ミノキシジル濃度は高ければ高いほど効く?
薄毛の強い味方「ミノキシジル外用薬」。
フィナステリドやデュタステリドといった内服薬に比べ副作用リスクがほとんどなく、かつそれなりの発毛効果が望めることから、薄毛に悩む多くの人から幅広い支持を集めています。
とはいえ、内服薬の発毛剤に比べ頭皮に塗布する外用薬は効果面でいまいちなケースも。そのため、一般的な5%のものからさらにミノキシジル濃度を高めた「フォリックス」「リグロースラボ」といった海外製の発毛剤が人気に。
しかし、ミノキシジル濃度と発毛効果は比例するものなのか? 一般的には「高濃度の方が効く」とされ15%や16%の商品が人気になっているが、そこに科学的根拠はあるのか?
試験結果や根拠、実際の口コミを交え具体的に解説していきましょう。
ミノキシジル1%と5%の比較試験
ミノキシジル濃度は高い方が効果がある…これは日本においては大正製薬のリアップシリーズの臨床試験によって実証されています。ただしミノキシジル濃度1%と5%の比較のみでの話ですが。
出典:大正製薬商品情報サイト
上記がミノキシジル1%と5%を比較したグラフ。1%が1平方センチメートルあたり約16本増えているのに対し、5%は約22本増えていることが分かります。
細かい変化や評価も見てみましょう。
いずれも5%が優れていることが見て取れますよね。しかもこれは16週後(約4カ月後)の結果であり、6カ月後にはさらに差が広がっています。1%と5%の比較では「濃度が高い方が薄毛改善効果がある」と言い切ることができるのです。
ミノキシジル2%と5%の比較試験結果
日本においては2%の濃度のミノキシジル外用薬というのは存在しませんが、海外では2%と5%が主流ということもあって、2%のミノキシジル外用薬を使用した試験が相当数行われています。
2002年に発表されたアメリカの試験結果を見てみます。被験者は男性型脱毛症(AGA)患者393名で、プラセボ群(偽薬)と2%群、5%群の3つに分けて48週間にわたり使用し続けるというもの。
結果、1平方センチメートル当たりの非軟毛の増加数はプラセボ群が平均3.9本、2%ミノキシジル群が平均12.7本、5%ミノキシジル群が平均18.6本となっています。ここでも5%が明らかに優れているという結果に。
一方で頭皮のかゆみや刺激の発生といった副作用も5%の方が多かったとあります。このあたりもリアップX5の臨床試験結果と同様の傾向。
また、薄毛女性に対しても2%と5%の比較試験が複数行われており、5%の方が有意に発毛効果が高かったとする結果が多くなっています。
やはり高濃度は正義らしい。
高濃度ミノキシジル製品の臨床試験は皆無
ミノキシジルの濃度に関し比較した試験というのは世界各国で行われているものの、それは5%以下に限ってのもの。私たちが知りたいのは5%を超える濃度の効果の有無なんですよね。
しかし、そもそも5%を超える濃度のミノキシジル外用薬というのは数が少なく、また新薬を製造・開発するような大手製薬メーカーではなくジェネリック医薬品が主体のメーカーが製造していることもあり、臨床試験は行われていないのが実情。
実際、高濃度ミノキシジルの代表格であるフォリックスシリーズや、ミノキシジル15%のリグロースラボM15を販売しているアメリカの「サファイアヘルスケア」でも、これらの臨床試験は行われていない。
また、別会社からミノキシジル濃度10%も存在する「ツゲイン」が販売されているものの、こちらはフィンペシアなどを製造販売しているインドの大手ジェネリック医薬品メーカーであるシプラ社製。やはり臨床試験はやっていない。
一般的に臨床試験はその薬剤を製造販売しているメーカーが積極的に行うため、サファイアヘルスケアやシプラ社がやっていないとなると、高濃度ミノキシジルの効果に関する科学的根拠の裏付けには期待できないことになる。
ミノキシジル5%と10%の試験結果は?
がしかし、実は1件だけありました。濃度5%と10%のミノキシジルを用い発毛効果を検証している試験結果が2019年に発表されていました。
これはエジプトの中でもトップクラスに位置するザガジグ大学の医学部皮膚科によって行われた試験。90名のAGA男性を3つの群に分け、それぞれにプラセボ・ミノキシジル5%・同10%のローションを36週間使用させ効果を検証。
結論から書くと、この試験では5%が最も優れた発毛効果を発揮したとなります。
毛髪数の増加は5%>10%>プラセボの順に優れており、髪の毛を軽く引っ張るプルテストの結果も5%では陰性に変化…つまり髪の毛が抜けることはなかったとしています。
6カ月使用後に毛髪に変化が見られた割合に関しては5%と10%で差がなかったため、5%も10%も発毛効果は確認できたが、髪の毛の増加量は5%のほうが多かったということなのでしょう。
一方、頭皮の刺激に関しては10%のほうが多かった模様。この刺激が結果に悪影響を与えた可能性も示唆されています。
10%より5%の方が効果があったという結果には研究者も予想外だったようで、「予想に反して」という表現が見受けられます。ミノキシジルは濃度が高ければ高いほど発毛効果が期待できる…というのが通説になっていますからね。
この結論はこれまでのセオリーを覆すものといえるでしょう。
10%超の高濃度ミノキシジルは無意味なのか?
