょう。

しかし一般的な感覚においては「薄毛は嫌だけどそんな大金は使えない…」という人が大多数なのではないでしょうか。

■本数には限界がある

自毛植毛は基本的に手作業で植えていくため、1度に施術できる本数には限界があります。また、自毛植毛は髪の毛を増やす魔法ではなく、後頭部などAGAの影響を受けない部分からの移植となる性質上、本数にも限界があります。

一般的に本数の限界は5000~6000グラフト(10000~15000本)とされます。

■密度に限界がある

移植できる本数に限界がある以上、当然ながら髪の毛の密度にも限界が存在。

薄毛でない日本人の平均的な髪の毛の密度は1cm2当たり150~200本くらい。グラフト数(株数)に換算すると、1グラフトあたり平均2~2.5本くらいなので、1cm2当たり70~80グラフトくらいになるでしょうか。

一般的な自毛植毛では、1度に行えるのは1cm2当たり30グラフトくらいが限界とされるため、薄毛になる前のフサフサの状態に比べると、当然ながらスカスカ感があります。

一部クリニックでは「1cm2あたり80~100グラフト移植できる」と豪語していますが、狭い範囲に一度に移植すると定着率が悪化するのは世界的に見ても通説になっており、現実的には1度で薄毛では人のようなフサフサになるのは不可能です。

また、仮にすごい技術力があって1cm2あたり80グラフト植えられたと仮定すれば100cm2(10㎝四方)で8000グラフト必要なことに。上で書いている限界数を考えれば広範囲の薄毛には対応できません。

部分的なものであれば、植毛手術を2度3度繰り返すことで薄毛でない人の8割程度の密度にまで持っていけるものの、当然その分費用がかかることになります。

密度を高くすればカバーできる範囲に限界が生まれ、広範囲にわたって自毛植毛を行おうとすればスカスカになってしまう…ジレンマですね。

■薄毛は進行している

多くの先人が薄毛を治そうと様々な対策を行い、そして夢破れてきたことからも分かるように、AGAというのは基本的に進行する一方です。

自毛植毛を積極的に行っているAGAクリニックや、そういった医療機関や自毛植毛の有用性を紹介している育毛サイトではあまり触れられていませんが、自毛植毛を行っても薄毛は当たり前のように進行していきます

何が言いたいのか?

自毛植毛をしてから1~2年はある程度満足できるかもしれません。しかし3年、4年と経って薄毛が進行してきたらどうなると思いますか?

そう、植毛部分は離れ小島になります

仮に生え際やM字部分だけに自毛植毛を施したのであれば、その部分だけ髪が生えて後ろはハゲ…という悲しい状況になるでしょう。

つまり…

自毛植毛の部位

上図の赤線部分に自毛植毛を施したとしたら、数年後には…

自毛植毛で離れ小島

…こうなることになります。やっつけ仕事ですいません。

これを回避するには、手術後もフィナステリドやデュタステリドといった発毛剤を服用し薄毛の進行を食い止めるか、でなければ再び高額な費用を払って再施術となります。

高い金払って自毛植毛したにもかかわらず、AGAの進行による離れ小島化を抑制するために結局発毛剤を飲まなければならないって、どんな罰ゲームだよ…

仮に再施術に踏み切ったとしても、また数年後には離れ小島になるのは言うまでもない。自毛植毛の不自然さを隠すための再施術は、AGAが進行しきって自前の髪が側頭部と後頭部だけになるまで続きます。

フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤を使用するにしても、薄毛の進行をどこまで抑えられるかは個人差が大きいため、結局薄毛の恐怖に怯える日々が続くことになる。

複数回の再施術を行った場合、その総費用は凄まじいものになりますし、「植えた部分以外は薄毛が進行する」という事実と、進行の抑制を発毛剤に頼らざるを得ない状況は、大きな心理的負担を強いることになるのでしょう。

■自毛植毛は非可逆的である可能性

現在はフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど発毛剤による治療が第一選択…つまり最良の治療法となっています。

しかし発毛剤がどの程度効果を発揮するかについては個人差が大きく、生えるかどうか分からないうえ、効果を実感するレベルで発毛したとしても、若い頃のようなフサフサの状態にまで戻る可能性は低いというのが実情。

本当に効果を実感できるか分からず、効いたとしても激的な改善までは望めない…そういった不透明さに嫌気し自毛植毛を検討する人も多いのではないでしょうか。

しかし、自毛植毛というのは薄毛になってしまった部位の毛穴に後頭部などの毛根を毛包ごとねじこむという“強引で不可逆的な治療法”。結果が気に入らなかったり別の治療法を試してみたくなったりしても、元の状態に戻すことはできないのです。

そんな状況で、もし数年後に画期的な治療法が出現したら…

発毛剤で治療している場合であれば、服用を中止することで元のナチュラルな薄毛の状態に戻すことができます。そこから新たな治療を始めることになんの障害もありません。

しかし一度でも自毛植毛をしてしまった場合、その部位に関しては別の治療法が制限される可能性も十分考えられる。新たな治療法との親和性が悪い場合、手詰まりになってしまうのです。

自毛植毛のような不可逆的な治療にはこういったリスクが存在することも覚えておきましょう。

出費を惜しまないならやる価値も

自毛植毛は高額費用が必要になるものの、一度施術した部分に関しては高確率で半永久的に生え続けることが最大のメリット。薄毛部分に確実に生やすことができるうえ、増える本数や結果が明朗なのも大きな利点です。

しかし、ケアが必要ないのは植毛した部分だけの話であり、施術後も薄毛が進行し、数年後には離れ小島になってしまうのは極めて大きなデメリットといえるでしょう。

薄毛の進行が止まる最終段階…生え際から頭頂部までツルツルの「波平状態」になるまで待ってから一気に施術を行えば、進行の恐怖に怯えたり、離れ小島になったりすることを回避できますが…

完全にハゲあがるまで我慢し、かつ数百万円ポンと出せる人であれば自毛植毛をやってみる価値はあるかもしれません。しかしそれはあまりにも非現実的な話ですよね。だからといって中途半端な薄毛の人がやると必ず悲惨なことになる。

そしてその“悲惨”を食い止めるには結局発毛剤を使用し続けるか、数年ごとの再手術が必要になるのです。

1回の施術で薄毛が解消、かつ進行も止まり一生涯にわたってフサフサというのであれば100万200万払う価値は十分あるため私も自毛植毛をおすすめするでしょう。

しかし、現実には薄毛の進行を食い止められない限り悲惨なことになるのは火を見るよりも明らかであり、そうなった時の金銭的・心理的負担を考えると決しておすすめはできない。

ならばフィナステリドやミノキシジルといった発毛剤を使用し薄毛の進行を抑制・改善しつつ、時間と共に自然かつ年相応に薄くなっていくほうがはるかに良いのではないでしょうか?

仮に今後革新的な薄毛治療が出てきたとしても、不可逆的な自毛植毛をやった後であれば対応できないという可能性も無視できません。

冒頭で取り上げた日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて、自毛植毛が発毛剤より下の評価というのは、そういったリスクも含まれての結果なのかもしれません。

育毛サイトやクリニックの甘い言葉を鵜呑みにせず、植毛スパイラルに陥るリスクや、別の治療の可能性を潰してしまう点など、総合的かつ冷静に判断するようにしてください。

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