ミノキシジルの発毛効果と副作用
日本においてミノキシジルといえば大正製薬のリアップシリーズが最も有名ですよね。厚生労働省に正式認可されている唯一のミノキシジル外用薬として認識している方も多いのではないでしょうか。
※2018年にリアップX5プラスと同じミノキシジル5%のメディカルミノキ5とリグロEX5が登場、その後様々なメーカーや薬局がリアップジェネリックを発売しています。
そのためミノキシジルは頭皮に塗布する外用薬というイメージが強いかもしれませんが、ミノキシジルは本来高血圧の治療薬で血管拡張剤…つまり内服薬なのです。
発毛の効果は内服薬のほうが明らかに強く、発毛剤として有名なプロペシアに代表されるフィナステリド内服薬をも上回る「最強の発毛剤」との呼び名も。
外用・内服両方で使用でき、高い発毛効果があるミノキシジル。その効果や作用、そして気になる副作用に迫ってみたいと思います。
ミノキシジルってどんな薬?
上でも少し触れたようにミノキシジルは高血圧の人に向けた血管拡張剤。本来は血管を広げ血圧を下げる作用を目的として作られた薬です。
そんなミノキシジルを使っていた高血圧患者に体中の毛が濃くなる「多毛症」という副作用が見られたことから、メーカーが安全性を考慮しつつ効果を頭皮に限局するために外用薬として発売したのが始まり。
ミノキシジルの発毛作用
では、血管拡張剤であるミノキシジルでなぜ髪が生えるのか?
ミノキシジルが持つ血管拡張作用によって血行が良くなり、髪の成長に必要な酸素や栄養が頭皮や毛根までしっかり行き渡るようになるから…と考えがちですが、それは大きな勘違い。
なぜなら、ミノキシジル以外の血管拡張剤や降圧剤には発毛効果が見られないから。もし血管を広げることによる血行促進作用で髪が生えるのというのであれば、他の製剤でも同じ効果が出るはずですよね。
ミノキシジルがもつ「多毛症」という作用は、毛根を包んでいる毛包に作用し毛母細胞の増殖や分裂を促していると見られています。断定できないのはメカニズムが完全解明されていないから。
経口薬として服用した場合その作用が全身に及ぶため髪の毛や体毛などすべての毛が濃くなってしまう一方、外用薬として頭皮に塗布すると効果は頭皮だけに留めることができるのが特徴。
その効果は内服薬でこそ最大限に享受できるというのが一般的な見方。しかし頭皮に塗る外用薬でも一定の効果が認められるうえ副作用の心配もほとんどないため、外用薬での使用が多くなっています。
■血管拡張による血行改善と多毛症によって髪が生える
なぜ外用薬が一般的なのか?
ミノキシジルタブレットをご存知ですか?
降圧剤であるミノキシジル本来の使用方法となる経口薬で、非常に高い発毛効果があることから、薄毛改善効果を最優先するハゲ達から絶大な支持を得ている最強の発毛剤です。
にもかかわらず世界を見渡してもミノキシジルを用いた発毛剤のほとんどは外用薬。内服薬の方が効果があるのになぜ外用薬ばかりなのでしょう?
副作用への懸念
ミノキシジルが内服薬としてあまり使われない最大の理由は副作用にあります。
詳しい副作用については後述しますが、本来血管を広げて血圧を下げる薬であるミノキシジルを服用すれば、発毛効果以上に降圧剤としての性質が出るのは想像に難くありませんよね。
例えばプロペシアに代表されるフィナステリドは本来前立腺肥大症の治療薬ですが、現在は発毛剤として使われることが多い成分。
男性型脱毛症(AGA)も前立腺肥大症も原因はジヒドロテストステロン(DHT)という男性ホルモン。フィナステリドはこのDHTを抑制する作用があります。
ゆえに発毛剤としてのフィナステリドは本来の用途は違えどDHTを抑制するという点で共通しており、AGA治療にこれを使用することに別段無理は感じません。
一方ミノキシジルは本来降圧剤で、その副作用として現れた多毛症を主作用として見立てたもの。ミノキシジルタブレットを発毛剤として使用したとしても、主作用は血管拡張、副作用の一つとして多毛症があることに変わりないのです。
だからこそ副作用のリスクが低く、かつ多毛症という性質を頭皮に集中させる外用薬として使われるようになったという背景があります。
ただ、そういったネガティブな部分を可能な限り減らすために、ミノキシジルタブレットは降圧剤としての使用に比べかなり低用量になっているんですけどね。
発毛剤として認められていない
内服薬として使用すると副作用の懸念が強いことから、外用薬として使用されるのが一般的であるミノキシジル。それでもさらなる発毛効果を求めミノキシジルタブレットを使う人は多数存在します。
事実ミノキシジルタブレットには外用薬を上回る強い発毛効果がありますが、ミノキシジルの内服薬を発毛剤として認可している国はひとつとして存在しません。
例えば日本。
これは日本皮膚科学会によって2017年に策定された男性型および女性型診療ガイドライン。ミノキシジル内服薬は最低評価を受けているのが見て取れると思います。
