アミノ酸で髪の毛が生えることはない
育毛に効果があるという理由で多くの育毛剤や育毛サプリメントに配合されているアミノ酸。その理由を見るといかにももっともらしいことを書いており、思わず「なるほど!」と納得してしまいそうですが、それ大嘘です。
アミノ酸が体を形作る上で極めて重要な栄養素であることは疑いようがないものの、それと育毛・発毛はまた別の話。
「アミノ酸は育毛に効果的!」と書いている多くの育毛剤メーカーや育毛サイトの嘘を徹底的に暴いていきたいと思います。
アミノ酸に育毛効果があるとされる理由
さて、ではそもそもなぜアミノ酸で髪の毛が生えると思われているのか?アミノ酸の育毛・発毛効果を否定する前にまずはその理由を見てみましょう。
髪の毛を構成するケラチンを作る
アミノ酸に育毛効果がある根拠として育毛剤メーカーや育毛サイトが吹聴しているのがたんぱく質である「ケラチン」の存在。
髪の毛の約99%はケラチンというたんぱく質で構成されており、そのケラチンは18種のアミノ酸を合成して作られます。
そのため髪の毛の基になるケラチンを構成するアミノ酸を塗布、摂取することが育毛や発毛にとって効果的というのは一見理に適っているように感じますよね。
人間の体は基本的にたんぱく質でできており、そのたんぱく質はアミノ酸から作られる…であるならアミノ酸が髪の毛にとって必要なものというのは間違いありませんし、それについては否定する理由は見当たりません。
細胞のエネルギーになるから
体を維持する上で必要になるエネルギーの一部はアミノ酸から供給されています。そのためアミノ酸が毛根の細胞にエネルギーや栄養を与え育毛に役立つなどと謳う育毛剤が後を絶ちません。
これも鵜呑みにすれば理に適っているように感じますよね。
このように事実を持ち出しつつ強引な解釈により髪の毛に効果があると錯覚させるのは育毛業界の闇そのものと言っていいでしょう。
アミノ酸で髪の毛が生えない理由
アミノ酸の育毛・発毛根拠には必ずケラチンが出てきます。髪の毛を作るケラチンの最小単位がアミノ酸である以上当然と言えますよね。
しかし、これを塗布・摂取して髪の毛が生えない理由は多く存在します。
ケラチンは髪の毛だけのものではない
育毛業界では「髪の毛=ケラチン」という情報が溢れており、それ自体は間違いのないものです。しかしケラチンは爪や全身の体毛の基にもなっています。
そのためケラチンを摂取して髪の毛が生えるというのであれば、当然ながら体毛も目に見えて濃くなってくるはず。爪もガンガン伸びます。ウォーズマンまっしぐら。
しかしそんな話聞いたことありますか?
裏を返せばアミノ酸が不足して薄毛になっている場合、当然体毛も薄くなるはず。しかし現実は逆で、多くは体毛が濃くなるのと反比例して髪の毛が薄くなっていく。
そりゃそうだ、男性型脱毛症(AGA)や体毛の増加は男性ホルモンによって引き起こされるもの。アミノ酸でAGAが改善するなど的外れもいいところ。
アミノ酸は全身で使われる
これも上記に関連することですが、経口摂取されたアミノ酸のほとんどは生きるために必要な内臓や筋肉などの部位に使われます。全身の生命維持に必要な器官に使用された上、ケラチンを合成したとしても全身の毛や爪などに使われる。
経口摂取したアミノ酸が髪の毛に使われる量など極めて微量なのは言うまでもありません。つまり、頑張って摂取しても育毛・発毛には役に立たないということ。
肉好きのデブがハゲている
生活習慣はAGAにほとんど影響しないというのは当サイトの基本方針ですし、医学的・科学的にも同様の見解です。なぜなら男性の薄毛のほとんどを占めるAGAの発症は遺伝によって決まる5αリダクターゼの分泌量やジヒドロテストステロン(DHT)の感受性が左右するから。
しかし、生活習慣の乱れが極まっている肥満に関しては、薄毛との関連性を否定できません。だって、世の中を見渡してもデブの薄毛率は明らかに高いから。目に見えたデブは20代~30代前半でも普通にハゲてる。
ここからが本題ですが、肥満の人の多くはカロリーの高い炭水化物と肉を好みます。そしてこの肉はたんぱく質の塊です。それは体内でアミノ酸に分解されるため、太っている人の多くは十二分なアミノ酸を摂取していることに。
でもハゲてる。
肉には育毛に効果的とされるビタミンB群や亜鉛も豊富に含まれているのにハゲる。
「肥満が髪の毛に与える悪影響はアミノ酸の効果を消し去るほどだからだろ」と感じる人もいるかもしれませんが、太っていない肉好きが髪の毛フサフサなんてこともない。むしろ肉好きはハゲるなんて通説もあるくらいですから。
つまりアミノ酸に育毛・発毛効果など存在しないと考えるのが自然です。
育毛剤のアミノ酸とか愚の骨頂
ここまでは経口摂取するアミノ酸…つまり、食事やサプリメントで摂るものについて取り上げてきました。
では育毛剤に配合されるアミノ酸はどうなのか?
