亜鉛サプリメントに発毛効果なし

亜鉛サプリは効かない

育毛サプリメントの定番成分の中でもド定番といえば「ノコギリヤシ」と「亜鉛」。ノコギリヤシが効かないことに関しては別のページで詳しく書いていますので、ここでは亜鉛のサプリを摂っても効果がないことについて書いていきます。

亜鉛といえば、配合していない育毛サプリメントを探すほうが難しいほどの定番成分。また亜鉛単体のサプリメントであれば極めて安価ということもあり、育毛目的のみならず亜鉛不足を感じている人に人気の商品といえるでしょう。

確かに亜鉛のメカニズムを知ると髪の毛が生えそうな印象を受けますが、実際は亜鉛を摂っても髪の毛が生える効果はほとんど期待できないという現実があります。

亜鉛で髪が生えるとされるメカニズム

ではまず、亜鉛を摂るとハゲが治るとされている理由について見てみます。

■ケラチンの生成に欠かせないから

髪の毛というのはケラチンというたんぱく質が99%を占めており、このケラチンを構成するのが18種のアミノ酸になります。

ケラチンは体内でアミノ酸を合成して作り出す必要があるのですが、その合成をサポートする成分が亜鉛なのです。つまり亜鉛が不足すると髪の毛の主成分が作られなくなり薄毛になる…という理屈になります。

■細胞分裂・増殖を促進する

亜鉛は細胞分裂や増殖を行う上で欠かせない成分。

その「細胞」には髪の毛の元となる毛母細胞や毛乳頭細胞も含まれていますから、これらの分裂や増殖を促進する亜鉛を摂ると発毛が促進されるとされています。

実際、亜鉛欠乏症の状況下において脱毛が起こることが確認されています。

亜鉛の「アミノ酸の合成」と「細胞分裂」を促す作用が育毛に大きな影響を及ぼすとして育毛サプリメントには欠かせない成分となっているのです。

■5α-リダクターゼを阻害する

AGAに対する亜鉛の効果において、最も期待されるのが「5α-リダクターゼを阻害する」とされる点。そう、発毛剤であるフィナステリドやデュタステリドと同じ効果が亜鉛にも存在するというのです。

実際、育毛系のサイトはもちろん、AGAクリニックなど一部医療機関の医師も「亜鉛には5α-リダクターゼ阻害効果が期待できる」と説明するほど。

その根拠を探ってみると、フランス発の論文が見つかりました。

曰く、テストステロンを基質とした皮膚細胞などに亜鉛を添加した結果、5α-リダクターゼを強力に阻害したとあります。

また、同じく5α-リダクターゼ阻害作用があるとされるアゼライン酸を併用することで相乗効果が期待できるとも。

亜鉛はケラチン生成に必要な成分であり、かつ細胞分裂を促し、AGAの原因であるDHTを作り出す5α-リダクターゼの働きも阻害する…これらの作用を考えれば、薄毛改善に亜鉛が必要とされるのも頷けます。

亜鉛が発毛・育毛に効果がない理由

さて、ここから本題に入りましょう。

上記のような説明を聞くと亜鉛の摂取で髪が生えそうな気がしてきますが、実際はそう甘くありません。そう、亜鉛に育毛・発毛効果はほとんど期待できないのです。

それはなぜか?

■ハゲるほど亜鉛が不足しているひとはあまりいない

亜鉛の1日の摂取推奨量は15~69歳の男性で10mg、女性が8mgとされています。

一方で平均的な1日の摂取量は男性で8.8mg、女性で7.2mgと若干不足傾向にあるものの、上記推奨量というのはあくまでも余裕を持った量であり、必要量は男性で8mg、女性で6mg…つまりほとんどの人は足りているのです。

もちろん日によって多少の増減はあるもののサプリメントを摂る必要はほとんどなく、数多存在する育毛系サイトがサプリメントによる亜鉛摂取をおすすめする理由は、ただ単に商品を売りたいからに他なりません。

