ショウキョウエキスや6-ジンゲロールの育毛効果
最近ショウキョウエキスがにわかに注目されている。以前から育毛剤によく使用される成分ではあったものの、チャップアップがリニューアルに際し「ジンゲルシックス」の名で新配合したのが大きいのでしょう。
実際ショウキョウエキスを用いることで一定の育毛効果が得られたとする試験結果も存在する。だからこそ様々な育毛剤に使用されてきたのでしょうが、ここには色々と落とし穴も。
ショウキョウエキスや、その中でも育毛に対し特に有効とされる「6-ジンゲロール」は、私たちを悩ませるハゲに対し本当に効果があるのか? 客観的事実に基づき批評していきましょう。
ショウキョウエキスとは?
「ショウキョウエキス」…なんとも聞き慣れない名前ですよね。いったいどんな成分なのか気になるところでしょう。
ショウキョウエキスとは端的に言ってしまえば「ショウガエキス」のこと。「ショウガ」は漢字で書くと「生姜」。これを音読みすると「ショウキョウ」と読めますよね。
「ショウキョウ」という呼び名はショウガ科の根茎を指す場合や生薬として用いられる場合に使用される。育毛剤に使用されるショウキョウエキスもこれ。
そのため一口に「ショウキョウエキス」といってもその中身は必ずしも同じものではありません。実際チャップアップのショウキョウエキスは一般的なものと異なり赤ショウガから抽出したエキスを使用しているとのこと。
ショウキョウエキスの中でも辛み成分である「ショウガオール」「ジンゲロン」「ジンゲロール」に様々な作用があるとされます。
6-ジンゲロールとは?
様々な化粧品や医薬部外品に配合されているショウキョウエキス。様々な育毛剤にも配合されている点からも特別な成分ではないことが分かります。
にもかかわらずショウキョウエキスが気になった背景にはやはりチャップアップのジンゲルシックスが関わっているのではないでしょうか。そしてその中で強調される「6-ジンゲロール」がどんなものか気になると。
6-ジンゲロールは生姜に含まれる辛み成分のひとつであり、決して特別なものではありません。ただ単に「ジンゲロール」と呼ばれることも多いですね。
主な作用は血行促進効果、抗酸化作用、抗炎症作用、殺菌作用、冷え性改善など。一般的には髪の毛や頭皮に対する効果や作用は謳われていない。
が、育毛成分のド定番である血行促進作用と抗炎症作用があることから、とりあえずこれを配合しておけばそれっぽい育毛剤になりそうな雰囲気はある。
ショウキョウエキスの育毛効果を示したデータ
ショウキョウエキスは決して「目玉」となる成分ではないものの、様々な育毛剤に使用されることから、育毛に関し何らかの裏付けがあってもおかしくありませんよね。実は本当にあるんです。
毛の成長速度が早まった
化粧品成分オンラインに掲載された試験結果として、体毛を除毛したモルモットの背部にエタノール抽出したショウガ根茎エキス1%を週3回、4週間塗布した試験において毛の成長速度が有意に早まったというものが存在します。
ショウガ根茎エキス | 対照エキス | |
---|---|---|
1週目 | 6mm | 6.5mm |
2週目 | 13.8mm | 11.5mm |
3週目 | 21.5mm | 16.7mm |
4週目 | 28.1mm | 19.7mm |
この試験結果を見ると、ショウガ根茎エキスではない液を塗布したモルモットは毛の成長が徐々に頭打ちになっているのに対し、ショウガ根茎エキスを塗布したモルモットは安定したペースで伸びているのが分かる。
しかもこの研究、化学業界大手三井化学が実施したものなんですよね。胡散臭い中小零細企業の眉唾データとは信頼性の面で大違い。がしかし、このデータ発表は1988年のもの。古すぎだろう。
この研究、化粧品成分オンラインの文面ではどのくらいの数のモルモットを対象としているのか分からない。なのでもっと具体的な内容のものがないかと調べてみたが結局出てこなかった。古いしなぁ…
もしこれが1匹ずつを対象にしたものであるなら何の信頼性もない。「個体差」で片付けられる自由研究レベルとしか言いようがないですからね。
そもそもこういった試験、意味あるのか?
