アゼライン酸で髪の毛は生えるのか?
日本では育毛成分としてほとんど注目されていないアゼライン酸ですが、海外では一定の発毛効果があるとして育毛剤などに使われることがあります。果たしてこの成分は本当に効くのでしょうか?
このアゼライン酸、海外ではニキビの治療薬として使われており、20%含有のスキノレンクリームが一般的。しかし育毛にはあまり関係がないように感じる上に日本では処方されていないため馴染みがありませんよね。
実際、日本の育毛剤で同成分を配合したものは見当たらず、アメリカ製の高濃度ミノキシジル外用薬であるポラリスシリーズや、後継商品となるフォリックスシリーズで初めて知ったという人も多いのではないでしょうか?
しかし一部にはこれを育毛・発毛に使用している猛者も。実際のところアゼライン酸で髪の毛が生えるのかどうか、試すならどういった商品がいいのかなど詳しく検証してみたいと思います。
アゼライン酸とは?
ここで取り上げるアゼライン酸とは欧米を中心に多くの国でニキビの治療薬として使用されている成分。30年以上前から使われているように海外では極めて身近な治療薬として君臨しています。
しかし日本では認可されていないため、手に入れるには個人輸入を用いるか、化粧品の成分として入っているものを購入する必要があります。しかし化粧品に使用されるアゼライン酸は基本的に低濃度であるため個人輸入を用いるのが一般的でしょうか。
で、この成分の作用はというと…
- 皮脂の分泌を抑える
- 抗菌
- 抗酸化作用
- 抗炎症作用
- 角栓の除去
- メラニンの生成を抑制する
…およそ育毛・発毛とは関係のない文言が並んでおります。あえていうなら頭皮の環境改善に役立ちそうな抗酸化作用や抗炎症作用くらいか。こういった効果って生えない育毛剤の定番だから、むしろ胡散臭さが際立つがな。
このようにアゼライン酸は一般的にニキビの治療薬や美白目的として使用されるもの。発毛効果が取りざたされているなんて知っているのは一部のハゲくらい。
アゼライン酸の育毛・発毛効果とは?
で、ここからが本題になります。ニキビの治療に使われるアゼライン酸にどういった発毛効果があるというのか?そもそもそれは本当なのか?
もう30年前の研究になりますが、その中でアゼライン酸が5αリダクターゼを強力に阻害するという結果が出ています。
この5αリダクターゼ(5α還元酵素)は男性ホルモンであるテストステロンと結びつき、男性型脱毛症(AGA)の原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)を作り出す酵素。つまりこの研究でAGAに対するアゼライン酸の有効性が示された格好。
しかしこの研究にはいくつかのツッコミどころもあります。
アゼライン酸のみの結果ではない
この研究の中で「単体では効果がないことが示された」とあります。加えて「3つの物質を低い濃度で一緒に添加した場合、5αリダクターゼを90%阻害した」とも。
この3つの物質とはアゼライン酸、亜鉛、ビタミンB6です。
特に亜鉛との組み合わせは重要となっている模様。しかし私が知る限り亜鉛とアゼライン酸が一緒に配合されている医薬品や発毛剤は見たことがない。
人間に用いた結果ではない
アゼライン酸と亜鉛、ビタミンB6の組み合わせは5αリダクターゼを強力に阻害したとありますが、冒頭に「in vitro」の文字が見て取れれます。そして締めくくりに「in vivoで確認された場合、人間の皮膚のアンドロゲン関連病態の治療に有効な薬剤である可能性がある」と書かれている。
この中のin vitroとは「試験管内の」という意味。人為的にコントロールされた培養組織を用いた実験を指しており、アゼライン酸や亜鉛で90%の5αリダクターゼが阻害されたという効果は培養細胞を用いた結果であることが分かります。
そして、この効果がin vivo(生体)で確認されればAGAや前立腺肥大症といったDHTを原因とする病気に有効であると。
つまり、アゼライン酸がAGAに効くかもしれないという研究結果は人間の頭皮を用いたものではなく、あくまでも人為的に培養された組織を使ってのもの。
培養細胞で素晴らしい結果が出ても実際の人間に対してはろくな効果が出ない成分は腐るほど存在する。育毛分野ではキャピキシルやリデンシルなどのハッタリ成分でお腹いっぱいだわ。
スキノレンクリームに発毛効果は?
