マジョラムエキスに発毛効果なし
某有名育毛剤に配合されたことから育毛業界において注目を浴びだしているマジョラムエキス(マヨラナエキス)。しかししょせんは化粧品成分、発毛効果はおろか育毛効果すら望めません。
マジョラムエキスの育毛への効果として17型コラーゲンの産出促進効果が謳われているものの、そもそもそれすら怪しい話。
今後マジョラムエキスを配合する育毛剤が増えてくることが予想されますが、これで髪の毛が生えると勘違いする人が現れないよう注意喚起しておきたいと思います。
マジョラムエキスとは?
マジョラムとは地中海沿岸を原産とするハーブの一種で、和名は「マヨラナ」。そのため成分表などには「マヨラナエキス」と表記される場合がほとんど。
古代エジプトやギリシャではアロマオイルとして使用されていたとされ、血行促進や抗炎症作用、鎮痛作用など様々な効果があるとも。
化粧品の成分としては何年も前から使用されているもので、ヒアルロン酸やコラーゲンの産出促進作用により高い保湿力を発揮し、抗炎症作用があることでも知られています。
そんなマジョラムエキスは2018年6月の育毛剤ブブカリニューアル時に最も力を入れている成分として配合され、今後他の育毛剤にも波及していく可能性があります。
マジョラムエキス(マヨラナエキス)の効果
そんなマジョラムエキス、育毛に対してどういった効果を示すとされているのか?
これを開発した丸善製薬株式会社によると以下のような効果があるとされます。
- ヘアサイクル遺伝子調整作用
- 5αリダクターゼ活性阻害
- 17型コラーゲン産生促進作用
5αリダクターゼ活性阻害といえば、プロペシアに代表されるフィナステリドやザガーロの主成分デュタステリドと同じ作用ということになりますか。
それを頭皮に塗布して効果があるとでも言うのだろうか?そういえばビワ葉エキスやオウゴンエキスなど育毛剤の定番成分も同じようなことを謳っていたな。発毛効果など一切ないけど。
しかし最大の注目点はそこではありません。マジョラムエキスの最大の売りは「17型コラーゲン産出促進作用」なのです。
17型コラーゲンが髪の毛に与える影響
マジョラムエキスについて言及する前に、同成分が生成を促進させると謳う17型コラーゲンと髪の毛の関係性について簡単に説明しておきます。
17型コラーゲンと髪の毛の関係が大きく取りざたされたのは2016年。
東京医科歯科大学が加齢によって17型コラーゲンが減少すると毛包が縮小、生えてくる毛が徐々に細くくなり最終的には失われてしまうことを突き止めたと公表したことが発端となっています。
これはマウスも人間と同じように加齢によって薄毛になることに着目し、マウスおよび人間の毛包幹細胞を追跡調査して判明したもの。
出典:東京医科歯科大学
また、この研究ではマウスの毛包幹細胞において17型コラーゲンの枯渇を抑制することにより脱毛を抑えることが確認されたとあります。
ただしこれはあくまでも研究の中で可能性が示されたというだけの話。
17型コラーゲンの減少による脱毛が確認されたのは確かですが、枯渇を抑制して脱毛を抑えたのはマウスでの実験ですし、それも毛包を取り出してもの。少なくとも現段階において人間の毛包で脱毛が抑えられたという根拠は示されていません。
また、現状では17型コラーゲンを増やす手段についても不透明。
研究リーダーの西村栄美教授は「5~10年の間に治療薬を開発できれば」と語っていますが、現段階で進捗状況は伝わってきていません。
17型コラーゲンの名を借りた胡散臭い商品が多発
東京医科歯科大学の研究成果が発表されるや否や、コラーゲンを売りにする商品の発売が相次ぎました。サプリメントや育毛剤など、「17型コラーゲン」を全面に押し出しあたかも効果があるように謳う便乗商品が溢れたのです。
そういった状況を懸念し、東京医科歯科大学は注意喚起の声明を発表。
出典:東京医科歯科大学
要約すると以下のようになります。
- 17型コラーゲンを配合した市販の製品は存在しない
- 17型以外のコラーゲンや17型コラーゲン様の物質では薄毛に効果なし
- 17型コラーゲンを直接塗布したり食品として摂取しても効果はない
世の中に溢れる17型コラーゲンを謳った商品には気を付けろということを研究している東京医科歯科大学が直接訴えるという事態に。