インターネットを中心に販売される育毛剤はアミノ酸を10種以上配合しているものも多く、そのほとんどはアミノ酸の育毛・発毛促進効果について強調しています。
経口摂取しても効かないのに塗って効くはずないだろ。
まさか塗布したアミノ酸が頭皮でケラチンになるとでも言うのか?120%ありえませんし、そもそも頭皮に塗布したアミノ酸は表皮のごくごく表面にある0.02mmの角質層すら突破できません。
ただし、化粧品にも多く使われるようにアミノ酸に保湿効果はあります。男性ホルモンが影響するAGAに保湿効果が効果的と思っているなら使ってみてもいいかも。
信じる者は救われませんけどね。
育毛に対する根拠は一切ない
多くの育毛剤メーカーや育毛サイトによってアミノ酸に育毛効果があるという説が既成事実化しているものの、その根拠は一切ありません。一切だ。
経口摂取、塗布ともに育毛・発毛効果を検証したデータは存在せず、髪の毛がケラチン(アミノ酸)で構成されているという事実から連想して「育毛に効果的」と言っているに過ぎないのです。
人間の体がたんぱく質で作られているからといって、成長期を過ぎた大人がたんぱく質やアミノ酸を必死に摂取して身長が伸びますか?鉄の塊に鉄分が豊富な水をかけて大きくなりますか?
育毛関連企業やサイトが書いていることはこんなトンデモ論と同レベルなのです。
なんの根拠もないのに「アミノ酸が育毛に効果的」なんて書いているのはもはや詐欺と言っても過言ではない。
アミノ酸で髪の毛が生えることは100%ない
何度も書いているように髪の毛を構成しているのはケラチンで、そのケラチンが18種のアミノ酸を合成して作られるのは紛れもない事実です。
だからといってアミノ酸を使えば髪の毛が生えるという話ではない。
拒食症レベルの栄養失調でアミノ酸が極端に不足した結果、髪の毛から体毛、爪に至るまで成長が止まってしまったというならアミノ酸の摂取は効果的でしょう。しかし私たちのハゲはこれに該当しないですよね。
M字部分や頭頂部などから薄毛になるのが大きな特徴のAGAは男性の薄毛の9割以上を占めています。そして薄毛改善の方法を求めて育毛剤やその成分を調べている人のほぼすべてはこれに該当するでしょう。
AGAの原因はあくまでも男性ホルモンであるDHTと、それを作り出す5αリダクターゼです。そこにアミノ酸が介在する余地は一切ありません。
そんなアミノ酸に育毛効果があるとする育毛剤メーカーや育毛サイトは間違いなく悪質なので、絶対に騙されないようにして下さい。
それでもどうしても気になるようであれば、アミノ酸の中でも特に育毛に効果的とされるリジンと、髪の毛を構成するケラチンの生成に欠かせない亜鉛がセットになった大人気のL-リジンプラスでも使っておけばいい。
こんなもので髪の毛が生えるとは考えられないんだけど…なぜかすごい人気なんですよね。2ちゃんねる(5ちゃんねる)あたりでも「リジンがー」「亜鉛がー」という書き込みをよく目にするし。
まあ気休め程度に。
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