ニンジンエキスに一切の発毛効果なし
ニンジンエキスは育毛剤の有効成分、その他の成分としてよく使われるものの一つ。いわゆる「朝鮮人参(オタネニンジン)」ということもあり、薄毛に対し確かな薬効がありそうな気がしますが、こんなもので絶対に髪は生えません。
一般の人が持つ朝鮮人参へのイメージは「高いけど効果が大きそう」というものではないでしょうか。昔から漢方薬などの定番で、知らない人はいないであろう朝鮮人参が育毛剤に配合されていたら、髪の毛が生えてきそうな気がしてきますよね。
でも残念ながらニンジンエキスに発毛効果は一切ないんです。
中国4000年の歴史を感じさせ、多くの育毛剤に配合されているニンジンエキス。なぜこの成分に効果が期待できないのか、詳しく解説していきます。
ニンジンエキスの効果
育毛剤の定番成分のひとつであるニンジンエキス。これが配合されている商品は枚挙にいとまがありません。
例えばインターネットを中心に販売する育毛剤としてNO.1の人気を誇るチャップアップをはじめ、上位の常連であるイクオスEXプラス、ブブカゼロ、ナノインパクトCo17など、挙げだしたらきりがない。
育毛系シャンプーとして屈指の知名度を誇るスカルプDにも配合されています。
それだけ多くの育毛剤・スカルプケア商品に使用されているニンジンエキス。にもかかわらず薄毛を改善させる発毛効果がない…というのはにわかに信じられないかもしれません。その根拠はどういったものなのか?
ニンジンエキスの主な効果や作用を確認しつつ、男性型脱毛症(AGA)に代表される薄毛にとっていかに無力か説明したいと思います。
■虚弱体質や肉体疲労に対する滋養強壮・冷え性・胃腸虚弱改善
薄毛とは無縁の多くの人が高麗人参に抱く印象として真っ先に思い浮かぶのは「滋養強壮」ではないでしょうか。事実ニンジンエキスの主な効果として虚弱体質や肉体疲労などに対する滋養強壮効果が挙げられます。
この滋養強壮効果によって生薬として医薬品登録されているものの、滋養強壮で薄毛が改善しないのは言うまでもないでしょう。
■血行促進効果
滋養強壮効果と違い医薬品の効果として登録されているわけではありませんが、ニンジンエキス(高麗人参)は血行促進作用や、貧血を予防したり血圧を安定させたりする効果があることでも知られています。
メカニズムとしては、ニンジンエキスに含まれる「サポニン」という成分により血液をサラサラにし、血流を改善するというもの。
頭皮の血流を改善すれば、髪の毛の成長に必要な栄養素や酸素の供給がスムーズになり、結果として育毛に繋がる…というのが半ば常識化しています。
はるか昔から頭皮の血行を促進させれば髪の毛が生えるという説が信じられ、令和の現在においてもまだ「血行神話」が存在しますが、当サイトで何度も書いているように血行を促進させても薄毛改善効果は期待できません。
考えてもみてください。私達が悩まされているハゲの原因は、遺伝によって分泌量が決まる5αリダクターゼが作り出すジヒドロテストステロン(DHT)と、母方から受け継ぐ男性ホルモン受容体の感受性によるもの。
男性ホルモン関連によるものが薄毛の原因であるにもかかわらず、ニンジンエキスで血行を多少改善したからといってハゲが治るはずないのは火を見るより明らか。
血行促進で頭皮に栄養や酸素が十分に行き渡る…というのが育毛剤の定番殺し文句ですが、まず前提からして間違っている。ハゲの原因は血行不良ではないのです。
糖尿病や高血圧を伴う肥満によって動脈硬化が進み血管がボロボロになっているのであれば、血行促進効果も多少の意味があるのかもしれません。生活習慣病を伴う肥満と薄毛に関連性があるかもしれないという研究結果もありますからね。
しかし、それならばニンジンエキスのしょぼい血行促進効果に期待するのではなく、糖尿病や高血圧に対する適切な治療を受けるべき。
そもそも、育毛剤に配合されるごく微量のニンジンエキス程度の血行促進効果など誤差の範囲内。ましてや内服ではなく頭皮に塗布する外用とくれば“無意味”と言わざるを得ません。
■免疫力を上げる
前述したように、高麗人参には「サポニン」という成分が豊富に含まれており、これが様々な病に効くとされる大きな要因となっています。
その効果は多岐にわたり、免疫力をアップし病気への抵抗力を高めたり、血糖値の改善が期待できたりと、考えようによっては幅広い健康促進効果があると言えます。