さて、マジョラムエキスはどうなのかねぇ。
マジョラムエキスの育毛・発毛効果に疑問
ここで本題であるマジョラムエキスに言及します。
前述のとおりマジョラムエキス(マヨラナエキス)は丸善製薬株式会社が取り扱う原料で、17型コラーゲン生成促進作用があるとされます。
しかしそのメーカーのマヨラナエキスの作用・効果を掲載しているページを見てみると、注意書きとして「市販商品における効能を示唆するものではない」と書いてあります。
そもそもマジョラムエキスは臨床試験により17型コラーゲン産出を確認したり、育毛・発毛効果を実証したものではありません。試験を行っていたとしてもせいぜい取り出した毛包に対してのものでしょう。
ハッキリ言ってこういったものは「根拠」とはほど遠い。
統計的に有意な人数による臨床試験(治験)を行ったとしても、二重盲検法かつ数百人規模のものでない限り単発では効果を立証することはできないのに、取り出した毛包や細胞で効果を確認とか鼻で笑うレベル。
培養細胞や毛包に使用して成長を促進させたという成分は腐るほど存在します。ほとんどは客観性に乏しい自社データだけどな。
開発メーカーの培養細胞や毛包を用いた自社データ上ではキャピキシルやリデンシルなんてミノキシジルの2~3倍の効果ですよ。しかし実際に頭皮に塗ってみるとAGAに対してクソの役にも立たない。
マジョラムエキスは医薬部外品の育毛剤に使われているとはいえ、厚生労働省が認める有効成分ですらないただの化粧品成分。それがどの程度の濃度においてどの程度効果があるのかすら一切示されていません。
そして、当然ながらマジョラムエキスの含有量表記をする育毛剤はないでしょう。となれば、カスみたいな量しか入っていないことは想像に難くない。それで薄毛に効果があると考える方がおかしい。
その点においては同じ化粧品成分ながら5%と明記しているキャピキシルの方がはるかにましか。髪は生えないけど。
17型コラーゲン産出の対AGA効果は未知数
薄毛に効果があるとして近年17型コラーゲンが注目されていますが、この17型コラーゲンの研究において、男性の薄毛の9割を占めるとされる男性型脱毛症(AGA)に言及していないことも気になる。
東京医科歯科大学の発表を見るに「加齢に伴う脱毛症」にスポットを当てており、AGAはおろか原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)の記述も一切見当たりません。
AGAでなくともほとんどの人間は40代50代にもなれば髪の毛は細くなりますし、本数も徐々に減ってきます。それは男女共通の老化現象。つまりこれが加齢による脱毛症と見ることができます。
一方でAGAは遺伝によって決まる5αリダクターゼの量やDHTの感受性が強く影響する脱毛症で、20~30代といった比較的若い層でも発症します。
東京医科歯科大学の研究はあくまでも加齢による脱毛症に対するものであり、AGAをどこまで想定しているのかは未知数。
DHTの影響でハゲるAGAでも17型コラーゲンの減少を抑制すれば改善に向かうのか?17型コラーゲンの減少を抑えたからといってDHTの影響には勝てないのか?そのあたりについての言及が一切ないのです。
少なくとも発表のニュアンス的には加齢や老化による17型コラーゲンの減少にしか着目していない印象を受ける。
この点からもマジョラムエキスにAGAを改善する力はないと見ていいでしょう。
マジョラムエキスに発毛効果なし
ハッキリと断言しておきます。マジョラムエキスでハゲは治らん。
理由と結論は以下の通り。
- マジョラムエキスによる17型コラーゲン産出作用の根拠が極めて乏しい
- 人間の頭皮に塗布した際の効果を示したデータが皆無
- 17型コラーゲンの研究はAGAを対象にしたものではない
- 17型コラーゲンの効果に関してまだまだ研究段階
- 育毛剤に使われるマジョラムエキスの量は極めて少ない
これだけ不確かな要素が揃っているマジョラムエキスを、あたかも薄毛に効果があると錯覚させる表現を平然と用いるあたり、育毛業界の腐敗っぷりが見て取れる。
まあ、発毛根拠など一切存在しないただの海藻エキスにM-034なんてもっともらしい名前を付け、世界中で発毛効果が認められているミノキシジルと同列に扱うような業界だからね。