仮に多少足りないからといってもよほど大きく不足しない限り髪の毛に悪影響が出ることは考えにくいので、宣伝に踊らされないように気を付けて下さい。

■国立健康・栄養研究所で効果を否定されている

厚生労働省管轄の独立行政法人に属する研究機関「国立健康・栄養研究所」の調査では亜鉛は脱毛症に効果がないとされています。

亜鉛で髪が生えない理由 出典:健康食品の素材情報データベース

これはノコギリヤシにもいえることですが、育毛サプリメントの成分というのは胡散臭い民間療法…どころか、ただの健康補助食品という位置付けであり、効果が実証されているわけではない場合がほとんど。

「亜鉛が不足すると薄毛になる」という情報が独り歩きしていますが、亜鉛欠乏による脱毛は通常では考えられないほど極端な亜鉛不足が長期間続いて初めて露呈するもの。通常の生活を送っている限り亜鉛欠乏症に陥ることはまず考えられません。

■亜鉛でAGAが改善するという科学的根拠がない

そして、亜鉛による発毛を否定するにあたり、最も重要なのは男性型脱毛量(AGA)と亜鉛を関連付けるデータはどこにも存在しないという点。

前述したとおり、亜鉛を添加した結果、AGAに強く関わる5α-リダクターゼの働きを阻害したという研究結果が存在するのは確か。

しかし、これは試験管内での話。培養した細胞などに直接亜鉛を添加するという、人体ではあり得ない状況での試験なのです。

サプリメントとして摂取した亜鉛がどの程度頭皮に作用するか未知数ですし、そもそも通常の食生活で摂取する亜鉛の量では不足なのかどうか、経口摂取の場合どのくらいの量が必要なのかまったく検証していません。

AGAの患者に対する臨床試験も一切行われていないことから、この研究は机上の空論なんですよね。ちなみに、実際に亜鉛を摂取してAGAが改善したという臨床試験データは一切存在しません。

もうひとつ付け加えるなら、亜鉛とアゼライン酸を用いたこの研究の論文は1988年と30年以上前のもので、以降同様の研究や試験は見当たらないことから、星の数ほど存在する、出ては消える研究の一つに過ぎません

また、この研究はヒトの皮膚のアンドロゲン(男性ホルモン)関連病状の治療の可能性を示唆するものであり、AGAに対してのものではないことも付け加えておきます。

亜鉛をサプリメントから摂取したからといって発毛・育毛したというデータは一切存在しないのです。

■多くの人の1日の亜鉛摂取量は足りている
■亜鉛を摂っても薄毛は治らない

亜鉛とAGAは無関係

亜鉛が私たちのハゲに効かない理由として、もうひとつ決定的なものを挙げておきましょう。

専門家の検証により亜鉛が極端に少なくなると脱毛を引き起こす可能性が指摘されているのは間違いありません。しかしこれを私たちの薄毛に当てはめるのは大きな間違い。

亜鉛欠乏症によって引き起こされる脱毛は基本的に全身に及びます。頭皮全体からはじまり、次第に全身に回るとされています。円形脱毛症にかかった人の34%において血液中の亜鉛濃度が低かったという報告も。

そう、亜鉛が極端に不足することによって引き起こされる可能性がある脱毛症は円形脱毛症や全脱毛症であり、私たちが悩まされている男性型脱毛症(AGA)ではないのです。

実際、円形脱毛症や全脱毛症、広汎性脱毛症に亜鉛を投与した結果50~66.7%に改善が見られたという報告がありますが、AGAには一切触れられていない。それはなぜか?

AGAの原因と亜鉛には一切の関連性がない

男性の薄毛の9割以上は男性型脱毛症(AGA)であるとされています。おでこの生え際からつむじ周辺までの髪の毛のみが薄くなっているのであれば、ほぼ100%AGAと思って間違いありません。

このAGA、原因は特定されており、男性ホルモンであるテストステロンと、5αリダクターゼという還元酵素が結合して作り出されるジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンであることが分かっています。

これらの分泌や感受性は遺伝の影響がほとんど。

一方、亜鉛不足が関与する可能性がある脱毛症は、円形脱毛症や全身に及ぶ脱毛。多くの育毛サイトが亜鉛と薄毛の関係を謳っていると思いますが、その表現を「薄毛」に留めているのがポイント。…というか言葉のマジック。

なぜなら、世界中見渡しても亜鉛不足がAGAの原因になるというデータや研究結果は存在しないから。「薄毛」と書けば円形脱毛症など広範囲の脱毛もあてはまり嘘ではなくなりますからね。