ただ、言うまでもなく免疫力を上げたところで薄毛は治らない。そもそも頭皮にニンジンエキスを塗ったところで免疫力は向上しないし、血糖値も下がらない。
上でも書いたように、こういった効果は薄毛はもとより糖尿病に対しても根本的な解決には一切なっていないのです。
ニンジンエキスの副作用
多くの育毛剤に配合されているニンジンエキス。副作用の心配をする人もいるかもしれませんが、基本的にはニンジンエキスに副作用のリスクはほとんどありません。
一応副作用として報告されているものを挙げると…
こう見ると様々な副作用リスクが存在するように感じるかもしれません。しかしこれら副作用は服用した場合のもの。
市販の育毛剤に含まれるニンジンエキスは微量であるうえ、頭皮に塗布するという性質上、こういった副作用が出る可能性は限りなくゼロと言えるでしょう。
育毛剤に含まれるニンジンエキスによる副作用として考えられるのは、血行促進作用による頭皮の紅斑、アレルギー反応程度。それもかなりの低頻度。心配する必要はありません。
発毛効果はおろか、育毛効果すらほとんど期待できないニンジンエキスで副作用が出た日にゃ、目も当てられないわ。
ニンジンエキスの効果を過信しない
朝鮮人参に様々な効能がある点については否定しませんが、基本はあくまでも「滋養強壮」であり、血行不良や冷え性、糖尿病に対する効果は微々たるもの。しかもこれらの効果が期待できるのは朝鮮人参を服用する場合に限られます。
仮に肥満を伴う糖尿病や高血圧が薄毛の原因になっているのであれば、男性型脱毛症(AGA)とは原因を異にするハゲということに。ニンジンエキスうんぬんより真っ先に糖尿病や高血圧の治療をおこなうべきでしょう。
質が悪いと感じるのは、育毛剤を製造・販売するメーカーや、ネット上に溢れる育毛関連サイトを中心に、ニンジンエキスを使うことで薄毛が治るかのように書き連ねている点。
酷いものになると「薄毛を改善する」「発毛する」と、薬機法違反レベルの嘘を平然と書いているものもあるなど、育毛剤を売るためにはなりふり構ってはいられないというスタンスがありありと見て取れる。
自分たちの利益のためならば、真剣に薄毛に悩んでいる人の足元を見ることも厭わず、場合によっては事実すら捻じ曲げる…恐ろしいですね。
ニンジンエキスなど育毛剤に配合される個別の成分はもちろん、育毛剤自体に薄毛を改善させる効果はありません。
なぜなら医薬部外品の育毛剤は頭皮環境を整え脱毛を防止したり、現在生えている髪の毛の成長を促進させたりするのが目的の商品であり、薄毛に対する治療効果は存在しないから。「薄毛を治したい」という私達の目的とは違うのです。
にもかかわらず、育毛剤に薄毛改善効果があるよう誤認・錯覚させる文言を並べるメーカーやサイトが後を絶ちません。こういったメーカーやサイトの甘言に騙されないようにしてください。
ニンジンエキスで髪の毛は生えない
ニンジンエキスは多くの育毛剤に配合されている定番成分ではあるものの、ここまで書いてきたように新たな髪の毛を生やす発毛効果はもちろん、今ある髪の毛を太く元気にする育毛効果すらほとんど期待できない成分です。
滋養強壮や血行促進、免疫力の向上などの効果があるとされていますが、それはあくまでも「服用した場合」の話であって、頭皮に塗布する育毛剤のニンジンエキスにこういった効果を期待するべきではありません。
極端な話、ニンジンエキスに発毛効果を期待する行為は、ハゲを治すためにユンケルを頭皮に塗ってみようという暴挙と大差ないレベル。
育毛剤の有効成分として配合されているならまだしも、その他の成分としてニンジンエキスが使われているなら、含有量は微々たるもの。気休めにもなりゃしない。
こんなもので髪の毛が生えることなど絶対にありえないので、過度な…というか無駄な期待はしないようにしてください。
餅は餅屋、発毛には発毛剤です。
育毛剤には絶対に配合されることのないフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルの3つの発毛成分以外は、すべて何の発毛根拠もない気休め成分で、ニンジンエキスも例外ではない。
こういった“なんとなく良さそうな成分”に騙されないようにしてください。
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