市販の育毛剤にも副作用や悪影響はある

育毛剤にも副作用あり

「プロペシアやミノキシジルといった医薬品の発毛剤は怖い副作用がある」「チャップアップなどの育毛剤は副作用がないから安心」。こんな文言がネット上のそこかしこに踊っていますが、これらは嘘です。

プロペシアやザガーロといった医薬品の発毛剤には、高い発毛効果に対し副作用リスクがあるのは間違いありません。一方で医薬部外品の育毛剤にはそういったリスクがほとんどない…そんなことはありえないのです。

医薬品の発毛剤は危険、医薬部外品の育毛剤は安全。

はっきり言ってしまえば、こういった情報操作によって育毛剤の優位性をアピールしているわけですが、実際は市販の育毛剤にも副作用や有害事象は存在します。

どういうことなのか、詳しく解説していきましょう。

    目次
  1. 副作用の定義とは?
  2. 育毛剤に副作用はある
  3. 育毛剤の副作用はただの有害事象
  4. 検証していないからこそ危険という考え方も
  5. ミノキシジルより安全という保証なし
  6. 育毛剤で薄毛が悪化する可能性も
  7. 医師の9割が医薬部外品の安全性に疑問
  8. 「育毛剤は副作用の心配はない」は大嘘

副作用の定義とは?

医薬部外品の育毛剤やキャピキシル育毛剤に代表される化粧品の副作用について検証する前に、まず「副作用」の定義について明らかにしておく必要があります。

なぜなら、副作用というのは本来医薬品に使用される言葉であるため。

医薬品というのは特定の病気や症状に対しての効果を目的とした「主作用」があり、その狙いとは別に現れる作用全般を「副作用」と呼ぶのが一般的。当然ながらその薬との因果関係が認められたものに限ります。

発毛剤プロペシアを例に取るなら、5αリダクターゼを阻害しジヒドロテストステロン(DHT)生成を抑えるのが主作用、勃起障害や性欲減退などDHTを減らすことによって起こりうる目的外の効果が副作用となります。

医薬部外品の育毛剤の場合、当然ながら医薬品ではないうえに、期待される効果も血行促進や抗炎症作用など曖昧かつ広範囲にわたるため、副作用の定義には当てはまらないという考え方ができます。

そのため育毛剤を使用して好ましくない作用が出た場合、厳密には「副作用」ではなく「有害事象」と呼んだ方がいいのかもしれません。

ただ、有害事象も「副作用」という認識が一般化していることから、ここでは狙った効果以外のものをすべてひっくるめて「副作用」と呼ぶことにします。

厚生労働省が副作用という言葉を使っている

本来であれば主作用がはっきりとしている医薬品のみに用いられる「副作用」という言葉。しかし厚生労働省は医薬部外品および化粧品によって発生した有害事象について「副作用」と明言しています。

「医薬部外品 副作用」と検索すれば、厚生労働省や独立行政法人である医療品医療機器総合機構などが、医薬部外品や化粧品の副作用について企業に注意喚起しているサイトが出てくるはず。

本来は医薬品の主作用以外の効果に対して使われる副作用という言葉ですが、現在は医薬部外品や化粧品も含めそれらの使用と因果関係のある有害事象すべてに適用されているというのが実情です。

であるなら、医薬部外品の育毛剤にも副作用という言葉をあてはめていいことになります。

育毛剤に副作用はある

さてここからが本題。医薬部外品の育毛剤や化粧品のスカルプエッセンスなどを使用することによって発生する好ましくない有害事象を「副作用」と呼んでいいなら、育毛剤に副作用はあるという結論になります。

ただしこれはプロペシアやフィンペシアに代表されるフィナステリド内服薬や、ザガーロ、ベルトリドなどに使われるデュタステリドのような「発毛効果の裏返し」では決してありません。

どういうことかというと、フィナステリドやデュタステリドは5αリダクターゼ(5α還元酵素)を阻害することによってAGAの原因であるDHTの生成を抑えます。

しかしDHTは男性ホルモンの中でも特に作用が強く、性欲や体毛の成長など、いわゆる“男性らしさ”に大きな影響を与えています。

そういった背景から、フィナステリドやデュタステリドの服用によってDHTの量が減少すると、性欲が減退したり勃起不全を起こしたりといった弊害が出る可能性があるのです。

そう、フィナステリドやデュタステリドの副作用は、AGAの原因物質であるDHTを減らすうえで避けては通れないものなのです。

育毛剤の副作用はただの有害事象

一方で育毛剤の副作用はどうなのか?

