フィナステリドは最も信頼できる発毛剤
日本で初めて販売された発毛剤は、1999年に発売されたミノキシジル配合の発毛剤「リアップ」です。
しかし当時のリアップはミノキシジル濃度が1%だったこと、そして一定の発毛効果はあるものの、薄毛の劇的な改善までは望めない外用薬だったことから、発毛剤といえど「育毛剤+α」の印象は拭えませんでした。
そんな状況を大きく変えたのが2005年に正式承認され、同年に発売されたプロペシア。
プロペシアはフィナステリドを主成分とした内服の発毛剤で、すでに世界中の多くの国々で男性型脱毛症(AGA)の治療薬として広く使用され、日本においてもこれまでの薄毛治療の在り方を一変させました。
現在においても薄毛治療の最前線にあり続けるフィナステリド。どういった作用によって薄毛を改善し、どんな特徴や副作用があるのかについて詳しく解説していきたいと思います。
フィナステリドって何?
発毛剤として世の薄毛男性に大きな希望を与え続けているフィナステリド。しかし実はこのフィナステリド、発毛剤として開発されたものではなく、本来は前立腺肥大症の治療薬として開発、使用されたものでした。
男性型脱毛症(AGA)の研究が進むにしたがい、AGAの原因が「ジヒドロテストステロン(DHT)」という男性ホルモンの一種であること、そして前立腺肥大症も同様DHTにより引き起こされることからフィナステリドに白羽の矢が立ちました。
AGAの男性に対しフィナステリドを服用する臨床試験において多くの被験者に髪の毛の成長が確認されたことから、発毛剤として転用され世界中で使用されるようになったという経緯があります。
発毛剤としての信頼性はNO.1
現在、日本で承認されている発毛剤はフィナステリド以外にも「デュタステリド」「ミノキシジル」が存在します。しかし信頼性という面ではフィナステリドが圧倒していると言っても過言ではないでしょう。
実際、2017年に策定された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」においても、実績に対する評価やデータの多さから「高い水準の根拠がある」と断言。
AGAクリニックや皮膚科などでAGAの治療を希望した場合、ほとんどのケースでまずはフィナステリドを処方される点からも、この薬の信頼性の高さが伺えます。
2015年に、より高い発毛効果が期待されるデュタステリドが承認されたものの、第一選択薬はあくまでもフィナステリド。
AGA治療においてフィナステリドほど信頼されている薬は存在しないのです。
フィナステリドの作用は?
AGAの原因は前述の通り、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)です。
男性らしい体を作り上げる最も一般的な男性ホルモン「テストステロン」が薄毛を引き起こすことはないものの、「5α-リダクターゼ」という酵素と結びついて生み出されるDHTには私たちを悩ませる薄毛の原因に。
フィナステリドにはDHTを生み出すこの5α-リダクターゼの働きを阻害し、DHTの生成を抑制する作用があるのです。
若い時はテストステロンが豊富に分泌されていますが、加齢と共にテストステロンの分泌量が低下。それを補うために、より強力なDHTが増え、結果それがAGAを引き起こす原因になっていると見られています。
非常に効果の高いフィナステリドですが、男性ホルモンに働きかけること、そして胎児の生殖器の成長に悪影響を与える可能性があることから女性…特に妊婦の使用は禁忌とされているので注意が必要です。
■5αリダクターゼを阻害し薄毛の原因となるDHTの生成を抑制
■女性の使用は効果がない上に妊婦の場合胎児に悪影響もあり使用できない
フィナステリドの副作用は?
