有酸素運動でハゲが悪化する可能性

有酸素運動はむしろハゲる?

健康にとって良いとされる運動。中でも無理のない有酸素運動は様々な恩恵をもたらし、それは薄毛改善にも繋がるとする声が大多数を占めています。

その根拠は血行促進だったりストレス解消だったり…近年は「汗でDHTを排出する」なんてちょっと胡散臭い説まで飛び出し、それは瞬く間に広がって今では多くの育毛サイトで同様のことが書かれています。

しかしもっと深く調べてみると、有酸素運動をするとむしろDHTは増えるという研究データが出てきました。もしそれが事実なら、運動が薄毛に効果ないどころかむしろ悪化させる可能性すらありますよね。

有酸素運動など体を動かすことで本当にハゲは改善するのか?

    目次
  1. 運動で薄毛の改善・予防ができるとされる理由
  2. 運動で血行を促進させてもハゲは治らない
  3. 肥満を防げば薄毛の予防や改善に繋がる?
  4. 運動とストレス、薄毛の微妙な関係
  5. 発汗でDHTを排出するという根拠なし
  6. 軽い運動でDHTが増えるというデータも
  7. 運動にAGA改善効果は期待できない

運動で薄毛の改善・予防ができるとされる理由

ネットを見ていると運動が薄毛の予防・改善に役立つと書かれているサイトが多数を占めているのが見て取れる。その理由はほぼすべて共通しています。

  • 血行が促進される
  • 薄毛を誘発する肥満を防ぐことができる
  • ストレスが解消される
  • DHTの排出を促す

この中には正しい情報も含まれているものの、多くは男性型脱毛症(AGA)との因果関係がない根拠なき空論だったりします。

びっくりするのは一部のAGAクリニックの医師が平気でこれらを主張していること。科学的根拠にもかかわらず「AGAの要因です」なんて言ってハゲを不安にさせるような奴は医師を辞めろと言いたい。

まずはこれが薄毛を改善させるとする理由と反論、そしてその他運動と薄毛に関する興味深い説も取り上げてみましょう。

運動で血行を促進させてもハゲは治らない

体を動かせば血行が良くなる…これは紛れもない事実です。

血行が良くなれば頭皮の血流も改善し、髪の毛の成長に必要な栄養や酸素が行き渡る。結果育毛に繋がる…多くの育毛サイトで判を押したように同様のことが書かれています。もううんざり。

当サイトでは血行に関する情報が出てくるたびにこう書いています。「血行促進でAGAは治らん」と。

頭皮の血行が悪くなって栄養や酸素が滞り、結果薄毛になるというのであれば、髪の毛はもちろん眉毛やまつ毛、ヒゲなども薄くならないと理屈が通らない。

特に髪の毛に関しては後頭部や側頭部も含めまんべんなく薄くなるはずです。だって頭皮に栄養や酸素が足りなくなっているんだから、髪の毛全体が薄くなるはずですよね。

しかし実際はどう?ハゲてるのは生え際やM字部分から頭頂部だけでしょう?

男性の薄毛の9割を占めるとされるAGAのメカニズムはというと、毛乳頭細胞内で5αリダクターゼが男性ホルモンであるテストステロンと結びつきジヒドロテストステロン(DHT)を生成、それがアンドロゲンレセプターと結合して脱毛因子が作られ毛母細胞の成長を阻害します。

その作用は生え際から頭頂部にかけての髪の毛のみに起こり、ヒゲや体毛はDHTによってむしろ濃くなります。

つまり、血流うんぬんがAGAに関与する余地はないのです。

大昔から頭皮の血行促進が薄毛を改善させると信じられ、多くの方が実行し、そして何の効果もなくハゲ散らかした歴史を見れば明らかだろう。

本来血管拡張剤で血行促進効果があるミノキシジルだって、血流改善で髪の毛を生やしているわけではありません。毛包や毛母細胞に働きかけることで発毛させているのです。それはミノキシジル以外の降圧剤では発毛効果が見られないことからも見て取れる。

頭皮が壊死しかねないほど血流が悪くなればさすがにハゲるでしょうが、運動不足程度の血行悪化で薄毛になることはありません。ゆえに運動で血行を良くしてもハゲは治らない。

肥満を防げば薄毛の予防や改善に繋がる?