その理由を見てみると、「ミノキシジルの内服療法は、利益と危険性が十分に検証されていないため」とある。
ミノキシジル外用薬やフィナステリドなどの発毛剤は大規模かつ客観性のある臨床試験(治験)を行い、効果や副作用を洗い出すことで安全性や有効性を証明します。副作用を理解しているからこそコントロール下に置けるという考えですね。
しかし、ミノキシジルに関しては発毛剤としての承認を得るための臨床試験を行っているのは外用薬のみ。内服薬は大規模な臨床試験を行っていないため、具体的な発毛効果や副作用の発現率は分からないというのが実情。
ただ、薄毛に悩む多くの男性がより高い効果を求めてミノキシジルタブレットを使用し効果を上げている点を鑑みるに、重篤な副作用は確認されていないように感じる。まあ動悸やむくみなどの副作用はよく耳にするが。
使用している人の実感として高い発毛効果と重篤でない程度の副作用を確認するも、臨床試験のように公平な立場からの客観的な状況でない以上それは科学的根拠と呼べる代物ではないのも間違いない。
その高い発毛効果は医師も認めており、AGAクリニックの医師が独自に輸入し処方しているケースも散見されます。
明確な科学的根拠がないことから、診療ガイドラインでは低評価を付けざるを得ないという“建前”と、実感として高い発毛効果があることは否定できないという“本音”が見え隠れします。
臨床試験が行われつつあるミノキシジルタブレット
これまで、ミノキシジルの内服薬は臨床試験が行われていないにもかかわらず、実際に使用した人の体験談や口コミなどから「高い発毛効果と、それなりの副作用リスクが存在する薬」という評価を受けてきました。
しかし近年になって海外では小規模ながらも複数の臨床試験が行われており、具体的な効果と副作用が明らかにされつつあります。
その中で最も参考になりそうなのが2020年に発表された試験データ。
タイ・バンコクの病院で行われた臨床試験は、30名の男性AGA患者を対象に24週間ミノキシジルタブレット5mgを使用してもらい、効果と副作用を検証するというもの。
結果としては、30名すべての患者の薄毛が改善し、そのうち43%は顕著な改善が確認されています。
一方の副作用は、体毛が濃くなる「多毛症」が90%に見られ、ミノキシジルタブレットを使用した人からよく耳にする足のむくみも10%の患者において確認されたとあります。気になる心臓などに対する重大な副作用は確認されていません。
これらの結果から、健康な人が使用する分には安全であると結論付けられる一方、より厳格な臨床試験を行うことが望ましいと締めくくられています。
今回の試験では良好な結果は得られたものの、ミノキシジルタブレットが持つ効果と副作用をより詳しく把握ししっかりとコントロールするためには、さらなる検証が必要との判断なのでしょう。
とはいえ、実際に臨床試験が行われ効果と安全性が確認されたのは大きな意味を持ちます。今後のさらなる進展に期待しましょう。
ミノキシジル外用薬の副作用
ミノキシジルは副作用が強いイメージがあるかもしれませんが、それは報酬の高い育毛剤を売りたいサイトやブログによって刷り込まれた情報。
少なくともリアップやロゲイン、カークランドに代表されるミノキシジル外用薬に強い副作用はほとんどありません。
ミノキシジル外用薬の使用で考えられる副作用として挙げられるのは…
- 頭皮のかゆみ
- 湿疹
- 紅斑
- めまい
- 動悸
- むくみ
取扱説明書ではこれらが挙げられていますが、めまいや動悸、むくみといったものはミノキシジル内服薬で出る可能性があるもので、頭皮に塗るだけの外用薬でこれらが発現することまず考えられない。
仮にこういった副作用が出るのであれば、「ミノキシジルを使っている」という思い込みや自己暗示が影響している可能性が高いでしょう。
ちなみにミノキシジル5%製剤であるリアップX5の副作用に関する臨床試験データは以下のようになっています。
3,072名を対象に行われた大規模な試験において示された副作用発現率は8.82%。内容を見るとそのほとんどは頭皮のかゆみや発疹、紅斑など塗布部の異常が占めています。
これらはミノキシジルやエタノールの刺激により起こっているものと推測されますが、成分の刺激という点においては他の育毛剤でも同様。「ミノキシジルだから~」と決めつけるのは早計です。
いうまでもなくこの程度の副作用や発現率であれば問題にならない。どうしても酷い場合は使用量や頻度を減らすなり使用を中止するなりすればすぐに解消する問題ですしね。
この程度の副作用リスクで高い発毛効果が得られるのであれば、迷う必要などないというのが私の印象です。実際私自身ミノキシジル外用薬を使用していますが、問題は一切発生していませんしね。
■かぶれやかゆみ、湿疹は発毛効果のない育毛剤でも十分起こり得る
ミノキシジル内服薬の副作用
一方のミノキシジル内服薬…いわゆるミノキシジルタブレットはどうか?
