セファランチンはAGAに効果がない成分
複数の育毛剤に配合されている「セファランチン」という成分をご存知でしょうか?
このセファランチン、内服薬は脱毛症の治療薬として医療機関で処方されることもあり、また医薬部外品の育毛剤を名乗るうえで必要な有効成分として使用される場合も。しかしハッキリ言ってAGAには効果がありません。
「病院で処方される脱毛症の薬」と聞くと、AGA治療薬であるプロペシアやザガーロと同じような効果を期待してしまうかもしれません。育毛剤の有効成分として使用されていると知れば尚更でしょう。
しかしそれは大きな勘違い。セファランチンが男性型脱毛症(AGA)に効かない理由は明確であり、それを知れば「なんでこんなもの配合してんの?」と感じてしまうことでしょう。
セファランチンとは?
セファランチンとは「タマサキツヅラフジ」という植物の根から抽出した成分で、「タマサキツヅラフジアルカロイド」の名で表記されることもあります。有名なところだとスカルプDのスカルプトニックがその名で使用していますね。
医療機関ではセファランチンの内服薬が脱毛症の治療薬として処方されますが、脱毛症は脱毛症でもAGAではなく円形脱毛症や粃糠性脱毛症…多量のフケや炎症などにより抜け毛が増え脱毛してしまう症状の治療薬になります。
円形脱毛症や粃糠性脱毛症に効くのだからAGAにも効くのではないかと思う人もいるかもしれませんが、遺伝や体質が原因のほとんどを占めるAGAと、円形脱毛症や粃糠性脱毛症はメカニズムが全く異なります。
しかも本来内服薬であるセファランチンを外用薬として頭皮に塗布するのですから、効果があると思うほうがおかしい。
ミノキシジルも本来内服薬であったものを外用薬として転用された経緯を持ちますが、ミノキシジルの強力な発毛効果はセファランチンとは比べ物になりませんし、外用薬としても世界中において膨大な実績や結果を残しています。
一方のセファランチンは、AGAに効果があるという明確なデータや科学的根拠に乏しく、研究や試験を積極的に行っている機関もない“見捨てられた成分”。
■内服はもちろん外用でもAGAに対する効果を示すデータはない
セファランチンの効果を皮膚科学会が完全否定
「セファランチンはAGAに効かない」と言い切ることができる理由のひとつに、日本中の皮膚科に対し治療のガイドラインを示している「日本皮膚科学会」が効果を否定している点が挙げられます。
上図は2010年に策定された日本皮膚科学会が男性型脱毛症診療のガイドライン。ここでセファランチンは下から2番目の「根拠がないので勧められない」という不名誉な評価を受けています。
一応どういった理由でこのような評価になっているか見てみると…
有効性を検証した報告は男性に対し1例のみであるうえ、その男性はフィナステリド内服薬とミノキシジル外用薬を使用しているという状況でセファランチンを併用。
一応前頭部の増毛効果が認められたものの、「どう考えても毛が生えたのはフィナステリドとミノキシジルのお陰だろ」という評価委員の声が聞こえてきそうでもある。
具体的な検証はこの論文しか存在せず、しかもセファランチン単体での効果は不明。そりゃ「用いない方がよい」という評価になるよ。
【追記】2017年ガイドラインから消える
日本皮膚科学会が2010年に策定した男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて「用いない方がよい」という屈辱的な評価を得ていたセファランチンですが、2017年に刷新された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインを見てみると…
存在が消えてる。もはや評価に値しないらしい。
そもそも円形脱毛症などの治療薬なのだから、ホルモンが影響する男性型脱毛症(AGA)や女性男性型脱毛症(FAGA)に使おうというのが間違い。洗濯用洗剤で頭を洗うような的外れ感。
新たなデータや論文が示されたアデノシンが評価を上げる一方で、セファランチンが消えたということは、2010年版から7年経っても新たなデータや試験結果が出てこなかったのでしょう。
“すでに見捨てられている成分”という印象は拭えない。
アデランスの研究で一定の効果?
日本皮膚科学会の専門家から三下り半を突き付けられた格好のセファランチン。しかし一方でアデランスなどが行っている研究では一定の効果が確認されたという話も。
アデランスと大阪大学 大学院医学系研究科の共同研究により、セファランチンが再び脚光を浴びるかもしれないというのです。
同大学がAGAの男性22名を対象に、6ヶ月間セファランチンローションを使用する臨床試験では、毛髪数や髪の毛の直径が増加する傾向が確認できたとされます。
また、背中の毛を剃ったマウスにセファランチンを塗布することで、毛の成長期が早く誘導されたとも。
ただ、マウスの毛を剃って当該成分を塗布する動物実験は、育毛剤成分の検証において度々目にするものの、放っておいても毛が生えるマウスの毛と、男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の作用で薄毛になるAGAとは全く状況が異なるため、ほとんど参考にならないんですよね。
AGAの男性を対象に行った試験においても、「毛髪数および毛直径を増加させる傾向があった」という非常に微妙な表現で、具体的な数には一切触れられていない。
また、同大学の准教授は「これを基に論文を作成する」としていますが、これが2015年頃の話であり、2017年に策定された男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインではセファランチンは除外…
本当に論文が書かれたのかどうかは確認できないものの、その論文があろうがなかろうがAGAに対するセファランチンの効果は評価に値しないということだったのではないでしょうか。
もうひとつ付け加えるなら、同教授と共同研究を行うアデランスには「ヘアリプロ 薬用スカルプグロウ」という、セファランチンを有効成分として配合した非常に高価な育毛剤が存在するのも気になる。
純粋な効果の検証というよりは、背景に企業の利益が透けて見える結果ありきの印象も。次回の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでセファランチンが再び評価されるのかどうかに注目したいですね。
セファランチンの副作用は?
セファランチンを内服すれば胃の不快感や若干の吐き気程度の副作用が報告されていますが、外用薬で副作用が出ることはほとんど考えられません。
出ても頭皮のかゆみやかぶれ程度。
ミノキシジルですら外用薬の副作用は頭皮のかゆみやかぶれくらいしかないんだから、発毛効果のないセファランチンを頭皮に塗って明確な副作用が出るはずない。
そのため、セファランチンを配合した育毛剤の副作用を過度に心配する必要はなく、安心してご使用いただけます。髪は生えないけど。
セファランチンでAGAは治らない
AGAに対し有効性を示すデータがほとんど存在しないうえ、数少ない頼みの試験データもフィナステリドとミノキシジルとの併用とあって厳しい評価を下されているセファランチン。
日本皮膚科学会が策定する2010年版の男性型脱毛症診療ガイドラインでは散々な評価、2017年版では除外という結果を見るだけでも、セファランチンが男性型脱毛症(AGA)に効果がないことが分かるかと。
セファランチンを扱う医薬品メーカー「化研生薬」は日本皮膚科学会のガイドラインに対し「動物実験では効果が示されている」と反論しているらしいが…むしろ自分の首を絞めてる気がする。
とはいえ、セファランチンに限らず育毛剤の成分なんてどんぐりの背比べだから、ハッキリ評価されてしまったセファランチンは不運なのかもしれない。
セファランチンを有効成分として配合している育毛剤を販売するメーカーは、同成分の優位性をアピールしていますが、そこに科学的根拠は存在しないことを忘れないでください。
本気で薄毛を治したいなら、セファランチンを気にしている場合ではない。一刻も早くフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルといった発毛剤を使用するようにしましょう。
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