医薬部外品である育毛剤は、医薬品のように効果や副作用を厳密に調べ科学的根拠を明らかにする臨床試験を行っていないので、副作用がどの程度あるのかは未知数と言わざるを得ません。

確実に言えることは、エタノールをはじめ配合されている様々な成分によってアレルギーを引き起こす可能性があるということ。

育毛剤やキャピキシルローションに代表される化粧品の養毛剤のほとんどはエタノールを使っています。これは発毛剤であるミノキシジル外用薬も例外ではありません。

育毛剤の中には「パラベンや合成界面活性剤など刺激のある成分は無添加です」などと記載し、安全性をアピールしている商品も多いものの、これをもって「安心」なんて断定できるはずもない。

しかし、こういった有害とされる一部の成分が無添加であることをクローズアップし、「育毛剤は副作用を気にせず安心して使える」と紹介している育毛関連サイトが多いのが実情なんですけどね。

現実には、ほとんどの育毛剤がベースとして使用するエタノールにアレルギーを持つ人も存在しますし、エタノール以外の成分にしてもアレルギーがないとは言い切れません。何をもって安全と言っているのだろうか?

エタノールなどにアレルギーを持つ人が育毛剤を使えば頭皮にかゆみや発疹といった症状が現れます。これらはフィナステリドやデュタステリドとは違い、作用とはまったく関係がないただの有害事象です。

私は以前、「副作用がない育毛剤は効果もない」という記事において「育毛剤には発毛効果も副作用もない」と断じましたが、これは副作用がないのであれば発毛効果など望めないということを強調するためのもの。

実際には発毛効果はないけど副作用リスクは否定できないという、毒になりうる一方薬にはならない商品。それが育毛剤。

検証していないからこそ危険という考え方も

医薬品というのは多額の費用をかけ、複数回に分け段階的な臨床試験を行い、最終的に大規模な治験により効果や副作用をしっかりと検証した上で商品化します。

そのため、その薬を使用することでどの程度の割合で効果が期待でき、どういった副作用がどの程度の頻度で起こるのかなどが明らかにされます。

しかし医薬部外品の育毛剤の場合は臨床試験を行わないため、どういった副作用があるのか分からないというのが実情。なのに「副作用の心配はほとんどない」なんてよく書けるものだなと感心する。

検証すらしていないということは、予期せぬ副作用が存在している可能性だって否定できない。まあ、ほとんどの育毛剤はいたって平凡な医薬部外品、化粧品成分の寄せ集めだから、そんな心配はほとんどないでしょうが。

とはいえ、様々な成分をごちゃ混ぜにしている都合上、頭皮に何らかの異常が出る副作用の可能性はあります。

ミノキシジルより安全という保証なし

フィナステリドやデュタステリドといった内服薬の発毛剤に性機能障害の副作用リスクがあるのは知られた話です。ではもうひとつの発毛成分ミノキシジルはどうなのか?

本来血圧を下げるための血管拡張剤であるミノキシジルが発毛剤として認められているのは頭皮に塗布する外用薬のみで、降圧剤本来の使い方である内服薬では発毛剤として認められていません。

とはいえそこは医薬品。市販の育毛剤と同じく頭皮に塗布する外用剤においても、プラセボ(偽薬)を用い数百人単位の人間を対象に臨床試験を行っており、詳細な副作用と発現率を公表しています。

日本においてミノキシジル外用薬はリアップシリーズしか存在しないため、旗艦モデルであるミノキシジル5%のリアップX5と同1%のリアップの副作用データを見てみます。

ちなみに、その後発売された進化版である「リアップX5プラス」や「リアップX5プラスネオ」に関しては臨床試験を行っていません。補助的な成分を加えただけなので、副作用リスクはリアップX5と同じという判断なのでしょう。

育毛剤の副作用はリアップ以上?

