女性はプロペシアを使えない
近年深刻になりつつある女性の薄毛。それだけに高い発毛効果と実績がある医薬品のプロペシアを使用したいところですが、基本的に女性はプロペシア(成分名:フィナステリド)を使用することはできないとされています。
男性であれば医療機関を受診することで比較的簡単にプロペシアを処方してもらうことができるのに、なぜ女性は使うことができないのか気になるところですよね。
「どうして女性はプロペシアを使用することができないのか?」という点についてはもちろん、海外においては女性のプロペシア使用の可能性に言及している点、代替の薄毛治療などについて詳しく解説していきます。
- プロペシアとはどういった薬なのか
- 女性がプロペシアを使えない理由
- 医学的に否定された女性のプロペシア使用
- 妊婦や妊娠の可能性がある女性は特に注意
- 夫がプロペシアを使用している場合も注意
- 育毛剤は気休めにしかならない
- プロペシアではなくミノキシジルを
- 覆りつつある女性に対するプロペシアの効果
- 女性はプロペシアを使うべきではない
プロペシアとはどういった薬なのか
なぜ女性はプロペシアを使うことができないのか? それを説明するにはまずこの薬がどういったものかを知っておく必要があります。
プロペシアの主成分である「フィナステリド」は、本来男性の前立腺肥大症を治療するために作られた成分です。前立腺肥大症とは尿漏れや残尿感など不快な症状を引き起こす男性特有の病気。
前立腺肥大症は一般的な男性ホルモンである「テストステロン」と「5α還元酵素(5αリダクターゼ)」が結びついて生成される強力な男性ホルモン「ジヒドロテストステロン(DHT)」が原因で引き起こされます。
プロペシアの主成分であるフィナステリドは、この5αリダクターゼの働きを阻害することでDHTの生成を抑制し、前立腺肥大症を改善するという作用の医薬品。
そしてこのDHTは前立腺肥大症に加え「男性型脱毛症(AGA)」の原因物質であることが判明し、DHT生成を抑えるフィナステリドを発毛剤として転用し発売されたのがプロペシアのなのです。
薄毛の原因であるDHTはテストステロンと同様に男性ホルモンの一種であるため、一言で言うとプロペシア(フィナステリド)は男性ホルモンの生成を抑制するという性質の薬ということになります。
女性がプロペシアを使えない理由
薄毛の原因や種類は複数存在すれど、男性の薄毛のほとんどはAGAであるため、DHTが原因の大半を占めていると言っても過言ではありません。ゆえに男性に対してはプロペシアが大きな効果を発揮します。
しかし、女性の薄毛はちょっと状況が異なります。
女性といえども少量ながら男性ホルモンを保有しており、女性の薄毛の中には男性同様DHTが関わっている「女性男性型脱毛症(FAGA)」であるケースが思いのほか多いのも確か。
しかし、女性が女性男性型脱毛症(FAGA)を発症する条件として、DHTの量以上に女性ホルモンである「エストロゲン」の減少が重要になってきます。
なぜなら女性の体内で活発に分泌されるエストロゲンは髪の毛の成長を促進させるのと同時に、DHTの生成や働きを阻害するという作用があるから。
そのため、エストロゲンが豊富に分泌されている状況下ではDHTが多少存在していたからといって薄毛になることはありません。
しかし強いストレスを慢性的に感じる状況だったり、生活習慣が乱れていたり、更年期などでホルモンバランスが崩れたりすると、エストロゲンの分泌が低下し髪の毛を成長させる力が衰えDHTの働きが活発化してしまいます。
つまり女性の薄毛の場合はDHTの存在よりも女性ホルモンの分泌量がカギを握っているため、DHTの生成を抑制するプロペシアを飲んでもほとんど意味を成さない…というのが定説なのです。
医学的に否定された女性のプロペシア使用
実際に薄毛女性に対するフィナステリドの効果を検証した臨床データが存在し、結論から書くとその中で有効性は認められませんでした。
その検証はアメリカの大学において閉経後の女性137人を対象にしたもの。
フィナステリドを使用する群とプラセボ群(偽薬群)を用い、被験者はもちろんスタッフもどちらの薬を使用したか分からない二重盲検試験を採用するなど、比較的信頼性の高い臨床試験になっています。
薄毛治療において最も一般的なフィナステリド1mgを1年間投与し、頭皮の髪の毛の数や被験者・専門家が評価した結果、フィナステリド群とプラセボ群で有意差はなく、どちらの群でも1年間で髪の毛が減少するという結果に。
