炭酸で薄毛が改善するという嘘にご用心

炭酸で薄毛が治るという嘘

様々な育毛法や発毛法が出てきては消える育毛業界において、ここ数年にわかに脚光を浴びているのが「炭酸」を用いた育毛法。

炭酸を用いたヘッドスパのサービスを提供する美容室やサロンをはじめ、市販されている炭酸シャンプー、炭酸水を使った洗髪など、その方法や形態は色々。

実際に炭酸を使って「髪の毛が生えた」「薄毛が改善した」というレビューや口コミがあるだけに、薄毛を実感している人の中には気になっている方もいらっしゃるのでは?

しかし、もっともらしい理由を並べてはいても、その実炭酸で薄毛が治るという科学的根拠は一切ありません。それどころかハゲを助長してしまう可能性すらあるのです。

    目次
  1. 炭酸が育毛や発毛に役立つとされる理由
    1. 血行促進作用
    2. 毛穴の奥の汚れまで落としてくれる
  2. 炭酸で薄毛が改善しない根拠
    1. 血行促進作用は薄毛に効果がない
    2. 毛穴の汚れや皮脂は薄毛の原因ではない
  3. ヘッドスパ自体も意味なし
  4. 炭酸を頭皮に用いることでむしろハゲる?
  5. 炭酸で薄毛やハゲは治らない

炭酸が育毛や発毛に役立つとされる理由

炭酸で育毛できる理由

そもそもなぜ炭酸が育毛や発毛に役立つと言われだしたのか?

そこには根拠…とは言えないものの、育毛や発毛にあまり詳しくない人が聞けば「なるほど!」と納得するだけの“それっぽい理由”が存在します。もちろんそれは嘘っぱちなんですけどね。

まずは巷に溢れる炭酸による育毛の“根拠”を見てみましょう。

血行促進作用

炭酸によって血行が促進される…誰しもがそんなイメージを持っているのではないでしょうか。そういったイメージの普及に大きく寄与しているのが、温泉や入浴剤の効果です。バブとかね。

実際、炭酸には血管を広げ血流を促す作用があります。これはエセ科学ではなくれっきとした事実であり、数々の試験により実証されています。

一方、頭皮の血行不良は薄毛の原因として広く認知されていることから、炭酸による血行促進作用により髪の毛の1本1本に酸素や栄養をしっかり供給、結果薄毛やハゲが改善する…というのは一見理にかなっています。

頭皮に塗布する発毛成分として唯一認められているミノキシジルにも血管拡張による血行促進作用がありますしね。

毛穴の奥の汚れまで落としてくれる

水に溶けている炭酸(二酸化炭素)の泡は非常に小さく、かつ皮脂や汚れを吸着する作用があるとされることから、毛穴の奥深くの汚れまで除去する期待が持たれています。

はるか昔から毛穴の汚れや詰まりが薄毛の要因の一つとされていることもあり、炭酸による毛穴の洗浄効果は育毛や発毛に効果的と考えられているのです。

毛穴の詰まりが健康な髪の毛の成長を害するのであれば、皮脂や古い角質の除去効果が期待できる炭酸がもてはやされるのも無理はありません。

炭酸で薄毛が改善しない根拠

炭酸は薄毛に効果なし

確かな血行促進作用や、毛穴の皮脂や汚れを吸着し除去するとされる炭酸。そう聞くと確かに育毛や発毛に効果的であるように感じてしまいますよね。

しかし、炭酸による洗髪やヘッドスパが薄毛に効果がないという根拠は確実に存在します。

血行促進作用は薄毛に効果がない

前述したように、炭酸に血行促進作用があるのは間違いありません。しかしそもそも血行促進作用が薄毛やハゲを改善するというのが大間違いなのです。

頭皮マッサージにより頭皮の血流を促すことで髪の毛が生える…私が生まれる前から当たり前のように信じられてきたことですが、実はこれにはなんの根拠もないのです。そう、いわば都市伝説。

発毛に関する様々な臨床試験が行われている中で、頭皮の血行を促進した結果髪の毛が生えたというデータは存在しません。それははるか昔から多くのハゲがせっせと頭皮マッサージに勤しみ、そして散っていった歴史を見ても明かでしょう。

よく考えてみてください、男性の薄毛の9割以上を占める男性型脱毛症(AGA)では頭頂部や前頭部の髪の毛のみが抜け、側頭部や後頭部の髪の毛はフサフサのままですよね。なんかおかしいと思いませんか?

