イチョウ葉エキスに育毛効果なし
育毛サプリメントの成分の中では決して主役ではないものの、かなりの数の商品に配合されているイチョウ葉エキスをご存知ですか? そしてこれが発毛はおろか育毛に対しても何の意味も成さないことも。
イクオスサプリEXプラスやチャップアップサプリ、BOSTONサプリなどなど、人気の育毛サプリメントにはほぼ配合されているイチョウ葉エキス。となるとそれなりの効果を望めそうな印象を抱いてしまいますよね。
しかしそれは幻想。
そもそも髪の毛に対し何の意味も成さない育毛(っぽい)サプリメントの中において、イチョウ葉エキスなど原材料名を賑わせるの数合わせでしかありません。そう言い切ることができる理由と根拠を解説していきましょう。
イチョウ葉エキスの効果とは?
ノコギリヤシや亜鉛、イソフラボンといった定番の成分の陰に隠れがちではあるものの、非常に多くの育毛系サプリメントに配合されているイチョウ葉エキス。その効果ってどんなものなのでしょうか?
イチョウ葉エキスは脳の血流や認知機能の改善、記憶力向上などが期待できるとされる成分。一部には脳卒中や心筋梗塞にも効果があるとも。
それら効果のカギを握るのが約30種のフラボノイドと、イチョウ独自のギンコライドなどを含む「テルペンラクトン」という成分とされています。
イチョウ葉エキスに豊富に含まれるフラボノイドには高い抗酸化作用があり、これによって活性酸素を除去し脳の活性。また、フラボノイドやテルペンラクトンが持つ血流改善効果によって認知機能が改善するらしい。
そういった特徴を拡大解釈・曲解しつつ強引な連想ゲームを行うことにより、頭皮の血流改善効果に加え、毛乳頭細胞や毛母細胞の酸化を防ぎ、髪の毛の成長を促進させるという話を創作した…と見るべきか。
かなり無理がある話である。
臨床試験により効果が認められている?
育毛効果に関してはさておき、イチョウ葉エキスはドイツやフランスなど欧州において、脳の血液循環改善、認知機能の向上などといった効果により医薬品として認められているという話も。
医薬品として認められているということは、エビデンス(科学的根拠)と呼べるほどの治験データが存在することを意味し、実際に複数の臨床試験によりその有効性が示されています。
近年スイスで行われた認知症に対する大規模な臨床試験では、1628人の認知症患者を対象にイチョウ葉エキス、プラセボ(偽薬)のいずれかを約6カ月にわたって投与したところ、イチョウ葉エキス群の症状は有意に改善したとのこと。
その効果・作用は多岐にわたり、認知症患者の注意力、記憶力の改善や健常者の記憶力増大、脳機能障害の改善、脳の血液循環の障害により引き起こされるめまいや耳鳴り、頭痛の改善などなど。
日本やアメリカなどでは医薬品として認められてはいないものの、脳機能の改善が期待できる健康食品として広く用いられています。
否定的な意見も多い現実
イチョウ葉エキスは多くの臨床試験によって効果が認められているとされる一方、否定的な意見も多いんですよね。
というのも、イチョウ葉エキスの有効性が示されたとする臨床試験よりさらに大規模な試験によってその効果をハッキリと否定されてしまっている。しかも医薬品として認可しているフランスで。
イチョウ葉エキスの効果を否定した臨床試験とは
件の試験はフランス国立医学研究機構が2,854人の高齢者を対象に5年間の追跡調査を行うという大規模なもの。
その結果は、プラセボ(偽薬)と比較しアルツハイマー型認知症の予防・発症に有意差は認められず、死亡数や他の出血、心血管などの発症率、副作用や有害事象にも差はなかったと結論付けています。
これ以前にも同規模の試験を2回行っており、同様に認知症予防の効果は認められていません。イチョウ葉エキスは脳に対する効果で注目を浴びているにもかかわらず、大規模な試験においてことごとく効果を否定されていることに。
認知症や血管保護などに効果を示したとする試験結果が多い一方で、それを否定する大規模なデータも多く賛否が分かれている状態。耳鳴りに対する効果も否定されています。
これらは本来のテーマである薄毛とは直接的な関係はないものの、イチョウ葉エキスが持つとされる血行促進効果や抗酸化作用が薄毛に効果があると仮定するのであれば、認知症などに対する試験結果は間接的に影響するのではないでしょうか。
育毛には一切効果ない理由と根拠
さて、ここまでイチョウ葉エキスの効果について触れてきましたが、ここまでの内容はあくまでも認知症や脳機能改善に対するもの。そう、育毛や発毛には一切触れていませんよね。
それもそのはず、髪の毛に関連付けた試験は一切行われていないから。
イチョウ葉エキスに関する研究というのは欧州を中心に世界各国でいまだ活発に行われています。しかし薄毛改善に対するものは皆無なのです。
活発に研究や試験が行われている認知症や血管保護に対してすら雲行き怪しいというのに、まったく研究されていな薄毛に効果があると思いますか?
そもそもイチョウ葉エキスの主な作用は脳の血流改善であり、それを頭皮に結びつけるのはあまりにも無理がある。同じ頭部だから頭皮の血行も良くなるだろうというのはあまりにも強引すぎる。
百歩譲ってイチョウ葉エキスにより頭皮の血行が良くなるとしよう。それで?