私自身色々と調べてみましたが、10%を超えるようなミノキシジル外用薬の効果を検証した試験というのは上記のザガジグ大学のもの以外に発見できませんでした。発表に値しないような小規模ものであれば存在するのかもしれませんが…
この結果を踏まえると「ミノキシジル外用薬は5%で十分」ということになります。ミノキシジル濃度が低い方が頭皮に対する副作用は少ないですし、価格も安い。良いことずくめです。
ただし、この試験結果を「科学的根拠」と呼ぶにはあまりに早計。
というのも、前述したリアップの臨床試験や、2%と5%を比較した試験というのは国に承認されるために必要な最終段階の治験レベルのもの。それだけに規模もかなり大きなものになっています。
一方、エジプトのザガジグ大学の試験は大学の1学部の検証試験であるため規模が小さく、ある程度の“揺らぎ”は想定しておくべきでしょう。
信頼に値しない…とは言えないものの、だからといって全幅の信頼も置けないため、あくまでも参考程度にとどめておくのがベター。
高濃度ミノキシジル使用の実感と口コミ
私個人の話になり恐縮なのですが、30歳くらいから薄毛に悩まされている私はミノキシジル5%のカークランドから始まり、その後ポラリス→フォリックスやリグロースラボM15といった高濃度のミノキシジル外用薬を使用し続けています。
これらと同時にフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルタブレットを併用しているため、高濃度ミノキシジル単体の効果のみに限定できない…と前置きしたうえで、やはり高濃度のミノキシジルは効果が高いと感じています。
その第一の理由として、カークランド(5%)にあまり効果を感じなかったことからポラリスNR-09(15%)やNR-10(16%)などに乗り換えた経緯があり、それに伴い髪の毛が濃くなるという実感を得たから。
その当時、フィンペシアも使用していたため発毛効果はこれも加味する必要があるものの、ポラリス以外に発毛剤の変更を行っていない中での発毛効果実感ですから、少なからず高濃度ミノキシジルの候があったのだと認識しています。
5%のものより高濃度ミノキシジルの方が効くと感じるもう一つの理由として「初期脱毛」が挙げられます。
フィナステリドにしろデュタステリドにしろミノキシジルにしろ、どの発毛剤も使い始めは初期脱毛が起こることがほとんど。
薄毛の状態からさらに髪の毛が抜けるというのは恐怖ではあるものの、初期脱毛は正常なヘアサイクルに戻る過程で、長い休眠期にある髪の毛など不健康な髪の毛が押し出そうという力が働くことによって起こるもの。
誰しも初期脱毛に恐怖を覚えるでしょう。しかし初期脱毛は今後の発毛を示唆している兆候。健康な髪の毛が生える過程で起きる初期脱毛はむしろ喜ばしい状況なのです。…生えてくるまでは戦々恐々ですけどね…
カークランドを使用し始めた際、多少の初期脱毛が認められましたが、目に見えた発毛効果までは実感できませんでした。しかしポラリスNR-09に乗り換えてから再び初期脱毛を経験。
同じミノキシジルを使用した発毛剤からの乗り換えにもかかわらず初期脱毛が起きたことで、今後の発毛に期待が持てましたし、その後実際に発毛を実感。
こういった経緯もあり、今回紹介した「10%より5%のほうが効果的」とする研究結果に対し懐疑的な目を向けている次第。
ポラリスが販売終了となり、現在は後継のフォリックスFR16とリグロースラボM15を部位によって塗り分けている状況。この論文を知ったからと言って5%に乗り換えるなんてとてもできない。
「濃度を低くして再びハゲたらどうしてくれるんだ!」と言いたい。
そもそも発毛のプロであるAGAクリニックでもフォリックスを処方している医院が多数存在する。
高額かつ科学的根拠に乏しい治療を勧めるなど、AGAクリニックにあまり良いイメージはないが、それでも一応はプロの端くれ。高濃度ミノキシジルの方が発毛効果が高いという経験に基づいて処方している…と思いたい。
【まとめ】高濃度ミノキシジルの是非
フィナステリドやデュタステリドなどの発毛剤が登場し薄毛の治療は必ずしも不可能なものではなくなりました。しかし「劇的」といえるまでの効果はなかなか期待できないこともあり、高濃度ミノキシジルは私たちの希望の光といえます。
しかし、15%や16%といった高濃度ミノキシジル外用薬において臨床試験を行っている商品はなく、経験則として「濃度が高い方が効く」と感じつつも、その効果を証明する確固たるものは存在しません。
そんな中で飛び出した「10%より5%の方が効果的」という研究結果は、私たちの期待や希望に反するもの。製薬会社が行うような治験(臨床試験)と違い、小規模かつ限定的な試験結果とはいえこの結果は気になりますよね。
この結果を踏まえ、これからミノキシジル外用薬を使ってみようと考えている人は、いきなり濃度の高いフォリックスなどを使用するのではなく、セオリー通り5%のリグロースラボM5あたりから試してみるべきと考えます。
それで思うような効果が見られなければ、リグロースラボM15やフォリックスFR16など高濃度のものを検討する…そういったスタンスでいいと思います。
フォリックスシリーズであれば高濃度ミノキシジルに加え、アデノシンやキャピキシルなど色々な育毛成分が入っていますし、FR16やFR12ならフィナステリドも配合されるなど、ミノキシジル以外の効果も期待できる。
5%と10%の試験結果は「高濃度ミノキシジルは効果が低い」と落胆するより、「5%にしっかりとした効果があることが改めて確認された」という認識に置き換えたほうがいいと感じています。5%を軽視するのは間違っていると。
ミノキシジル外用薬を含め発毛剤の効果というのは個人差が非常に大きいため、変な先入観を持たず色々な発毛剤を試し、自分に合ったものを探していく必要がある…改めてそう感じました。
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