そもそもミノキシジルによる発毛効果の存在を確認したのは内服薬なので、効き目という点では外用薬より内服薬のほうが圧倒的に強くなるのは間違いありません。
しかしミノキシジルは高血圧の治療薬であるため、発毛剤として服用した場合血圧や血管に関連した副作用が出る可能性があります。
- めまい
- 動悸
- 血圧低下
- 胸痛
- 多毛症
- むくみ
これらがミノキシジル内服薬を飲んだ場合に出る可能性がある副作用の代表的なもの。降圧剤だけあって血液に関するものが並んでいます。
ただ、高血圧の治療薬としてのミノキシジルの1日の限度量は50mgであるのに対し、発毛剤としてのそれは10mgと5分の1となっており、この限度量をしっかり守っていれば重篤な副作用が出ることはほとんどありません。
また、薬の副作用は飲みはじめには実感することがあっても、1~2週間もすると体が順応し副作用を感じなくなることも多いという実感も。
とはいえ、外用薬に比べれば副作用リスクが大きいのも確か。自分がどの程度本気で薄毛を治したいのか今一度確認してから使用を検討するべきでしょう。
■限度量は高血圧向けの5分の1と少量であるため強い副作用はほぼない
ミノキシジルの不安を煽るサイトに要注意
ミノキシジルは発毛剤の中でも副作用に重篤なものが並んでいること、また「リアップ」という分かりやすい有名な商品があるため副作用のやり玉に挙がることが多くなっています。
しかし前述のように外用薬であれば副作用は頭皮のかゆみや発疹など軽度であるうえに発現率は10%を切っている。一方で効果は育毛剤の比ではありません。
ネットを見ると、自サイト経由で1本売れば数千円の報酬が貰える育毛剤の販売に繋げようとミノキシジルの副作用を過剰に叩いて「副作用のない育毛剤を」と勧めるサイトやブログが非常に多くなっています。
個人輸入を用いれば非常に安価で購入でき、かつ効果の高い発毛剤をけなし、発毛効果がない高価な育毛剤を買わせようとする一連の動きは、育毛・発毛に精通している人間からすると非常に腹立たしいと感じます。
ミノキシジルタブレットに関しても限度量を守れば過度に副作用を恐れるような薬ではありません。一方、効果に関しては「最強」の呼び声も高いため、本気で髪の毛を生やしたいのであればミノタブも選択肢に。
ただし、ミノキシジルタブレットに関しては心臓への負担も取りざたされているため、どうしても使用するというのであれば、AGAクリニックなどを受診し、医師と相談したうえで少量から試してみるべきでしょう。
ミノキシジルはどれを使えばいい?
本気で薄毛を改善させたい場合ミノキシジルの使用は避けて通れません。特にプロペシアやフィンペシアに代表されるフィナステリドとの併用は鉄板中の鉄板。
そこで気になるのは、どのミノキシジル製剤を使うべきなのかという点。ミノキシジル外用薬と内服薬のおすすめをひとつずつ紹介しておきます。
リグロースラボM5
日本の製品のみに目を向ければ大正製薬のリアップX5プラスやメディカルミノキ5、リグロEX5の3種のみが存在しますが、これらの価格は7,500~8,000円と非常に高価。完全にハゲの足元を見ている。
しかし発毛剤の本場アメリカ製に目を向けると、リアップX5プラスと同じミノキシジル5%製剤ながら1本あたり2,000円以下で買えるものが存在しています。
中でもおすすめしたいのはリグロースラボM5。
世界的なスタンダードであるミノキシジル5%に加え、リポソーム技術を用いた高い浸透性。アメリカ製ということで信頼性にも問題はありません。
それでいて価格は2本で3,820円。1本あたりの価格に換算すればリアップX5プラスの4分の1以下ということになります。
リグロースラボにはミノキシジル15%という高濃度のものも存在。ちなみに価格はリアップX5プラスの約半額となる3,930円。ご自分ステージにあった商品を選べるのも大きな強みといえます。
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