ピディオキシジルで髪が生えるはずがない
近年注目されている育毛成分といえばキャピキシルが思い浮かびますが、最近になっていくつかの育毛剤に配合され「ミノキシジル誘導体」なんて呼ばれ方をしているピディオキシジル(ピロリジニルジアミノピリミジンオキシド)も密かに注目を集めています。
ピディオキシジルがミノキシジル誘導体と呼ばれる理由は分子構造がミノキシジルと極めて似ていることに由来していて、「構造が似ているから効果も似たようなものだろう」なんて適当かつ乱暴な論調が支配しています。
確かに形を見ればそっくりだけど、「ミノキシジルと同じような効果があって、かつ副作用はない」なんていかにも胡散臭い話。
果たしてピディオキシジルで本当に髪は生えるのでしょうか?
- ピディオキシジルとミノキシジルの分子構造
- 発毛根拠がないピディオキシジル
- ピディオキシジルの育毛効果を示すデータは?
- ピディオキシジルに副作用はあるのか?
- ピディオキシジルは女性にも使える?
- ピディオキシジルに初期脱毛は?
- ピディオキシジルなどただのまやかし
ピディオキシジルとミノキシジルの分子構造
上でも書きましたがピディオキシジルがミノキシジル誘導体として注目されるようになったのは兎にも角にも分子の形がそっくりだから。
見てのとおりパッと見たら違いが分からないほど似ており、よく見てみると赤丸の部分がミノキシジルは六角形なのに対しピディオキシジルは五角形なのが分かります。
これ以外の部分は完全に一致していて、確かにこれだけ見ると「ミノキシジルと同じ働きをしそう」と思ってしまうのも頷けますよね。
でも、分子構造が似ているというだけで本当に同じ作用があるのでしょうか?
発毛根拠がないピディオキシジル
今現在ピディオキシジルを配合している育毛剤はBOSTONスカルプエッセンスとフィンジアで、どちらもキャピキシル5%を主成分とした絶賛売り出し中のクソ高い育毛剤(厳密には化粧品)です。
BOSTONスカルプエッセンスには1.5%、フィンジアには2%配合され、どちらもキャピキシルに次ぐ注目成分として紹介されていますが、そこで発毛根拠になりそうなデータは一切示されず、唯一ある説明文は…
…これだけ。
プッシュするならもうちょっと詳しい説明をしてほしいところですが…どちらも化粧品ということで遠慮しているのでしょうか?
いいえ違います。説明するだけのデータが存在しないのです。
ピディオキシジルの育毛効果を示すデータは?
海外では「KOPYRROL」や「Pyrrolidinil」として一応データがあるにはあって、そこでは文字が読めないながらもピディオキシジルがミノキシジルと同等レベルの育毛効果があると示されています。
といっても、お決まりのように開発メーカーの自社データですが。
出典:SlideShare
これはピディオキシジルとミノキシジルの毛髪活性度を調べたデータ。文字が小さいため見にくいかもしれませんが、左がミノキシジル、右がピディオキシジルのグラフになります。
これは髪の毛の成長を阻害するトルブタミドを使用した場合としない場合の2パターンにおいてミノキシジルとピディオキシジルの効果を検証しており、グレーがトルブタミド不使用、ピンクがトルブタミド2.5mm使用のもの。
要は人為的に薄毛の状況作り出しての試験ということに。
トルブタミドを使用していない場合はミノキシジル、ピディオキシジルどちらもほぼ同じ効果となっていますが、トルブタミドを2.5mm使用し髪の毛の成長を阻害した場合だとピディオキシジルの効果の方がやや優勢。
こう見るとピディオキシジルがすごい成分のように感じますが、これは培養した細胞を用いての実験。しかも薄毛の状況を作り出すのに男性型脱毛症(AGA)の原因であるジヒドロテストステロン(DHT)ではなくトルブタミドを使用している。
実際の頭皮環境とはあまりにも違うことから、これをもってミノキシジルと同等の効果があるとするのはあまりにも無理があります。
マウスの実験でも同程度の効果?
開発メーカーは培養した細胞以外にマウスでの実験も行っています。
内容はマウスの背中の毛を剃り、何も塗布しない群、0.5%ミノキシジル塗布群、0.5%ピディオキシジル塗布群の3群に分け毛の生え具合を比較するというもの。
出典:SlideShare
前述の培養細胞にトルブタミドを使用した試験と同様に、ピディオキシジルを使用したマウスはミノキシジルを使用したマウスより毛が成長したとあります。
ただ、言うまでもなく人間での試験ではないのでこれをそのまま人間に当てはめるのは無理がありますし、そもそもこのマウスの毛はAGAのようにDHTによってハゲたものではない。
加えて育毛成分にありがちな開発企業の独自データとあって信憑性・客観性には大いに疑問が残る。キャピキシルやリデンシルは信頼性はさておき一応ヒトに対しての試験を行っていること考えると、ピディオキシジルのデータはあまりにもしょぼい。
そもそも剃った毛を生やす力というのは発毛効果ではなく育毛効果なんですよね。一方、私達が欲しいのはハゲてしまった部位から再び髪の毛を生やす発毛効果。
トルブタミドを使用した培養細胞の試験といい、毛を剃ったマウスを使った試験といい、凄まじいほどのコレジャナイ感。
■海外にはデータらしきものはあるが対象がマウスかつ自社データか
ピディオキシジルに副作用はあるのか?
