ケトコナゾールに発毛効果はほとんどない
日本では対真菌症の治療薬として医薬品のクリームやローションに使用され、育毛分野ではこれを配合したニゾラールシャンプーが人気となっていますが、ケトコナゾールはAGAに対し効果はほとんどありません。
医薬品に分類されるケトコナゾールを配合した育毛剤は日本に存在しない一方で、海外では2%配合した育毛シャンプーが数多く存在し、個人輸入を利用し発毛剤の補助として使用する人が多くなっています。
実際、日本皮膚科学会が策定する男性型脱毛症診療ガイドラインでも評価対象になるなど、育毛分野において一定の地位を築いているのは確か。
しかし私たちが悩む男性型脱毛症(AGA)にはほとんど効果がない…それななぜなのか詳しく解説していきたいと思います。
ケトコナゾールとは
育毛に対し効果的とされるニゾラールシャンプーに配合されるケトコナゾールは本来真菌が原因となる疾患の治療薬。
代表的なものにカンジダや脂漏性皮膚炎、水虫などが挙げられるでしょうか。
頭皮に脂漏性皮膚炎がある場合、悪化すると脱毛などの症状が出るため、皮膚炎が原因の薄毛に関してケトコナゾールは効果が期待できるのは間違いありません。
しかし巷ではAGAに効果があるという…果たしてなぜなのか?
国内外にデータが存在する
ケトコナゾールがAGAに対し効果があるというデータは国内外問わず数件存在し、それが「AGAに効果的」とされる根拠になっています。
この成分を用いた育毛剤やシャンプーを長期間使用した結果、薄毛が改善したというデータが存在するため、フィナステリドやミノキシジルの発毛を助ける補助的な意味合いで使用している人も多いでしょう。
しかし深く探っていくとケトコナゾールの発毛効果には色々と穴があることが分かります。
■国内外でAGAに対する試験が行われ結果を残している
ケトコナゾールのデータに対する不信感
ケトコナゾールがAGAに対しほとんど効果がないとする根拠として最も信頼できるのが日本皮膚科学会が策定する2017年版の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインです。
評価は真ん中の「C1:行ってもよい」。これは2010年版の診療ガイドラインから変わっていないため、7年間の歳月を経ても有用なデータは出てこなかったことを意味しています。
この微妙な評価の根拠として、ケトコナゾールを2%使用したシャンプーと、市販の一般的なシャンプーを用いて試験をした結果、ケトコナゾール配合シャンプーでは髪の毛の成長率と髪の毛の太さが増加したというものが挙げられています。
ただ、髪の毛の成長率や太さというのは、薄毛になってしまった部位から髪の毛が生える「発毛効果」ではない。
また、プロペシアやフィンペシアに代表されるフィナステリドと2%のシャンプーを併用した結果、フィナステリドのみと有意差がなかったとも。つまりケトコナゾールを配合したニゾラールシャンプーの発毛効果はほぼ完全に否定されていることになります。
ローションでは一定の効果も
一方ケトコナゾールを2%配合したローションの試験は2件存在し、AGAに対し一定の効果が出たとも評されています。
しかしこれらは試験の対象人数が6名、17名と少数であるため統計学的に有意とはいえません。フィナステリドやミノキシジルといった発毛剤が数百人単位で試験を行い、数千人、数万人単位でデータを取っていることを考えれば無理もない。
AGAに対し「効果がない」とは断言できないものの、根拠というには弱すぎる…それがケトコナゾールの現実になります。
■ローションは髪の毛が生える可能性も
海外には有用とするデータも
ケトコナゾールの発毛効果については海外でも研究が行われており、2%を配合したシャンプーを長期間使用した結果薄毛が改善したというものも存在します。
ただ、そういったデータの多くはフィナステリドやミノキシジルとの併用であり、ケトコナゾールがどこまで影響したのかは未知数な部分が多い。
また、個人レベルの使用結果として、下図のようなものも存在する。
これは5ヶ月間プロペシアを服用しつつケトコナゾール2%のニゾラールシャンプーを日常的に使用した結果らしい。うーん、増えているような増えていないような…アフターではパーマをかけているようなので、カールした髪の毛が薄毛部分を隠しているようにも見えます。
どちらせによこれは個人を対象にしたものなので信頼性はほとんどない上、プロペシア併用。「こんな人もいたよ」という程度のものと思っていいでしょう。
海外では効果があったとするデータや体験談が存在するものの、どれも発毛剤を併用しているなど参考にならない。
それ、フィナステリドやミノキシジルの効果なんじゃね?