頭皮の血流が原因で薄毛になっているのであれば、側頭部や後頭部の髪の毛も薄くならなければ説明が付きませんよね。

じゃあなぜ頭頂部や前頭部だけハゲるのか? それはAGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモンが毛乳頭内で脱毛に作用するのは前頭部から頭頂部に限られているから。逆に体毛や髭に対しては濃くなるよう作用する。

そう、世に溢れる「血流悪化によるハゲ説」や「血行促進による薄毛改善説」はデマなのです。むしろ血流をある程度制限し頭皮へのDHTの流入を抑えた方が髪の毛がハゲに効果的とする論文すら存在する。これも眉唾物だが。

また、血行促進効果により髪の毛が生えると考えられがちなミノキシジルも、その効果は毛包や毛母細胞に働きかけ発毛を促すというのが有力な説。

ミノキシジル以外の血管拡張剤や降圧剤に発毛効果がないことを鑑みても、血流が薄毛改善に寄与しないことは火を見るより明らか。確かに炭酸には血行促進作用が期待できるものの、それが薄毛改善に結びつくことはありません

毛穴の汚れや皮脂は薄毛の原因ではない

じゃあ、炭酸による毛穴の皮脂や汚れを取り去ってくれる効果はどうなのか? これもまた全く関わりがありません。

非常に細かい分子によって構成される炭酸(二酸化炭素)は皮膚や毛穴に浸透しやすく、また皮脂や古くなった角質を吸着する作用があるとされるため、主に美容業界において重用されています。

炭酸によって髪の毛の成長を阻害する要因として広く知られる毛穴の皮脂や汚れを除去できるというのであれば、確かに育毛や発毛に効果的…と考える人は多数存在するものの、それは大きな間違いです。

まず知っておいてほしいのは、毛穴の皮脂や汚れは髪の毛の成長になんら悪影響を与えないということ。髪の毛を洗う頻度が少ないと髪のボリュームがなくなるのは、皮脂が髪の毛に行き渡ってしんなりするから。

そもそも皮脂は毛穴から分泌されているもの。毛穴から皮脂が溢れているのは極めて正常な状態であり、よく目にするマイクロスコープによる頭皮の皮脂汚れも、洗髪から数時間すれば誰でもあの状態になります。ハゲとか関係ない。

炭酸によって普段より毛穴の皮脂や汚れを取り除くことができたとしても、それは薄毛改善に全く寄与しないのです。だってハゲだろうがハゲでなかろうが頭皮や毛穴は皮脂で覆われ、汚れもいっぱい付着しているのが普通だから。

毛穴が綺麗になれば元気な髪の毛が生えてくる…というのはただの“印象”や、古くから伝わる“擦り込み”であり、毛穴の皮脂や汚れによって髪の毛の成長が阻害されることがないことは科学的に立証されています。

炭酸で毛穴の皮脂や汚れを除去して育毛? 笑い話にもならん。

ヘッドスパ自体も意味なし

ヘッドスパに育毛効果はない

炭酸による育毛・発毛効果は望めないまでも、サロンや美容室が提供するヘッドスパであれば一定の効果が得られるのではないかと期待する人がいるかもしれません。

ヘッドスパには血行やリンパの流れを促進させたり、筋肉のこりをほぐしたりといった効果があるとされ、「育毛にも効果的!」と謳う業者が多数存在するのも確か。炭酸を抜きにしても一定の効果は得られるのではないかという期待ですね。

しかし、残念ながらヘッドスパ自体にも薄毛を改善する効果は一切ありません

前述したように私たちのハゲの原因はDHTという男性ホルモンと、それを作り出す「5αリダクターゼ」という酵素にあります。そしてDHTの感受性や5αリダクターゼの分泌量は遺伝によって左右されるのです。