ピディオキシジルについてもうひとつ大きな疑問なのは副作用の有無。
高い発毛効果を示すミノキシジルやフィナステリドはもちろん、効果のある薬には必ず副作用があるのは常識で、もしピディオキシジルが本当にミノキシジルと同等の効果があり、しかも分子構造も酷似しているなら同様の副作用が出てもおかしくない。
しかしフィンジアやボストンスカルプエッセンスの説明文を見ても分かるように「副作用はない」と明記されています。「そんな虫のいい話があるか!」というのが正直なところ。
常識に照らし合わせれば「副作用がない=効果がない」であるのは明白。薬学的に高価がある薬には必ず副作用が存在するから。ミノキシジルに似た分子構造を持っていて、それによって同様の効果が出ると謳っているのだから尚更です。
胡散臭いなぁ…
例えば比較対象とされているミノキシジルは内服薬では血圧低下やめまい、動悸などの副作用リスクがあり、そういった副作用を排除した外用薬でも刺激により頭皮のかゆみや紅斑、炎症といった副作用が出る可能性があります。
それは高い発毛効果を享受するために支払う代償ともいえるもの。一方でピディオキシジルはミノキシジルと同等の効果があるのに副作用はないというのか?
育毛成分の多くは副作用がないことを売りにしていますが、本当にミノキシジル並の効果があるというのであれば、副作用がないなんてことはありえません。
それはつまり効果がないということなのか、それともただ単に副作用の検証をまともに行っていないだけなのか…
ピディオキシジルの試験内容やデータの信憑性レベルを考えるに、効果がないから副作用もないと考えるのが自然でしょう。
■ミノキシジルと同様の効果で副作用はないなんて虫のいい話は考えられない
ピディオキシジルは女性にも使える?
使えます。
ミノキシジルと分子構造が似ているから効果も同じなんて暴論を真に受けるつもりはありませんが、フィナステリドのようにDHTを阻害する作用があるわけではないので、ミノキシジル同様女性が使って問題ありません。
そもそもピディオキシジルは発毛効果はおろか育毛効果すら立証されていないただの化粧品成分ですので、女性にも安心してお使いいただけます。
ただし、「使える」というだけで髪の毛は生えないけどな。
ピディオキシジルに初期脱毛は?
ピディオキシジルに初期脱毛はあるのか?結論から言えばありません。
フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛成分を使用することで発現することがある初期脱毛。
そのメカニズムは、強力な発毛作用がある発毛剤を使用することでヘアサイクルが正常化し、不健康な髪の毛を中心に一度リセットして正常な髪の毛を一から生やそうとする作用が働くから。
それはAGAに対抗しうるだけの強い効果があるからこその副作用。
ピディオキシジルに発毛効果は一切存在せず、当然初期脱毛が起きることもないことから、老若男女問わず安心してお使いいただけます。
分かりやすく言うと人畜無害。
ピディオキシジルなどただのまやかし
ピディオキシジルに限ったことではありませんが、育毛剤はこれといった根拠のない成分をいかにもそれっぽい理由を付けて効果があるように見せかけ高値で売りつけようとします。
育毛剤の大きな売りのひとつに「副作用がない」というものが挙げられ、ピディオキシジルに関しても「ミノキシジルと同等の効果がありながら副作用はない」というのが最大の売り文句になっています。
しかし、いくらミノキシジルといえど副作用があるのはミノタブのような内服薬で、育毛剤と同様に頭皮に塗るタイプの外用薬であれば副作用の心配はほとんどなく、出ても頭皮のかゆみやかぶれ程度。
効果では発毛剤に大きく劣るのは明白。であれば、発毛成分の唯一の欠点である副作用を徹底的に叩きつつ自社製品には副作用がないことを猛プッシュしなければ、クソ高くて効果のない育毛剤なんて売れないから仕方ないのかもしれませんけどね。
ピディオキシジルもそんな育毛成分と同様に、ミノキシジルの欠点をクローズアップして売り込んでいるだけ。
そりゃ発毛効果がないんだから副作用もないに決まっている。
とりあえず数百人規模で、かつ客観性に富んだ臨床試験をして効果と副作用を洗い出してから出直してこいと言いたい。
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