少なくとも閉経後の女性の女性男性型脱毛症(FAGA)にフィナステリドは効果がなかったと結論付けられ、「女性にプロペシアは効かない」という定説ができあがりました。
妊婦や1q妊娠の可能性がある女性は特に注意
臨床試験によって女性の薄毛への効果を否定されたプロペシア。それだけであれば「やっぱり効かなかったね」で済む問題ですが、妊娠中や授乳中の女性となるとまた話は違ってきます。
薄毛を引き起こすDHTは強力な男性ホルモンということもあり、胎児や幼児…とくに男児の生殖器の成長に欠かせないという一面も持つのです。
そういった背景から、もし妊娠している女性の体内にフィナステリドが入ってしまった場合、胎児の成長に悪影響を及ぼす可能性が危惧され、妊婦もしくは妊娠する可能性のある女性のプロペシア服用は禁忌とされています。
また、ラットにフィナステリドを投与した際には母乳への移行が認められたことから、それを飲む乳児への影響を考慮し授乳中の女性の使用も禁止されています。
そう、プロペシア(フィナステリド)は女性の薄毛に効果がないばかりか、妊婦や授乳中の女性には危険な薬になってしまいかねないのです。
夫がプロペシアを使用している場合も注意
加えて、プロペシアの主成分であるフィナステリドは経皮吸収の恐れがあるため、妊婦や授乳中の女性においては服用はもちろん触るべきでもないとされています。そのため旦那様がプロペシアを使用している際は注意が必要です。
ただしプロペシアは表面がコーティングされていることから、そのまま服用している分には問題になりません。
しかし何らかの理由で粉砕や破損をしてしまうと成分が飛散する恐れがありますし、人によってはフィナステリド内服薬をピルカッターなどで分割して使用している場合もあります。
そういった場合、妊婦の方や授乳中の女性はもちろん、乳児や幼児が直接吸引してしまう恐れも。万全を期すなら自宅での使用は避けてもらったほうがいいでしょう。
育毛剤は気休めにしかならない
女性がプロペシアを使えないことは多くのサイトに掲載されているため、薄毛に悩んでいる人は当サイトを見るまでもなくご存知の方も多いと思います。
そして、そういったサイトを見てきた方なら分かると思いますが、最後はマイナチュレやベルタ育毛剤といった女性用育毛剤を勧めてくるサイトが多かったことでしょう。
しかしそれを鵜呑みにはしないで下さい。
プロペシアに代表される発毛剤と育毛剤は似て非なるもの。プロペシアに興味を持つということは髪の毛を増やしたい、薄毛になった部分から再び生やしたいと考えていると思います。
しかし育毛剤にはそういった発毛効果は一切ありません。厚生労働省はじめ世界の医学分野においてこういった科学的根拠がない育毛剤に発毛効果があるとは一切認めておらず、発毛剤の代替にはなりえません。
「女性はプロペシアを使えないから育毛剤を」というのは例えれば「がんの手術は難しいから医学的・科学的根拠のない気休めの民間療法を行え」と言っているのと同じこと。無責任にもほどがあります。
医薬部外品の育毛剤はあくまでも抜け毛を予防したり、今ある髪の毛の成長を促すためのもの。それで十分満足というのであれば女性用育毛剤の使用を検討してもいいでしょう。
しかし、明らかな薄毛を改善したい、新たな髪の毛を生やしたいようであれば、プロペシア以外の発毛剤を使用する必要があります。
プロペシアではなくミノキシジルを
日本で承認されている発毛剤にはプロペシア(成分:フィナステリド)の他に、ザガーロ(成分:デュタステリド)とリアップ(成分:ミノキシジル)の計3種が存在します。
しかしフィナステリドとデュタステリドは基本的な作用が同じということもあり、薄毛改善目的で女性が使用することはできないため、選択肢はミノキシジルしかないというのが実情。
それについては日本皮膚科学会が策定している2017年版の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」でもハッキリと明記してあります。
フィナステリドやデュタステリドが女性に対して「D:行うべきではない」という最低評価なのに対し、ミノキシジル外用薬は男女問わず最高のA評価になっていることが確認できると思います。