多くの育毛サイトや育毛剤メーカーが「AGA」という言葉を使わず、「薄毛」と書く理由はそれ。それはAGAには効かないが、まれに存在する他の脱毛症には効果があるかもしれませんよということを暗に語っている。

男性の薄毛のほとんどはAGA。一方、亜鉛がAGAに影響を与えることはない。これをどう受け止めるかはあなた次第。しかし、生え際から頭頂部の髪の毛のみが薄くなっているのであれば、亜鉛は効果なしと覚えておきましょう。

まあ「自分の薄毛はAGAではない」と強く信じているのであれば、亜鉛を使ってみてもいいとは思うんですけどね。おそらく無駄だろうが。

亜鉛の過剰摂取にも気を付けよう

上で書いたように多くの人の亜鉛摂取量は足りています。

そういった状況にもかかわらず亜鉛のサプリメントを飲むと過剰摂取の可能性も考えられます。特に薄毛やハゲを気にしている人は、少しでも効果を引き出そうと多めに飲む人もいるので特に注意が必要です。

一応亜鉛の上限量にも触れておきましょう。

亜鉛の過剰摂取

男性であれば1日の上限量は45mgとなっています。多くの亜鉛サプリメントの1日分の含有量が10~15mg程度ですから、服用量さえ守れば過剰摂取になることはないでしょう。

ただ、万が一過剰になってしまうと胃の障害やめまい、吐き気、下痢などの症状が出てきますので摂り過ぎには注意して下さい。

育毛サプリメントによって亜鉛の過剰摂取は起きない

これが育毛サプリメントになると、そのほとんどが亜鉛の含有量を表記していないことから、配合する量はかなり少量であることが予想されます。しっかりとした含有量であれば、それを全面に押し出し販売に繋げようと考えるのが自然ですからね。

つまり育毛サプリメントはいくら飲んでも亜鉛の過剰摂取にはならない。すごいぞ育毛サプリ!安心して飲めるね!

亜鉛サプリを摂取しても髪は生えない

どの育毛サプリメントにも亜鉛は含まれているため、いかにも亜鉛で髪が生えそうな錯覚をしてしまいがちですが、亜鉛を摂ったからといって髪は生えないですし、何より多くの人は普段の飲食で必要量摂取できています。

基本的にはサプリメントで亜鉛を摂ったからといって発毛効果も害もない。育毛という観点からは毒にも薬にもならないものですが、一方で体に必要な必須ミネラルであることは間違いありません。

つまり飲んでも金銭的な面以外損をすることはないでしょう。

ただ、安価な亜鉛サプリならまだしも高価な育毛サプリメントは金銭的な負担も大きく、それでいて亜鉛やノコギリヤシはAGAに一切効かないですから無駄としか言いようがありません。

亜鉛で髪が生えるなど都市伝説のようなもの。はっきり書いてしまえばサプリメントを売るための嘘なので、髪の毛を生やすためにわざわざ飲むようなことは避けてください。

男性の薄毛のほとんどを占めるAGAに効果があるのは、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルの3成分のみです。亜鉛が“薄毛”に効くなどといった言葉のマジックに騙されず、本物の治療薬を選択するようにしましょう。

どうしても亜鉛が気になる人は

亜鉛を摂取したからといって髪の毛が生える可能性はほとんどありませんが、それでもどうしても亜鉛を使ってみたいというのであれば、アメリカ製のバイタルミーを使ってみてください。

1本1,700円で250粒入り。しかも1粒の亜鉛含有量は50mgと、日本のサプリメントではまず考えられないほどの高濃度となっています。というか、1日の限度量(男性45mg)を若干超えているんだが…

まあこの点に関しては、過剰摂取が気になるようであれば分割するなりすればいいだけの話。仮に1日1粒飲んだとしても1本で8ヶ月強使用できるため、コストパフォーマンスは最高です。

薄毛対策に亜鉛を使う場合は、一般的な摂取量よりかなり多めに摂るべき」という話がハゲの間でまことしやかに語られていたりしますし、このくらいの価格であれば試してみてもいいのではないでしょうか。

…重ねて言うが、亜鉛を飲んだからといって髪は生えないからな。

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