オウゴンエキスは薄毛に効果なし
人気の育毛剤によく配合されているオウゴンエキス。商品によってはフィナステリドと同じ効果があると謳っている場合もあるなど、あたかも発毛しそうな雰囲気を漂わせていますが、その実なんの発毛根拠もない成分だったりします。
多くの育毛剤に配合されているオウゴンエキスはコガネバナ(黄金花)の根を乾燥させ抽出したもので、5αリダクターゼの働きを阻害し薄毛の原因ジヒドロテストステロ(DHT)の生成を抑制すると言われています。しかしその効果はほとんど期待できません。
5αリダクターゼを阻害するといえば発毛剤プロペシアの主成分であるフィナステリドやザガーロのデュタステリドを連想させるため「なんか薄毛に効きそう」と感じるのが藁をも掴みたい私たちハゲの思考。しかし事はそう甘くないのです。
なんでオウゴンエキスが薄毛に効かないのか?
育毛剤はなぜそんな成分を配合するのか?
そのあたりを詳しく掘り下げてみたいと思います。
なぜオウゴンエキスが薄毛に効くと言われるのか?
オウゴンエキスがハゲの改善に役立つというのは育毛剤界隈では常識という風潮が広がっていますが、どういった根拠でそうなっているのでしょうか?
オウゴンエキスに存在するとされるいくつかの作用について検証してみましょう。
■MMP-1生成の抑制
排気ガスやタバコなどの煙には非常に多くの有害な化学物質が含まれていて、それらは環境ストレスのひとつとなります。
環境ストレスを多く受ける環境下ではコラーゲンなど頭皮に必要な栄養素を壊す「AhR-CYPシグナル」というものが活性化しMMP-1(マトリックスメタロプロテアーゼ)が作られると頭皮環境が悪化、薄毛に繋がるとされています。
そのAhR-CYPシグナルの活性化やMMP-1生成を抑制する効果があるのがオウゴンエキスとのこと。実際に詳しく調べてみると、それに関するデータが存在するのが分かります。
中でも顕著なのが、コラーゲンやエラスチンを作り出すヒト真皮線維芽細胞にタバコの煙から抽出した液体と、それにオウゴンエキスを添加したものを比較した試験。
オウゴンエキスを添加したものはしなかったものに比べMMP-1の生成をおよそ70%抑制したことが確認され、また昨今話題のPM2.5から肌老化を予防する作用も明らかになったとか。
線維芽細胞を損傷させ皮膚の老化を促すタバコやPM2.5の影響を軽減できるオウゴンエキス、これはスゴイ!…のか?
これらの試験の対象はヒトではなく、ヒトの線維芽細胞や表皮細胞を培養したもの。現実に育毛剤を使用する状況とはあまりにも違いすぎる。
そもそも化粧品や医薬部外品に使われるオウゴンエキスは表皮のごくごく表面にある角質層までの浸透できない成分。真皮の線維芽細胞に届くことは考えられない。
私たちの薄毛のほとんどは男性型脱毛症(AGA)。男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)によって引き起こされるものですから、線維芽細胞やらコラーゲンやらMMP-1やらはまったく関係がない。
■保湿作用
オウゴンエキスには頭皮の水分を逃さず潤いを維持する保湿作用があります。
ただ、育毛剤に含まれる成分の多くは保湿成分でありオウゴンエキスに保湿作用があったからといって「だから?」というレベルの話。
私たち男性の頭皮はそれでなくても皮脂が十分に分泌されているというのに、わざわざ保湿する意味がどこにあるというのだろうか? 当然ながら乾燥が薄毛に繋がるなんて根拠もデータも存在しません。
■抗炎症作用
これも育毛成分の多くが持つ効果で、頭皮の環境を整えることが期待できるとされていますが、当然これで髪が生えるわけではない。
抗炎症作用と聞くと頭皮の炎症を治してくれそうな印象を抱きますよね。脂漏性皮膚炎や粃糠性(ひこうせい)脱毛症による薄毛を改善してくれそうだと。
しかしオウゴンエキスはじめ育毛剤に配合される抗炎症作用を持つ成分で脂漏性皮膚炎や粃糠性脱毛症を改善・予防することは不可能。これらの治療には医薬品であるケトコナゾールやステロイド剤が必要なのです。
つまりオウゴンエキスの抗炎症作用は薄毛の原因になりうる酷い炎症を治すものではなく、育毛剤の刺激によって起こりうるかゆみや紅斑、炎症を抑制する成分と見るのが自然。それも気休め程度に。
■5αリダクターゼを阻害しDHT生成を抑制する作用
育毛剤に配合されるオウゴンエキスで最も期待されるであろうこの効果。
私たちを悩ませるAGAは男性ホルモンであるテストステロンと5αリダクターゼ(5α還元酵素)が結合することによって作りだされるジヒドロテストステロン(DHT)が原因です。