左が5%のリアップX5、右が1%のリアップの副作用になります。これとは別のデータでも示されていますが、副作用のほとんどは皮膚の炎症や発疹といったもの。心電図や数値の異常が一部見られるものの、ミノキシジルとの因果関係は不明。

ミノキシジル外用薬はエタノールを使用しているため、一定の人の頭皮に異常が出るあたりは育毛剤と同様と見ていいでしょう。

内訳を見ると5%の濃度で副作用発現率は8.7%、1%のもので5.3%。これを高いと見るか低いと見るかは判断が分かれそうな点ですが、ほとんどが皮膚に対する軽度なものという点を考慮すれば「こんなもんかな?」という気もする。

じゃあ市販の育毛剤はどうなのか?

前述のとおり市販の育毛剤もエタノールを使用していますし、その他防腐剤など様々なものを添加しているため、ミノキシジル外用薬同様頭皮に何らかの影響が出る恐れが。

しかし、医薬部外品ということでどういった副作用があり、どの程度の発現率なのか一切調べていません。そもそも育毛剤の多くは新興企業が外部に製造を委託していることからも分かるように、大規模な臨床試験を行う体力すらない。

これでなぜ「安全」と言い切れるのか? 発毛剤に比べ副作用が少ないとなぜ言い切れるのか?

発毛効果がある成分は入っておらず、抗炎症作用などがある成分も極めて少量しか配合されていないため、医薬品のような本当の意味での副作用はほとんどないでしょう。しかしエタノールなど何らかの成分が引き起こす有害事象は否定できない。

育毛剤が副作用の試験や検証を行っていない以上、極端な話リアップなどミノキシジル外用薬以上の副作用が出る可能性すらあるのです。

まあ、ミノキシジル自体に頭皮など皮膚に対する刺激性があるため、現実的にはミノキシジル外用薬より育毛剤の方が副作用が強いというケースはほとんど考えられませんけどね。

育毛剤で薄毛が悪化する可能性も

医薬品の発毛剤であるフィナステリド(商品名:プロペシア)やデュタステリド(商品名:ザガーロ)、リアップなどのミノキシジル外用薬は厳密な臨床試験を行うことで効果と副作用を明らかにしています。

一方で育毛剤は臨床試験を一切行っていないのは前述の通り。

であるなら、どの程度の副作用リスクがあるのか分からないため安全とは言い切れません。しかしこれ、効果にも当てはまりますよね

医薬部外品の育毛剤は、厚生労働省が有効成分として認めているものを一定量配合したうえで、様々なその他の成分を配合し商品化しています。

当然ながらメーカーは自社製品の有用性を様々なアプローチを用いて訴えますが、厳密な臨床試験や検証を行っていない以上、そこにはなんの根拠もありません。

そう、副作用のみならず効果に関しても「分からない」というのが実情。

健康に良いはずのサプリメントの有害性や悪影響が近年取りざたされているように、育毛剤の使用によって薄毛が悪化する可能性すら否定できないのです。

一方で「実はすごい発毛効果があるかもしれない」と考える人もいるでしょう。確かにそれも否定できません。臨床試験で明らかにされていないだけで、実はミノキシジルを上回る可能性も「絶対ない」とは言い切れないのです。

ただ、それでなくてもセンシティブかつデリケートな頭皮に、わけの分からないものを塗るというのは非常に怖い。私だったら、得体のしれない液体を塗るくらいなら、何も塗らない選択をするでしょう。

副作用は分からない。効果も分からない。これが医薬部外品や化粧品の育毛剤・養毛剤の現実。それでもこれらを使おうと考えますか?

