スピロノラクトンでハゲや薄毛は治るのか?
高血圧や浮腫(むくみ)の治療に使われるスピロノラクトンという成分。製品名ではアルダクトンが最もメジャーとなっている医薬品です。このスピロノラクトンに発毛効果があるとされるが本当なのか?
主に女性の薄毛に効果を示すとされるスピロノラクトンは男性の薄毛にも効果があるのか?内服薬と外用薬どちらがいいのかなど、同成分に対する疑問は尽きません。
発毛効果が認められた成分は限られることもあって、選択肢は多い方が望ましいですよね。果たしてスピロノラクトンは薄毛治療の選択肢に入るのか検証しましょう。
スピロノラクトンとは?
スピロノラクトンは利尿作用がある医薬品で、一般的な利尿薬と違いカリウムを保持したまま尿の排出を促すのが特徴。
腎臓においてナトリウムの再吸収を促すアルドステロンというホルモンの働きを抑制することで利尿作用を示し、浮腫や高血圧を改善します。
「ハゲと関係ねえじゃん」と感じたあなた、ホントその通り。スピロノラクトンの効能・効果は以下のようになっており、薄毛とは全く結びつかない。
- 高血圧症
- 心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性浮腫に伴う浮腫及び腹水、栄養失調性浮腫
- 原発性アルドステロン症の診断および症状の改善
一見育毛・発毛とは何の関係もないように感じるスピロノラクトン。しかしアルドステロンの働きを阻害する点に発毛へのカギが存在します。
スピロノラクトンの発毛メカニズム
スピロノラクトンがアルドステロンの働きを抑制する仕組みはこうです。
スピロノラクトンが先回りしてアルドステロン受容体と結合することで、アルドステロンは受容体と結びつくことができず、その作用を発揮できません。
実はこの作用、アルドステロン受容体のみならず、男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)にも広がることが知られています。
DHTの働きを抑制するスピロノラクトン
私たちが苦しめられている男性の薄毛の9割以上は男性型脱毛症(AGA)と呼ばれるもの。そのAGAの原因はテストステロンという男性ホルモンと5αリダクターゼという酵素が結びついて作り出されるジヒドロテストステロン(DHT)です。
このDHTが毛乳頭細胞内で男性ホルモン受容体(アンドロゲンレセプター)と結合することで脱毛因子が作り出され髪の毛の成長を阻害、結果薄毛になってしまうのがAGAのメカニズムとされます。
勘のいい人ならもうお気付きでしょう。このアンドロゲンレセプターと結合する性質を持つスピロノラクトンを使用することでDHTとの結合を抑制することができる…それが同成分の発毛メカニズムなのです。
DHTを抑制するいう点から、発毛成分であるフィナステリドやデュタステリドと同じ効果のように感じるかもしれません。しかしこれらが5αリダクターゼを阻害しDHTの生成を抑制するのに対し、スピロノラクトンはDHTと受容体の結合を抑制するもの。作用は大きく異なります。
女性ホルモンを増やす作用も
DHTとアンドロゲン受容体の結合を阻害する作用により発毛効果が期待できるスピロノラクトン。実はこれ以外にも薄毛に効きそうな働きが。
それは女性ホルモンを増やす作用。
スピロノラクトンは男性ホルモンであるDHTの働きを抑制するうえに、テストステロンから女性ホルモンへの変換を促進させる作用があります。
それらの作用によって相対的に女性ホルモンが優位になることが薄毛の改善に寄与すると見られています。なぜなら代表的な女性ホルモンである「エストロゲン」にはDHTの生成を抑制したり髪の毛の成長を促進させたりする作用があるから。
育毛サプリメントにエストロゲンに近い働きをするイソフラボンがやたらと配合されているのはそのためですね。とはいえ、イソフラボンを経口摂取して発毛するという科学的根拠は存在しませんが。
その点、体内でエストロゲン自体の生成を促す作用があるスピロノラクトンはイソフラボンの経口摂取より効果を期待できるのかもしれません。
スピロノラクトンの試験データ
スピロノラクトンの発毛効果を調べる試験は複数行われています。
男性型脱毛症(AGA)と同じく、DHTを主な原因とする女性の薄毛「女性男性型脱毛症(FAGA・FPHL)」を発症している女性を対象に行われています。
その結果はというと…正直微妙というのが本音か。
女性80名を対象にスピロノラクトン200mgの経口薬を用いた試験では、脱毛を50%~62.9%減少させ、かつ成長期の髪の毛の総量を増加させたという結果が。
この中では、44%の女性に一定の発毛が見られ、44%は進行も改善しない現状維持、12%は脱毛が継続という数字が示されました。つまりスピロノラクトン200mgを毎日服用することで88%の人が現状維持以上の効果を得ていることに。