5αリダクターゼを阻害することでDHTの生成を抑制するとされるこの作用、発毛成分であるフィナステリドやデュタステリドと同様の効果であることから期待は膨らみますよね。
しかしこれも明確なデータや臨床試験は一切存在せず、「どの程度の効果があるのか」がまったく見えてこない。
開発メーカーではお得意の培養細胞を用いた試験を行っているのでしょうが、実際の頭皮とはあまりにも違う環境であるうえ客観性にも乏しい。ハッキリ言ってそんなものは何の役にも立たない。
極端な話をすればフィナステリドのDHT生成を抑える効果が100として、オウゴンエキスが0.01くらいだったとしてもゼロではない以上「効果はある」と言えなくもない。しかしそんなものを私たちは望んでいない。
オウゴンエキスには5αリダクターゼを阻害する作用があると謳う育毛剤が後を絶ちません。そう言い切るなら明確な科学的根拠を出せよと言いたい。
たかだか化粧品成分でしかないオウゴンエキスが臨床試験を行っている可能性は0%ですから、5αリダクターゼを阻害するという科学的根拠が存在するはずもないんですけどね。
育毛剤に配合される量は超少量
仮に100歩譲ってオウゴンエキスに発毛を促す効果があるとして、果たして育毛剤にどれだけの量が配合され、そしてどれだけの量を使えば効果が出るのか?
例えばリアップX5などのミノキシジル5%配合の発毛剤であれば60ml×0.05で3mlのミノキシジルが配合されていることが確認できます。これだけ強い発毛成分ですらこのくらいの量入っていないと効果を示さないことの裏返しでもあります。
一方の育毛剤は、一般的に内容量の90%は水やエタノールなどで、残りの10%に様々な育毛成分が配合されていることになります。
チャップアップやイクオスなどであれば内容量120mlですから単純計算で12mlが育毛成分ということに。60種も70種も成分が入っていると考えたら一つひとつの成分の量ってどの程度なんでしょうね?
乱暴ですが12mlを60成分で均等に割ると1成分あたり0.2mlということになり、一滴が0.04~0.05mlとされていますから4、5滴程度。
ただ育毛剤は厚生労働省認可の医薬部外品とするためにセンブリエキスやグリチルリチン酸ジカリウムなどの有効成分が多く含まれていますから、オウゴンエキスなどその他の成分はもっと少なくなるはず。
そう考えると120mlに対し2、3滴程度?
ミノキシジルですら外用薬は内服薬に比べて効果は控えめである場合が多く、3ml配合してやっと「ある程度発毛するかな?」くらいなのに、オウゴンエキスを0.1mlとか0.2ml程度配合してどれほどの効果があるんでしょうね。
オウゴンエキスの副作用
薄毛に効果がないと言わざるを得ないオウゴンエキス。では副作用はどうなのか?
「効果がないんだから副作用などあるはずがない」という予想通り、オウゴンエキスに皮膚刺激性は無いと考えていいでしょう。
スカルプエッセンスに使用される様々な成分のパッチテストが1996年に行われています。対象の被験者は22~58歳までの30名でオウゴンエキスの濃度は2%。
結果としては数人に軽い紅斑が見られたものの、安全性の評価は「安全」。製品の皮膚刺激性は無視しうるものと結論付けています。仮にスカルプローションでアレルギー反応が出るのであれば、オウゴンエキスが原因ではなくエタノールによるものである可能性が高いとも。
2%のオウゴンエキスで副作用が確認できないのですから、それよりはるかに少ない量しか配合されていない育毛剤で同成分の悪影響を心配する必要は全くない。
発毛効果はおろか育毛効果すら期待できない成分なので副作用がないのは当然といえますよね。オウゴンエキスは人畜無害なので安心してご利用ください。
オウゴンエキスに期待してはいけない
そもそもオウゴンエキスは発毛成分ではありませんし、厚生労働省に「育毛効果がある」と認められた有効成分ですらありません。
ノコギリヤシのように多少でも臨床試験が行われていたりするものであればまだしも、それすらされていないオウゴンエキスが育毛成分の定番とは片腹痛い。
例えば15%や16%など高濃度のミノキシジルを配合することで有名な外用薬「フォリックス」の中にはフィナステリドを0.1%配合するものもありますが、発毛成分フィナステリドですら外用薬かつ0.1%程度では「効果あるのかよ」と疑問に感じざるを得ない状況に対しオウゴンエキスがちょびっととか…
ハッキリ言ってこんなもので毛が生えたら苦労はしませんし、そもそも発毛効果は一切ありませんので、育毛剤を売りたいサイトやブログ、メーカーの甘い言葉に騙されないようにしてください。
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