一方、運動によって肥満を解消できれば薄毛が改善する可能性は否定できません。健康的に痩せることができればな。

生活習慣や食生活がAGAを引き起こす直接的な原因になることは基本的にありません。そんな根拠は存在しませんし、AGAのメカニズムから考えても生活習慣でハゲるなどナンセンスです。

しかし、生活習慣や食生活の乱れ、運動不足など様々な要因が重なって起こる肥満に関しては事情が異なります。実際私の身の回りでも老若男女問わずデブにはハゲが明らかに多い。

その理由として考えられるのが、肥満によってリスクが急激に高まる高血圧や糖尿病を原因とした動脈硬化と、脂肪細胞によるインスリン抵抗性で血糖が思うように下がらずインスリンが増えてしまうことでしょうか。もちろん推測の域を出ませんが。

実際、肥満や高血圧、糖尿病とAGAの関連性を調べたデータがいくつか存在しています。ただし肯定的なもの、否定的なもの双方が存在しているため、ハッキリとした関連性は示されていないのが実情でもあります。

ただ体感的には肥満の人に薄毛が多いのは間違いないので、運動によって痩せることができればAGAを改善する効果もある程度期待できると考えています。もちろん高血圧や糖尿病も改善するという前提で。

とはいえこれにも明確な科学的根拠はなく私がそう感じているだけなので、断定はしません。あくまでも「可能性がある」ということで。

ただし、現実問題として肥満を解消し、それを長年にわたって維持できる人間などほんの一握り。運動が肥満の予防にはなっても、運動で肥満を解消するのは相当難しいというのが実情か。

運動とストレス、薄毛の微妙な関係

運動で薄毛が改善できるとする理由として多く挙げられているのが「ストレスの解消」です。ただ残念なことにストレスでハゲるなんて根拠はどこにもありません。

強いストレスで自律神経が乱れるだの、緊張を強いられ血行が悪くなるだの書かれていますが、これらとAGAを結びつけるものは見つかっていません。そもそもストレスで薄毛になるというデータも存在しない。

かつては強いストレスが原因で円形脱毛症になると思われていたことから、「ストレス=ハゲ」のイメージができたと推測されます。しかしその円形脱毛症も現在は自己免疫疾患であることが分かってきており、ストレスは「一因になりうる」程度の扱いに。

無理のない有酸素運動でストレスを解消してもハゲは改善しません。効果なし。

そもそも運動でストレス解消になるのか?

運動がストレス解消になるという点について多くの研究がなされており、実際のそれを裏付けるデータも多く存在します。運動習慣がある人はうつ病にかかる人が少ないという結果も複数存在しますしね。

ただ、それは運動に明確な目的を設定し楽しんで行動できる人や、もとからスポーツや運動習慣がある人である場合も多いんですよね。

薄毛を改善させるという目的があるとはいえ楽しんでウォーキングやジョギングを行える人であればストレス解消になるでしょう。

しかしそうでない人も多数存在します。運動嫌いな人が無理にウォーキングしようとしても、それはストレスにしかならないのではないでしょうか。

一緒にやってくれる人がいれば有酸素運動やスポーツを楽しく行えるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。忙しい20~40代の人が好きでもない運動のために一人時間を割くというのは結構な負担。

運動嫌いなのに「ハゲ改善のためにウォーキングしなきゃ…」なんて強迫観念にとらわれては、かえってストレスが溜まるでしょう。

運動は筋肉の維持に繋がりますし、血圧や血糖を下げる効果もあります。体や健康にとって有酸素運動がプラスになるのは間違いないものの、ストレスの低減に関しては「人による」としか言いようがありません。

「ストレス」という点だけを切り抜けば、運動がプラスになるとは限らないため、そのあたりは勘違いして欲しくないなと感じます。そもそもストレス解消でAGAは改善しないしな。

発汗でDHTを排出するという根拠なし

最近やたらと目にするのが「汗をかくことでAGAの原因であるDHTを排出する」という記述。個人や企業が運営する育毛サイトではもはや当たり前のように書かれています。

しかし、これに関する研究やデータは探せど探せど出てこない。

唯一根拠っぽく挙げてられているのが一部のAGAクリニックの医師の発言によるものですが、その医師も根拠を示していません。そういった医師は生活習慣とAGAを関連付けるようなアレですので信用すらできない。

そもそも「汗」というのはほとんどが水。そこに塩分が若干含まれ、かつごく微量のミネラル分が排出されます。そこにはハゲに信者が多い亜鉛も含まれる。

「汗をかいてデトックスをー」なんて言っている人間もいるが、汗は体の毒素を出す目的のものではありません。その役目は肝臓や腎臓が担っています。いわゆる尿ですね。

そのため尿でも悪玉ホルモンであるDHTが排出されるなんて言われているが、これは前提からして間違っている。そう、DHTは悪玉ホルモンではないということ。体にとって必要な男性ホルモンなのです。