ただ、この試験は発毛剤の臨床試験のような厳密かつ客観的なものではなく、また効果の面でもミノキシジルに比べ弱いものとなっています。
ミノキシジルとの併用で相乗効果も
別の試験では5%のミノキシジル外用薬とスピロノラクトン経口薬を併用して行われ、相乗効果が期待できることが示されています。
53歳の女性に200mgのスピロノラクトンを12ヶ月間投与したところ一定の発毛効果が認められたものの、その後は頭打ち。そこでミノキシジル5%外用薬を追加したところ再び髪の毛が成長したとのこと。
ただ、これ対象が1人なんですよね。ミノキシジルが効きやすいとされ、2%のミノキシジルでも効果を発揮する女性に対し5%製剤を使わせれば、そりゃ髪も生えるだろうよ。
これらのことから、スピロノラクトンには一定の発毛効果が期待できるも、女性が唯一使える発毛剤ミノキシジルに比べれば効果は限定的という結論に至るでしょうか。
補助として割り切るなら有用かと。
副作用に注意
一定の発毛・育毛効果が望めるスピロノラクトンですが、内服薬に関しては複数の副作用が確認されています。代表的なものを挙げると…
- 女性化乳房・乳房腫脹
- 性欲減退
- 月経不順・無月経
- 低血圧
- 頻尿
- 肝臓関連の数値上昇
- 食欲不振・吐き気、下痢
男性ホルモンの働きを抑制し女性ホルモンを増やす作用があることから、女性化乳房や性欲減退などフィナステリドのような副作用が確認できます。
また、本来は利尿による血圧低下やむくみ解消を目的とする薬であるため、低血圧や頻尿といった副作用も。…というか、これが主作用なんですけどね。育毛・発毛目的で使えば副作用という意味で。
外用薬は副作用リスクが低い
一方、一部の育毛剤で使われる頭皮に塗布するスピロノラクトンは副作用の心配はほとんど必要ありません。仮に何かの有害事象が出たとしても、塗布部分のかゆみや炎症程度と見ていいでしょう。
降圧剤であるミノキシジルですら、外用薬になると副作用は頭皮のかゆみやかぶれ、接触性皮膚炎程度ということを考えても、スピロノラクトン外用薬の副作用リスクは低い。
他の発毛剤の補助として使うなら外用薬を選択するのもありか。
スピロノラクトンは薄毛男性にも効果あり?
一般的に薄毛治療目的でスピロノラクトンを使用する場合、対象は女性。海外で行われている試験もほとんどが女性を対象にしている。
じゃあ男性は使えないの?
個人輸入を用いればスピロノラクトンの内服薬、外用薬共に手に入り、業者に寄せられたレビューを見てみるとAGA対策として男性が使用していることも多いことに気付かされます。
それは発毛目的のみならず、皮脂の分泌やニキビを抑制する目的だったり、体毛を薄くさせることが目的だったりと様々。
スピロノラクトンは男性ホルモンを抑え女性ホルモンを増やすことから、性欲が減り胸が大きくなる副作用を目的にLGBTの方々が使用していることも。
ストレート(ノンケ)な男性がスピロノラクトンの内服薬を使用するには女性化乳房や性欲減退がネックになりますが、それでも使用している人はそこそこいる模様。発毛・育毛効果に加え、皮脂やニキビ、体毛の減少というメリットが大きいらしい。
フィナステリドやデュタステリドとは違う作用で発毛を期待できる点もメリットか。
一方、スピロノラクトン外用薬であれば男性の使用はまったく問題になりません。男女兼用って書いてあるし。
スピロノラクトンに薄毛治療に使える?
AGAやFAGAの原因であるDHTの働きを抑制しつつ女性ホルモンを増やす作用があるスピロノラクトン。発毛効果の科学的根拠には乏しいものの、一定の効果は望める可能性があります。
ただ、内服薬の場合女性化乳房や性欲減退などの副作用があるため、ニキビや皮脂、体毛の減少などにメリットを感じない男性が使うのはリスキーか。発毛効果のみを目的にするならフィナステリドやデュタステリドを使っとけ。
一方、フィナステリドやデュタステリドを使えず発毛剤の選択肢が限られる薄毛女性にとっては救世主になりえる可能性を秘めています。
髪の毛に対する効果はもちろん、皮脂やニキビ、体毛が減るのは女性にとってメリットが多いですし、利尿作用によるむくみ解消も期待できます。
とはいえ、スピロノラクトンは本来利尿薬。頻尿や血圧低下などの作用も予想されます。内服薬は医師が処方すべき医薬品なので、安易な使用は控えたほうがいいでしょう。
ちなみにスピロノラクトンを主成分とする外用薬は…内服薬以上にエビデンスがないため、過度な期待はせず他の発毛剤の補助として使用するべきかと。
スピロノラクトンを配合する薬・育毛剤
従来の発毛剤とは違う作用による効果が期待できるスピロノラクトン。その内服薬と外用薬をひとつずつ紹介します。
ハイレス
個人輸入で購入できるスピロノラクトン経口薬として最も人気があるのがハイレス。100mg100錠で約3,000円は魅力といえる。