頭皮の血流を改善したからといって髪の毛が生えないことは、遥か昔から行われているハゲの悪あがきの結果を見れば明らか。先人たちは藁をも掴む思いで頭皮マッサージや血行促進作用がある育毛剤を試し、そして玉砕している。
ミノキシジルにしてもそう。本来血圧を下げる降圧剤であるミノキシジルの発毛効果は血流改善によるものと思っている人も多いが、それは大きな勘違い。他の降圧剤では発毛効果が見られないことを見れば明らかですよね。
ミノキシジルの発毛メカニズムは完全に解明されていないものの、毛包に働きかけ、毛母細胞の増殖を促進させるためというのが有力な見方。
にもかかわらず、育毛サプリメントを販売するメーカーや多くの育毛サイトは、イチョウ葉エキスに育毛効果が期待できると書いていますよね。でも結局それは育毛サプリメントを売りたいからこその“こじつけ”なのです。
認知症に対する研究のように、試験を行ったうえで賛否が入り乱れ明確なエビデンス(科学的根拠)が見い出せないならまだしも、そもそも薄毛に対する試験や研究すら行われていないイチョウ葉エキス。
こんな成分にハゲ改善を期待するようであれば、脳の認知機能の低下を疑った方がいいかもしれない。そういった皮肉も含めて育毛サプリメントにはイチョウ葉エキスが配合されているのかもしれませんね。
イチョウ葉エキスの副作用と危険性
イチョウ葉エキスをおすすめしない理由はもう一つあります。それは安全性が確認できないから。
前述した大規模臨床試験により、プラセボとイチョウ葉エキスには効果や副作用に有意差がなかったと結論付けています。これだけ見るとイチョウ葉エキスには副作用や有害事象が無いように感じるでしょう。
しかしそれはドイツやフランスで提供される医薬品レベルの品質のものに限るようで、日本のサプリメントには注意するよう国民生活センターが呼びかける事態に。
イチョウの葉にはアレルギー物質である「ギンコール酸」というものが多く含まれています。イチョウ葉エキスを医薬品として認めているドイツやフランスではギンコール酸の量が厳しく規制されしっかりと除去されている。
しかし日本でのイチョウ葉の扱いは食品。ゆえにギンコール酸に規制や規格が存在しないのが実情。ちなみにこのギンコール酸による副作用はアレルギー性のアナフィラキシーショック、腹痛、吐き気などが挙げられます。
医薬品基準の10万倍のギンコール酸も
イチョウ葉エキスを医薬品として扱っているドイツのギンコール酸の規格は120mgあたり5ppm以下。1日120mg服用した場合の目安量は0.6μg以下です。
一方、平成14年に国民生活センターが日本の複数の商品を対象に調査を行った結果、葉の粉砕物を使用したものは7900~16000ppmが検出されています。1日の目安量では最大48000μgと、ドイツ基準である0.6μgの10万倍近い数値も。
葉の抽出物を用いたものでも12銘柄中4銘柄は28~200ppmが検出されるなど、除去の甘さが指摘されています。
この調査は10年以上前に行われたものであるため、今現在は自主規制が厳しくなっている可能性もありますが、これが医薬品のような厳密な規格でない以上安心はできません。
薄毛にまったく効果がない上に副作用のリスクがあるとか罰ゲームだな。
薬の飲み合わせにも要注意
また、薬の飲み合わせや過剰摂取にも要注意。
イチョウ葉エキスはアスピリンやワルファリンといった抗凝血剤との併用により出血の恐れがあるとされます。
過剰摂取による肝臓に対する悪影響も取りざたされており、マウスを用いた実験では、2年間の試験終了時に甲状腺癌や肝臓癌の発症リスクが高かったとも。まあ、ヒトに対するものではないので鵜呑みにするべきではありませんが。
ただ、育毛サプリメントに配合されているイチョウ葉エキスの量は多くても10mg。認知症などに対して使われる量が120~240mgであることを考えると極めて少量だから副作用とか気にする必要はないでしょう。
しかし、それは育毛効果に関しても同様。薄毛に対する改善効果の検証が行われていないばかりか、そもそもの含有量が非常に少ない。これであれば副作用の懸念は必要ないでしょうが、同時に育毛効果も全く期待できない。
イチョウ葉エキスで薄毛は改善しない
育毛サプリメントの定番成分であるイチョウ葉エキス。しかし調べれば調べるほど無意味さが際立つ成分であることが分かります。
イチョウ葉エキスにはフラボノイドやテルペンラクトンによる血行促進作用があるとされるが、そもそも血流や血行の改善で髪の毛が生えることはありません。しかも育毛や発毛に対する検証は一切行われていない。
ここまで意味のない成分ってあるか?…と思いきや、育毛剤や育毛系サプリメントに配合されている成分ってほとんどが同様なんですよね。
いわゆる“育毛サプリメント”にしたって厳密にはただの健康補助食品。髪の毛を生やす発毛効果はおろか、抜け毛を予防したり髪の成長を助けたりする育毛効果すら存在しない代物。ハッキリ言ってラムネと変わらん。
まあラムネでも髪が生えると信じられるようであれば止めはしませんけどね。
ハゲに対し役に立たない健康食品に含まれる微量のイチョウ葉エキス。当然ながら発毛効果なし。育毛効果もなし。健康に良い影響をもたらすかすらも怪しい。
認知症や記憶力向上のためにイチョウ葉エキスを配合するというのであればまだしも、なんの関係もない育毛サプリに配合し、あたかもそれが効果的であるように謳うあたり、メーカーの良心を疑ってしまう。
イチョウ葉エキスで薄毛が改善することはありません。一方でこんな成分に踊らされているうちに薄毛は確実に進行してしまいます。
現状で薄毛に抗うには、多少の副作用リスクがあったとしてもフィナステリドやデュタステリドといった発毛剤に頼らざるを得ないのです。
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