M-034に関する記事などでも何度も指摘しているが、問題なく生えている毛を剃ったうえで生えるスピードが早かった遅かったって…私たちハゲが求めているのはそこじゃない。
重要なのはAGAなどによりまともな毛が生えなくなったところから再び生えるようになるのかどうか。こういった試験は薄毛に悩む人間に無駄な期待を抱かせる無駄なものだと感じる。
まあ、今ある髪の毛の成長を促進する“育毛効果”を検証しているのだから間違ってはいないのだろうが…私たちが欲しいのは抜け落ちてしまった部位から再び健康な髪の毛が生えるようになる“発毛効果”なんだけどね。
ショウキョウエキスの効果とはその程度のもの。
バスクリンの研究データ
ショウキョウエキスの育毛効果を検証した試験はバスクリン(旧ツムラ ライフサイエンス株式会社)でも行われています。
2008年に発表された研究結果ではショウキョウエキス(ショウキョウチンキ)に加え、ホコウエイ根エキス、ニンジン抽出液、センブリ抽出液、ボタンピエキスの5種を混合したエキスに高い育毛効果が確認されたとのこと。
こちらの研究ではマウスや培養細胞ではなくヒトに対する試験も行っている模様。その結果毛髪の成長速度、毛髪径、成長期毛率のいずれにおいても有意に増加したとされています。
そしてこの5種の成分もしくはホコウエイ根エキス(タンポポエキス)を除いた4種はバスクリンの育毛剤「モウガ」に配合されたと。結局は自社データであるため過信は禁物。
そもそもバスクリンのモウガに限らずショウキョウエキス、ニンジンエキス、センブリエキス、ボタンエキスを配合している育毛剤は複数存在するが、これらの育毛剤に一切の発毛効果がない点からも程度が知れる。
この研究においてヒトに対しどの程度の規模の試験が行われたか不明ではあるものの、バスクリンのニュースリリースや報道を見るに、フィナステリドやミノキシジルといった医薬品とは比べ物にならないほど小規模なのは想像に難くない。
自社データを持ち出したうえで自画自賛し自社の製品に配合するという手法を用いた、こういった育毛剤は数多く存在する。しかしその効果に科学的根拠(エビデンス)がある商品はほとんど存在しないのが実情。
ショウキョウエキスで薄毛は改善する?
結論から書けば、ショウキョウエキスやジンゲロールを使用することによりAGAを含めた薄毛が改善することは考えられません。なぜなら数少ない試験結果は、髪の毛の成長速度などを検証したものに過ぎないから。
それらデータも客観性に乏しく、医薬品の発毛剤とは比べるまでもない。
こういった育毛関連の成分の常として、剃った後の毛が生える早さや培養細胞を用いての有効性は検証するものの、薄毛にどの程度効果的なのかについて実際のヒトを用いて試験することはほとんどない。ショウキョウエキスも同様です。
男性の薄毛の9割以上が男性型脱毛症(AGA)であるというのに、それに対する有効性を検証しない成分ほど意味がないものはない。
小規模な第一相から大規模かつ厳密な第三相まである医薬品の治験(臨床試験)ほどとはいわないが、「一定の根拠が示された」と言えるレベルの試験くらいやってから世に出せよ…と言いたい。
また、ショウキョウエキスの効果に関する研究や試験は古いものが多く、近年は完全に下火になっていることが伺えます。「一時は育毛効果についてちょっと注目されたが、積極的に研究するほどのものではない」というのが実情か。
ショウキョウエキス・ジンゲロールに発毛効果なし
チャップアップが「ジンゲルシックス」なる成分を配合したことで再び注目されることになったショウキョウエキス。しかし一切の発毛根拠が存在しない同成分に過度な期待は禁物です。
過去に行われた試験についても、あくまでも“健康な髪の毛の生える早さを検証したもの”であり、AGAによって抜け落ちてしまった髪の毛を復活させる試験については確認できていません。
成分メーカーによってはショウキョウエキスや6-ジンゲロールの効果として「5α-リダクターゼ阻害」や「アンドロゲンレセプター拮抗作用」「毛乳頭細胞増殖作用」を謳っている場合もあるが、それらはどれも根拠に乏しい。
そもそも、そういった作用を謳う成分はショウキョウエキス以外にも多数存在するものの、薄毛に悩む男性がそれらを使って実際に発毛したという話は全く聞こえてこない。それができていればこんなにハゲは多くないよ…