海外製の発毛剤のいくつかにはアゼライン酸が配合されているものの、含有量が明記されていないためかなりの少量と見るべき。つまりアゼライン酸の効果はほとんど期待できないことになる。
アゼライン酸の効果を確かめようと考えれば、これが主成分の医薬品を使用する必要があります。そしてそれはニキビ治療薬のスキノレンクリーム以外にありません。
実際にアゼライン酸を20%配合するスキノレンクリームを発毛目的で使用している猛者もいるよう。しかしその効果がいまいち見えてこないというのが実情だったりします。
とりあえず個人輸入代行業者のスキノレンクリームに対する口コミから発毛に関するものを拾ってみましょうか。
スキノレンクリームの発毛・育毛に関する口コミ
無水アルコールと精製水で育毛剤として使っています。 効果はあると自覚しているので続けていきたいと思います。
脱毛の原因を抑制する成分が含まれているとかで、サイトで紹介されていたので購入してみました。 使用してみて、皮膚が荒れたりすることはありません。 今のところ発毛があるなどの効果はありません。
薄毛に良いとネットで記載があり購入しました。効果はこちら単体の力は感じなかったので現在は使用はしておりません。
アボルブジェネリック0.5mgとポラリスNR09と併用してました。 毛髪は改善されませんでしたが、ポラリスによるかゆみや湿疹を抑えてくれます。
かなりagaが進んでおり、生え際がかなりきになっていました。頭頂部と生え際に効いてくれることを祈ってます。
…う~ん…
当たり前だがレビューの内7~8割方はニキビや酒さ(しゅさ)の治療を目的に購入しており、残りの2~3割がAGA対策のために使ってみたという人。
しかし効果があったという声は少ない印象。
そもそもアゼライン酸なんてマイナーな成分を試そうなんて人はすでにフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤を使っているケースがほとんどで、アゼライン酸単体の効果など実感できるはずもない。
結局、その程度の効果ということになるか。
アゼライン酸を用いた薬や発毛剤は?
ぶっちゃけ髪の毛を生やす効果があるのか怪しいと言わざるを得ないアゼライン酸。しかしこれが気になっている人もいると思いますので、アゼライン酸を使用している薬や発毛剤をいくつか紹介しましょう。
スキノレンクリーム
上でも取り上げたアゼライン酸20%配合のスキノレンクリーム。
一部ではカークランドやフォリックスなどのミノキシジル外用薬に混ぜることで相乗効果が期待できるとする声もあります。
単体でのAGAに対する効果はあまり期待できないものの、今使っている発毛剤の補助的な意味で使用するのはあり…なのか?
フォリックスFR16
フォリックスシリーズにはすべてアゼライン酸が配合されていますが、この成分が気になるような人はその中でも最強のフォリックスFR16を使うべきと考える。
ミノキシジル16%に加えフィナステリド、アデノシンといった発毛が認められている成分が配合されているため、アゼライン酸はおまけ的な位置付けになってしまうものの、外用薬でこれ以上効果が期待できるものは存在しない。
これがダメならもはやミノキシジルタブレットに頼るしかない。そんなレベル。
フォリックスFR15
個人的に最強外用薬であるフォリックスFR16推しだが、フォリックスシリーズで最も人気があるのはFR15のほう。
ミノキシジル15%とFR16に比べ1%しか違わないが、フィナステリドが入っていないため副作用のリスクが少ないイメージがあり、かつ200円ほど安いのも地味に影響しているのかもしれません。
当然ながらアゼライン酸は入っているので、「FR16ほどの過激な成分は必要ないわ」という人はFR15で十分か。
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