血行やリンパの流れを一時的に改善したところで何の意味もありません。もちろんヘッドスパによるストレス解消効果も、AGAの前では無力です。なぜならストレスとAGAは全く関係がないから。

つまり“炭酸”も“ヘッドスパ”も私たちのハゲにはまったく効果がないのです。高いお金を出したところで「なんとなく髪の毛が元気になった気がする」程度の自己満足に終わることでしょう。

ただし、炭酸ヘッドスパに無類の幸せを感じるというのであれば、ストレス解消や癒しとして行う価値はあるのではないでしょうか。

薄毛が改善することは120%ありえないですけどね。

炭酸を頭皮に用いることでむしろハゲる?

炭酸で頭皮を洗うとハゲる?

ここ数年の炭酸ブームにより、炭酸ヘッドスパのみならず炭酸を配合したシャンプーをはじめ、中には炭酸水で髪の毛を洗うという猛者が出現してきております。

炭酸に血行促進効果があるのは確かである一方、水やお湯に比べ頭皮への刺激になりうる可能性も否定できません。もしかしたら頭皮に炭酸を用いることで薄毛を助長してしまう可能性も!?

が、心配ご無用。炭酸で頭皮を洗っても薄毛が酷くなることは基本的にありません

これまで何度か書いているように、私たちの薄毛のほとんどはAGA。そのAGAの原因はテストステロンと5αリダクターゼが結びついて生成されるDHTという男性ホルモンであるため、炭酸で血行が良くなろうが刺激になろうが関係ないのです。

有り体に言えば、薄毛に対し良くも悪くも炭酸の影響などないということ。

ゆえに「藁をも掴む思いで…」「ダメ元で…」という人は、気が済むまで炭酸シャンプーや炭酸水による洗髪をやってみてもいいのではないでしょうか。

それによってハゲが酷くなることはないのですから、炭酸を使うことにより何らかの希望を見出した結果精神の安定が図れるのであれば価値はあるかと。

ただし、脂漏性皮膚炎やひこう性脱毛症など明らかに頭皮に異常がある場合の薄毛には使用しないように。これらに関しては炭酸が刺激となり悪化させる要因になりえます。

炭酸で薄毛やハゲは治らない

私自身30歳くらいから薄毛に悩んでいることもあり、薄毛が発覚した時の絶望感、進行が止まらないことに対する不安は痛いほど理解できます。だからこそ藁をも掴む思いで色々な方法を試してみるんですよね。

しかし、残念ながらAGAに立ち向かう方法というのは限られています。

現状では世界的に効果が認められているフィナステリドとミノキシジル、そして日本で2015年に認可されたデュタステリドの3つの成分を使用した発毛剤以外にこれといった方法はありません。もしくは100万円単位の出費覚悟での自毛植毛か。

そんな状況下にあって、極めて一時的な血行促進効果程度しかない炭酸で薄毛が治るはずもない。それでハゲが改善するなら誰も苦労はしません。

進みゆく薄毛を目の当たりにし「何か対策を…!」と焦る気持ちはわかります。だからといって炭酸に頼るというのはあまりにも滑稽。美容院やサロン、炭酸シャンプーメーカーの謳い文句に騙されないようにしてください。

本気で薄毛を改善させたいのであれば、迷わず発毛剤を使用してください。“育毛剤”ではなく“発毛剤”ですよ。フィナステリド、ミノキシジル、デュタステリドの3成分以外で髪の毛が生えることはないと心得るべき。

ただし、これら医薬品はその強力な効果ゆえに副作用が出るリスクも存在します。そういった懸念があるからこそ炭酸に頼ってみようと考える人がいるのかもしれません。

しかし、遺伝によって支配されるAGAに抗うには副作用がある医薬品以外に選択肢はない。無駄な努力をしながらハゲを進行させるか、副作用リスクを受け入れ発毛に取り組むか―

AGAは進行性だけに、迷っている間にも髪の毛はどんどん薄くなっていきます。選択のために残された時間は決して多くないのです。

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