フィナステリドやミノキシジルといった医薬品の発毛剤の副作用を過度に警戒した結果「育毛剤を使ってみよう」と考える人が多数であろう。そういった人にとってショウキョウエキスは期待の新星なのかもしれない。
しかし、ショウキョウエキスはこれまでも様々な育毛剤に配合され、そしてその効果を否定されているという事実から目を逸らさないようにしてください。
あわせて読みたい関連記事
近年キャピキシルを配合した育毛剤が増えてきており、「ミノキシジルの3倍の育毛効果」というキャッチフレーズも印象的です。しかしキャピキシルに発毛根拠は一切なく、厚生労働省にすら認められていない同成分を配合したものは育毛剤ですらなくただの化粧品です…続きを読む
M-034はミツイシコンブ由来の海藻エキスでイクオスやチャップアップ、ブブカなどに配合される成分です。「ミノキシジルと同等の育毛効果」なんて触れ込みで売っていますが、実際はただの保湿成分で髪の毛を生やす発毛効果は一切ありませんので騙されないように…続きを読む
薄毛が気になってきてネットで情報を調べようと思ったらどのサイトもチャップアップをおすすめしていた。チャップアップってそんなに素晴らしい育毛剤なのか?いえいえとんでもありません。あれはみんな金目的でおすすめしているだけで発毛効果など一切ありません…続きを読む
2016年9月に大幅リニューアルしたイクオスに新たに配合されたAlgas-2(アルガス2)。公式HPではいかにも高い効果があるように謳っていますが、それには様々なカラクリがあり、実際の発毛効果は一切なく、当然効果がないのですから副作用も存在しません…続きを読む
独自の特許成分としてポリピュアEXにのみ使われているバイオポリリン酸。特許と聞くとすごそうな印象を抱きますが、科学的根拠が担保されているわけでも効果に信頼性があるわけでもなく、発毛効果も一切ありません。もっと詳しく見ていきましょう…続きを読む
育毛サプリメントの定番成分といえば亜鉛。亜鉛は髪の99%を占めるケラチンの合成や細胞分裂を促進する効果があるため髪の毛を生やす効果があるとされていますが、実際は亜鉛で髪は生えないのです。なぜ定番の亜鉛に発毛効果がないのかについて詳しく解説していきます…続きを読む
最近育毛剤成分としてちょっと注目されているピディオキシジル。ミノキシジルと分子構造が似ていることから「ミノキシジル誘導体」なんてそれっぽい名前を付け副作用がないことを売りにしているが、こんなパチもん効くはずがない…続きを読む
ノコギリヤシは近年薄毛やハゲに効果があるとして育毛サプリメントなどに積極的に配合されています。しかし調べれば調べるほど「本当に毛が生えるのか?」という疑問が湧いてきます。ノコギリヤシに効果がないという公的な見解も存在するので詳しく見ていきましょう…続きを読む
一時期新聞や雑誌に取り上げられ「育毛に新たな希望」として話題になったフィーバーフュー。NF-kBの働きを抑えDHTの生成を抑制するというノコギリヤシに似た働きをするものの、その後続報は一切なく効果も実証されていないことから近年は忘れられた存在に。発毛効果もありません…続きを読む
キャピキシル、ピディオキシジルに続いて出てきた新たな成分リデンシル。一部では「ミノキシジルの2倍の効果」なんて書いていたりしますが、実際に掲載しているデータを見てみるとおかしいことに気付きます。こんなものには絶対に騙されないようにして下さい…続きを読む
フィナステリド同様5αリダクターゼを阻害するとして様々な育毛剤に配合されている定番成分のオウゴンエキス。ハゲの原因であるDHTの生成を抑制するなどと大々的に書かれていますが根拠に乏しくデータも存在せず、しかも育毛剤に含まれる量は数滴…効果あるはずがない…続きを読む
ミノキシジルはリアップシリーズに配合されていることで知られる数少ない発毛が認められた成分で、内服薬は「最強の発毛剤」と呼ばれることも。心配される副作用も外用薬ではほとんど見られず内服薬も本来の使い方の10分の1の量なので強い副作用の心配はほとんどありません…続きを読む
ネットで育毛剤を調べるとそのほとんどが絶賛されていることに驚きを感じると思います。しかしそれは効果が高いからではなく自分のサイト経由で育毛剤が売れた際の報酬が高いからで、いわゆる提灯記事ですので騙されないようにして下さい…続きを読む