医師の9割が医薬部外品の安全性に疑問

医薬部外品について面白いデータもある。

2013年に医師専門サイト「MedPeer(メドピア)」において、医師3,195人に対し医薬部外品の安全性についてアンケートを実施したというもの。

回答 回答数 割合
安全性に問題を抱える場合がある 2,618 81.9%
安全性に問題がある 330 10.3%
安全性に問題はない 105 3.3%
その他 142 4.5%
出典:MedPeer  

実に92%の医師が医薬部外品の安全性に疑問を呈しているのです。

実際の医師の声として特徴的なものは…

  • 臨床試験が行われていない以上、問題がないとはいえない
  • 厚生労働省のチェックや基準が甘い
  • 安全に対する消費者の意識が低い
  • 厳しい試験を経て販売される医薬品でも問題が生じるのだから、医薬部外品が安全であるはずがない

特に多く見られるのが「厳格な試験を行っていないため安全とはいえない」「厚生労働省など当局のチェックが緩い」という2点。

販売までの基準が甘すぎる結果、安全性に対する試験や検証が行われないまま市場に出回る点を問題視する声が多くなっています。

実際に様々な医薬部外品で重篤な副作用が確認されていることから、近年は厚生労働省などが医薬部外品や化粧品の副作用の調査や報告について本腰を入れはじめている。

市販の育毛剤のほとんどはこの医薬部外品。

プロペシアやザガーロといった発毛剤は副作用が明確にされているから危険? プロである医師の目線や見方は違う。医薬品は臨床試験が行われ効果も副作用も洗いざらい出されているからこそ安全と多くの医師は考えるのです。

どういった副作用がどの程度の頻度で出るかが分かっているため、患者の状況に合わせて細やかな処方が行えますし、仮に副作用が出ても対処がしやすいというのも大きな理由なのでしょう。

フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤は副作用があるから危険。副作用の心配がほとんどないチャップアップやイクオスといった育毛剤を使いましょう

こういった文言が当たり前のようにネット上に溢れています。これら育毛剤を売れば高額な報酬を貰えるからみんな必死だよね。

現場の医師の意見を目の当たりにしてもまだこんな戯言を信じますか?

「育毛剤は副作用の心配はない」は大嘘

薬というものには必ず副作用が存在します。期待される効果が大きければ大きいほど副作用も強くなる傾向にあります。

問題なのは副作用の存在ではありません。それに対する知識や情報がなくコントロールできないことが問題なのです。逆にいえば、副作用がどういったものかを明確にしコントロールできればこれほど頼もしいことはありません。

で、育毛剤は?

医薬部外品の育毛剤や化粧品のローションに発毛効果など一切ないのだから、副作用もほとんどないと考えるのが自然でしょう。水を頭皮に塗ったところで毒にも薬にもならないのと一緒。

しかし現実は違いますよね。発毛効果に関しては水と大して変わらない育毛剤ですが、それじゃ売れないから血行促進効果や抗炎症作用、保湿効果がある成分を大量に配合、それをエタノールで溶かし込み、防腐剤を用いて品質を維持している。

それでも医薬部外品の育毛剤というくくりであるため、医薬品のように膨大なコストと期間を要する臨床試験は行わなくていい。

これでなぜ安全と言い切れる? 副作用がないと言い切れる?

ごくごく微量しか入っていない有効成分やその他の成分を個々に見れば、確かに副作用の心配はほとんどないでしょう。しかしそれらの組み合わせによっては想定外の副作用が出る可能性があります。

また、様々な成分やエタノール、防腐剤などを使用している以上、アレルギーのリスクは間違いなく存在します。

発毛効果も副作用も明らかにされているフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤を使うかどうかは各々の判断にお任せしますが、「育毛剤は副作用の心配がないから使う」というのは大きな間違い。

発毛や育毛を考えた時、理想はやはり医療機関で医師の診断を受け、プロペシアやザガーロを処方してもらうこと。もしくは副作用が明らかにされた上で市販されているミノキシジル外用薬を使うこと。

個人的にはコスト面を考え極めて安い個人輸入の発毛剤を使用していますが、安全面を最優先するなら副作用について検証すらされていない育毛剤より、医療機関で発毛剤を処方してもらった方がいいと結論付けます。

育毛剤じゃ髪の毛は生えないうえに安全性にも疑問。コストのかかる臨床試験すら行っていないのに価格は異常に高い…育毛剤の存在意義ってなんなのでしょうね?

ああそうか、育毛に対して知識のないハゲに売りさばくことで自分たちが儲かるという素晴らしい理由があるのか。

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