内服薬であるため薄毛対策に加え、ニキビや皮脂対策、むくみ解消、体毛減少などの効果が期待できるとあって、女性のみならず男性からも支持を得ています。
ただ、基本的には頻尿や血圧低下、女性化乳房といった作用や副作用がある利尿薬なので、用法・用量や注意事項はしっかりと守る必要があります。
リグロースラボSP2
リグロースラボSP2はスピロノラクトン2%を主成分とする外用薬。男女兼用。
AGAの原因であるDHTの生成を抑え相対的に女性ホルモン優位の状況を作り出すとされます。
ただし、スピロノラクトン外用薬は内服薬以上に発毛根拠やデータに乏しいので、ミノキシジルやフィナステリドといった発毛剤の補助として割り切るべきでしょう。
内服薬と違い副作用のリスクがほとんどなく、価格も2,400円程度と安価であることもあり、気軽に試しやすい育毛剤といえる。
あわせて読みたい関連記事
近年キャピキシルを配合した育毛剤が増えてきており、「ミノキシジルの3倍の育毛効果」というキャッチフレーズも印象的です。しかしキャピキシルに発毛根拠は一切なく、厚生労働省にすら認められていない同成分を配合したものは育毛剤ですらなくただの化粧品です…続きを読む
M-034はミツイシコンブ由来の海藻エキスでイクオスやチャップアップ、ブブカなどに配合される成分です。「ミノキシジルと同等の育毛効果」なんて触れ込みで売っていますが、実際はただの保湿成分で髪の毛を生やす発毛効果は一切ありませんので騙されないように…続きを読む
薄毛が気になってきてネットで情報を調べようと思ったらどのサイトもチャップアップをおすすめしていた。チャップアップってそんなに素晴らしい育毛剤なのか?いえいえとんでもありません。あれはみんな金目的でおすすめしているだけで発毛効果など一切ありません…続きを読む
2016年9月に大幅リニューアルしたイクオスに新たに配合されたAlgas-2(アルガス2)。公式HPではいかにも高い効果があるように謳っていますが、それには様々なカラクリがあり、実際の発毛効果は一切なく、当然効果がないのですから副作用も存在しません…続きを読む
独自の特許成分としてポリピュアEXにのみ使われているバイオポリリン酸。特許と聞くとすごそうな印象を抱きますが、科学的根拠が担保されているわけでも効果に信頼性があるわけでもなく、発毛効果も一切ありません。もっと詳しく見ていきましょう…続きを読む
育毛サプリメントの定番成分といえば亜鉛。亜鉛は髪の99%を占めるケラチンの合成や細胞分裂を促進する効果があるため髪の毛を生やす効果があるとされていますが、実際は亜鉛で髪は生えないのです。なぜ定番の亜鉛に発毛効果がないのかについて詳しく解説していきます…続きを読む
最近育毛剤成分としてちょっと注目されているピディオキシジル。ミノキシジルと分子構造が似ていることから「ミノキシジル誘導体」なんてそれっぽい名前を付け副作用がないことを売りにしているが、こんなパチもん効くはずがない…続きを読む
ノコギリヤシは近年薄毛やハゲに効果があるとして育毛サプリメントなどに積極的に配合されています。しかし調べれば調べるほど「本当に毛が生えるのか?」という疑問が湧いてきます。ノコギリヤシに効果がないという公的な見解も存在するので詳しく見ていきましょう…続きを読む
一時期新聞や雑誌に取り上げられ「育毛に新たな希望」として話題になったフィーバーフュー。NF-kBの働きを抑えDHTの生成を抑制するというノコギリヤシに似た働きをするものの、その後続報は一切なく効果も実証されていないことから近年は忘れられた存在に。発毛効果もありません…続きを読む
キャピキシル、ピディオキシジルに続いて出てきた新たな成分リデンシル。一部では「ミノキシジルの2倍の効果」なんて書いていたりしますが、実際に掲載しているデータを見てみるとおかしいことに気付きます。こんなものには絶対に騙されないようにして下さい…続きを読む
フィナステリド同様5αリダクターゼを阻害するとして様々な育毛剤に配合されている定番成分のオウゴンエキス。ハゲの原因であるDHTの生成を抑制するなどと大々的に書かれていますが根拠に乏しくデータも存在せず、しかも育毛剤に含まれる量は数滴…効果あるはずがない…続きを読む
ミノキシジルはリアップシリーズに配合されていることで知られる数少ない発毛が認められた成分で、内服薬は「最強の発毛剤」と呼ばれることも。心配される副作用も外用薬ではほとんど見られず内服薬も本来の使い方の10分の1の量なので強い副作用の心配はほとんどありません…続きを読む
ネットで育毛剤を調べるとそのほとんどが絶賛されていることに驚きを感じると思います。しかしそれは効果が高いからではなく自分のサイト経由で育毛剤が売れた際の報酬が高いからで、いわゆる提灯記事ですので騙されないようにして下さい…続きを読む