そんな大切なホルモンを汗や尿でドバドバ排出するはずがない。仮に含まれるとしてもごくごく微量。これでAGAが改善するとか片腹痛い。

…まあハゲがDHTを目の敵にしたい気持ちは痛いほど分かるが…

運動によって汗をかくことでDHTを排出」なんて書いているコピペ野郎は、汗でDHTが排出されるという科学的根拠を持ってこい。

軽い運動でDHTが増えるというデータも

有酸素運動によってDHTが排出されるとか薄毛が改善するとか書いているサイトが乱立しておりますが、それとは逆行するようなデータが筑波大学によって示されました。

そう、有酸素運動程度の軽い運動でもDHTが増えるというのです。

「激しい筋トレをやるとDHTが増える」「テストステロンが増えればDHTが減る」なんて説が飛び交っていますが、この研究では軽い運動によってテストステロンもDHTも増える傾向にあることが示されています。

あくまでもラットでの研究ですけどね…

下図は精巣を摘出したラットと手術をしていないラットで、安静した場合と運動した場合の海馬、血漿双方での男性ホルモン濃度を計測したもの。

有酸素運動でDHTが増える
出典:軽運動は海馬の男性ホルモンを高める


この研究は男性ホルモンによって海馬から男性ホルモンが作り出されるかどうかを検証したもので、AGAを対象にしたものではありません。しかも人間ではなくラットを用いているため、人間にどこまで適用できるかも未知数です。

しかもこれは脳を対象にした研究なので、全身の作用についてまでは分からない。ただ、あえて精巣を摘出してる点から、精巣でも同様のことが起きる可能性が高いと見ていいのではないでしょうか。

これは脳の認知機能に関する研究ですが、それでも軽い運動でDHTが増えたのは確か。推測で「DHTが減る」とか「AGAの予防・改善に役立つ」とか書いているものよりは遥かに信用できる。

ちなみにこの論文の中でDHTについてこう語られる一幕があります。

なお、DHTは薄毛の原因として悪玉扱いされていますが、スポーツの世界では最も重要なアナボリックホルモンとして、高齢者にとっては加齢に伴うサルコペニア(筋減退症)、オステオペニア(骨減少症)の治療薬やサプリメントの最右翼として注目されています。今回、それが軽運動によって脳内でつくられ、認知機能を支える重要な生理機能を促進することが明らかになったことで、アンチエージングの領域でも画期的な新知見として受け入れられることが 期待されます。

つまりDHTは人体にとって必要なものだということだ。

私たちハゲにとっては迷惑この上ないDHTを使った治療薬やサプリ…考えると恐ろしいが、AGAや前立腺肥大症を引き起こす以外の面においては重要なホルモンであることが伺えます。

運動にAGA改善効果は期待できない

ここまで何度か書いているように有酸素運動などとAGAの関連性を調べた研究や試験データは存在しません。

であるにもかかわらず「運動で薄毛改善」と書いているサイトが大多数を占めるのは、近年問題になっている記事のパクリに加え「生活習慣の乱れでハゲる→生活習慣の乱れ=不健康→運動は健康に良い→運動でハゲ改善」という連想があると思われます。

ただ、運動習慣をはじめ生活習慣とAGAに関連はないことは専門家や医師の間では常識。一部のAGAクリニックなどではこれらを関連付ける医師も存在しますが、しっかりとした医師や専門家であれば根拠のない都市伝説など口にしません。

→生活習慣の乱れで薄毛になることは絶対にない

明確な研究やデータがないということは、それを否定する材料もないというひねくれた考え方もできるでしょう。しかしそれを言ってしまったら何でもありになる。極端な話「水を頭皮に塗ったらハゲ治るよ」と言ってもいいことになる。…まあ、市販の育毛剤はそれに近いが…

運動を行ったからといってAGAを予防できるわけでも改善できるわけでもありません。遺伝による男性ホルモンの影響がほぼすべてであるAGAに対し有酸素運動など何の意味もなさないのです。

とはいえ運動が健康には良いのは紛れもない事実。ゆえに生活の中に適度な運動を取り入れたほうがいいのは間違いないものの、それで薄毛が治るとは思うな。

高い効果で人気の発毛剤
このエントリーをはてなブックマークに追加
育毛剤に惑わされ発毛機会を損失する人が1人でも減るよう拡散お願いいたします。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