市販の育毛剤と違い、フィナステリドは科学的根拠に基づいたAGA改善効果がある強力な発毛剤ということもあり副作用が出る可能性はゼロではありません。フィナステリドの主な副作用は以下の通り。
副作用の種類/頻度 | 頻度不明 | 1~5%未満 | 1%未満 |
---|---|---|---|
過敏症 | 痒痒症、蕁麻疹、発疹、血管浮腫(口唇、舌、咽喉及び顔面腫脹を含む) | ― | ― |
生殖器 性機能障害 |
睾丸痛、男性不妊症・精液の質低下(精子濃度減少、無精子症、精子運動性低下、精子形態異常等) | リビドー減退 | 勃起機能不全、射精障害、精液量減少 |
肝機能 | AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇、γ-GTP上昇 | ― | ― |
その他 | 乳房圧痛、乳房肥大、抑うつ症状、めまい | ― | ― |
フィナステリドの副作用でもっとも多いのが性欲(リビドー)減退で、2%程度の頻度で現れるとされています。次いで勃起障害(ED)や射精障害が挙げられるなど、性機能に関するものが多くなっています。
これは薄毛の原因でもあり、強力な男性ホルモンの一種でもあるDHTが減少することによって起こるもの。裏を返せば薄毛の改善に向かっていることを示唆していると言っても過言ではないでしょう。
「性機能障害」と聞くとちょっと怖くなってしまいますが、前立腺肥大症の患者が使うフィナステリドの1日の限度量が5mgに対し、発毛剤での上限は1日1mgと少なく、ほとんどの副作用の頻度は1%未満と低いものになっているのが特徴。
副作用にどの程度の恐怖を抱くかについては個人の価値観が大きく左右すると前置きしたうえで、薄毛に思い悩むくらいなら、多少の副作用リスクを許容してでもフィナステリドを使用したほうがいいのではないでしょうか。
■副作用の頻度は決して高くはない
女性に効果はなく妊婦は触ることも禁忌
男性の薄毛には高い効果を発揮するフィナステリドですが、男性ホルモンを減らすよう働きかける作用である性質上、女性には効果がないというデータが示されており、使用するべきではないとされています。
というのも、女性の薄毛は男性に比べ遺伝の要素が少なく、生活習慣や食生活の乱れなどから女性ホルモンであるエストロゲンが減るなど、ホルモンバランスが崩れることが大きな要因と見られているから。
また、DHTは薄毛や前立腺肥大症の原因になる一方、男児の生殖器などの成長に欠かせない男性ホルモンでもあるため、妊婦がフィナステリドに触れることによって胎児の生殖器に発達障害を引き起こす恐れがあります。
こういった背景から、肌からも吸収(経皮吸収)される可能性があるフィナステリドを妊婦が使用することはもちろん、薬に触ることも禁忌。夫など家族がフィナステリド内服薬を使用している場合は注意が必要です。
女性の場合フィナステリドとデュタステリドという2つの発毛剤は使えないため、使用できる発毛剤はミノキシジルのみ。もしくは世界中で使用される育毛剤パントガール、ルグゼバイブあたりになるでしょうか。
フィナステリドが女性の薄毛に有効というデータも
男性に比べ男性ホルモンの分泌量が少ないこと、臨床試験で有効なデータが得られなかったことから、女性がフィナステリドを使用しても薄毛は改善しないという見方が一般的でした。
しかし近年、女性の薄毛に対しフィナステリドを服用する複数の臨床試験で一定の効果が確認されています。
とはいえ、これらの臨床試験はあくまでも小規模なものということもあり、フィナステリドが女性の薄毛に効果があるという科学的根拠が得られたわけではない点に注意。
ただ、これまでミノキシジルしか選択肢がなかった女性に対し、フィナステリドが効果を発揮するかもしれないというデータは朗報以外の何ものでもない。
妊婦や妊娠の可能性がある女性がフィナステリドを使用するのは依然として論外ではあるものの、そういった状況にない女性はフィナステリドを検討する価値も。
女性であれば性機能障害の副作用が出る可能性も低いでしょうからね。
ただし、専門家の見解としては依然として「女性の薄毛にフィナステリドは効かない」というのが一般的。
もし女性がフィナステリドを使用したい場合は、理解のあるAGAクリニックを探すか、もしくは個人輸入で購入するしか方法がないのが現状でもあります。
■妊婦は使用はおろか触ることも禁止されている
フィナステリドは決して怖い薬ではない
薄毛の治療をするにあたり、必ず耳にするであろうプロペシア。その主成分であるフィナステリドは薄毛に悩む世界中の男性が使用し、そしてきっちりと結果を残してきた“名薬”といっていいでしょう。
フィナステリドには確かに性機能関連の副作用が出る可能性があるものの、その頻度は決して高くありませんし、何よりその副作用は発毛剤が効果を発揮し薄毛が改善に向かっていることの裏返し。
今まさに子作りをしている最中というのであればまだしも、そういった状況にない人は積極的にフィナステリドを試してほしいと感じます。薄毛は進行すればするほど治療が難しくなってくるのだから。
一部サイトではフィナステリドの副作用を過剰に叩いているケースも散見されます。
しかし、フィナステリドは本来前立腺肥大症の治療薬であり、AGAはもちろん前立腺肥大症の患者の多くに処方されてきた歴史を考えれば、いかに安全な薬かが見えてくるのではないでしょうか。
薄毛の兆候が見えだしたら、手遅れにならないうちにフィナステリド。
これを肝に銘じておけば「ハゲ散らかして悲惨な状態に!」という事態を避けられる可能性が大幅に高まるのは間違いありません。
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