頭皮にトラブルがあるなら検討を
AGAに対してはあまり効果が期待できないケトコナゾール。しかし本来の用途である真菌への効果は間違いなく本物です。
そのため、頭皮に何らかのトラブルを抱え、それが原因で薄毛になっていることが疑われる場合はフィナステリドやミノキシジルよりまずはこちらを試してみるべきかもしれません。
特に脂漏性皮膚炎は薄毛を引き起こすことで知られているため、頭皮に炎症がある、フケが出るなど思い当たる症状がある場合はケトコナゾールを2%配合したクリームやシャンプーを使ってみるべきでしょう。
男性ホルモンが原因で引き起こされるAGAにはほとんど効果がないが、それ以外の薄毛であれば劇的な効果が望めるかもしれない…それがケトコナゾールなのです。
■脂漏性皮膚炎による薄毛であれば改善できる可能性大
市販の育毛シャンプーよりははるかにおすすめ
薄毛を気にする人が増えていることもあって世の中には様々な育毛剤や育毛シャンプーが登場、熾烈な競争が生じています
しかしそれらにAGAを治療する効果は一切ありません。育毛シャンプーはいわずもがな、育毛剤にも発毛効果なし。ハゲを食い物にするこれら商品は総じて悪質だが、育毛シャンプーのダメさ加減は特にひどい。
スカルプDとかブラックシャンプーとかな。
これらには育毛剤に配合される成分が入っているが、そもそもそういったものはただの保湿成分や抗炎症作用のある成分。そしてこの抗炎症作用もケトコナゾールのような強いものではなく気休め程度です。
当然ながら脂漏性皮膚炎には無意味ですし、フケを改善する力もありません。そもそもシャンプーに「育毛」というジャンルは存在せず通称のようなもの。薬機法的にも育毛効果を謳うことは認められていない。
つまり、いわゆる“育毛シャンプー”はただ高いだけの役立たずなのです。
その点、ケトコナゾールを配合するニゾラールシャンプーは根拠こそ乏しいものの多少のデータは存在するため、AGAに対し効果が期待できる…かもしれませんし、頭皮の炎症やフケなどのトラブルには抜群の効果を発揮します。
内容量は少な目ながら基本的に週2~3回程度しか使用しないものなので、経済的負担もそれほど大きくはありません。
3,000円も4,000円もする役立たずな育毛シャンプーを使うくらいならケトコナゾールを配合するニゾラールシャンプーを使った方がはるかに良いのは間違いないでしょう。
少し前ならミノキシジルを1%配合したポラリスNR-02というシャンプーがありましたが、それが販売終了となってしまった現在ケトコナゾール配合のシャンプーは「最も発毛の可能性があるシャンプー」なのかもしれません。
ただしこれはあくまでも発毛剤の補助。これだけで髪の毛が生えることはほぼ考えられません。フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤を使用した上で、そのサポートと割り切るように。
ケトコナゾールの選択肢は?
ケトコナゾールは医薬品の成分であるため、日本ではこれが2%配合されたクリームやローション、シャンプーを購入することはできません。水虫やカンジダなどの場合に病院で処方してもらうことになります。
また、薄毛の人に人気のあるシャンプーについては一般的な病院で取り扱っていることはありません。一部の美容クリニックやAGAクリニックが海外製のものを処方しているケースはありますが、基本的に日本では手に入りません。
そのため、ケトコナゾールが配合されたシャンプーを購入するには必然的に個人輸入ということになるでしょう。
その中でおすすめのものをいくつか紹介しておきましょう。
ニナゾルシャンプー
海外製のニゾラールシャンプーの中で最も人気があるのがニナゾルシャンプー。
ケトコナゾールを2%配合し内容量100mlで約1,500円というリーズナブルさが人気の秘密になっています。
基本的な使用方法は週2回程度であるため、100mlでも3ヶ月以上は持つ計算に。どれを使うか迷った場合はとりあえずこれを使っておけば間違いないでしょう。
人気商品とあって口コミも多数掲載されていますので参考にして下さい。
ケタゾンシャンプー
他のニゾラールシャンプーの多くが内容量100mlなのに対し、ケタゾンシャンプーは200mlと2倍であることに加え、約1,900円というコストパフォーマンスが特徴。もちろんケトコナゾール2%です。
量が多いため初めて使用する人にはおすすめしませんが、ニゾラールシャンプーを使ってみて効果を実感し長期使用を考えている人にとってはベストな選択かもしれません。
ただ、匂いが若干気になるとの声も。このへんは好みもあるので使用してみないと分からないか。
ケトコロストシャンプー
他の商品はいかにも薬用シャンプー然としているのに対し、ケトコロストシャンプーは一般的なシャンプーのような佇まいになっているのが特徴。
それは内容量にも現れていて、ニゾラールシャンプーの多くが1本100ml程度なのに対し、ケトコロストシャンプーは500ml。一般的なシャンプーと比べても多い部類に入ります。
普通のシャンプーっぽい雰囲気を漂わせているためケトコナゾールの濃度も低そうに感じるかもしれませんが、そこはしっかりと2%。加えて様々な栄養素や成長因子が凝縮されている牛の初乳「コロストラム」が配合されているため、頭皮環境の改善に効果を発揮する…らしい。
価格は2,680円と内容量を考えれば非常に安価。個人的にはもっともおすすめのケトコナゾール配合シャンプーとなります。
フケが気になる、頭皮に炎症があるなどの兆候があり、かつ薄毛に悩んでいるのであれば選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。
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