ミノキシジルであれば男性女性問わず世界的に発毛効果が認められていますので、これを使うのが最も効果的なのは間違いないでしょう。そして日本においてミノキシジルを使用した女性用発毛剤は大正製薬のリアップリジェンヌのみ。
ただ、ミノキシジルを1%配合したリアップリジェンヌで効果があればいいのですが、もしこれで効果が出ず、かつ日本製のものにこだわるならここで手詰まりとなってしまいます。
日本において女性の薄毛に対する治療の選択肢が少なすぎるのです。
個人輸入という選択肢も
一方、海外製のものにも目を向ければ、ミノキシジルを2%配合する本家アメリカ製の「ロゲイン」がリアップより安価に購入できますし、最終手段としてミノキシジルタブレットという選択もあります。
これらは個人輸入で安価に購入できるほか、日本のAGAクリニックでも処方されている場合がありますので、個人輸入に不安を感じる人はお近くのAGAクリニックに問い合わせてみるといいでしょう。…かなり割高になってしまいますけどね。
また、厳密には発毛剤ではなく「飲む育毛剤」というくくりになると前置きしたうえで、世界中で使用されAGAクリニックでも取り扱っていることがあるパントガールや、それをパワーアップさせたルグゼバイブという選択肢もあります。
これらは発毛剤ではないため強くおすすめする気はありません。しかし日本の女性用育毛剤や育毛サプリメントと違いすべての成分の含有量が明記されている点は安心感があります。
また、ルグゼバイブに至っては馬プラセンタを高濃度に配合しているので美容面での効果も期待できるかと。ちょっと高いけどね。
ちなみにプロペシアが使えない女性にとって、最も効果がある発毛剤はぶっちぎりでミノキシジルタブレット。個人輸入で購入すれば1ヶ月分が800円程度で収まるなど価格面でも圧倒的な安さを誇っています。
ただしミノキシジルタブレットは本来高血圧を治療する降圧剤ということもあって、副作用のリスクも考慮する必要も。
最終的に何を選択するかは各々の価値観に委ねられますが、高いだけで効果のない育毛剤はお金と時間の無駄にしかなりませんので、できる限り使用して欲しくないと個人的には感じています。
覆りつつある女性に対するプロペシアの効果
臨床試験においてプロペシアは女性の薄毛に対し効果が発揮しなかったことで、つい数年前までは「女性にプロペシアは効果がない」というのが定説であり、胎児や幼児などの悪影響の可能性も相まって、それに異を唱える声は見当たりませんでした。
しかし、近年複数の試験において女性の薄毛に対しフィナステリドが一定の発毛効果を発揮したというデータが散見されるように。
複数の好意的なデータが出たとはいえ、医薬品承認前に行う治験のような大規模な臨床試験と違い、小・中規模の試験に留まっているためエビデンス(科学的根拠)があるとは言えないものの、大きな一歩といえる成果です。
この結果を受けて「女性もプロペシアを使うべき」などと安易に考えるのは危険。しかし可能性のひとつとして頭の片隅に置いておくだけの価値が見い出されたと判断してもいいのではないでしょうか。
とはいえ、妊婦や授乳中の女性、乳児や幼児がいる家庭においてフィナステリドが危険である点は変わりないことも付け加えておきます。
女性はプロペシアを使うべきではない
近年、フィナステリドが女性の薄毛に対しても効果的とするデータが出てきてはいるものの、現状では「女性はプロペシアを使うべきではない」と言わざるを得ません。
子供への影響、乏しい科学的根拠、はっきりしない副作用の有無など、懸念材料が多いからです。
女性が使用できる発毛剤の選択肢が少ないとはいえ、しっかりとした科学的根拠を伴うミノキシジルが存在しますから、まずはミノキシジル外用薬を最低でも6ヶ月は使用し様子を見るのがベストといえるでしょう。
それでも効果が見られず、でもどうしても改善させたい場合で、かつ妊娠の可能性がないようであれば、プロペシア(フィナステリド)の使用を検討してもいいかもしれませんが…そのあたりは医師と相談したうえで判断したいところ。
ただ、現状で女性に対しプロペシアを処方してくれる医師は少数でしょう。よほど研究熱心で先鋭的な医師でもない限り門前払いを受けることに。
様々な危険・制約が伴う女性のプロペシア使用。薄毛を改善させたいのであればミノキシジル外用薬を第一選択肢とし、状況に応じてルグゼバイブやパントガールの使用を検討するのが無難といえます。
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