ブブカゼロにマジョラムエキスが配合されたことで、これに追随する育毛剤が増えてくると予想され、今後同成分に関する提灯記事がネット上に溢れてくると思われます。そういった情報にはくれぐれも騙されないようにしてください。
あわせて読みたい関連記事
近年キャピキシルを配合した育毛剤が増えてきており、「ミノキシジルの3倍の育毛効果」というキャッチフレーズも印象的です。しかしキャピキシルに発毛根拠は一切なく、厚生労働省にすら認められていない同成分を配合したものは育毛剤ですらなくただの化粧品です…続きを読む
M-034はミツイシコンブ由来の海藻エキスでイクオスやチャップアップ、ブブカなどに配合される成分です。「ミノキシジルと同等の育毛効果」なんて触れ込みで売っていますが、実際はただの保湿成分で髪の毛を生やす発毛効果は一切ありませんので騙されないように…続きを読む
薄毛が気になってきてネットで情報を調べようと思ったらどのサイトもチャップアップをおすすめしていた。チャップアップってそんなに素晴らしい育毛剤なのか?いえいえとんでもありません。あれはみんな金目的でおすすめしているだけで発毛効果など一切ありません…続きを読む
2016年9月に大幅リニューアルしたイクオスに新たに配合されたAlgas-2(アルガス2)。公式HPではいかにも高い効果があるように謳っていますが、それには様々なカラクリがあり、実際の発毛効果は一切なく、当然効果がないのですから副作用も存在しません…続きを読む
独自の特許成分としてポリピュアEXにのみ使われているバイオポリリン酸。特許と聞くとすごそうな印象を抱きますが、科学的根拠が担保されているわけでも効果に信頼性があるわけでもなく、発毛効果も一切ありません。もっと詳しく見ていきましょう…続きを読む
育毛サプリメントの定番成分といえば亜鉛。亜鉛は髪の99%を占めるケラチンの合成や細胞分裂を促進する効果があるため髪の毛を生やす効果があるとされていますが、実際は亜鉛で髪は生えないのです。なぜ定番の亜鉛に発毛効果がないのかについて詳しく解説していきます…続きを読む
最近育毛剤成分としてちょっと注目されているピディオキシジル。ミノキシジルと分子構造が似ていることから「ミノキシジル誘導体」なんてそれっぽい名前を付け副作用がないことを売りにしているが、こんなパチもん効くはずがない…続きを読む
ノコギリヤシは近年薄毛やハゲに効果があるとして育毛サプリメントなどに積極的に配合されています。しかし調べれば調べるほど「本当に毛が生えるのか?」という疑問が湧いてきます。ノコギリヤシに効果がないという公的な見解も存在するので詳しく見ていきましょう…続きを読む
一時期新聞や雑誌に取り上げられ「育毛に新たな希望」として話題になったフィーバーフュー。NF-kBの働きを抑えDHTの生成を抑制するというノコギリヤシに似た働きをするものの、その後続報は一切なく効果も実証されていないことから近年は忘れられた存在に。発毛効果もありません…続きを読む
キャピキシル、ピディオキシジルに続いて出てきた新たな成分リデンシル。一部では「ミノキシジルの2倍の効果」なんて書いていたりしますが、実際に掲載しているデータを見てみるとおかしいことに気付きます。こんなものには絶対に騙されないようにして下さい…続きを読む
フィナステリド同様5αリダクターゼを阻害するとして様々な育毛剤に配合されている定番成分のオウゴンエキス。ハゲの原因であるDHTの生成を抑制するなどと大々的に書かれていますが根拠に乏しくデータも存在せず、しかも育毛剤に含まれる量は数滴…効果あるはずがない…続きを読む
ミノキシジルはリアップシリーズに配合されていることで知られる数少ない発毛が認められた成分で、内服薬は「最強の発毛剤」と呼ばれることも。心配される副作用も外用薬ではほとんど見られず内服薬も本来の使い方の10分の1の量なので強い副作用の心配はほとんどありません…続きを読む
ネットで育毛剤を調べるとそのほとんどが絶賛されていることに驚きを感じると思います。しかしそれは効果が高いからではなく自分のサイト経由で育毛剤が売れた際の報酬が高いからで、いわゆる提灯記事ですので騙されないようにして下さい…続きを読む